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えむえむえす ~My marriage story~

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  ―7月某日・某所―

 それは、ある夏の夜。
 雲のない夜には、巨大な満月が、自らの存在を得々と主張するかのように浮かんでいる。その月明かりは地面を艶やかに照らしだし、その幻想的な光景に思わず酔いしれてしまう者も出るかもしれない。
 しかし今、満月が照らし出す光景は、そんな風情とは全く無縁の場所だった。
 そこは悪名高き富士の樹海を彷彿とさせる、鬱蒼とした密林。乱立する木々はどれも滅茶苦茶に捻じれており、満月の中、光陵とした月明かりが届く事もなく、陰気な印象を増加させている。
 そんな中、例外的に月明かりが差し込む場所があった。鬱蒼と木々の生い茂る中、スポットライトのように光が降り注ぐ場所は、まるで自然の舞台のよう。
 そして、自分こそがこの自然の劇場の主役と主張するかのように、目を閉じて光の中心に憮然と佇む1人の少女。 だがそれは人の姿をしていながらも、明らかに人ではない『何か』だった。
 その証拠に、彼女からは妖しげな美しさを持った、彼女の身の丈の数倍はあるであろう巨大な翼が広がっていた。両手は翼に取り込まれるように融合しており、彼女自身が巨大な翼に吊るされているかのよう。それはまるで自らの意志なく、圧倒的な神に従属させられている、哀れな天使の姿だった。

 ――森の中に佇む、翼の生えた少女。
 そして、その光景をモニター越しに悠然と眺めている、10代と思しき1組の男女。
「どうだい、俺のアラエルの勇姿は?」
「まぁまぁですわね。今回は貴方にしては随分と洗練された武装のようね。見栄えはよくってよ」
「……フン。見栄えを気にしない女に言われたくはないね」
 2人とも等しく高級そうな衣服に身を包んでいたが、その印象は対照的だった。
 男の方は巨漢と言うよりも肥満体と言った方が相応しい醜い体つきで、ギラギラと脂ぎって輝く瞳が不快な威圧感を与えている。更に先ほどの少女の言葉にその自尊心を傷つけられ、不快な表情を露にしており、その顔は一段と醜く歪んでいた。
「あら、機能美という言葉はご存じなさそうですわね」
 少女の方は夏用の優美な着物を、ほっそりとしたその身に纏っている。此方はごく自然に着こなしてるといった感じで、一見深窓の令嬢と言う言葉がピタリと当てはまる。しかし男に向けた瞳は、鋭いナイフの様に冷たい光を湛えている。
「……まぁいいさ。今日は生まれ変わった俺のアラエルのお披露目の日だからな。多少の暴言には目を瞑ってやるよ」
「お優しゅうございますのね。ありがとうございます。鶴畑のお名前で招待状を頂戴して何事かと思いましたら、良く出来たご長男ではなく、ご次男のご招待ですもの。これ位のお楽しみは……ね?」
「こ……コイツっ!!!」
「ふふ、目を瞑って下さるのでしょう。お互い忙しい身でしょう? そろそろ今宵のステージをお披露目頂けますかしら」
 激昂寸前になっていた男は、その言葉によって幾分理性を取り戻したように見えた。無論少女の方は全て解った上で、男をその掌の上で弄んでいるのだ。
「……嗚呼、良いだろう。存分にその瞳に焼き付けるが良いさ」
 まだ不機嫌な表情の残る男が、大袈裟な動作で指を鳴らす。

 ――1人静かに佇んでいた少女が、気だるげにその目を開き、水晶のように繊細で透き通った蒼玉色の瞳が美しく輝く。
 それが合図のように、木々のざわめきとは違う『何か』が音も無く、森の中で一斉に蠢き出す。
「……!」
 次の瞬間、複数の影が獲物に食らいつく狼の群れのように、素早い跳躍で一斉に少女に襲い掛かる。
 だが、その牙が彼女に届くことはなかった。少女を中心に鋭光が煌めいた瞬間、襲い掛かってきた影は、その力を一瞬で失い地面に次々に落下していく。
 最早動くことの無いその『何か』が、月明かりに晒されてその姿を露にする。様々な武器を携え、歩兵のような装甲服を着込んだ少女のようなモノ。しかしどの頭部にも顔が無く、それらは紛れも無い人外のモノであった。
 しかし、それは始まりに過ぎなかった。今度は暗闇の中から無数の飛翔体が少女目掛け、高速で殺到する。
「迎撃」
 少女が呟いたのと同時にその翼が輝き、再び鋭光が瞬く。そして次の瞬間、前方に無数の爆発が生じ、周囲は日中のような明るさと、そして一瞬遅れて猛烈な爆煙に包まれる。
「敵機確認……ターゲット・マルチロック」
 そして煙の中に消えた少女が再びその姿を現した時、少女の巨大な翼の表面には硝子細工のように冷たい瞳が無数に浮き出し、天使の名を持つ彼女はその名に反して、悪魔のような禍々しい姿を露にした。
「ファイア!」
 少女の叫び共に、翼の瞳からは無数の閃光が迸り、それはまだ闇の中で蠢いていた多数の影に吸い込まれるように突き刺さり、次々と息の根を止めていく。
「ミッション・コンプリート……」
 少女以外に動くモノの居なくなった暗闇の中、ただ切り裂くような風の音だけが周囲を支配していた。

「どうだい、俺のアラエルの実力は? S設定NAKED(ネイキッド)素体30体を相手に、たった1分で完勝さ」
 豪勢な部屋の中、モニターで一連の光景を観戦していた男は満足そうに、そのギラギラと脂ぎった瞳を傍らにいた女に向ける。
「そうね、リアルバトルの割には淡白過ぎて少々面白みに欠けますが、宜しいのではなくて? 特に制御・命中系が前より格段にいいようですわね」
「フン、気づいたか。アラエルには特別なOSが入っているのさ。俺が目をつけて開発を進めさせた特別なOSがな」
「先見の明という訳ですわね。貴方にも目があるということかしら」
「そうだろう、そうだろう。貴様の爆弾娘、アガサよりも……」
「そうね、その爆弾娘に爆殺された前の子よりは、上出来でしょうね」
「なっ、貴様ぁ!?」
「ほらほら、貴方の可愛い神姫を何時までもお外で待機させていては、お風邪を召しましてよ」
「ぬぁ……っ、こ、このぉ……。終了だアラエル、戻って来い」
 流石にやっと彼女に玩具にされているのに気づき始めたのか、女を無視して傍らのイヤホンマイクをひっ掴んで叫ぶ。

『………』
 だが、反応は無い。それどころか、操り糸が切れてしまったかのように微動だにしない。
「……おい、どうしたアラエル。戻って来いって言ってるだろうが!」
 その主に反抗するかのような姿勢に、男の口調も加速度的に乱雑なモノになっていく。
 数秒も経たないうちに、怒気の固まりとなった思考を吐き出すかのように、口角に泡を貯めながら叫んでいた。
「俺の命令が聞けないのか!? 貴様も廃棄処分になりたいか!!!」

『――――――!』

「ギャアアァァァァ!!!?」
 男が叫んだ瞬間、音の奔流がイヤホンから迸り、音の暴力により男はもんどりうって倒れる。
「あらあら大変ね、お医者様でもお呼びいたしましょうか?」
 扇子で扇ぐようにしてその表情を隠しながら、一応は形ばかりの心配をする女。
「…………あ、アイツめぇ………。この場で爆破してやるぅ!!!」
 しかしその姿は怒りに燃える男には届かない。
 彼は鼓膜の激痛を抑えながら床を這いずってコントロールパネルに向かい、プラスチックカバーで保護された自爆ボタンへと、下卑た高笑いと共にその拳を叩きつける。
「はーっはっはっはっは! これで貴様の命もあと5分だ。暴走した融合炉が臨界を迎え……クックック、さぞ綺麗な花火があがるだろうなぁ!」
 メインパネルには300というカウントが表示され、刻一刻とその数字を減らしていく。
 コントロールパネルにしがみついたまま、壊れたように高笑いを続ける男。だがその高笑いは、横からパネルを眺めていた女の一言によって、氷結したかのように中断された。
「このレーダーの表示……アラエルちゃん、この部屋に一直線に向かってきてましてよ?」
「……な、なんだとぉ!!?」

 主のもとへと直進する彼女を、先程と同様の無数のNAKEDたちが遮った。自らの身体でバリケードを築きながら、マシンガン、対神姫ライフル、各種ミサイル・ロケット弾といったあらゆる火器がアラエルただ1人へ向けて浴びせかけられる。
「………」
 だがアラエルは全てをレーザーの乱射で次々に撃ち落としてゆく。ミサイルはひしゃけ爆発し、弾丸は融解して蒸発する。
 更にNAKEDへ向けてレーザーをひと薙ぎすると、草でも刈り取るかのような勢いで首が次々と落下していく。ボトボトと首を落とされたNAKEDがレーザーの超高熱で直撃部以外も融解し、その熱が実弾に引火して次々と爆発。周辺は地獄のような惨状になっていく。

 一方、主の側も混乱を極めていた。
「くぅ……NAKEDじゃ足止めにすらならん! 人間じゃもっと無理だぁ……あ、兄貴、兄貴はいないのかぁ……!?」
 見っとも無く取り乱し、右往左往した挙句、(一方的に)ライバル視している兄を呼ぶ始末。
「あらあら、先程までの威勢はどうなさいましたの? 本当に……うふふ、本当に愉快なお方」
「……なっ!? き、キサマァ……」
 露骨な皮肉を言われ、女を睨みつける。しかしその顔には既に覇気も威圧感も無く、ただ負け犬の表情があるだけだった。
「お、お前だってこのままだと一緒にし……死ぬかもしれないんだぞ! そ、それでも良いっていうのかよぉ……!?」
 男は自ら発した『死』という言葉に露骨に怯えを見せる。だが女のほうは冷静だった。
「死ぬかもしれない、ですって? 貴方と心中だなんて、末代までの恥。丁重にお断りいたしますわ」
「な、ならこの状況をなんとかしろよっ! やはくしろぉっ!」
 自尊心をかなぐり捨て、男は涙目で懇願する。最初の威勢は完全に消え去ってしまっている。
「わかりました、何とかして差し上げてもよろしくってよ。ご高名な鶴旗の次男坊ともあろうお方が、お願いの仕方をご存じない、ということはございませんでしょうね?」
 その目は笑いの形に細められてはいても、女の口元は決して笑ってはいない。
「な……っ!? よ…………よろしく、お願い……する」
「別にいいのよ。貴方だけが助からなくても、私は一向に構いませんのよ」
「お願いしますぅ! どうかお助けをぉぉぉぉぉ!!!」
「……この貸しは、高くつきましてよ」
 女は勝利を確信したかのように、うっすらと微笑む。それは、悪魔の微笑だった。

 アラエルは空ろな瞳のまま、森の中を高速で低空飛行してゆく。暴走した融合炉の高出力に支えられたレーザーによって、進路上の木々を薙ぎ倒しながら、ただ盲目的に直進を続ける。
 やがて景色が劇的な変化を見せる。広大に続く森の先に、城のように巨大な構造物がその姿を露にしたのだ。しかもそれは物語に出てくる巨人の家のように、建物のサイズそのものが拡大した異様な景観だった。
『アガサ、狩りの時間よ。やっておしまい』
「畏まりました、鈴乃お嬢様」
 その瞬間彼女を包囲するようにして、全方位から高速飛翔体……無数のミサイルやロケット弾が五月雨式に襲い掛かる。
 それに対してアラエルは再び翼からレーザーを乱射し、全てを撃墜する。危険な花火がアラエルの周囲に華麗に咲き乱れ、周囲は白銀に包まれる。同時に内外からの多大な熱量によって、アラエルの純白のボディにはうっすらと内部から血のような赤が染み出し、その装甲は飴細工のように歪みはじめていた。
「・・・」
 一瞬の静寂の後、白銀の破片が舞い散る中、再び彼女をミサイルの渦が押し包んでいく。殺到するミサイルに、アラエルは再びレーザーを一斉に発射する。
「――掛かったっ」
 その瞬間、ミサイルへと直進する筈のレーザーは彼女の周囲で急激に捻じ曲がり、あらぬ方向へと幾度も変化する。無数に発射したレーザーのうち幾発かは乱反射を繰り返した結果アラエルに命中し、装甲を切り裂く。
 そこへ撃墜し損ねた多数のミサイルが殺到する。アラエルは至近距離で迎撃する事のリスクなどお構いなしにレーザーを乱射するが、撃ち漏らしたミサイルや無数の破片が衝撃に弱いアイ・レーザー基部の水晶体を次々に破壊していく。
「!」
 間髪を置かず正面から無数の散弾が高速で襲い掛かり、次々に着弾していく。辛うじて機能していた機体前面の水晶体も破壊しつくされ、無数の瞳はその光を失い、アラエルは完全に沈黙する。
『反応は確かに早くなったようですが、認識がまだまだ甘いですわね。対レーザーチャフに至近距離から撃ち込むだなんて、主によく似て物事をよく見ていない』
 通信に乗って、女の嘲笑が響く。
『終ったようね』
「はい、お嬢様」
 その言葉と共に、漆黒の森の中から重厚な噴射炎を伴って1人の少女が飛翔し、その姿を露にする。ショートカットにした空色の髪が月明かりに照らし出され、神秘的な美しさを醸し出す。
 だが、単純に少女と呼ぶには彼女は余りに大仰で不恰好な姿をしていた。深い夜の色と同じ漆黒のバイザーを装着し、その瞳を隠した姿は無機質な印象を彼女に与え、更に華奢な身体の数倍はある巨大な推進装置を背負い、背中からは巨大な機械の腕が左にだけ生えている。そしてその左肩には身の丈以上の砲身を持つ大砲を装備しており、全身に纏った大量の火器と相まって異形の姿を誇っていた。
『さて……そろそろ最後の花火を拝見すると致しましょう』
「了解」
 アガサと呼ばれた少女は、アラエルが墜落し消えていった森の中へ、何の躊躇いも無くその左肩に備えられた主砲の一撃を放った。
「何っ!?」
 その時、暗闇の中から炎と化したアラエルが飛翔し、疾風の如く敵機目掛けて突撃をかける。
 主砲を発射した直後のアガサは一瞬反応が遅れ、咄嗟に左の隻腕でガードするものの、装備されていた防御用フィールドジェネレータは、作動する前に衝突の衝撃と圧倒的な熱量によって無残に打ち砕かれてしまう。
 一方衝突したアラエルも各部に多大なダメージを負いながらも、そのまま一気にアガサを弾き飛ばすように突き抜け、再び盲目的に主の元へ突き進もうとする。
 アガサは弾き飛ばされながらもバーニアの機動によって体制を建て直し、無防備な後方から狙撃を行うべく反転する。
「――しまっ!? まだっ!」
 そして彼女が反転し終えた瞬間、十を超える数の閃光が彼女に襲い掛かる。背部にまだ残っていた残存レーザー群がその能力を存分に発揮し、火薬庫同然のアガサに命中弾を浴びせる。その攻撃で各部に備えられていたミサイルやロケット弾が次々と誘爆を起こし、自らの牙によってその身を焦がす。
 しかし彼女が寸前に発射した砲弾はアラエルへ向けて吸い込まれるように直進し、再びレーザーの迎撃網に捉えられる寸前、弾頭を崩壊させ無数の散弾をばら撒く。主砲から発射されたキャニスター弾(大砲用対人散弾)は通常の散弾銃とは比較にならない威力と範囲を持ち、アラエルの後方レーザー群を破壊するには十二分過ぎるほどだった。
 アガサの決死の一撃で推進器も被弾し、その飛行速度を低下させるアラエル。その翼は折れ曲がり、純白の装甲は無残に切り裂かれ、素肌はその下の人工繊維を醜く露出させている。
 だが其れでも彼女は何かに取り憑かれたかのように、ただひたすらに主の元を目指し続ける。そしてその身体は、一秒毎に灼熱の輝きを増しつつあった。
「うわあぁぁぁぁ、あと10秒だとぉしかもこっちに、こっちくるぞ早くなんとかしろぉぉぉ!?」
 その輝きをモニター越しではなく、部屋の窓越しに目撃した男は完全に狂乱状態となる。
 外には、妖精ほどの身の丈の小さな少女……アラエルが無機的な瞳をして浮かんでいる。だが今の2人とって彼女は妖精などではなく、死そのものの存在だった。
 臨界寸前のアラエルが接近し、2人の居る部屋の窓を突き破らんとした、まさにその時。

「お嬢様は……やらせないっ!」

 アラエルの後方から猛スピードでアガサが飛来する。傷だらけの彼女はそのまま食らいつくようにアラエルを羽交い絞めにすると、背中にあった為に破損を免れた大型スラスターを全開にしてそのまま遥か上空へと、高く……何処までも高く、舞い上がる。
「全ては……お嬢様の…………為…………」
 ――やがて、臨界を迎えたアラエルの炉心は融解し、夜空には大輪の花火が一輪、とても華麗に……だが悲しげに咲き誇った。


 西暦2036年。
第三次世界大戦もなく、宇宙人の襲来もなかった、2010年現在からつながる当たり前の未来。
その世界ではロボットが日常的に存在し、様々な場面で活躍していた。

神姫、そしてそれは、全項15cmのフィギュアロボである。“心と感情”を持ち、最も人々の近くにいる存在。
多様な道具・機構を換装し、オーナーを補佐するパートナー。

その神姫に人々は思い思いの武器・装甲を装備させ、戦わせた。名誉のために、強さの証明のために、あるいはただ勝利のために。

オーナーに従い、武装し戦いに赴く彼女らを、人は『武装神姫』と呼ぶ。


ねここの飼い方・The MOVIE 1st act




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