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キズナのキセキ

ACT0-3「アイスドール」



 右の武装脚を踏み込み、ほんの少しだけ身体を宙に浮かせる。
 間髪入れずに、背部の増設バーニアを噴射。
 地を這うように滑空し、猛スピードで対戦相手に肉薄する。

「くそっ!」

 小さなつぶやきと同時、対戦相手のジルダリア型のハンドガン「ポーレンホーミング」から、弾丸がばらまかれてくる。
 それを錐揉みしながら回避、逆にこちらも機関銃を構え、撃った。
 ジルダリアは防御の姿勢。
 数発着弾。花びらを模した装甲に阻まれ、ダメージにはほど遠い。
 だが、足は止まった。
 間合いを取ろうとしていたピンクのジルダリア型は、その場で相手を待ち受けざるを得なくなった。
 両腕にマウントされた剣「モルートブレイド」を構える。
 そこに白亜の神姫が飛び込んできた。
 背後から伸びるサブアームを前方でクロスし、そ
のまま体当たりしてくる。

「くうっ!」

 たまらず声を上げたのはジルダリア。
 力任せの体当たりを防御するも、弾き飛ばされる。なんとか空中で姿勢を制御した。
 背面に取り付けられたリング状の武装は、花びらを模した武装が取り付けられており、推進器の役割も持つ。
 その「フローラル・リング」はジルダリアの代名詞とも言える武装だ。
 姿勢を取り戻したジルダリア型だったが、しかしこのタイミングは、迫る白亜の神姫にとって得意のパターン。
 さらに踏み込んできた白い神姫は、サブアームを振り抜いた。
 鋭い指を揃え、突いてくる。
 この抜き手は狙いを外さない。
 反射的に身をよじったジルダリアの身体をかすめ、背後のフローラルリングを打ち砕いた。

「しまった……!」

 ジルダリア型の驚きを気にも留めず、白い神姫は間髪入れずに、逆の副腕で抜き手を放つ。
 狙いは胸部。その奥のCSC。
 あやまたず放たれた抜き手は、無慈悲にもジルダリア型の胸を貫いていた。
 勝利したのは、白いストラーフ型。
 その名を、ジャッジAIが画面に表示する。

『WINNER:ミスティ』



「いやー、まいったまいった」

 頭を掻きながら筐体から離れた男が言う。
 先ほどの、紅とピンク色にリペイントされたジルダリア型のマスター・花村耕太郎である。
 彼の神姫・ローズマリーも、今は彼の肩の上でうなだれていた。

「今日はいいところまで行ったのに……」

 ここのところ、ミスティとの対戦は連敗である。彼女は急速に力を付けてきていた。

「強くなったなぁ、久住ちゃん」
「いえ……わたしなんてまだまだ……」

 セミロングの髪を上げ、花村を見る少女は、まだ中学生である。
 控えめな口調で謙虚な言葉を口にする。
 『七星』の一人を破ったというのに、久住菜々子は笑わない。むしろ、せっぱ詰まっている様子さえ見て取れる。
 実際、菜々子はこの対戦に満足してはいなかった。
 ローズマリーはノーマルのジルダリア型だ。各部の調整と細かなメンテナンスでポテンシャルを引き出し、知略戦略で戦う。
 そのバトルスタイルについては、菜々子は大いに花村を認め、参考にもしていた。
 菜々子はまだ中学生で、ミスティを満足にカスタムしてあげられない。わずかに、強襲用の背面ブースターを追加したのみだ。
 だから、ノーマルでも強い花村は、今菜々子が目指すべき神姫マスターと言える。
 だが、実力があるかどうかは話が別だ。
 花村も『七星』の一人ではあるが、まだ二つ名もなく、他のメンバーに比べると実力は劣っている。
 カスタムを施された神姫たちがひしめく、他の『七星』たちに勝つためには、現状で満足しているわけには行かない。
 もちろん、この時の菜々子は、後に花村たちが『薔薇の刺』の異名を取るなどとは知る由もなかった。
 とにかく、菜々子はバトルロンドで強くなることに必死だった。
 それには理由がある。

「菜々子、絶好調じゃない」
「あおいお姉さま」

 菜々子はそこでようやく、ほっとしたように微笑んだ。
 『七星』一人・桐島あおい。
 彼女の側に居続けるために。
 彼女のパートナーであり続けるために。
 菜々子はどうしても強くならなければならなかった。



 久住菜々子が想像していた以上に、『ポーラスター』における桐島あおいの人気は絶大なものだった。

 ゲームセンター『ポーラスター』の神姫マスターの間で、『七星』のメンバーであれば、それだけで羨望の的だ。
 彼らは『ポーラスター』に集う神姫マスターの代表である。バトルの実力ももちろんだが、それぞれのやり方で『ポーラスター』の対戦レベルの向上を図っている。
 たとえば花村は、ノーマルあるいは公式装備にこだわるマスターたちのまとめ役である。彼を中心に研究グループができ、日夜ノーマル装備の可能性を探っている、という具合だ。

 桐島あおいは、バトル初心者を見つけては声をかけ、バトルの講習を行い、対戦の面白さを知ってもらう活動を行っている。
 そして、ゲームセンターへの定着をはかり、仲間を増やしていこう、という魂胆だ。
 菜々子はあおいの魂胆にまんまとはまってしまったわけだ。
 だが、その魂胆にはまったのは菜々子一人だけではない。まだ初級者に分類されるマスターたちの半分以上が、あおいの受講生だと言うから驚きである。
 楽しく優しくレクチャーしてくれるあおい先生が、人気がないはずがない。
 受講生たちはほとんどが桐島あおいのファンだ。特に女の子たちは、あおいの取り巻きとなっている。
 もちろん、彼女の人気は女子だけに留まらない。
 あの美貌、あの気立てのよさ、である。あおいとお近付きになりたいと思う男性マスターは大勢いた。

 そんなわけだから、ゲーセンにいるときのあおいは、常に人に囲まれていると言っても過言ではない。
 つい先日まで、あおいがその輪から離れることはなかった。
 そう、久住菜々子と出会うまでは。

 菜々子が『ポーラスター』に現れて以来、あおいは菜々子との時間を優先するようになった。
 対戦していないときは、もっぱら菜々子の側にいる。
 バトルロンドでは、ツー・オン・ツーのタッグバトルでコンビを組んでくれるし、対戦を希望すれば必ず相手をしてくれる。私的な練習にも、まめに付き合ってくれる。
 しかも、タッグバトルのパートナーは、『七星』のメンバー以外では、菜々子とだけしか組まなくなった。
 菜々子をひいきする理由をあおいに問いただしても、笑ってはぐらかされる。

 当然、あおいの取り巻きをしている少女たちは面白くない。
 彼女たちの矛先は、自然、菜々子に向けられた。
 菜々子に対する「特別扱い」をやっかむ陰口は毎日のことだった。
 また、ことあるごとに……いや、何もなくても、あおいの取り巻きたちは菜々子にしょっちゅう難癖を付ける。直接不満をぶつけに来る。

「いい気にならないで! あおいお姉さまはあなたのものじゃないのよ!?」
「……あなたたちのものでもないでしょう」
「みんなのものよ!」
「……お姉さまは、お姉さまのものだと思うけど」
「まあっ、生意気に言い返すつもり!? だいたい、あんたなんか、お姉さまのタッグパートナーに不釣り合いなのよ!」
「じゃあ、誰だったら、お姉さまと釣り合うの?」

 そう言われると、取り巻きたちは声を詰まらせざるを得ない。
 『七星』や上級者の常連ならともかく、初級者に毛が生えた程度の取り巻きマスターたちでは、タッグマッチでルミナスの足を引っ張るのがオチだ。
 そう言う意味では、今一番の成長株と目される菜々子は、あおいのパートナー候補になりうる。
 また、それなりの美貌がなければ、あの桐島あおいの隣に並んでも見劣りしてしまう。
 本人が考えたことはないが、その点でも、菜々子は及第点をクリアしていると言えよう。

 だからといって、やっかみの声が静まることはない。
 菜々子は表立って反論するようなことはしない。そんなことをすれば、火に油を注ぐだけだとわかっている。
 では、どうするか。
 実力で黙らせる。
 バトルの実力で、お姉さまの側にいるのにふさわしいことを証明してみせる。
 『七星』なれるほど強くなれば、きっと誰もが、自分をあおいお姉さまのパートナーとして認めざるを得ないだろう。

 だから、菜々子は最短距離で強くなろうとした。
 その結果、彼女のバトルスタイルは、相手の弱点を容赦なく突き、勝ちばかりを求めるものになっていた。
 だが、そんな菜々子のスタイルに、当のあおいお姉さまは難色を示す。
 あおいが菜々子に求めるバトルスタイルは、勝ちばかりを意識したものではない。
 それは「魅せる戦い」だとあおいは言う。
 しかし、菜々子にはその意味が、よく分からない。



「久住ちゃんも強くなったよな。そう思わないか、お姉さま?」

 あおいと花村は並んで、観戦用の大型ディスプレイを見上げていた。
 ディスプレイには、ミスティの戦いぶりが映し出されている。
 現在、三連勝の表示。

「……まだまだね」
「手厳しいな。君の妹分だってのに」
「自分の身内に対しては、容赦しない主義なの」
「それは久住ちゃんがかわいそうだ……また勝つぜ」

 その言葉とほぼ同時、ミスティは必殺の抜き手を放ち、相手神姫を撃破した。
 連勝表示が一つ増え、四を示す。

「ほら。もう、常連の中でも頭一つ抜きんでてる感じだ。相手になるのは『七星』ぐらいじゃないか?」
「そうかもね」
「……だから、みんなに提案がある。俺は久住ちゃんを『七星』に推薦したい」
「え?」

 あおいは花村を見た。
 そして、その場にいた、『ポーラスター』の『七星』のメンバーたちも。
 その時点での『七星』のメンバーは、花村とあおいを含めて六人だった。

「今日、招集をかけたのはそれか、花村」
「そうだよ」

 武士型のマスターである『七星』メンバーの言葉に、花村は頷いた。
 『七星』のメンバーに加入できるか否かは、メンバーの合議によって決まる。
 といっても、堅苦しいものではない。誰かが推薦して、「いいんじゃない?」といった感じで決まることがほとんどだ。

「『七星』は今六人。久住ちゃんが加われば、人数的にもちょうどいい。
 それに、彼女の向上心は、他のプレイヤーたちにもいい刺激になるんじゃないかな」
「なるほど」
「確かに」
「異議なし」

 他のメンバーも、花村の意見に頷いている。
 確かに、最近の菜々子とミスティの成長には、目を見張るものがある。
 あおいの取り巻きたちと比べても、あきらかに一線を画した実力だ。あおいのパートナーを目指すマスターは他にもいるが、実力的にも相性的にも、菜々子に匹敵する者はいない。
 他の『七星』に比べれば、まだ見劣りする実力も、すぐに追いつくだろう。
 そして、菜々子自身、『七星』になることを望んでいる。
 反対する理由は何もないように思えた。
 だが。

「わたしは反対」

 そう言ったのが、当のあおいであることに、花村は驚きを隠せない。

「どうして? 桐島ちゃんが一番喜んで賛成すると思っていたのに」
「まだ早いわ」
「そうは思わない。彼女は十分に強いじゃないか」
「確かに強くなった……でも、足りないものがあるのよ」
「足りないもの……?」
「あの子はまだ、勝ち負けしか見えていない。強いだけじゃ、ダメなの」

 ミッションモードで乱入待ちをしている菜々子を見る。
 バトル中の彼女は、いつも真剣な表情でディスプレイを見つめている。何か思い詰めたような様子さえある。
 あおいは小さくため息をつき、菜々子の向かい側へと歩み寄る。

「菜々子」
「お姉さま」
「次、対戦、いい?」
「どうぞ……真剣勝負でお願いします」
「わかったわ」

 あおいは鮮やかな笑みを見せて、向かいのシートに座った。
 肩にいる自分の神姫を、アクセスポッドに寄せる。

「行くわよ、ルミナス」
「はい、マスター」

 その後、ものの三分とかからず、ルミナスはミスティを撃破した。
 菜々子はいまだに、本気のあおいに一度も勝てなかった。



「だから、ただ勝てばいいってものじゃないのよ。もっと楽しまないと」
「それがよくわかりません。勝つこと、イコール、楽しいことじゃないんですか?」
「勝つだけが、バトルロンドの目的じゃないわ」

 対戦後、自動販売機のあるコーナーで、冷たい飲み物に口を付けながら、二人は話していた。
 幾度となくかわされた会話であるが、お互いの意見は平行線である。

 あおいは、武装神姫のバトルには、勝敗以上の何かがあると思っている。
 その「何か」を説明するのがなかなか難しい。
 たとえば、自分の力を出し切ったときの充足感とか、自分の戦術が見事に当たった瞬間の気分とか、自分と神姫がまるで以心伝心のように意志を伝えあったときとか、自分の成長を感じられたときの嬉しさとか、そういったものだ。
 それを感じることこそ、武装神姫の醍醐味、とあおいは思っている。勝利はその延長上にあるものにすぎない。
 それを菜々子にも分かってもらいたい。
 だが、我が妹は、そのことをなかなか分かってくれない。彼女は勝利を第一優先にしている。
 対戦において勝利第一主義が悪なわけではない。ただ、あおいの主義と合わないだけだ。
 だからこそ、菜々子の説得が難しい。
 あおいはため息をついた。

「だから『アイスドール』なんてあだ名されるのよ」
「アイスドール?」
「あなたの異名。氷のように表情を変えずに、容赦なく弱点を攻撃する。まるで感情のない人形のように。だから『アイスドール』」

 二つ名は、尊敬の意味を込めてつけられる場合が多い。
 だが、菜々子のそれは、皮肉が込められている。そんな戦い方で楽しいのか、と。
 また、ゲーセンでの菜々子は、あおいの側以外では、あまり表情を変えない。それは先日の悲しい出来事に起因しているのだが、知らない人の方が多いのだ。『アイスドール』の二つ名は、そんな普段の様子も揶揄されている。
 しかし、菜々子はのんきにコメントした。

「へえ……ちょっとかっこいい、ですね」

 そう言って小首を傾げた菜々子はとても可愛い。
 あおいはがっくりと肩を落とした。我が妹は、二つ名の裏の意味にまったく気がついていないようだ。
 あおいは頭に手を当てて、悩む。
 どうすれば菜々子に、自分の考えを分かってもらえるのだろう?



 マスターたちの悩みをよそに、ミスティとルミナスはのんきに話をしている。
 神姫である彼女たちも、マスター同様、すこぶる仲がよい。
 お互いのマスターの肩の上で、マスターたちの話の邪魔をしないように、極長調波の音声で会話をしていた。

「まあ、わたしは『アイスドール』のままでもいいんですけどね。勝てているし」
「そうねぇ。わたしたちと肩を並べるために、まずは勝ちに行くっていう菜々子さんの考えも一理あるわよねぇ」

 ルミナスはアーンヴァル型のカスタムタイプである。
 本来、アーンヴァルは長距離射撃を得意としているが、マスターであるあおいの趣味で、中距離から近接格闘戦ができるような装備にカスタムされた。
 背面の大型ブースターを、小回りの利くバーニアに変更。武装も、ロングレンジライフルを廃し、中距離向けのビームライフルなどに変えている。
 コンセプトは最近発表されたアーンヴァルmk2に近い。

 ルミナスの戦い方は「蝶のように舞い、蜂のように刺す」を実現したようなスタイルだ。
 最高速度の加速を捨て、機動力重視の推進を手にしたルミナスは、あおいの指示のもと、飛行機のアクロバットさながらの機動を見せる。
 そして、急加速による接敵からの近距離戦に移行する動きは鋭い。
 こうした機動を緩急つけて行うことで、ルミナスはあたかも空中で舞っているように見えるのだ。
 その空中の舞を駆使した戦いぶりは、美しく、そして強い。
 あおいとルミナスは、その戦い方から、『月光の舞い手(ムーンライト・シルフィー)』と呼ばれていた。

「わたしたちの戦いぶりと比べると、あおいさんとルミナスの戦い方は真逆ですけど」
「だからこそ、タッグバトルで噛み合うってのはあるわよね」
「わたしもそう思います……あおいさんは、何が気に入らないんでしょう?」
「ミスティに、わたしたちと同じような戦い方をして欲しいんじゃないかな」
「それは無理でしょう……うちのマスターの性格からして」

 二人の神姫は、人には聞こえない声で、笑った。



「今の、ルミナスとミスティのタッグは、こんな感じね」

 あおいは、ルミナスを示す右の指をくるくると回して螺旋を描き、その螺旋の中心を貫くように、ミスティを示す左の指を一直線に動かした。

「コイル……ですか?」
「え? ああ……そうね、電磁石みたいね」
「勝ちがいくらでもくっついてきそうです」

 我ながら、つまらないジョーク。
 でも、電磁石で何の問題があるのかわからない。
 華麗に舞うルミナスと、容赦なく敵を倒すミスティ。
 そのミスマッチこそ、このペアの強さだとも思う。
 だが、あおいはまた両手の人差し指を動かした。

「わたしが望むタッグバトルは、こんな感じ」

 両手の指が、今度は互い違いの螺旋を描く。時に近づき、時に離れ、模様のような立体図形が宙に描き出された。

「二重螺旋……?」
「ああ、なるほど……遺伝子に似ているわね。
 そう、二人が一緒に魅せる戦いをすれば、試合はきっと、勝ち以上のものに進化するでしょうね」

 そう言って、あおいはにっこりと笑った。

「息のあったパートナー同士のタッグバトルは、すごいわよ? それはバトルなのに、まるでダンスを踊っているように見える……とても美しいの」
「……美しい?」
「そうよ」

 自信たっぷりに頷いたあおいに、菜々子は首を傾げる。
 菜々子は、そんなバトルをしたことがなかったし、名勝負と語り継がれるような試合を見たこともなかった。
 戦闘行動は、その時どきの状況によって刻々と変化する。
 それなのに、パートナーと息を合わせて戦うなんて、できるだろうか。
 もちろん、菜々子とあおいのコンビは、ここ『ポーラスター』でもトップクラスの実力である。バトルの時のルミナスとミスティは息が合っていると思う。
 これ以上、何が足りないというのだろうか。

「きっと、菜々子の戦い方には、個性が足りないんだと思う」
「個性?」
「そう。ミスティは、ストラーフ型の戦い方としてはすごく真っ当だけど、それは誰もがどこかで見たことのあるストラーフに過ぎないわ。サプライズが何もない」
「……でも、わたしは、お姉さまのように華麗な動きを指示できません」

 困ったように言う菜々子に、あおいは苦笑した。

「わたしの真似をする必要はないわ。まずは、あなたらしい戦い方を模索してご覧なさい」
「わたしらしい……戦い方……」

 それこそが今の戦い方なのではないかと思うが、違うのだろうか。
 おそらく違うのだろう。ステレオタイプなストラーフの戦い方は、誰にでもできる、ということなのだ。
 だけど、菜々子らしい戦い方、というのは、なんなのだろう?

「それができるようになったら、菜々子を『七星』に推薦するわ」
「えっ……」
「どう? もう少し頑張ってみる?」
「はい!」

 微笑むお姉さまに、元気に返事をした。
 他でもないお姉さまが『七星』に推薦してくれるというのだ。
 そうなれば、誰に恥じることなく、あおいお姉さまのパートナーと名乗ることができる。

 菜々子は俄然やる気になった。
 その日から、菜々子とミスティの、オリジナルな戦い方を模索する日々が始まった。



「ひとつ疑問があるんですが……」
「何かな?」
「桐島あおいは、なんで久住さんにこだわったんでしょう?」

 ここまでの話を聞いて、俺が一番気になったのはそこだった。
 ただ仲がいい、とか、お気に入り、と言うレベルを超えている気がする。
 長い付き合いの他の常連たちを差し置いても、菜々子さんを特別にかわいがる理由が、何かあるのではないか。
 花村さんは、少し考えてから、言った。

「……たぶん、桐島ちゃんは、久住ちゃんに自分を重ねていたんじゃないかな」
「……?」
「桐島ちゃんも、幼い頃に両親を亡くして……祖父母の元で暮らしてるって聞いたことがある。
 あの頃の、打ちひしがれた久住ちゃんを見て、桐島ちゃんは放っておけなかったんだと思うよ」

 なるほど、と俺は頷いた。
 桐島あおいは、自らの境遇を菜々子さんに重ねていた。だからこそ、献身的に菜々子さんを支えていた。
 菜々子さんも、桐島あおいの事情をいつか知ることになったのだろう。
 武装神姫だけでなく、身の上でも、二人は共通の思いを抱いていたのだ。
 二人が急速に惹かれ合い、寄り添ったのにも納得がいく。

 それにしても。
 花村さんが話してくれる菜々子さんの過去は、実に興味深い。
 『ポーラスター』で過ごした菜々子さんの様子は、今の『エトランゼ』の戦闘スタイルが形作られていく過程だ。
 スタンダードなストラーフ型のバトルが、いかにしてあのトリッキーかつパワフルなミスティのバトルへと変化するのか?
 俺は期待を込めつつ、花村さんの声にまた耳を傾けた。










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