アルトアイネス奮闘姫
第二話「スイカを取り戻せ?」
「で、メロンは?」
勝見のクライメイト、相馬匠が聞いた。メロンの話を聞き、慌てて生馬の家に来たのだ。
「一緒にいるって聞かないんだ」
神姫センターから生馬の家に戻った勝見はため息混じりにそう言った。
「気持ちはわかんなくもないけど、許した勝見も勝見よ。あいかわらずメロンには甘いんだから」
半分あきれた顔で突っ込んだのは生馬だった。
スイカの検査の結果は完全に黒だった。
黒とはイリーガルであるということ。センターはその場で回収すると言った。はいそうですか、とはもちろんならない。
回収の理由を勝見は聞いたのだが、センターの職員はイリーガルであるという理由以外は教えてくれなかった。
それでも生馬が知り合いの職員から聞くことが出来、それによれば回収した後はセンターで預かり、後日対応を決めるということだった。
通常、イリーガルとわかれば、ユーザーの安全とバトルの公平のため、その場で回収される。こうした対応は容赦がない。なぜならイリーガルと知っていて購入した場合がほとんどだからだ。
一方でイリーガルと知らずに購入した場合もあり、ユーザーに落ち度がなければ新規のものと交換される。
どちらにせよ、イリーガルに延命の余地はない。
「メロンが人のためにがんばるなんて」
所在なさげに呟く神姫がいる。腰までかかる長い髪が毛先でくるりと巻いた金髪、大人びた顔つきだが、どこか悪戯っぽい目つきがメロンと似ていた。その一方でメロンとは対照的に豊満な体つきをした神姫、匠の戦乙女型アルトレーネのブーケだった。
メロンが神姫センターにいると聞いて以降元気がなかった。心配しつつ匠はブーケに聞く。
「まあ、あいつもあいつなりにがんばってるんだよ、スイカって言ったか? その子はメロンの妹だ、お前だったらどうするんだ?」
「私だってメロンになにかあれば真っ先に駆けつける。私の妹よ」
ブーケとメロンはオーナーは違えど姉妹だった。どちらも元は生馬の紹介であり、どちらのオーナーも新人で友達、どちらも戦乙女型。起動した時間は一月強ほどしか違わないが、ブーケはメロンを妹として可愛がっていた。
「ところで気がついてる? 変よね」
「ああ、変だ」
生馬の問いにうなづく匠とルーシェ、なにやら話が通じてる様子だったが勝見にはわからなかった。
話のわかっていない様子の勝見の顔を見て、匠が説明した。
「イリーガルってのは、いつもならデータを取ってさっさとリセットするもんだが、スイカは保留されてる。しかも、サポートとの接続ではイリーガルと認識されなかっただろ?」
「ああ、確かにそうだけど」
匠も新人だが、勝見よりは先輩だ、言われてすぐにわかった、イリーガルとしてメロンの対応も発見の仕方も例外だ。
「これは調べてみる必要があるわね、うまくいけば……」
三人の人間と二人の神姫は顔を見合せてうなづいた。
「スイカ」
暗い筐体の内部、横たわるスイカとその格子越しに座るメロン。
「お兄ちゃん達だって考えてくれるよね」
スイカは答えない。電源が落ちて停止しているのだ。メロンの声も聞こえてはいない。それでもメロンは語りかけるのをやめなかった。
「少し、寒いかも。スイカは大丈夫?」
二人のいる場所はセンターのスタッフルームの隅にある電磁的に遮断する筐体、わかりやすく言えば神姫用の隔離部屋、もしくは牢屋だった。
筐体が使用されたときでいいことなどまずない。一番多いのは違反した神姫、イリーガル神姫の隔離であり、今スイカに起きていることがまさにそれだった。
メロンはその筐体に一緒に入ってた。もちろん職員には止められた。イリーガルは危険であり、何かの拍子に起動してメロンに危害を加えれば、メロンは非常に危険なことになりかねない。
しかし、頑として聞かないメロンのため、筐体は中央で二つに区切られ、間にはしっかりとした格子状の仕切りが設けられていた。
その格子がまるで牢屋のように見えて、メロンは憂鬱な気分になる。しかも牢屋らしく外部と連絡は取れない。もちろん、牢屋と違うところもある。
それは筐体の中ががらんどうであること。だから、明かりもベッドもなかった。
うちに帰ればケースを改造したメロンの部屋とベッド型のクレイドル、そして勝見が待っている。
スイカの新しい部屋を増やさないと、とメロンは思った。
翌日、勝見たちは生馬の家に集まった。
「で、これがわかったことよ」
生馬の目は赤く、徹夜なのが見て取れる。もっともそれは勝見も匠も同じだし、ブーケも電池不足でうとうとしている。
三人は夜になる前に一度帰宅したものの、夜の間はネットで連絡を取り合い、一緒に作業しているのと同じだった。
「昨日のデータ、ルーシェにも手伝ってもらったらね」
生馬が頭をなでる。猫のように気持ちよさそうに目を細めるルーシェ。そのルーシェには疲労の色はない。これも構造が最適化されたベテランの強みだろう。
「そうしたら、ルーシェがこれを見つけたの」
生馬は自分のPCの画面を見せた。
「戦闘記録?」
匠がつぶやく。日付は二年近く前のものだ。対戦相手の名前は「全能なる者"root"」。
「神姫の名前にしては変な名前だなぁ」
「そりゃそうよ。こいつは軍事用MMSだもの」
「軍事用ってそんなのとやりあっていたのか!」
匠が声を上げる。
「まあ、ネットワークを介してだし、あたし以外にも何百人のオーナーが関わったわ」
と、こともなげに言っている。
驚いてはみたものの、検討がつかない二人には、軍用と言われどう返していいかわからない。
「どんな相手かは、見てもらったほうが早いわね、ルーシェ」
ルーシュがPCを遠隔操作し、戦闘記録から再構築された記録映像が映し出させる。
画面を覗き込む勝見と匠、その間にブーケがちょんと座り、画面を見ている。
戦闘が始まった瞬間三人は「咆哮」を聞いた。
勝見は軍事用MMSというから、男性型のMMSやメカメカしい戦車や戦闘機ようなロボットを想像していた。しかし、この咆哮する怪物の姿はそのどちらでもなかった。
ルネッサンス以前の悪魔のように、人の形をしない、猛禽の頭に骸骨の体を持った怪物。
「いったいこれは……」
「全能なる者"root"よ」
映像には、rootが咆哮を上げるたびにその場に崩れ落ちる神姫や、ハイパーブラストを束にしたような強力な攻撃に悲鳴を上げる神姫たちが映る。一方のrootは無数の神姫を相手取って互角以上に戦っている。姿も力もまさに化け物だった。
「問題はここからよ」
生馬が映像を切り、次にあるファイルを開いた。
「これがrootのプログラムの破片、こっちがクレイドルで取ったスイカのデータ。二つをプログラムで比較させたら……」
言いにくそうに間を空け、生馬は言葉を続けた。
「同じ構造が見られたのよ。rootとスイカには。もちろん詳細なデータではなく断片、でもこれだけ一致するのは普通じゃありえないわ」
示されたグラフ、勝見にはさっぱりわからないが、匠は難しい顔をしている。
匠の補足でわかったことは、このrootとスイカがなんらかのかかわりがある可能性を持っているということ。
「うわさだと、このrootを作ったのは同時MMSでは上役だった人物で、今はどこにいるのかはわかんないって。でも、だからrootもスイカも正真正銘のメーカーの製品。でも、表向きは存在していないMMSよ」
話を聞いた勝見はしばらく考えた後言った。
「つまり、スイカを助けるにはそれを逆手にとればいいってことか」
生馬はうなづく代わりにウインクを返した。
そこまで聞いた職員はばつの悪そうな顔をして視線をそらした。
「一応、あのアーンヴァルのことは上の方まで行ったから私たちはなんとも言えないよ」
そうは言うが、職員の様子から話はほぼ当たっているようだ。
『話は聞かせてもらったよ』
センターの中に声が響いた。
「誰なの?」
匠の肩に乗ったブーケがあたりを見回しながら聞いた。
『名乗るほどのものじゃないさ』
こちらの声ははっきりと聞こえているようだ。
「短期間によくそこまで調べたものだ、君、あのアーンヴァルを連れてきてくれ」
職員がきびすを返してスタッフルームに向かう。しばらくすると、職員はスイカを運んできた。もちろんメロンも一緒だ。
「メロン!」
「お兄ちゃん」
手を振るメロン。スイカは電源が切られたままらしく動く気配はない。
『そのアーンヴァルの電源を入れてくれ』
職員は言われた通り、クレイドルに乗せ、起動信号をスイカに送った。
『君達はいいオーナーに当たったね、メロン君もスイカ君』
スイカの目がゆっくりと開かれ、勝見を探した。
「……おはようございます、オーナー」
勝見が返すよりも早く、メロンがスイカに抱きついた。
「お姉ちゃん、何か問題があったのか?」
「あれ、お、お姉ちゃんって、今言った?」
目をしばたかせ、メロンはスイカを覗き込む。
「お姉ちゃんはお姉ちゃんと言った。だから呼ぶ、問題があるならば……」
「スイカ!」
二人はもつれたまま机の上を転んだ。
「痛い」
「ああ、ごめんね」
その場が和む。
『私はスイカ君を勝見君とメロンに任せようと考えている。ただし条件が二つある』
その場が静まり返る。
『そのアーンヴァルの使用は、試作機扱いということで特別に許可しよう。そして、試作機と同様にスイカの戦闘データと生活の様子を観察し、定期的に送ってもらいたい』
「それくらいなら……」
と同意した勝見だったが、もう一つの条件を聞くと顔がこわばった。
『もう一つの条件は、これからバトロンを行い、メロンがスイカを止めることだ』
第二話「スイカを取り戻せ?」
「で、メロンは?」
勝見のクライメイト、相馬匠が聞いた。メロンの話を聞き、慌てて生馬の家に来たのだ。
「一緒にいるって聞かないんだ」
神姫センターから生馬の家に戻った勝見はため息混じりにそう言った。
「気持ちはわかんなくもないけど、許した勝見も勝見よ。あいかわらずメロンには甘いんだから」
半分あきれた顔で突っ込んだのは生馬だった。
スイカの検査の結果は完全に黒だった。
黒とはイリーガルであるということ。センターはその場で回収すると言った。はいそうですか、とはもちろんならない。
回収の理由を勝見は聞いたのだが、センターの職員はイリーガルであるという理由以外は教えてくれなかった。
それでも生馬が知り合いの職員から聞くことが出来、それによれば回収した後はセンターで預かり、後日対応を決めるということだった。
通常、イリーガルとわかれば、ユーザーの安全とバトルの公平のため、その場で回収される。こうした対応は容赦がない。なぜならイリーガルと知っていて購入した場合がほとんどだからだ。
一方でイリーガルと知らずに購入した場合もあり、ユーザーに落ち度がなければ新規のものと交換される。
どちらにせよ、イリーガルに延命の余地はない。
「メロンが人のためにがんばるなんて」
所在なさげに呟く神姫がいる。腰までかかる長い髪が毛先でくるりと巻いた金髪、大人びた顔つきだが、どこか悪戯っぽい目つきがメロンと似ていた。その一方でメロンとは対照的に豊満な体つきをした神姫、匠の戦乙女型アルトレーネのブーケだった。
メロンが神姫センターにいると聞いて以降元気がなかった。心配しつつ匠はブーケに聞く。
「まあ、あいつもあいつなりにがんばってるんだよ、スイカって言ったか? その子はメロンの妹だ、お前だったらどうするんだ?」
「私だってメロンになにかあれば真っ先に駆けつける。私の妹よ」
ブーケとメロンはオーナーは違えど姉妹だった。どちらも元は生馬の紹介であり、どちらのオーナーも新人で友達、どちらも戦乙女型。起動した時間は一月強ほどしか違わないが、ブーケはメロンを妹として可愛がっていた。
「ところで気がついてる? 変よね」
「ああ、変だ」
生馬の問いにうなづく匠とルーシェ、なにやら話が通じてる様子だったが勝見にはわからなかった。
話のわかっていない様子の勝見の顔を見て、匠が説明した。
「イリーガルってのは、いつもならデータを取ってさっさとリセットするもんだが、スイカは保留されてる。しかも、サポートとの接続ではイリーガルと認識されなかっただろ?」
「ああ、確かにそうだけど」
匠も新人だが、勝見よりは先輩だ、言われてすぐにわかった、イリーガルとしてメロンの対応も発見の仕方も例外だ。
「これは調べてみる必要があるわね、うまくいけば……」
三人の人間と二人の神姫は顔を見合せてうなづいた。
「スイカ」
暗い筐体の内部、横たわるスイカとその格子越しに座るメロン。
「お兄ちゃん達だって考えてくれるよね」
スイカは答えない。電源が落ちて停止しているのだ。メロンの声も聞こえてはいない。それでもメロンは語りかけるのをやめなかった。
「少し、寒いかも。スイカは大丈夫?」
二人のいる場所はセンターのスタッフルームの隅にある電磁的に遮断する筐体、わかりやすく言えば神姫用の隔離部屋、もしくは牢屋だった。
筐体が使用されたときでいいことなどまずない。一番多いのは違反した神姫、イリーガル神姫の隔離であり、今スイカに起きていることがまさにそれだった。
メロンはその筐体に一緒に入ってた。もちろん職員には止められた。イリーガルは危険であり、何かの拍子に起動してメロンに危害を加えれば、メロンは非常に危険なことになりかねない。
しかし、頑として聞かないメロンのため、筐体は中央で二つに区切られ、間にはしっかりとした格子状の仕切りが設けられていた。
その格子がまるで牢屋のように見えて、メロンは憂鬱な気分になる。しかも牢屋らしく外部と連絡は取れない。もちろん、牢屋と違うところもある。
それは筐体の中ががらんどうであること。だから、明かりもベッドもなかった。
うちに帰ればケースを改造したメロンの部屋とベッド型のクレイドル、そして勝見が待っている。
スイカの新しい部屋を増やさないと、とメロンは思った。
翌日、勝見たちは生馬の家に集まった。
「で、これがわかったことよ」
生馬の目は赤く、徹夜なのが見て取れる。もっともそれは勝見も匠も同じだし、ブーケも電池不足でうとうとしている。
三人は夜になる前に一度帰宅したものの、夜の間はネットで連絡を取り合い、一緒に作業しているのと同じだった。
「昨日のデータ、ルーシェにも手伝ってもらったらね」
生馬が頭をなでる。猫のように気持ちよさそうに目を細めるルーシェ。そのルーシェには疲労の色はない。これも構造が最適化されたベテランの強みだろう。
「そうしたら、ルーシェがこれを見つけたの」
生馬は自分のPCの画面を見せた。
「戦闘記録?」
匠がつぶやく。日付は二年近く前のものだ。対戦相手の名前は「全能なる者"root"」。
「神姫の名前にしては変な名前だなぁ」
「そりゃそうよ。こいつは軍事用MMSだもの」
「軍事用ってそんなのとやりあっていたのか!」
匠が声を上げる。
「まあ、ネットワークを介してだし、あたし以外にも何百人のオーナーが関わったわ」
と、こともなげに言っている。
驚いてはみたものの、検討がつかない二人には、軍用と言われどう返していいかわからない。
「どんな相手かは、見てもらったほうが早いわね、ルーシェ」
ルーシュがPCを遠隔操作し、戦闘記録から再構築された記録映像が映し出させる。
画面を覗き込む勝見と匠、その間にブーケがちょんと座り、画面を見ている。
戦闘が始まった瞬間三人は「咆哮」を聞いた。
勝見は軍事用MMSというから、男性型のMMSやメカメカしい戦車や戦闘機ようなロボットを想像していた。しかし、この咆哮する怪物の姿はそのどちらでもなかった。
ルネッサンス以前の悪魔のように、人の形をしない、猛禽の頭に骸骨の体を持った怪物。
「いったいこれは……」
「全能なる者"root"よ」
映像には、rootが咆哮を上げるたびにその場に崩れ落ちる神姫や、ハイパーブラストを束にしたような強力な攻撃に悲鳴を上げる神姫たちが映る。一方のrootは無数の神姫を相手取って互角以上に戦っている。姿も力もまさに化け物だった。
「問題はここからよ」
生馬が映像を切り、次にあるファイルを開いた。
「これがrootのプログラムの破片、こっちがクレイドルで取ったスイカのデータ。二つをプログラムで比較させたら……」
言いにくそうに間を空け、生馬は言葉を続けた。
「同じ構造が見られたのよ。rootとスイカには。もちろん詳細なデータではなく断片、でもこれだけ一致するのは普通じゃありえないわ」
示されたグラフ、勝見にはさっぱりわからないが、匠は難しい顔をしている。
匠の補足でわかったことは、このrootとスイカがなんらかのかかわりがある可能性を持っているということ。
「うわさだと、このrootを作ったのは同時MMSでは上役だった人物で、今はどこにいるのかはわかんないって。でも、だからrootもスイカも正真正銘のメーカーの製品。でも、表向きは存在していないMMSよ」
話を聞いた勝見はしばらく考えた後言った。
「つまり、スイカを助けるにはそれを逆手にとればいいってことか」
生馬はうなづく代わりにウインクを返した。
そこまで聞いた職員はばつの悪そうな顔をして視線をそらした。
「一応、あのアーンヴァルのことは上の方まで行ったから私たちはなんとも言えないよ」
そうは言うが、職員の様子から話はほぼ当たっているようだ。
『話は聞かせてもらったよ』
センターの中に声が響いた。
「誰なの?」
匠の肩に乗ったブーケがあたりを見回しながら聞いた。
『名乗るほどのものじゃないさ』
こちらの声ははっきりと聞こえているようだ。
「短期間によくそこまで調べたものだ、君、あのアーンヴァルを連れてきてくれ」
職員がきびすを返してスタッフルームに向かう。しばらくすると、職員はスイカを運んできた。もちろんメロンも一緒だ。
「メロン!」
「お兄ちゃん」
手を振るメロン。スイカは電源が切られたままらしく動く気配はない。
『そのアーンヴァルの電源を入れてくれ』
職員は言われた通り、クレイドルに乗せ、起動信号をスイカに送った。
『君達はいいオーナーに当たったね、メロン君もスイカ君』
スイカの目がゆっくりと開かれ、勝見を探した。
「……おはようございます、オーナー」
勝見が返すよりも早く、メロンがスイカに抱きついた。
「お姉ちゃん、何か問題があったのか?」
「あれ、お、お姉ちゃんって、今言った?」
目をしばたかせ、メロンはスイカを覗き込む。
「お姉ちゃんはお姉ちゃんと言った。だから呼ぶ、問題があるならば……」
「スイカ!」
二人はもつれたまま机の上を転んだ。
「痛い」
「ああ、ごめんね」
その場が和む。
『私はスイカ君を勝見君とメロンに任せようと考えている。ただし条件が二つある』
その場が静まり返る。
『そのアーンヴァルの使用は、試作機扱いということで特別に許可しよう。そして、試作機と同様にスイカの戦闘データと生活の様子を観察し、定期的に送ってもらいたい』
「それくらいなら……」
と同意した勝見だったが、もう一つの条件を聞くと顔がこわばった。
『もう一つの条件は、これからバトロンを行い、メロンがスイカを止めることだ』