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キズナのキセキ

ACT0-1 悲劇の後



 それは、久住菜々子が中学二年生の時だった。
 三泊四日の修学旅行。行き先は京都。
 定番の場所であったが、クラスメイトと行く旅行はことのほか楽しかった。
 おみやげを買った。両親と、近所にすむ祖母に。
 喜んでくれる顔を想像し、菜々子の顔も今からほころんでしまう。
 空が夕闇に染まる頃、菜々子は帰宅した。

「ただいま」

 という菜々子の声に応えたのは、聞き慣れた両親の声ではなかった。
 ひどくしわがれた声。
 まさかよく知っている人物の声とは思えず、菜々子はつい身構えてしまった。
 テーブルの前に座っていたのは祖母だった。
 とても若く見える人だったが、今日ばかりは十年も老け込んだかに見える。
 驚いている菜々子を、祖母は着替える間も与えずに連れ出した。
 タクシーの中で菜々子は尋ねた。
 どこへ行くのか、お父さんとお母さんはどうしたのか。
 しかし、祖母はうつむいたまま、答えようとはしなかった。いつも明るく、おしゃべりな人が、今日に限っては、何も話さない。

 タクシーが着いたのは、隣の市にある大きな総合病院だった。
 菜々子は不安になりながらも、祖母について、中に入る。
 飾り気のない病院のソファーに座っていると、やがて一人の看護士がやってきた。
 両親に引き合わされた。

 壊れて止まった腕時計がお父さんで、半分焼け焦げたカメオのブローチがお母さんだった。

 菜々子は烈火のごとく怒った。
 バカにしている。
 確かに腕時計は父のものだし、ブローチは母のお気に入りの品だ。
 だが、これが両親などと何を言っているのか。
 お父さんとお母さんはどうしたのか、何かあったのか。
 祖母が弱々しく説明した。
 交通事故だった。
 夫婦で出かけた日帰り旅行の帰り道。
 高速道路での玉突き事故で、車が炎上した。
 特に両親の車はひどい状況で、遺体も回収はしたが、とても菜々子には見せられない状況だという。
 それで納得行くはずがなかった。
 菜々子は激しく抵抗したが、結局親の遺体を見ることはかなわなかった。

 あれよあれよという間に葬式が執り行われ、両親の遺影が黒い額縁に納まっていた。
 全く実感がなかった。
 泣く暇もなかった。
 だが、もはや自分を守ってくれる親はいないのだと、すぐに思い知らされた。
 葬式の翌日、親族会議が開かれた。
 そこで親戚同士が罵り合う様を見せつけられた。
 どこの家族も、中学生の女の子を引き取る余裕はなかった。
 まったく、とんでもない時に死んでくれたものだ。
 残された菜々子の前で、伯父や叔母が堂々と言っていた。
 すでに菜々子は厄介者であり、邪魔者であり、誰からも必要とされない存在に成り下がっていた。
 それどころか、両親が死んだことすら菜々子の責任にされそうな勢いだった。
 醜く怒鳴り合いながら、菜々子の身柄を押しつけ合う、母方の親戚たち。
 味方だと思っていた人たちは、もはや敵だった。
 中学生の菜々子に発言する権利はなく、下を向いて、自らの運命の行き先が決まるまで、じっと耐えるしかなかった。

 やがて、議論が膠着状態に陥った頃。
 一人の婦人が発言した。
 父方の祖母。
 菜々子を病院に連れてきてくれた人であり、父方の親戚で唯一この場にいる人物だった。

「あなた方の考えはよく分かりました。菜々子をあなた方に任せるわけには行きません」

 後から思うと、この時の祖母は怒っていた。
 本当なら、父と母の代わりをしてくれる人たちの側で健やかに育つのがよい、と考えていたので、今まで口を挟まずにいた。
 だが、もはやそれどころではないと、会議に介入したのだった。
 静かだが堂々とした口調で、菜々子を預かることにし、母方に絶縁同然の宣言を行った。
 こうして、菜々子は父方の祖母……久住頼子のところに身を寄せることになった。
 この時の菜々子は、それすらもどうでもよかった。
 ただ、嫌がられる親戚のところへ行くよりは、独り身の祖母の元の方がまだましに思えた。



 ここまで聞き終えたところで、俺はすでに後悔していた。
 聞くんじゃなかった。
 話が重すぎる。
 こんなプライベートな話に、菜々子さん本人を抜きにして、踏み込んでもいいものか。
 だが、俺はそれでも聞かなくてはならなかった。
 菜々子さんの過去を知らずして、彼女の力になることなどできないのだから。
 頼子さんが、ちょっと気遣わしそうな顔で、俺を見ている。
 俺はぬるくなったお茶を一口飲むと、先を促すように頷いた。



 近所に住む祖母は、父方のただ一人の親戚だった。
 婿養子であった祖父は、二十年も前に他界している。
 もともと資産家であった久住家には、祖母には使いきれないほどの財産があった。
 久住の本家とも言える大きな邸宅に、祖母は独りで暮らしていた。
 菜々子が両親と住んでいた家も、もともと久住家の持ち物である。

 そんな金持ちの祖母は、余生を静かに過ごしている……ということは全くなく、しょっちゅうどこかに出かけていて、ろくに家にいない。
 趣味で遊び歩いていることもあるし、友人と旅行に出かけていることもあるし、奉仕活動や地域ボランティアに精を出していることもある。
 なんとも掴み所がない、アクティブな女性だった。
 そんな祖母はいつも笑顔を絶やさず、若々しく見えた。
 祖母の話は面白く、深い知識があり、家には珍しい物がたくさん揃えられている。
 菜々子は小さな頃から、この祖母が大好きだった。

 その大好きな祖母と一緒に、大きな家に住むことになったというのに、菜々子はまったく喜ぶことができなかった。
 それはそうだろう。
 つい二日前に、最愛の家族を亡くしたばかりの少女が、無邪気に笑うなんてできるはずがない。
 それでも、祖母は努めて明るく振る舞い、何くれとなく菜々子の世話を焼いた。
 そんな祖母の態度が、この時の菜々子には煩わしく思えていた。
 なんでこんなときに笑えるの。
 こんなに悲しいときに、なぜ笑えると思うの。
 この時の菜々子は、思い至らなかった。
 立派に育て上げた息子と、実の娘のように愛した嫁。彼らを亡くした祖母もまた、深く悲しんでいたことに。
 それでも明るく振る舞うのは、菜々子のためを思ってのことで、それは祖母の強さであることに。
 菜々子は簡単に引っ越しを終え、翌週には学校に登校した。
 まだ笑うことができないまま。



 学校での友人たちの反応は、さらに菜々子の心を逆撫でした。
 まるで腫れ物に触るかのような、よそよそしい態度。
 かけられる言葉は気遣いや同情に満ちている。
 菜々子にはそれが、ただの社交辞令のように聞こえた。
 自分に対して心からの言葉でないと思ってしまった。
 友達なら、もっと違う言葉をかけてくれるべきじゃないの?
 だから、友達に対しても、落ち込み、時には不機嫌な態度をとってしまう。
 しかし、菜々子自身、どんなことを言って欲しいのか分からなかった。
 しばらくそんな調子だったので、友人たちの態度もよそよそしいままで、その距離が縮まらずに、時は過ぎていった。
 そしてだんだんと孤立していった。
 菜々子がそれを望んでいたわけではない。
 だが、もはや菜々子自身、どうすればいいのか、どうしてほしいのか、分からなくなっていた。



「あなたにプレゼントがあるのよ」

 その日、学校から帰宅した菜々子に、祖母は笑顔でそう言った。
 なぜ脈絡もなくプレゼントなのかと思ったが、テーブルの上にケーキが乗っているのを見て思い出した。
 すっかり忘れていた。
 今日は自分の誕生日だった。
 ケーキの横に、ひときわ大きな箱が置かれている。
 包装紙にくるまれ、ご丁寧にリボンまでかけられている。

「開けてみて」

 という祖母に、必要以上にせかされた。
 どうも、そのプレゼントの中身を見るのが、祖母の方が楽しみなようだ。
 戸惑いながらも、菜々子は丁寧に包みを解いてゆく。
 中から現れたのは、一五cmほどの小さな少女型ロボットのセットだった。
 パッケージに大きなロゴが書かれている。
 武装神姫。
 祖母が夢中になっている、ロボット同士を戦わせるゲームだ。
 もちろん菜々子は神姫のことを知っていた。
 祖母の神姫にも引き合わされたし、神姫を持っている友人もいる。
 しかし、武装神姫の詳しい内容……ことバトルロンドがどんなものかまでは知らなかった。
 あんな小さなお人形同士を戦わせるなんて、菜々子には想像もつかない。

 パッケージの箱には「ストラーフ・リペイントバージョン」と書いてある。
 箱を開け、中身を出すと、ブリスターパッケージの中央に、小さな女の子が眠っていた。
 まるで、おとぎ話の小人か妖精のよう。
 ペールブルーの髪が可愛らしい。
 だが、周りに配置されている武装は、鋭い鈎爪であったり、無骨で巨大な脚であったり、いくつもの刃物であったりと、何とも凶悪であった。
 この真ん中の女の子とのギャップはなんなのだろう?
 菜々子はしきりに首を傾げた。
 その疑問を頼子さんにぶつけると、彼女はにんまりと笑って、

「武装神姫はいいわよぉ」

 その魅力を延々としゃべり続けた。
 つまり、ゲームをやって気を紛らわせろ、ということなのだろうか。
 一応、ありがとう、と言って、そのストラーフとやらを受け取った。

 正直、菜々子は神姫にあまり興味がなかった。
 しかし、せっかくの祖母のプレゼントなのだから、せめて起動くらいはしないと失礼だろう。
 そんな気持ちで、菜々子は白い神姫を手に取った。
 おそろしく華奢で、軽い身体。
 菜々子は注意深く扱いながら、そっとクレイドルの上に置く。
 クレイドルを接続したPC上でメンテナンスソフトが立ち上がる。
 菜々子にはよく分からなかったが、勝手に神姫の状態チェックをしてくれてるようだ。
 しばらくして、充電完了のチャイムが鳴る。
 すると、クレイドルの上の小さな駆体が動きだし、大きな瞳がぱちりと開いた。
 菜々子は思わず息を飲む。
 事務的な口調で行われる初期登録。
 その後、再起動した白い神姫は、菜々子を見上げ、にっこりと笑った。

「はじめまして、マスター! これからよろしくお願いしますね」
「え……ああ、よろしく……」

 菜々子は大いに戸惑った。
 菜々子は、神姫がこんなにも表情豊かに話すものだとは、知らなかった。
 目の前の白い神姫は、とても可愛らしく笑っている。
 菜々子は思う
 そう、この笑顔に他意はない。
 目覚めたばかりのこの子は、わたしの身の上を知らないから、この笑顔はただ純粋な気持ちでわたしに向けられている。
 だったら、このことの付き合いは、少しは心の慰めになるかも知れない。
 そう思って、少し笑いかけようと思った……が、うまくいかなかった。
 堅いままの表情で、菜々子は自分の神姫を呼んだ。

「よろしくね、ミスティ」
「はい!」

 にっこり笑ったミスティを、菜々子は愛らしいと思った。

 後に菜々子は思う。
 これが、菜々子の運命を変える出会いであった、と。
 そして、この出会いの先に、もう一つの出会いが待っていた。








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