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えむえむえす ~My marriage story~

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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
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3rd RONDO 『そうだ、神姫を買いに行こう ~2/4』


大学構内。

城尊公園。

白築通り。

町を優しく淡く包み込み、しかし鮮麗に燃える高揚感を描くような桜色。

雨よりも、雪よりも、陽光よりも軽く儚く舞う花。

人が燃え上がる火の粉に心を奪われるように。

散る桜もまた、誰の情を惹きつけて止まない。

「こうして歩いてると、なんだか物語の主人公になった気分にならない?」

くすぐったそうな笑みを零して、姫乃は俺の顔を覗き込んだ。

それが、この瞬間が、二度と訪れることのない情景であることが寂しくて。

俺は返事を返せないでいた。

「桜の魅力――ううん、魔力かな。 ずっとずっと昔から」

たくさんの人が、この魔力に魅せられてきたのよね。

姫乃はそう言って一歩先へ出て、絹のようにしなやかな身体を翻した。

白いシャツが、透き通るような肌が、桜に負けないくらい、眩しい。

「弧域くん、後でお花見しない?」

桜色に満ちた世界を後の楽しみにして。

「――――二人だけで、ね」

俺たちは、大型家電量販店 『ヨドマルカメラ』 へ向かった。










―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―



あなーたの(ヨドマル♪)
そぉーばに(ヨドマル♪)
ヨドマルカ~メラァ~
いつーでも(ヨドマル♪)
どこーでも(ヨドマル♪)
なんでもそ~ろうぅ~
テレビにエアコンそうじきゲーム
けいたいでんわもパソコンもぉ~
「あなたの暮らし、私たちにお任せください!」
ヨドマルカ~メ~ラァ~アッアァア~



―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―▲―▽―










念のために言っておくが、俺も姫乃も花鳥風月をこよなく愛する類の人だ。

姫乃の趣味は知らない土地の一人歩きで、その土地での風景や出会いを宝物にしている。
廃墟になった神社でパジャマの領収書を拾ってきたり。
野良犬と折りたたみ自転車で頭文字Dしたり。
至高のメロンパンを鞄いっぱいに詰め込んだり。
猫にジブリ映画よろしく山道を案内してもらったり。
その山道から人様の民家の庭に出たり。
丁度そこの住民と出くわして気まずく挨拶したり。
小学生に吠えられたり。
女子用ス◯水を拾ってきたり。
一人歩きは本当に危ないからやめてくれと口をすっぱくして言っても、休日にふらっといなくなったと思ったら聞いたこともない土地から写真を送ってきたり、わけの分からない土産話を持って帰ってくるのだ。

「神姫売り場ってどこ?」
「二階。 おもちゃ売り場の中に特設コーナーがあるのよ」

俺も日本らしい趣が好きで弓道をやっている。
鳶の鳴き声。
矢が放たれる瞬間の甲高い音と、的の紙に穴を空ける音。
この三つの音だけが響く弓道場はなんというか、いやなんともいえずたまらんのだ。
(現実は180度逆で、高校生や大学生の弓道は他のスポーツに負けず劣らず五月蝿い。 そもそも鳶が鳴く弓道場なんて俺の知る限り、我がボロアパートから電車で三時間はかかるド田舎にしかない)
弓道の腕前はお世辞にも良しとし難いものだけれども。
独特の雰囲気に飽きることなく、高校生から大学生になった今でも真面目に練習に取り組んでいる。

「二階って寄るとこないもんなあ。 ヨドマルに来る用事なんて本かパソコンくらいだし、地下と三階にしか行ったことないや」
「私も電球が切れなかったら二階に行くことなんてなかったわ。 三階の本屋ってすっごく品揃えがいいのよね」

だが花は花で、団子は団子。
一度神姫を買うと決めて以来、今日この日曜日に至るまでどの型を選ぶかで頭がいっぱいで、桜が丁度見頃になっていたなんて気付きもしなかった。

どの神姫を購入するかはまだ決めていない。
徹夜でネットを徘徊してはみたものの、あまりに種類が多すぎて目移りするばかりだった。
それに俺はてっきり “武装神姫” を扱っているのはコナミ一社だとばかり思っていたのだが、実際は数々の会社がそれぞれ特色を持った神姫を売り出しているらしく、それもまた混乱に拍車をかける要因となった。
結局のところ、店で現物を見て選ぶのが一番ということのようだ。
一応候補を挙げるならばやはり、姫乃が持つ Front Line 製悪魔型ストラーフに対抗して、同社の天使型アーンヴァルだろうか。
公式サイトで画像を見る限り、白を基調とした落ち着いた雰囲気のボディにサラサラの金髪ストレートで、ストラーフよりも幾分優しい顔をしていた。
ニーキにギャフン! と言わせるためとはいえあからさまに対抗する形となるが、性格はパッと見大人しそうで手がかからなさそうだし、なかなか悪くない選択だと思う。
それに、悪魔をボコボコにするのは天使の役目と相場が決まっている。

「姫乃ってストラーフ型に手ぇ振ってもらったからニーキ買ったんだよな。 そのストラーフが売り子やってんの?」
「他にもいろんな神姫がいたわよ。 自分と同じ型を買ってもらおうって、みんな頑張ってたわ」

何より忘れてはならないのは、俺が神姫を買うことに抵抗があっても一緒に買いに行くことで同意してくれた姫乃の意見だ。
俺が選んだ神姫の種類に文句を言う姫乃ではない(と思う)が、彼氏たるもの、彼女の意見は極力尊重するつもりだ。
……将来尻に敷かれそうだなあ、なんて思ったりもする。
ちなみにニーキは当然留守番だ。
店に神姫を連れ込んだら問答無用で万引き犯扱いされてしまう。
神姫と一緒に買物を楽しみたいオーナーもいるだろうに、純真無垢な神姫に万引きの手口を教え込む輩が後を絶たないのだ。
迷惑極まりない話だが、俺としてもニーキにデートの邪魔をされたくない。
購入予算は……まぁ、一括ニコニコ現金払いで神姫一体ギリギリ買えるだけ預金口座から下ろしてきたものの、型式によっては若干オーバーしたりもする。
そのへんの兼ね合いも考えて、良い神姫に出会えたならば重畳だ。
一階からエスカレーターに乗ると、上から特売商品を売ろうと客引きする声――では断じて無い、怒号に近い声が聞こえてきた。





「武装神姫コーナーは只今大変危険となっております!! 近づかないようお願いしまーす!! えー武装神姫コーナーは大変危険と――!!」
《私たちは要求する!! 神姫の労働条件改善を!! 神姫の正当な権利保証を!!》

玩具コーナーの一角、神姫特設スペースは混沌の様相を呈していた。
遠巻きに取り囲む客を近づけまいと警備員が警戒し、その輪の中で店員と神姫達が何やら言い争っていた。
というより、拡声器を使って叫ぶ神姫に店員が一方的に捲くし立てられている。
至近距離で拡声器から放たれる神姫の叫び声に耳を塞ぐしかないようだ。
ピラミッド状に山積みされた武装神姫の箱の上に見栄え良く武装された色とりどりの神姫達は、頂上で拡声器に向かって魂の叫びを上げるアーンヴァルを守るように仁王立ちし、下の方では何故か数体の神姫達が戦っていた。
店員はなんとかそれを止めようと接近を試みるが、 「いつでも発射できるぞ」 と言わんばかりに戦闘態勢をとっている神姫達に近づけないでいる。
神姫達の表情はどれも命を賭して戦う者のそれだ。
今日は販促イベントの日なのか?
世界征服を目論むアーンヴァルを倒すヒーローショー的なあれか?
「ここでヒーローの名前を叫んだら五色揃った五体の神姫が駆けつけてくるのかね?」
「叫んでもいいけど、その時はいくら弧域くんでも他人のふりをするからね。 今はあの神姫達に冗談は通じないと思うわよ」
「だよな、人形とは思えないくらい殺気立ってるし。 春だから春闘のまねごとってわけか」
基本的に人間に従順な神姫が反乱を起こすくらいだからよほどの悪条件で働かされているのだろうけれど、雇用主に訴えるならばせめて営業時間外にやってほしい。
拡声器といい、ピラミッドフォーメーションといい、事前に計画していて事を起こしたようだ。
だが日曜日を狙って店を困らせるとは浅はかなり。
一杯食わせたい気持ちは分からなくもないが、そんな方法で要求を飲ませるのは “駄々っ子” でしかない。
警備員が強攻策に出さえすればそれでお終いだろう。
「ま、客が心配することでもないか。 仕方ない、神姫はまた今度にして今日は花見するか」
姫乃が何気なく目線を下げ、 「そうね、野次馬になるのも迷惑になきゃっ!?」 その先に何か黒光りするものが飛び込んできた。
「ひめ――」
手を伸ばしたが遅かった。
姫乃はツルツルに磨かれた床でスニーカーを滑らせ、盛大にロングスカートを広げて 「白!」 尻餅をついた。
「なんで叫ぶのよ!?」
強かに尻を打ち付けた痛みと絶対領域を全開放した羞恥のダブルパンチで顔をボッ! と赤くした姫乃は尻餅の体勢のままスカートの前後を押さえた。
その一瞬だけ目に写った影と白のコントラストは、しかし一瞬だからこそ鮮烈に記憶に焼き付き、普段は野暮ったく見えるロングスカートの中にどれほどの夢が詰まっているかを垣間見るに十分であった。
もう何度想像したか分からないその禁断の領域を垣間見た俺はその瞬間を “名画” のようだと思った。
ほんの一瞬という人間の認識では連続で有り得ないその止まった時の中に輝く “白” は一瞬だからこそ無限の想像を溢れさせ、いや、その想像はある方向にのみ断固として無限ではない。
人の憂慮すべき探究心は時にその禁断のカーテンの向こうへと飛翔する。
嗜みある紳士ならば、この先俺が何を主張したいのか察してもらえることだろう。
……さて、どうやって怒られる前に機嫌を取ろうか、と助け起こすのも忘れて熟考に入ろうとしたところで、姫乃に尻餅をつかせた黒光りする物体が 「いった~!」 と声を上げた。
もちろんそれは “G” ではない。
先日俺の眉間に穴を空けてくれた忌々しいツインテール。
それと同型のストラーフは、起き上がりつつ姫乃のほうに顔を向けて 「すみません、お客さ……あ、お姉さんは確かあの時の!」 と甲高い声を上げた。
「え? あ、あの時のストラーフさん?」
そのストラーフは姫乃がニーキと出会うきっかけとなった神姫だった。
素体はニーキと変わらず黒を基調としたもので、大きく違う点は、その神姫はゴツい武装に包まれていた。
足は膝から下が長く機械的な見た目に変わっており、脚力を上昇させるパーツのようだが、単純な機動力強化でないことは足先に取り付けられた短剣から容易に想像がつく。
神姫の身体と不釣合いに大きいそのレッグパーツとのバランスを取るように、背中にシールド付きの無骨な肩が取り付けられており、そこから機関銃の銃身のような異様に長い腕が伸びている。
肩のシールドにはさらに細身の剣が上に伸びるように取り付けられており、実用的ではなさそうだが、ストラーフのシルエットがより悪魔に近いものになっている。
腕の先についた神姫の頭ほどもある手の五本の爪は相手を引き裂くのか、それとも巨大な武装を振り回すのだろうが――このストラーフは両方の腕に二体の神姫を抱えていた。
一体は腕と脚が白く所々青いペイントが入っていて、腰の辺りまで伸びた癖のある豊かな金髪と相まって上品な印象がある。
もう一体は黒に赤と真逆のカラーリングで、紫のショートカットと左右二箇所でまとめたお団子が子供っぽい。
二体とも色と髪型を除けば同じ装飾がなされていて、目を閉じた顔は姉妹のようによく似ている。
この二体は確か、どこのブランドだったかは忘れたが、一ヶ月くらい前に発売された――
「お姉さんゴメン! 悪いけどこの二人、ちょっと預かっててよ!」
「ふぇ? なに?」
あっけにとられて立ち上がれない姫乃のスニーカーにストラーフはその二体を横たわらせた。
動けばその二体がコテンと倒れてしまうため、身動きがとれなくなった姫乃は顔だけをあたふたさせる、なんて器用な真似をしてみせた。
「ちょ、ちょっとどうすればいいの? 弧域くん?」
「いや、俺に聞かれても」
「君、お姉さんの彼氏? 説明してる暇はないんだ。 悪いけどその二人を守ってあげて――よっと!!」
一瞬だった。
戦国時代風の鎧に身を包んだ神姫がストラーフの元にいつの間にか飛び込んでいて刀を振り下ろし、ストラーフはそれを片方の剛腕で防ぐと同時にもう片方の腕で武士型の神姫を殴り飛ばした。
突然だったとはいえ、それはギリギリ目で追える程の攻防だった。
ハナコの異様なまでに綺麗な字といい、今の目の前の交錯といい、神姫の能力の高さには舌を巻くばかりだ。
今の一瞬だけで思わず手に力が入ってしまった。
姫乃は手品でも見せられたかのように吹き飛んだ武士とストラーフを交互に見て一人状況から置いていかれていた。
まあ、俺も神姫の動きが見えただけで何がなんだか分からないのだが。
軽く1mは吹き飛んだ武士がふらつきながらも刀を杖にして立ち上がり、その隣に今度は西洋風の鎧を見に纏った神姫が並んだ。
二体とも、遠くから分かるほど、顔が濃い……
「レミリア、あくまでその二人を渡さないつもりか!」
「当然。 エルもメルもまだまだ将来が楽しみな神姫なんだ。 あんた達みたいにやさぐれて育っちゃ、先輩神姫の名折れだからね。 それに――」
レミリアと呼ばれたストラーフはププゥ! と噴出し、
「 “あくまでその二人を” ってダジャレ? そりゃあそうだよ。 だって私、悪魔だもん」
全力で悪魔らしく、嘲笑った。

「貴様武士を愚弄するかあああああ!! 『魔剣・烈風斬!!』」
「後悔しても遅いぞ! 『エクスカリバー!!』」
「ハンッ! そうよアンタ達みたいな雑魚は二人まとめてかかってきなさい! 『デーモンロードクレイドル!!』」

三人の衝突によって、一瞬、僅かだが、空気が震えた!
冗談だろ!?
たかが15cm程度の人形がここまで激しく動けるのかよ!
二人の剣士が渾身の力で放った斬撃をレミリアが突進で蹴散らし、そこから先はもう俺の目にも止まらぬ攻撃の応酬になった。
間近で見る迫力なんてものじゃない。
とても玩具と呼べる代物じゃない。


――――これが、神姫バトルなのか!


神姫の戦いに見惚れていると、 「弧域くん、この二人どうしよう」 と姫乃が眉を八の字にして俺を見上げていた。
スニーカーに身体を預けた二人の神姫に触れていいものか分からず、立ち上がれずにいるらしい。
残念なことにスカートはばっちり抑えている。
「預かるっていっても、あのお侍さんと鎧さんに襲われたら私はどうすればいいの……」
「いや、さすがに人間には攻撃してこないと思うけど」
眠っているのか電池切れなのか、ピクリともしない白と黒の神姫をとりあえず預かろうとした――その時。
「うぉおおう!?」
白いほうの神姫の目がくわっ! と見開かれ、文字通り飛び起きた。
「レミリア姉さん? レミリア姉さん!?」
「あー、お姉さんならあっちでほら、戦っ――ってちょっと待てオイ!」
俺が指を差した方向で、レミリアは武装の片腕を折られていて残った腕と膝を床につき、その目前に立つ二人の剣士は大上段に構えていた。
剣士二人とは格が違ったように思えた悪魔も、二対一のハンデを覆すまでには至らなかったようだ。
だからレミリアを姉と呼ぶ白い神姫が加勢に向かったのはあまりにも当然で正しすぎる行動だ。

だが、何の武装も無しに斬撃に飛び込むのは自殺行為でしかない!

その神姫に気づいたレミリアが 「っ!? バカ来るなぁ!!」 叫んだがもう遅い!
剣を振り下ろした武士と騎士が 「なっ!? エル!?」 気づいたがもう止まらない!
振り下ろされる凶刃に間一髪間に合った、間に合ってしまった神姫は金髪を靡かせ、両腕を広げて――――

「っ痛ったぁ!?」

間一髪白い神姫と斬撃の間に手を滑り込ませて神姫を掴んだまではよかったが、手を引っ込めるのは間に合わなかった。
玩具でありペーパーナイフ程度の切れ味しかないはずの二振りの剣は見事、俺の右手の甲に二本の切り傷を作ってみせた。
「くそっ、マジで切れやがった! おもちゃってレベルじゃねぇぞ!」
手に走った二本の赤い線からじわぁっと血が滲み出てきた。
その血に合わせるように、痛みもじわじわと手全体に広がっていった。
ニーキといいこいつらといい、俺は神姫に怪我させられる運命なのか!?
いや、手を出したのは俺だけれども!!
ニーキは姫乃に手を出そうとした俺を邪魔しやがったけれども!!
ああもうホントに痛い!
これ絶対風呂でしみるぞ!
「きゃあああ!? 弧域くん血出てる、血!!」
「……そ、そんな……私の剣が、お、お客様、を……」
「さんざんお客さんや店に迷惑かけた奴のセリフじゃないね。 暫く頭を冷やしな」
失意の内に刀を落とした武士の頭頂にレミリアの踵落としが決まり、武士はその場に崩れ落ちるように膝を折った。
「き、貴様よくも私の剣を汚しギハッ!?」
「自分の剣に責任も持てないなんて、仮にも同じ剣士なのに恥ずかしいよ、まったく」
いつの間にか目を覚ましていたらしい黒い神姫は携帯電話 (同型同色の携帯をとても身近な人が持っていた気がする) を振り下ろした格好で武士と仲良く並んで倒れた騎士を見おろして、というより侮蔑をたっぷりと込めて見くだしていた。
携帯電話 (あの十字架のストラップにも見覚えがある) を放り出した黒い神姫はレミリアに駆け寄るなり 「レミ姉腕! 腕が!」 と騒ぎ出した。
「オプションパーツだからいくらでも替えが効くって。 だーいじょうぶ大丈夫」
「あんなゴッツイ腕が折れるくらい激しく戦ったんでしょ! お願いだからレミ姉、ボク達なんかさっさと見捨てて、危ないことしないでよぉ……」
「にゃははは! カワイイ妹達を見捨てる姉なんていないって!」
残ったほうの手で黒い神姫の頭をグリグリとなでて、仲睦まじくじゃれ合う二人。
もう一人の白い神姫は――
「(じーっ)」
俺の手の中に収まったまま、こちらを凝視していた。
眉間の穴が再び開きそうなほど凝視されていた。
「(じーっ)」
「ああ、悪い。 咄嗟だったもんで、掴んで振り回しちゃったな。 怪我はないと思うけど酔ったりしてないか? っつーか神姫って乗り物酔いとかするのか?」
「(じーっ)」
「どうしたんだ? また俺の眉間に風穴でも空いてるのか?」
「(じーっ)」
「おーい、神姫さんやーい」
「じーっ」
「いや、口で擬音を出すなよ」
「……………………(ぽっ)」
「何故そこで赤くなる!?」
白い神姫からの突き刺すような視線は、下ろしてやった後も暫く続いた。











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