与太話1 : 再販
1月16日。
この日、私はアルトレーネ再販を盛大に祝うつもりでした。
エルに恨まれるようなことをしてしまった私ですけれど。
……今でも、弧域くんといつも一緒にいるエルを妬ましく思う時があるけれど。
でも、弧域くんの神姫だから……ではなく、一人の友人として。
エルの仲間が増える記念すべき日を、盛大に祝うつもりでした。
アルト姉妹再販の話が持ち上がってから私は密かに作業を進めていました。
私が作ったコートをずっと大切にしてくれているエルのための、新しい服。
作品名 【 You are the Princess of Tennis 】
青学ジャージを私なりにアレンジしたこれを、エルはきっと喜んでくれるでしょう。
エルの心を物で釣ろう、なんて思っているわけではありません。
ただ、私のキモチをカタチにしたかっただけです。
1月16日。
エルの仲間が増える記念すべき日を。
エルと弧域くん、それにニーキも一緒に祝うつもりでした。
……それなのに。
ディオーネの注文数カウンターは、錆びついてしまっているかのように。
規定数とは程遠い数字のまま、固まって動きがありません。
今、私は少々行儀悪くも、部屋の壁に耳をくっつけています。
防音効果の殆ど無い壁の向こうから、怨嗟の声が聞こえてきます。
『……不人気…………わ、私が…………ふ、ふに、ふふふふふ……』
……盗聴しておいて言うのもなんですが、怖いです。
弧域くんの慰める声も聞こえますが、まったく効果が無いようです。
今、この 【 You are the Princess of Tennis 】 を持っていけば。
プレゼントは嫌味としか受け取ってもらえないことでしょう。
私は間違いなくエルに嫌われ、弧域くんに軽蔑されるでしょう。
……後ろ暗い気持ちが無いと言えば、嘘になります。
弧域くんに近づく女の不幸は、私にとっての……
私は、卑怯で、卑屈で、卑劣で、本当に嫌な人間です。
自分で自分を貶すことも、卑怯でしかないのに。
……自己嫌悪で、死にたくなります。
でも、今回はあんまりじゃないでしょうか。
規定数は2,500体で。
集まった数は、ようやく1,000を超えたくらい。
誰がこんな悲惨な結末を予想できたでしょう。
誰がこんな悲惨な結末を用意したんでしょう。
いくらなんでも――と、私の部屋のチャイムを誰かが鳴らしています。
……嫌な予感がします。
「あー、姫乃? 悪い、ちょっと助けてくれ」
自力でエルを慰めることを諦めたようです。
「もう俺じゃ無理だ。 あのネガティブさは半端じゃない」
オーナーが駄目なのに、他人の私にどうしろと言うんでしょう。
でも、ここで断ったらそれこそ、私は嫌な奴だと思われます。
幸いというか、生憎というか、小道具は用意してあります。
【 You are the Princess of Tennis 】
……まさか慰撫に使うことになるなんて想像もしなかったけれど。
弧域くんとエルのためならば、一肌脱ぐとしましょう。
では、行ってきます。
2011年1月16日、アルト姉妹再販締切日の、23時くらいからこのお話(とも呼べない何か)を突発的に書き始めました。
それまでは、『多数のご要望により数は未達成ながら姉妹供に再販決定!』 みたくのを期待していた記憶があります。
我ながら阿呆だと思います。
で、2~30分くらいで一ノ傘姫乃さんに私の気持ちを代弁してもらいました。
それまでは、『多数のご要望により数は未達成ながら姉妹供に再販決定!』 みたくのを期待していた記憶があります。
我ながら阿呆だと思います。
で、2~30分くらいで一ノ傘姫乃さんに私の気持ちを代弁してもらいました。
2011/01/24 9:00時点の受注状況 1565個
不毛と分かっている期待ほど疲れるものはありません。
不毛と分かっている期待ほど疲れるものはありません。
関係無いのですが、いくら突発的に書いたとはいえ、たかだか1,000字に30分も費やさないといけないのは、わりと致命的なのではないかと思います。