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3.0話 「遺品」


※時系列として、エルゴに6人用新型筐体が入るずっと前、
チアキ氏が実体剣を探すのよりも前のお話です。
つまり書くの遅いかr(ry)





遮蔽物のない荒野を光の槍が貫く。
狙われているのは日本刀を1本だけ装備したマオチャオ型MMS。
「なんでレーザーを避けられるのよ?!」
対するはLC3レーザーライフルとアームブレードを装備し、
射程と運動性能を両立、さらに格闘までもカバーしたハウリン型MMS。
どれほど狙い済ました一撃を放とうともマオチャオ型MMSにはかすりもせず、
装備の重量差から急速に間合いを詰められつつあった。

カチリ
「くっ」

ライフルの電池が切れた。
大出力かつ長射程なだけに何発も撃てる銃ではないのだ。
だが戦いはこれからだ。
格闘に入られたとしても装甲とブレードで互角以上に戦える…
そう判断しレーザーライフルを捨てたハウリン型MMSの視界から、
忽然とマオチャオ型MMSが消えた。

「?! どこにいっ…」
どすっ

喉元に強い衝撃うけ、それ以上言葉を吐けなくなる。
消えた筈のマオチャオ型MMSに首を刺し貫かれたからだ。

なんで… 見てたのに、見えなかった…?

ビ―――――――――ッ
試合終了を告げる電子音が鳴り響く。
『Winner,マオ 現在8人抜きです』

「あと2人!」
「うぇぇ、絶対おかしいよぉ;」

こっちのアクセスポッドの中で神姫が気合を入れ、
あっちのアクセスポッドでは神姫がしょんぼりしている。
ここは仕事の帰りに立ち寄った玩具屋[ホビーショップ・エルゴ]。
自動ドアの向こうはとっぷりと暮れてます。
あのー、もう帰りたいんですががががが;




俺は柏木浩之、20歳のしがない公務員でございます。
いきなり尋ねて来た神姫に衝撃の事実を告げられたり、
グスグス泣きながら話すソイツがもーなんていうかなんていうかで思わず
「大丈夫だ! お前には俺がいる。 父親が同じなんだから俺達は兄妹だぜ!」
とか言っちゃったり;
恥ずいわ(////)

イキナリ一人ぼっちになって尋ねて来た我が妹を、
ひろーい部屋(神姫基準)に置いて行く訳にもいかず…
結局同伴出勤に相成りました。

職場では前日に引き続き『地区も部署も違うんじゃぼけぇぇ』な電話がかかってくるが
上司に掛け合い「や、俺なんか今日は情緒不安定だから何イッチャウカワカラナイヨ?」
と電話に出るのは免除してもらう。

マオに火事の事を1日中聞かせる訳にもいかねーしな…

ちょいちょい
んー? 内ポケのマオがシャツを引っ張ってる。

「兄様(←お兄ちゃんは流石にグハァなので変えてもらった)、
 やっぱり私、ついて来ない方が良かったのではありませんか…?」

ああ、気ィ使わせてると思ってるのか。
実際使ってるが、寝言で「おとうさん…ひぃっく…ごめんなさい…ごめんなさい…」
なーんて泣かれるとな、コイツは俺が守る!みたいな気になる訳ですよ。

「うっせ。 俺がお前と一緒にいたいんだ。
 こーんな可愛い妹とベタベタできて俺様、今とても幸せです。(←小声)」
「ひゃ?! か、かわ、か、か、かぁ、兄様ぁ~~~~っ」

もぞもぞ…すりすり…

ほお擦りしてやがる。
ああ畜生っ、可愛いなぁもぉ。
まったく人殺しの道具とは思えんな。
ま、人間だってソノ気があれば誰でも簡単に人を殺せるんだし、
んなもん大した事じゃ無い。





きーんこーん… きーんこーん…

終業の鐘と同時に職場が騒がしくなっていく。
「柏木柏木、飲みいかんか?wwっうぇwww」
同僚の内藤だ。
限りなく怪しい口調と挙動だが、これでも友情に厚いナイスガイである。
これでも。
いやホント。
ちなみに逆毛だ。

「あー悪ぃ、買い揃えないとならない物があってな」
「それはw残w念wだw んじゃまたの機会にwwwwwww」
「おう」

あ、そーいやコイツたしか…
「待て」
「おほ?w 何かなMyブラザー?wwwww」

ブラザーはやめれ。

「お前さー、武装神姫持ってたよな?」
「いかにもwwwっうぇw だが”持ってる”ではないぞMyブラザー?
 正しくは”同棲してる”だwwwwっうぇうぇww」

だからブラザーはやめれと。 つか同棲かよ。
…そうかも。 いやいや。

あ、今俺の背広の中から「ふぇ…同棲…はぅ~」なんて声が聞こえましたよ?


「買い物というのはだな、実は神姫用の家具なのだよ」
「そぉぉんかぁぁぁぁっ!w お前もwとwうwとwうw染まった訳だなwwwwwwwww」
「いや待て。 染まったとかそうゆう………はこの際気にしないでおこうか」

気になるが。

「なに、そこいらのトイジャラスにでも行こうと思っていたのだが、いい店があれば、とな」





「こぉぉぉっこがぁ![ホビーショップ・エルゴ]ぅぉおおおおおっ!!1!うぇwwww」
「内藤…店先で叫ぶな。」

いつもの通勤経路から少し外れた所にその店はあった。
こじんまりとしてはいるが、清潔感のある模型店ではある。

「ふむ、オタクな趣味に精通したお前の事だ…
  見た目とは違う、並みの店ではないのだな?」
「当w然wだw 最新の商品は元よりッ!過去の名品も豊富に揃えッ!
 尚且つ探しやすく見やすいレイアウトッ!
 店頭にないどんなレアな商品でも、確w実wにw入w荷wしwてwみwせwるwその手腕ッ!
 さらには販売、登録、修理、カスタマイズやオリジナルパーツの製作まで何でも御座れの、
 まwさwにw神姫のプゥゥゥロフェッシェネル!!1!
 だがMyブラザー、それよりも、ここには今のお前に真に必要なサァァァヴィスがあるのだよwwっうぇw」

ぬ?

「Myブラザー…俺らが役場で職務に励んでる間、愛しのMyハニィィィを
 1人にしておくおつもりかね?」
「むむ、確かにその通りだ…」
今は一緒にいるが(in内ポケ)、これから毎日ずっと同伴出勤という訳にもいくまい。
 「そこでだッ! 人に学校があるようにッ!」

言いながら店内へと足を向ける内藤。
自動ドアが開くと、中から紅白2色の服を着た神姫がふよふよと飛び出してきた。

「ごしゅじんさまー、お仕事ごくろうさまですのーv」
「おぉぉぉMyハニィィィw よい子にしてたかなぁぁぁんwっうぇwwwwwwwwww」

巫女さん?! というかこの神姫、翼も無いのに浮いてますよ?!
長い黒髪の、どー見ても巫女さんな神姫は内藤の肩にふわりと着地すると、
俺の事をじーーーーーーーっと見て。
「ご主人様、このかたはどなたですのー?」
「クククッ、良くぞ聞いてくれたMyハニィィィ。 こやつこそが我が心の友、
 Myブラザー”柏木浩之”だッッッ!!1!」

だからブr

「あらあらぁ、貴方があの柏木様なのですねー。
 わたくしは内藤様にお仕えする”小姫”といいますのー
 ご主人様がいつもお世話になっておりますー」
ぺこり。
「あ、いやいやこちらこそ。  えーっと、内藤…その子メーカーのラインナップに無いよな?」
「いかにも! Myハニィィィは俺様が心血注いでカスタマイズした、
 まwさwにw大w和w撫w子w型w神w姫なのだwwwwwwwwwww」
あー、二人ともすっげぇ誇らしげ。
愛しとるんだなー。

ちょいちょいっ ちょいちょいっ

あ、そうか。
「マオ、出ておいで」
もぞりっ
マオが中から顔を出し、背広の襟を掴んだ手を支点にしてくるっと飛び上がる。
俺の肩に難無く着地。
「おいおいw お前家からずっと一緒だったのかよwwwww 仲良すぎwwっうぇwww」
「えと、私は柏木浩之様の…」
マオがちらちらとこっちを見る。
「妹」
「あ、はい。 私は柏木浩之の妹でマオといいますっ 兄がいつもお世話になっております」
ぺこり。


間。


「Myブラザー…そうか、そうかお前…もうそんな高みにまで到達していたのかッ!」
え、ちょ、ちょっと待っ
つーか人の肩掴んで男泣きすんなっ!
「なればこそ、なればこそだッ! そんなお前だからこそ、”神姫学校”なのだッッッ!1!!」
やめてくれ…; 市民の皆様が奇異な目で観ていらっしゃるではないかっ
「さあいざ行かん!w Myブラザァァァ!wwっうぇwwww」
「おいおいおい! なにも引っ張らなくても…わぁぁ!」

自動ドアをくぐり、内藤と共に店内に足を踏み入れた。
…むしろこれは拉致くさくないですか?

「いらっしゃいませー やぁ、内藤君」
「店長、毎度w うさ大明神様、ごきげんようwwwww」
店長さんは俺らとそんなに歳変わらんみたいだな。 で、うさ大明神様…って?
「う、うわぁ!」
そこにいたのは、首…というか胸像?

「内藤さん、こんにちわ。 ほらマスター、やっぱり驚かれるじゃないですか。
 ボディ買ってくださいよ」
「いや、大明神様が居なくなったら純真な子供達の夢が壊れるだろ」
大明神様とやらが据えられているのはミニチュアサイズの教室、その教壇の上。

「内藤、もしやこれが…その”学校”か?」
「おうともよw 神姫が人間社会について学ぶw、友達も出来るw、
 寂しい思いをする事も無いwwwww
 まさに今のお前とマオ嬢に必要なもんだろう?wwwwっうぇwww」

そうか…そうかもしれない。
膨大な知識を蓄えているマオだが、多くの人や他の神姫と実際に交流した事はない。
なにより今コイツは”俺しかいない”のだ。
それって、良い事じゃないよな?

「マオ、どうだい? 学校、通ってみないか?」
「学校、ですか…」

小首を傾げてちょっと考え、

「はい、通いたい、です」
「だってさ店長w」
「うん、それじゃあこの書類に…あと…」

あ、小姫ちゃんが空中でくるくる踊ってる。 嬉しいのかな。
「Myハニィィィ、Myブラザーが手続きしている間、マオ嬢に店内を案内して差し上げなさいwwwっうぇw」
「はぁーい、ごしゅじんさまー」
すいーっと俺の肩まで来ると、マオの手を取り。
「さー、いきましょーですのー」
「え、でも」

ちらちら。

「いいよ、行ってこい。 内藤の神姫なら信用していいだろ。 手続き済んだら行くからさ」





とりあえずはベットにクローゼット、充電用のクレードル、服も適当に選んどいてやるか。
「内藤、こんなもんか?」
「そうだなwっうぇww だが、巫女服はw必w須wだwぞ? Myブラザーwwっうぇwwwww」
「結構です」

………

さてとマオはどこに…ああ、いたいた。
武器コーナーのガラスケース前にぺたりと座り込んでいる。
目を輝かせて見るそれは、1本の神姫サイズの日本刀。
なんかこれ…素人目にも、明らかに並みの代物じゃないのが解る。

「それが気に入ったのか?」
「はい、とても綺麗で… でもこれ」
刀を指差し、そこからついっと下に向きを移動させる。

「価格表示が白紙なんですよ」

は? なんじゃそりゃ。

「OH! お目が高いマドモアゼルぅ! その! 刀は!
 ガァベラ・ス・ト・レェェェェェット!!!11!」
「またの名を”菊一文字”といいますのー。 
 本物の日本刀とまったく変わらない、労力と血と汗の結晶ですのー」

待て待て待て、菊一文字だと? それって将軍家御用達の刀じゃないか!

「ああ、それかい? 実体剣としては間違いなく最高峰なんだけどね、
 使いこなすのが難しいんだ。
 値段も半端じゃ無いからシミュレーターで資質を証明できた人だけに売ってるんだよ」
「えと…店長さん、半端無い値段とわ?(―_―;」
「ぶっちゃけ俺らの給料の1年分wwwっうぇwww」

な、なんだって―――――――――っ! Σ(| |)
値段まで本物の日本刀並かよ!


「え、あ、いや、刀なんか見てナイデスヨ?」
マオさん、すっげーぎこちないです。

「まぁまぁ、とりあえず試に使ってみない? シミュレーターでなら壊す心配も無いしね。」

…と。

そんな訳で「とりあえず可能だったら10人抜き」を目標に、
店内に設置してあるバトルサービス用の筐体に乱入したんだが…

なんと言うかマオの戦い方はデタラメだった。
と言っても、なってないとか危なっかしいとかじゃない。
出来る訳のない事をやってのけているのだ。

光速のレーザを避け、実態弾は避けるかブッた切るか。
鉛弾もミサイルも真っ二つ。
ビームまで切りましたよこの小娘わ;

本当にボディは市販品なんだろうか…;

そうして弾切れしてしかたなく、もしくは積極的に接近戦を挑もうものなら

手を出す→武器を切断
防御→盾をブッた切る。

切れすぎだろその刀;
最後は決まって首チョンパ。
でも素体には(首パーツを除き)一切傷をつけてない。
どっちにしろバーチャルバトルなんだから、現実には傷なんてつかないんだけどな。

そんなこんなで既に9人目…





白銀の翼が標的に向かって急降下する。
直前に使った照明弾であのマオチャオ型MMSの目は封じた筈。
背後から接近し、すれ違うと同時にM4ライトセイバーで一閃、即座に上昇。
さんざん梃子ずらせてくれたが、これで終わり。
見えなきゃ避けられまい…いいぞ、そのまま動くなよ…

今だ! ライトセイバーを振りぬく。 間髪いれず上昇。
非実体剣ゆえに手ごたえは無かったが、
たとえ当たっていなくとも仕切りなおせば良いだけの事だ。

『バカ! 後ろだ!』

マスターが叫ぶ。
この高度で後ろ?! ありえない!

「こんにちは♪ 空気の動きで丸解りですよー? そしてサヨナラです!」

背中に飛び乗られた?! 振り落としてや…

ずぱっ!


ビ―――――――――ッ
試合終了を告げる電子音が鳴り響く。
『Winner,マオ 現在9人抜きです』

「あと一人!」
「うわぁぁぁ! マスター! マスター! ボ、ボクの首ついてるよね?!」



「ジェニー、どう思う?」
「そうですね… 動き自体は市販品でも可能ですが、あの反応速度は普通じゃありません。
 それにID登録の時、一瞬ですがこちらのシステムが停止しました」
「ハッキングか? ウチのシステムにまさか?」
「なんとも言えませんね。 幸い明日からここに通いますから、しばらく様子を見てみましょう」

「まだ結論は出せない、か。 しかし…”アレ”ではテストにならないな」
「一方的過ぎますね。 基本である”真っ直ぐな振り”は完璧ですが…」
「ふむ…よし、内藤君!」

「なんすか?w 店長wwww」





10人抜きまで、あと一人だ。
どっちにしろ買える額では無いのだが、途中で投げ出すというのも気分が悪い。
とは言うものの。

俺、座ってるだけで何にもしてないんだけどな(汗)

それはそうと。
「なぁマオ、アレ使ってるのか?」
アレというのは加速時間ドライブの事だ。
簡単に言えば…クロックアップの超強化版みたいな?
15cmの身体で人を殺す為の、(今のところ)こいつだけの機能。

「使って無いですよ? 卑怯ですし…それにシミュレーターでは再現出来ませんから」
「って、じゃあさっき消えたのは何だったんだ?!」
「神姫も人間と同じで、視界に入ってるイコール見えてる訳じゃないんです。
 虚を突き実態を掴ませない。 そうゆう特殊な動き方で消えたように見せかけてるんですよ。
 まぁ…相手神姫の生産時期によっても効果ない場合もあるんですけどね」

「じゃあ弾を切ってるのは? いや、それよりもレーザーを避けるなんて…」
「んー、それはですね… あ、10人目の方が席に着かれたようです。 …説明は後ですね」

バイザー越しの視界が暗転する。
そしてフラッシュアウト。
光の中から現れた風景は…垂直に切り立った岩石の群れ。
谷間は霧…いや、雲で満たされていて深さをうかがい知る事は出来ない。
マオが立っているのは真っ平らで巨大な、薄く霧の立ち混める岩の大地。

「ギアナ高地のテーブルマウンテン…ですね、たぶん」

TVで見たことあるな。 確か世界最大の落差を持つ滝があるとかなんとか。
ん、霧の中から人…じゃないよな、対戦相手の神姫が…

「小姫ちゃん?!」 「な…、内藤! お前なのか?!」

『MYブラザー… ショータイムだ!』





小姫ちゃんの装備は何らかの手段で空中に浮く装置、それと護符型の投擲武器。
飛行するのとは違って高度が極端に低く、スピードも遅い。
精々地上スレスレを滑る程度で、はっきり言って足で移動したほうが早いだろう。
護符は手で投げているにしては高速だが、マオなら問題なく切り伏せられる物だ。

だが、現状で押されているのはマオだと言うべきだった。

「くっああぁぁぁぁぁ!」
マオがガーベラ・ストレートを小姫ちゃんに振り上げたままの姿勢で硬直している。
やがてじりじりと押し戻され、大きく吹き飛ばされる。
小姫ちゃんは空中で静止したままで、手を出していない。


くるりと回転して着地する。
さっきから何度も挑んではいるが、一向にラチが明かない。
反発フィールド。
小姫ちゃんの周囲に張り巡らされた[外側にはじき出す力]によって、
マオは唯一の攻撃手段である接近戦を封じられているのだ。
どうやらこのフィールドは浮遊と護符の加速も兼ねているらしい。
これでは虚をついて接近しても意味が無い。

着地地点に護符が打ち込まれるが、マオは難無く切り払う。


『どうだねMyブラザー、Myハニーの結界は?』
「やっかいだな… だがもっと厄介なのが、おまえがヘラヘラ笑ってないって事だ。」
コイツはマジになると「w」が出なくなる。
巫女服にあわせて護符型の武器にしてるんだろうが、
こんな決定打にならないネタ武器だけなら今も
「どうだねMyブラザーwww、Myハニィィィのw結w界wはw?wwwwっうぇうぇwww」
と逆毛語全開だっただろう。

「何か…あるな?」
『ああ、その通りだ。 小姫! 破魔矢を使え!』

「はいですの!」
小姫ちゃんが懐から何かを取り出し…、折りたたまれた…棒?
一振りすると”それ”は身長を超える長さの長弓になった。
すとり、と着地すると弓をかまえ…

弓?
普通の弓に見えるが…内藤の態度からして普通の弓であるわけが無い。
ものすごく嫌な予感に見舞われる。

「マオ! 下がれ!」
俺は初めてマオに指示を出す。
『兄様?!』
一瞬戸惑うが、直ぐにステップを繰り返して距離をとる。

シュン!
放たれた矢が残像で曲線を描いて飛び、
ギリギリで身を翻したマオの髪を数本切り落とした。

「な……速い! レーザーよりは遅いけど、これは…っ!」
「よく避けましたなの。 でもいつまで持ちますかなの」

かすった?!
なんでレーザーをかわせるのに、速いとは言え弓矢がかするんだ?!

シュン!
「くっ」

何とかかわす…が、それだけで精一杯だ。
矢が放たれるたびにマオの素体に傷が刻まれていく。
何度も、何度も。

『Myブラザー…、お前達の力はこんな物か。 さあ、俺様を乗り越えて見せろ!』

内藤はまるで「自分はお前達を鍛えているんだ」とでも言いたげだ。
けど、俺達にこんな状況で何ができるってんだ。
傷だらけになりながら全力で回避し続けるマオと、それを見ているしかない俺。
見ているしか…
くそっ、あんな早い……矢…?

……!
矢を放った瞬間、霧が一緒に前方へ押し出されている。
だがその直後、逆に流れてるのは…
そうだ、ただの弓があんな高速の矢を撃ち出せる訳が無い。
それに…なんで着地してから射らなきゃならないんだ?
着地したのではなく、浮いていられなくなったとしたら…
あの弓、もしかして!


「マオ、そのまま聞け」
「兄様?! 今それどころじゃ… くっ!」

傷が増える。
だが俺は構わず続ける。
このまま避けていても勝ち目はないし、弾切れになれば防御を固められるだけだ。
可能性に…賭けるしかない。

「あの弓はおそらくバリアを利用したレールガンの様な物だ。
 浮遊をやめたのは矢の加速に全てのバリアを回す必要があるからだろう。
 だが発射の度にバリアの再配置が必要らしい… 霧の動きを見ろ!」





霧?

シュン!
「痛っ!」

く…、弓矢が高速になっただけでこうも厄介な武器になるとは…
弾速でレーザーに肉薄し、機械構造を持たないために発射時のタイムラグも無く、
軽量なので取り回しも速い。
これでは切り落とす暇はなく、回避するだけで精一杯だ。
その回避にしても完全には避けられず、外装を削られ続けている。

あ…霧が…小姫ちゃんの方に吸い寄せられてる…?

ギンッ!
「ぐあっ!」

左肩が半分ほど削られ、機能しなくなる。
でも引き換えに糸口を見つけた。 

「見ました! 引き寄せられる所にタイミングを合わせれば…」
「そうだ。 このままでは勝ちは無い…行ってこい!」




私は全力で、かつ小刻みに蛇行しながら駆け込んでいく。
『特攻だと? 無謀な… だがその意気や良!』
冗談じゃありません。 確信があるからこそ、です。
ですがそのまま強気でいて下さいね?
守りに入られたら、勝ち目、ありませんから。

バキン!
「ぐっ!」
左腕が完全に千切れ飛んだ。
離れていても回避しきれなかった攻撃。
距離をダッシュで詰めていけば避けられるはずも無い。
それでも身を捻って、なんとか機能停止を退ける。

ゴギャッ!
「~っ!」
右の肘が砕けてガーベラと共に吹き飛ぶ。

あと10歩!
ゴリッ!
「がっ!」
左の頬がえぐられる。

『くそっ! 結界!』
内藤さんが叫ぶ。 今だ!
「マオ! 飛べ!」

「ぁぁぁああああああっ!」
渾身の力を込めて飛び蹴りを放つ。
両腕が無い以上、他に攻撃手段は無い。
霧が小姫ちゃんの目前へと吸い寄せられる…
間に合え!

っ! 結界が展開しかけて…減速させられる…!
届きそうだけど、これでは打撃にはならない。
「だったら!」
私は両の足首で小姫ちゃんの首を挟みこみ、
フィールドに弾かれるのに任せつつ身体を大きく仰け反らせた。
「?! なんですの?!」

反らせた体のバネに反発フィールドの力を上乗せして…

「ぎゃ、げぅがぁぁぁぁぁっ!!」
            ごきっ…ぶっ…ブツンッッ!!!!

首を引きちぎる!

断末魔の悲鳴。 樹脂が裂け、ケーブルが寸断される音。
残された首の無い素体はその場に崩れ落ちる…
勢いがついてしまった私と小姫ちゃんの頭は
そのまま岩盤の上を何度もバウンドしながら吹っ飛び、
十数歩ほどの距離を移動して…そこでやっと止まった。




10

小姫ちゃんはもちろんだが、マオもピクリとも動かない。
どう…なった?

「う…… 兄様ぁ~ ものすごく痛いです~;」

『Winner,マオ 現在10人抜きです』

「ふ…ふははははっ! ここまでとは…見事だwMyブラザーwっうぇwwww」
あー…、喋り方戻ってる。
どっちかと言うと、お前に油断があったからなんとか勝てただけなんだけどねー;

パチパチパチパチ…
「あ、店長さん」
「おめでとう。 認めよう、君の力を。 ガーベラ・ストレートは君の物だ」

なんですと?
えーと、たしか…
_________________

俺 「えと…店長さん、半端無い値段とわ?(―_―;」
内藤「ぶっちゃけ俺らの給料の1年分wwwっうぇwww」

な、なんだって―――――――――っ! Σ(| |)
_________________

………ちょ、
「待ってくださいよ! いくらなんでも給料の1年分なんて無理ですよ!」
「どこにそんな金額が書いてあるの? ほら、白紙でしょ」

え。

「これはね、ウチの常連だった人が置いていったんだ。 いつかふさわしい奴が来たら渡してくれってね」
「でもぉ…私、最後は刀使ってませんでしたよ? それでも合格なんですか?」
アクセスポッドから半身を乗り出したマオ。
…良かった…腕、ついてる。
そりゃシミュレーターなんだから当然か=3

「技術は9戦目までで充分証明したさ。 問題は持つに相応しい気質があるかどうか。」

気質?

「重要なのは、困難に臆する事無く立ち向かう事。 元の持ち主が、そうゆう神姫だったからね」
店長さんが、なつかしい様な…悲しいような表情を…

…「だった」? あ、もしかして。
「これ… 遺品、ですか?」
「うん。 新品じゃなくて悪いんだけどさ、使ってもらえるかな」

「遺品… そっか、私と同じか…」
「ん? どうゆうこと?」
マオの呟きに店長さんが疑問を投げかける。
そりゃまぁそうだな。 神姫が遺品だなんて…無いとは言わないけど、多くも無いだろうし。

「コイツは俺の親父の神姫だったんです。 親父は行方知れずだったんですけど、
 コイツがひょっこりたずねて来まして…」
さすがに『作った』のは隠しておいたほうがいいかな。




11

ホビーショップ・エルゴ 閉店後の店内


「どうなってんだこりゃ?」
エルゴの店長、日暮夏彦とその神姫、ジェニーがマオ対小姫の対戦データをチェックしていた。
対戦記録に不振な点は無い。
問題はアクセスポッドの監視記録だ。

「素体の表面温度…全然上がってませんね。
 それどころか情報処理で負荷がかかる場面では、むしろ低下しています」
「ポッド内気温もほぼ変化無し、か。 どんなに高性能でも熱を出さないなんてありえないんだが…」

だがモニターに映し出されているのは、ほとんどが緑色のサーモスキャン画像。
緑色は気温と大差ない表面温度を表す。

「けど違法改造してるとも思えないな。 アレ特有の後暗さが無かったし」
「そうなんですよね… 大抵は狂気の片鱗が見え隠れするものなのですが…」
「とは言うものの、ID登録の時にシステムが一瞬停止したのも気になる。
 これといった確証は何もないが…」



「あーもうっ! やめやめ! 明日から通ってくるんだから大明神様が観察すりゃあ済む話!」
「私に丸投げですか。 ところで、ガーベラをあげちゃって良かったんですか? だってあれは…」
「そこは直感だな。 全然似てないのに、アイツの神姫にそっくりだと思ったよ」




12

帰り道。
ポケットの中のマオが口を開く。
「素敵、ですよね」
「ん、何が?」
「全力でぶつかっても殺さないで済むなんて…」
ああ、そうか。
夢でも泣いていた奴が、奪った命の重さに押しつぶされそうになっていた奴がだ。
対戦相手の首を刎ねるなんておかしいとは思ったけど、そういう事か…
なんでも神姫の場合、コアを破壊されなければ物理的な死は無いとか。
だから機能停止に持ち込むのに破損箇所が少なくて済む首を狙っていたのか。
首を落とされるのは神姫にとって死ではない。
バーチャルでも殺すのは嫌なのね…
そっちは納得。
けど認められないのが一つあるぞ。

「お前さー…自分の事を遺品と言ったよな? 俺はお前をモノ扱いする気はない。
 お前は俺の妹だ。 だからさ、もう遺品と同じーとか言わないでくれよ」
「ふぇ…兄様ぁ… ぐすっ…」

う、泣かしてしまった。
そっと布地越しに撫でてやる。
母さん、こうゆう泣かし方はセーフですよね?




                            ToBeContinued...


※小姫の袴の中にはエアバイザーの翼をぶった切った物がはいっています。
 箱書きによると[バリア/ビーム砲/補助浮力発生器]だそうな。
 芸達者だなおい。
 この中の補助浮力発生器としての機能を使ってイロンナコトやってた訳です。




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