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9匹目 『ワタナベ3号』




「なにするにゃー!? 狙いが違うにゃー!」
頭を抱えた疫病猫の絶叫が響く。
ノートパソコンの画面を砕いたワタナベ3号のロケットパンチ 『遺憾の意』 は見事、表示されっぱなしだったカシヨのプライバシーを隠すことに成功した。
……モニター叩き割るってどんだけ威力があるのよ。
あれが私に向けられていたらと思うと、ゾッとする。
神姫があんなものを食らったらひとたまりもないじゃない、なんてものを持ち出してくるのよ、あの疫病猫。
せめてちゃんと手懐けてから出しなさいよ。
いや、手懐けていたら今頃粉々になってたのは私だけど。
「どうしてくれるのにゃ! パソコンがにゃいとワガハイの計画が頓挫してしまうのにゃ! 言う事を聞くにゃワタナベ3号、オマエが狙う的はあっちにゃ!」
そう言って、疫病猫は私を指差した。
「ちょっ!? あんなの当たったらひとたまりもないじゃない! こんな馬鹿っぽいシチュで死にたくないわよ! てゆーか、私のネコミミを調べるって話はどこいったのよ!」
「構うもんかにゃ、砕け散ったオマエの欠片を調べるまでにゃ。 むしろ分解する手間が省けるにゃ。 さあ今度こそやるのにゃワタナベ3号! ワガハイの遺憾の意をワガハイに代わって表明するのにゃ!」
付き合ってられないわよ。
ワタナベ3号がまだ手首から先がある右腕をゆっくりと持ち上げるのを尻目に見つつ、私は脱兎の如く駆け出した。
未だ縛られたまま、モニターを粉砕されたパソコンの隣で顔面を蒼白にしているカシヨを回収して逃げる。
正直、いくらモード・オブ・アマテラスで運動能力を上げてるっていっても、銃弾並のスピードで飛来する巨大な拳を回避できるなんて思えないし、逃げられるかも微妙。
でもあんなものに真っ向勝負を挑むよりはずっとマシよ。
全力で駆ける中、ワタナベ3号の照準がゆっくりと私に向けられ、『遺憾の意』 が爆音と共に放たれ――ることもなく、射線は私を通り過ぎた。
その先にあるものはクレイドルと 「ヒイッ!?」 その上で縛られ身動きが取れないカシヨだった。
「冗談じゃないわよォー!?」
思考より早く、身体が動いた。
カシヨめがけて全力でアメノヌボコを投げつけ、狙い通り命中。
「にゃガハッ!?」
ワタナベ3号のほうを見ていたカシヨをクレイドルの上から弾き飛ばした。
コンマ数秒遅れて着弾した 『遺憾の意』 がクレイドルを粉砕する。
「あ……うあ、あ……かはっ」
床の上を転がり、身悶えるカシヨを見て、胸がズキリと痛んだ。
バトル用筐体の中ではLPを大幅に減らすだけの攻撃は、筐体の外では致命的な一撃になる。
矛が直撃したカシヨの胴体と左腕はたぶん、もう使い物にならない。
初めて、他の神姫を、自分の手で壊した。
けど、私がカシヨを弾き飛ばさなかったら、今頃カシヨはクレイドルと同じ運命を辿っていたんだし、私の行動は間違ってなんかいない。
CSCとコアさえ守れば、何とかなる。
マスターが側にいたならばきっと、私を褒めてくれる。
でも。
でも。
やっぱり。
気持ちの良いものじゃない。
「ごめん……こうするしかなかったから、その……」
アメノヌボコを拾って、カシヨを縛る紐を切った。
今更解放したところで、カシヨはもう自力で立ち上がることもできない。
「い、いや……助か、げほっ!」
「しゃべらないで。 じっとしてて、後は私に任せて」
破損状況を確認しないといけないんでしょうけど、怖くて直視できない。
目を逸らすように、疫病猫に向き直った。
「私はカシヨを連れて帰るけど、あなたはどうする?」
「そ、そんにゃ……ワガハイの野望は……」
「ああ、ごめん、やっぱり今の質問はナシ。 暴走したワタナベ3号を朝までになんとかしといてね、近所迷惑だから」
「ま、待つにゃ! まだ終わって――」
疫病猫の言葉を遮ったのは、さっき私をハンマーで叩き落とした、チグハグな武装のマオチャオだった。
疫病猫に渾身のタックルを仕掛けて、二人は縺れ合うように転がっていった。
そして元の場所に、ワタナベ3号の巨大な足が落ちた。
ワタナベ3号の震脚が僅かに望楼を揺らした。
「しっかりしろ! 潰されて平面になっても2次元の世界へ行くことはできないぞ!」
そんな台詞でしっかりできる人がいるなら会ってみたい。
ワタナベ3号が思い通りにならないことが信じられないのか、疫病猫の耳に叱咤の声は届いてすらいなかった。
「嘘にゃ……ワガハイがあんにゃに苦労して作ったワタナベ3号が……でも、そんにゃ……わけ……」
『ね~~~~こぉ~~~~』
ロケットパンチまで撃っておきながら、まだ自分のことを 【猫】 と言い張るか。
自失したまま動かない疫病猫とそれを抱えて逃げるマオチャオに向かって、ワタナベ3号が歩き出した。
そんな中、他のマオチャオ達のうち、暑苦しそうな一匹が叫んだ。
「クソッタレ! こうなったらアレしかない、お前らいくぞ! フォーメーションBだ!」
自分達が運んだパソコンやクレイドルを破壊されてもオロオロするくらいしかできなかったマオチャオ達が、ようやく動き出す。
「え~ほんとにやるのぉ? 怖いぃ~」
「そう言うな、お頭のピンチだ」
「マジで? 僕チンまだどのポジションか覚えてないんだよね」
「どっか空いたとこでいいんじゃにゃい? アタイも自分の場所知らにゃいし」
「ほほう、ついに特訓の成果を出す時が来たのでおじゃるな。 そのほう、マロのぶんまで頑張るでおじゃる」
「何様だよあんた。 いや殿様なんだろうけどさ」
「ねぇ、ウチ、端っこがいいんやけど、君の場所と変わってくれんかなぁ」
「え、ボ、ボクも端っこがいいんですが、その、すみません……」
「フッ――鋼鉄の堕天使が牙を向ける方向を違える時が来ようとはな。 いや、堕天使故にそれは必然か。 しかしそれもまた、神が我々に与えたもうた試練――せいぜい足掻いてみせるさ」
「やだ……かっこいい……」
「みんな雑談しないでー! 早くしないと親方がピザ生地みたいにペッタンコになっちゃうよー!」
「全員、覚悟を決めろ! 行くぞォ!」
それは、勝手気ままなマオチャオ達が 【統率】 を見せた珍しい瞬間だった。
全員が同じ素体と基本スペックを持つからこそ可能な、歪みのない集合体。
空を覆う星のベールにも劣らぬ、彼女達の主を覆い隠し守るカーテン。
見ているかケモテックよ。
あなた達が生み出したお馬鹿さん達は、これほどまでに美しい集合を生み出せる。
一列に並んだマオチャオ達の肩の上に、またマオチャオ。
そのマオチャオの上に、またマオチャオ。
その上に、さらにその上に、それはさながら天界へ挑むバベルのように。
ヒトのカタチをした小さな者達も、集まればそれは空を穿つ一つの願いとなる。
さあ、今こそ叫べ! 誇りを燃やせ! その形こそ彼女達の究極の姿――――


「「「「「「フォーメーション 『 ま お ☆ ば り ☆ E X ! 』 」」」」」」


高さも幅もワタナベ3号とほぼ同等。
マオチャオ達によって構成された壁の最上段中央で、ピンク色の新型神姫と小動物系神姫が叫んでいる。
「見てて下さいっス! これぞマオチャオ+αによる鉄壁の守護!」
「しゅごー!」
「しゅごー!」
見上げるほど積み上がっているのに、一枚の壁はほとんど揺れがなくて崩れる気配が無い。
下段を構成するマオチャオはきっとバトルで名を馳せるほどの強者なのだろう、これだけの数を支え…………すごい顔で踏ん張ってる。
「や、やめるにゃオマエ達! そのフォーメーションは――!」
『ね~~~~こぉ~~~~』
行く手を塞ぐ壁まであと1歩というところでワタナベ3号は足を止め、手首から先が無い腕を大きく振りかぶった。
南無三。
「そのフォーメーションは死亡フラグにゃー!」
横一文字に振るわれた腕は、抵抗を感じることもなくまお☆ばり☆EXの中段を薙ぎ払った。
「ぎゃあああああ!?」
「アーッ!」
「あべし!」
「うがっ!?」
「ひええええええええ!」
『遺憾の意』 のような爆発的な推進力を持たないため、振るわれた腕のスピードは遅いけれど、いかんせんパワーが半端じゃない。
腕が通った所を構成していたマオチャオはだるま落としのように弾き飛ばされ、その上にいたマオチャオもやはりだるま落としのように足場を失って落ちていった。
下段のマオチャオもバランスを崩し、まお☆ばり☆EXは呆気無く崩壊した。
滝のように落ちてくるマオチャオが下段のマオチャオに積み重なり、マオチャオの墓場のようだった。
みんな生きてるけど。
「も、もう付き合ってられないよ!」
誰かのその一言がトドメとなった。
猫達は我先に望楼から逃げていった。
飛行ユニットを持つ者は飛んで行き、二階から飛び降りる者、私の横を通り過ぎて階段から降りて行く者、落ちた衝撃でダメージを受けたのか這うように進む者、てんでバラバラに散っていき、皆の姿はあっという間に見えなくなった。
後に残ったのは、私、カシヨ、尻餅をついている疫病猫と、その前でハンマーを構えるあのマオチャオ、それに再び歩き出したワタナベ3号だけになった。
「も、もういいにゃ、ほむほむも逃げるにゃ!」
「何を言っている、まだ何も終わってはいない」
「もう終わりにゃ! 仲間はいにゃい、ワタナベ3号は言うことを聞かにゃい。 これからワガハイにどうしろと言うにゃ……」
「生きてさえいれば何とかなる。 だから貴様は逃げろ。 ここは俺が何とかする」
こんなにクールなマオチャオは初めて見る。
「にゃ、にゃんとかってそんにゃの無理にゃ! 暴走したワタナベ3号を止めるにゃんて誰にも――そ、そうにゃ! 自爆スイッチがあったのにゃ!」
疫病猫は何処からか四角い箱を取り出し、その箱についている丸くて赤いボタンを何度も押し込んだ。
ロケットパンチを搭載するくらいだから、まあ自爆も当然のノリで可能なんでしょう。
でも、何も起こらない。
『ね~~~~こぉ~~~~』
「ど、どうしてにゃ!? どうして作動しにゃいのにゃ!?」
「早く逃げろ! 手遅れになるぞ!」
「で、でも、ワガハイは……! 諦めたら、もうダメで、でも……ネ、ネコミミギュウドン!」
疫病猫は私に向かって叫んだ。
下ろされた足を回避するため、ちぐはぐマオチャオに抱えられながら。
「一生の頼みにゃ! ワガハイ達を助けてにゃ!」
何を言い出すかと思えば、人様をスクラップにしようとしたくせに助けろ、ですって?
「冗談じゃない。 あなたには寝言を言う権利すら認めないわ」
「図々しいのは百も承知にゃ! でも――」
再び下ろされる超合金の足。
それはギリギリのところで回避できず、ちぐはぐマオチャオの脚についていたホイールが片方砕けた。
脚で歩くのに使うホイールじゃないから問題は無くても、つっかけてバランスを崩し、疫病猫は床の上へ投げ出された。
「ぐへっ!? ――で、でもワガハイはまだ死ねないのにゃ!」
「さっきも言ったわよね、忘れちゃった? じゃあ何度でも言うわ。 あなたはこの町にウィルスを蔓延させようとした」
それはきっとネットワークを通じて世界中へ広がっていくけど、私は世界の神姫達を救うヒーローになりたいんじゃない。
「この町に――私のマスターが住むこの町に危害を加える輩を、私は許さない」
町を守るのならば、私より強い神姫なんていくらでもいる。
普通のアルトレーネより少しだけ出力の使い方に長けているだけで、それでもなお平凡の域を出ない。
それでも、私はこの町が好きだから。
私にできることを、精一杯頑張る。
この町の神姫達が、違法プログラムの危機なんて知ることもなく、今日の戦いを思い出しながらクレイドルの上でぐっすり眠りにつくことができるように。
スカートを翼に組み換えて、セット・フリューゲルモード。
…………あれ?
「お願いにゃ……誰とも遊べにゃいまま死ぬにゃんて嫌にゃ……神姫みんにゃが猫ににゃれば、ワガハイはいっぱいいっぱい遊べたのに、にゃにもできにゃいで消えたくにゃいにゃ……」
再び疫病猫はちぐはぐマオチャオに抱えられて逃げまわり、されるがまま振り回されている。
「それが報いってもんでしょ。 まだ被害者がカシヨ一人っていっても、プログラムを作った時点であなたは裁かれるべき悪者なの」
例え疫病猫を所持しているオーナーに違法改造されたせいでプログラムの扱いが可能になったんだとしても、倫理から外れた行動を無視するわけにはいかない。
火照った身体は少し冷えて、まだモード・オブ・アマテラスを続けられることを確認。
さっきのマオチャオ達のドタバタで踏まれに踏まれて足型べったりのブラオシュテルンを回収。
破損箇所無し、問題無く使えるけれど、後で疫病猫に新品を買わせよう。
……いやいやいや、なんで私、ヤル気になってるのよ?
「どうせ遠くない将来、誰かに捕まって処分されるんだから、だったら今ぺっちゃんこに潰れるのだって同じことでしょ」
「そ、そんにゃ……」
なんて、口では言ってみたものの。
さん、にい、いち、ごー。
私は飛んだ。
アイ・キャン・フライ。
モード・オブ・アマテラスの状態で飛ぶのはこれが初めてだったりするのよね。
飛ぶというより、早すぎて翼に引っ張られているような気分になる。
もし飛行中に過負荷で翼が焼きついたらと想像すると、ちょっと怖い。
ワタナベ3号の胸の辺りまで上昇したところで、てっぺんに申し訳程度に搭載されているプチマスィーンと目が合った。
胸部のハッチが開き、そこから数十のミサイルが発射された。
「うわっ!?」
ミサイルそのものは神姫が使うものと同じサイズだけど、巣を強襲されたミツバチのように多数で構成された群となって襲い来るとなれば洒落にならない。
身体をねじって方向を変え、ワタナベ3号の背後に回るように旋回した。
ミサイルも後ろからピッタリとついて来る。
それらを引き連れて再び上昇、ワタナベ3号の小さすぎる頭に突っ込んだ。
「やあああああああああっ!」
すれ違いざま、頭部に飛翔の勢いを乗せた斬撃を叩き込んだ。
手応えはあったけれど、それはプチマスィーンの耳を片方もぎ取っただけだった。
確かに眉間を狙ったのに、よく見ると頭部の下に貧相な首が見える。
スレスレのところで頭を傾けて回避したらしい。
続いて狙い通り、私を追っていたミサイル群が頭部付近に着弾した。
『ねごぉぉぉぉぉおおおおおお』
ワタナベ3号の巨体が少しふらついた。
よし、ダメージにはなったみたい。
旋回して追撃を、と思ったけれど、まだ数本のミサイルが私を追ってきていて、ブラオシュテルンを投げて全部爆発させた。
「私を追いかけるのはカワイ娘ちゃんだけにしてほしいわ」
……………………。
……ネコミミを生やしたアルトレーネが言っていい台詞じゃなかった。
あまりの格好のつかなさに身悶えているうちにワタナベ3号が体勢を立て直したため、追撃は諦めて一旦地上へ戻った。
ポカンと口を開いている疫病猫とちぐはぐマオチャオの側に降り立った。
「カワイ娘ちゃんとは誰のことだ?」
聞かれてた。
死にたい。
「ど、どうしてワガハイを助けて………」
「うるさい」
アメノヌボコの切先で疫病猫の鼻をブスリと刺した。
「にゃおおおおお!?」
「私はこの町を守るの。 この町のぜ~んぶを守るの。 ぜ~んぶはぜ~んぶなんだから、あなた達もふくまれちゃうのよ、不本意ながら。 だから仕方なくよ、仕方なく。 べ、別にあなた達のために戦うわけじゃないんだからね! 勘違いしないでよ!」
「にゃんというテンプレート。 ネコミミのみにゃらずツンデレ属性まで付加しようとは欲張りなやつにゃ。 萌え要素は詰め込めばいいってもんじゃにゃいのにゃ」
「うるさい」
ブスリ。
「にゃおおおおお!?」
「貴様ら遊んでないでワタナ…………っ!? 走れ!」
星の光を遮る影と全身を駆け巡った怖気に反応して、側にいた疫病猫の腕を掴んで地面スレスレで飛んだ。
あらん限りの力を振り絞って加速しても、影の境界は私にぴったりとついて来る。
どんどん広がってゆく巨大な影。
身体を大の字にしたワタナベ3号のボディプレスから、間一髪逃れられた。

ゴシャアアン!

辺りに風を起こし、ものすごい音をたてながらワタナベ3号は木の床に激突した。
その風圧でバランスを崩し、私と疫病猫は飛行の速度を殺せずに床に足をついて、勢いのまま転がった。
咄嗟に翼を折りたたんだものの、めちゃくちゃに転がったせいで身体中が変な方向に曲がりそうになり、その痛みに勝るくらい目が回った。
「あううう……」
「にゃおお……」
「きょ、巨大ロボットにボディプレスなんて覚えさせないでよ……」
「知らにゃいにゃ……ワタナベ3号が勝手に考えてやったことにゃ……」
アメノヌボコを杖代わりにして立ち上がった。
これでもう、全身余す所なく傷ついた。
マスターの元に帰ったら何て言い訳しよう。
マスターなら怒るより心配してくれるだろうけど……やだなぁ、心配させたくないなぁ……。
「ほむほむー! どこ行ったにゃー!」
私と同じように転がって目を回した疫病猫が、千鳥足を支えながら叫んでいる。
ほむほむ?
「って、あのチグハグマオチャオのこと?」
あのマオチャオにしては、随分と可愛らしい名前だこと。
「きっと逃げ遅れたんだにゃ! どうしてほむほむを連れてこなかったのにゃ!」
「2人を抱えて逃げきれたと思う? それとも3人仲良く下敷きになりたかったのかしら。 そんなの誰だってお断りよ。 私も、ほむほむもね」
ワタナベ3号がのっそりと立ち上がった。
その下で、ペッタンコになっていない立体のほむほむが屈んでいる。
「俺にはホムラという名前がある」
「ほむほむ! 無事でよかったにゃ!」
「その名で呼ぶな。 ホムラと呼べ」
無駄にゴテゴテと装飾されて凸凹なワタナベ3号と床の隙間に入り込んでいたらしい。
咄嗟にそんなことができるなんて、判断もだけどそれを行動に移す度胸がすごい。
「貴様ら、コイツを狩るぞ! /organize CatsEye だ!」
「ムフフ、ちょうど三人組にゃね。 ワガハイは泪お姉様のポジションにゃ」
「もう好きにして」
私はいつの間にやら、正式に猫の仲間入りを果たしていたってわけね。
ほむほむのネーミングセンスや、戦乙女と猫を一緒にされたことを今どうこう言っても始まらない。
「さあ、もうひと踏ん張りいくわよ!」
「オマエが仕切るにゃ! リーダーはワガハイにゃ!」
「狩りに集中しろ、来るぞ!」
『ね~~~~こぉ~~~~』
踏み潰しにかかってきたワタナベ3号の足を、3人それぞれの方向に回避した。
再び上昇する途中、ふと、星空が目に入った。
まだ朝日が昇る様子は見られない。
太陽の神様は冬が近づけば近づくほど、布団から出てくる時間も遅くなる。
天照大御神に見守ってもらえればとも思ったけど、それでモード・オブ・アマテラスが強化されるわけでもないんだし、むしろ、町の一番高い場所で繰り広げられるこんな見苦しい戦いを見せないで済むのは重畳ってものかもしれない。
疫病猫とほむほむがワタナベ3号を撹乱しているうちに、私はワタナベ3号の全長よりさらに高く昇っていた。
このまま昇っていけば星にも手が届くかしらん。
こんな時でもなければ、星空をゆっくりと眺めていたいのに。
いいことを思いついた、マスターをデートに誘おう。
マスターは飛行機から地上の灯りを見て、町が生きていることを私に教えてくれた。
今度は二人一緒に、地上から空の灯りを眺めよう。
一緒に星を眺めてくれる人がいる喜びと、その人が今は隣にいない憂鬱を身に纏って、ワタナベ3号めがけて降下した。












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