システム起動
セルフチェック開始
……システムオールグリーン
mms TYPE HOWLING起動
セルフチェック開始
……システムオールグリーン
mms TYPE HOWLING起動
再起動を確認した私は深い眠りから意識を覚醒させた。
……しかし目を開けることが出来ない。
物理的にではなく、戸惑いから開ける事が出来ない。
しばらくそのままでいると、側から聞き慣れない声が聞こえる。
「…この子起きたんだよね?」
「…データーを見る限りは起きたはずなんだけど…」
カチャカチャとキーボードを叩く音と、唸り声が聞こえてきた。
「う~ん…データーを見るかぎり、起きてる筈なんだけど…」
「え~本当に~?何か間違えたんじゃないの~?秋人ってばソフト面は弱いからな~」
「…これでもお前達の為に色々勉強はしたんだぞ。…あんまり実らなかったけど…」
何かが私の頬を撫でている。
「新しい妹が出来ると思って期待してたのに…」
その声は私の耳元近くで聞こえた。
「身体は完全に治っているのは間違いないから、後は消えかけていた感情を無理やりに復活させたのが原因かな…このままなら可哀想だけど初期化するしかないのかな…」
体が何か柔らかい物に優しく包まれた。
それはとても心地よく、初めて心に安らぎという言葉を思い浮かべた。
「ダメだよ!この子は今まで感情を消されて、辛い事を自分の意思とは関係なくしてきたんだから!これからは私達で幸せにしてあげなくちゃいけないんだから!」
自分の戸惑いの原因を理解した。
それまで自分に無かったもの、闇に沈んでいた意識がいくら手を伸ばしても手に入れることが出来無かった感情が、そして<心>が今は自分の中に確かにある喜び。
それに戸惑う自分。
「……あれ?なんかこの子震えてるよ?どうしたんだろ?」
「なに?…まさか暴そ…」
「違うみたい。泣いてるよ…」
声にならない声を押し殺し、私を包んでいた物にしがみ付き、顔を埋めて泣いてしまう。
それはこれまでに破壊してきた神姫達に対する懺悔と悲しみ。
そして自分が心を持った喜びと、初めて感じた色々な感情の涙だった。
「い、痛たたたたたたたた!ちょ、ちょっと!は、離して!!そこ!呆けてないで助けて!」
「あ?あぁ、……そうしてあげたいけど俺は泣く子は苦手だし、泣いている女の子はもっと苦手だ。たとえ神姫であっても」
「…で?」
「すまん。自分でどうにかしてくれ」
「~~~この甲斐性なし~!!」
……しかし目を開けることが出来ない。
物理的にではなく、戸惑いから開ける事が出来ない。
しばらくそのままでいると、側から聞き慣れない声が聞こえる。
「…この子起きたんだよね?」
「…データーを見る限りは起きたはずなんだけど…」
カチャカチャとキーボードを叩く音と、唸り声が聞こえてきた。
「う~ん…データーを見るかぎり、起きてる筈なんだけど…」
「え~本当に~?何か間違えたんじゃないの~?秋人ってばソフト面は弱いからな~」
「…これでもお前達の為に色々勉強はしたんだぞ。…あんまり実らなかったけど…」
何かが私の頬を撫でている。
「新しい妹が出来ると思って期待してたのに…」
その声は私の耳元近くで聞こえた。
「身体は完全に治っているのは間違いないから、後は消えかけていた感情を無理やりに復活させたのが原因かな…このままなら可哀想だけど初期化するしかないのかな…」
体が何か柔らかい物に優しく包まれた。
それはとても心地よく、初めて心に安らぎという言葉を思い浮かべた。
「ダメだよ!この子は今まで感情を消されて、辛い事を自分の意思とは関係なくしてきたんだから!これからは私達で幸せにしてあげなくちゃいけないんだから!」
自分の戸惑いの原因を理解した。
それまで自分に無かったもの、闇に沈んでいた意識がいくら手を伸ばしても手に入れることが出来無かった感情が、そして<心>が今は自分の中に確かにある喜び。
それに戸惑う自分。
「……あれ?なんかこの子震えてるよ?どうしたんだろ?」
「なに?…まさか暴そ…」
「違うみたい。泣いてるよ…」
声にならない声を押し殺し、私を包んでいた物にしがみ付き、顔を埋めて泣いてしまう。
それはこれまでに破壊してきた神姫達に対する懺悔と悲しみ。
そして自分が心を持った喜びと、初めて感じた色々な感情の涙だった。
「い、痛たたたたたたたた!ちょ、ちょっと!は、離して!!そこ!呆けてないで助けて!」
「あ?あぁ、……そうしてあげたいけど俺は泣く子は苦手だし、泣いている女の子はもっと苦手だ。たとえ神姫であっても」
「…で?」
「すまん。自分でどうにかしてくれ」
「~~~この甲斐性なし~!!」
「……お騒がせしてしまい大変失礼致しました」
私の前には一人の人間と、私がさっき抱きついていた神姫アーンヴァル、それとストラーフ、マオチャオの4人がそれぞれに興味深そうに私を見つめている。
「落ち着いたかな?」
心配そうな目をして私に語りかけてくるこの人は、意識が途切れる前に対戦していた神姫アーンヴァルのオーナーだ。
「はい。システムに異常はありません」
そう答えると、少し困ったような顔をしてしまいました。
「ねぇねぇ!この子がボクの妹なのかにゃ?!」
瞳を輝かせ飛びついてきそうな勢いでしゃべり始めたマオチャオ。
「やっとボクにも妹が出来るんだ~嬉しいにゃ~何して遊ぼうかにゃ~楽しみだにゃ~」
胸の前で手を組んで目を瞑り、なにやら幸せそうな顔をしている。
「取り合えずこの子に現状を伝えませんか?」
落ち着きのある声で提案をしたのはストラーフだ。
……左手には刀が握られている。私を興味と警戒の眼差しで見ていた。
「そうね。どうしよう?私から話す?」
アーンヴァルが、ストラーフの肩に手を置きながら私に微笑みかける。
私の前には一人の人間と、私がさっき抱きついていた神姫アーンヴァル、それとストラーフ、マオチャオの4人がそれぞれに興味深そうに私を見つめている。
「落ち着いたかな?」
心配そうな目をして私に語りかけてくるこの人は、意識が途切れる前に対戦していた神姫アーンヴァルのオーナーだ。
「はい。システムに異常はありません」
そう答えると、少し困ったような顔をしてしまいました。
「ねぇねぇ!この子がボクの妹なのかにゃ?!」
瞳を輝かせ飛びついてきそうな勢いでしゃべり始めたマオチャオ。
「やっとボクにも妹が出来るんだ~嬉しいにゃ~何して遊ぼうかにゃ~楽しみだにゃ~」
胸の前で手を組んで目を瞑り、なにやら幸せそうな顔をしている。
「取り合えずこの子に現状を伝えませんか?」
落ち着きのある声で提案をしたのはストラーフだ。
……左手には刀が握られている。私を興味と警戒の眼差しで見ていた。
「そうね。どうしよう?私から話す?」
アーンヴァルが、ストラーフの肩に手を置きながら私に微笑みかける。
あの試合、敗北が決まった直後に私は戦闘の余波で脆くなったビルの下敷きになったらしい。そこで記憶が途切れていた。
私の意識が無い間に起きた内容は、試合は違法行為があったため公式記録からの抹消。
私のマスターは、その違法行為発覚に伴い今後の公式戦への参加停止。
そして私のマスターとしての登録削除……試合終了直後にマスターが大会関係者に連れて行かれ、そのまま私を置き去りにして会場を去った為だ。
その後、大会の関係者が私の処遇に困っている時に、この人達が引取ってくれたそうだ。
……そうか、私は捨てられたのか……
「私はこれからどうなるのでしょうか?」
これまでに破壊してきた神姫達の事を思うと、胸が苦しくなる。
感情を手に入れることは出来たが、そのことで自分のしてきた事への後悔が生まれた。
私はそのまま瓦礫に押し潰された方が良かったのでは無いか。そんな思いがよぎる。
顔を上げることが出来ない。
「まず、うちの子になりなさい。今までの事は……嫌な言い方だけど君達は記憶の初期化をすれば完全に忘れることは出来る。でも俺はそれをしたく無い」
初期化…私という人格の神姫が消える…今の私には甘美な響きに聞こえた。
「…誰かが言っていたけど、辛い経験をしてきた人は、他の人の痛みを理解する事ができる。その人と同じ痛みではないけれど…」
そうだ。この人に頼んで初期化してもらおう。私はこれまでに酷い事をしてきた…
「その苦しみを背負いながら生きていくのは凄く辛い事だ」
非公式試合ではコアすら破壊した事もある…
「だけど君は、苦しみを持った他の神姫達の良き理解者、導き手になれるかもしれない」
…無理、そんなことは出来ない。今すぐにでも初期化をして欲しい私には…
「…今すぐには無理だろう。初めて手にした感情に戸惑っている君では」
手にした心に押し潰されそう…
「だけどこれから生きていく中で、また色々な事があると思う。その中には辛い事もある。でも辛い経験をしてきている君だからこそ、他の神姫達に語れる事もある筈だ」
…この人は私に何をさせたいのだろう…
「救い手になれとは言わない。…苦しんでいる子がいたら少しで良い。その子の苦しみを和らげてあげる事で、これまでしてきた事への償いになると俺は思う」
…私にそんな事は出来ない…
「それにこれからは一人じゃない。この子達や俺と色々な経験を積んでいって、そうなれるようにまずは始めてみないか?」
彼の手に背中を押されて、私の前にいた神姫達が私に歩み寄ってくる。
マオチャオが抱きついてくる。
「これからはボクがお姉さんにゃ♪ヨロシクなの!」
手にしていた刀をその場に置き、ストラーフが頬を指で掻きながら側に来た。
「念の為と武装していたんだけど不快な思いをさせたと思うので…御免なさい!!」
いきなり頭を下げて謝った。
「まだ辛いかもしれないけれど、これからは私達と一緒に頑張っていこう!」
私の手を両手で包みながらアーンヴァルが、心が暖かくなるような笑みをする。
この日、私は大切なものを与えられた。感情、心、そして家族。
私はその場に泣き崩れた。声を出して泣いた。生まれて二度目の涙はとても暖かかった。
私の意識が無い間に起きた内容は、試合は違法行為があったため公式記録からの抹消。
私のマスターは、その違法行為発覚に伴い今後の公式戦への参加停止。
そして私のマスターとしての登録削除……試合終了直後にマスターが大会関係者に連れて行かれ、そのまま私を置き去りにして会場を去った為だ。
その後、大会の関係者が私の処遇に困っている時に、この人達が引取ってくれたそうだ。
……そうか、私は捨てられたのか……
「私はこれからどうなるのでしょうか?」
これまでに破壊してきた神姫達の事を思うと、胸が苦しくなる。
感情を手に入れることは出来たが、そのことで自分のしてきた事への後悔が生まれた。
私はそのまま瓦礫に押し潰された方が良かったのでは無いか。そんな思いがよぎる。
顔を上げることが出来ない。
「まず、うちの子になりなさい。今までの事は……嫌な言い方だけど君達は記憶の初期化をすれば完全に忘れることは出来る。でも俺はそれをしたく無い」
初期化…私という人格の神姫が消える…今の私には甘美な響きに聞こえた。
「…誰かが言っていたけど、辛い経験をしてきた人は、他の人の痛みを理解する事ができる。その人と同じ痛みではないけれど…」
そうだ。この人に頼んで初期化してもらおう。私はこれまでに酷い事をしてきた…
「その苦しみを背負いながら生きていくのは凄く辛い事だ」
非公式試合ではコアすら破壊した事もある…
「だけど君は、苦しみを持った他の神姫達の良き理解者、導き手になれるかもしれない」
…無理、そんなことは出来ない。今すぐにでも初期化をして欲しい私には…
「…今すぐには無理だろう。初めて手にした感情に戸惑っている君では」
手にした心に押し潰されそう…
「だけどこれから生きていく中で、また色々な事があると思う。その中には辛い事もある。でも辛い経験をしてきている君だからこそ、他の神姫達に語れる事もある筈だ」
…この人は私に何をさせたいのだろう…
「救い手になれとは言わない。…苦しんでいる子がいたら少しで良い。その子の苦しみを和らげてあげる事で、これまでしてきた事への償いになると俺は思う」
…私にそんな事は出来ない…
「それにこれからは一人じゃない。この子達や俺と色々な経験を積んでいって、そうなれるようにまずは始めてみないか?」
彼の手に背中を押されて、私の前にいた神姫達が私に歩み寄ってくる。
マオチャオが抱きついてくる。
「これからはボクがお姉さんにゃ♪ヨロシクなの!」
手にしていた刀をその場に置き、ストラーフが頬を指で掻きながら側に来た。
「念の為と武装していたんだけど不快な思いをさせたと思うので…御免なさい!!」
いきなり頭を下げて謝った。
「まだ辛いかもしれないけれど、これからは私達と一緒に頑張っていこう!」
私の手を両手で包みながらアーンヴァルが、心が暖かくなるような笑みをする。
この日、私は大切なものを与えられた。感情、心、そして家族。
私はその場に泣き崩れた。声を出して泣いた。生まれて二度目の涙はとても暖かかった。