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 ――――ヒトは、死に際して走馬灯を見ると言われる。

『ファイエル!』

 アガサの号令一下、圧倒的な威力を誇る荷電粒子砲が発射され、私を消滅させるため、激しい閃光が迫り来る。
 私は死に抗うように、必死に回避マニューバを行おうとするが、運動性に劣るファイター形態で突撃を行ってしまった為に、高速で迫りくる荷電粒子から逃れる事は不可能に思えた。
 最大加速中の機体は、とにかく重く感じられる。回避マニューバを行おうとしても、直進し続ける機体は水飴の中を突き進んでいるかのように舵が効かず、僅かに機先を変更するのがやっとの有様だ。
 曲がらない機体。迫り来る死と破壊の権化。全てがスローモーションのようにゆっくりと進んでいくように感じられる。しかし、もうどうしようもない現実が、確実に破滅へと近づいていく。
「(すみませんアキラ。私はここまでのようです……)」
 破壊の渦が目の前に迫り、終わりを覚悟する。仮想空間での戦闘である以上、現実に私が破壊され『死』を迎えるわけではないが、この戦闘での敗北はそれと同義だろう。
「(――――もう一度、貴方の笑顔を見たかった)」
 少し恥かしそうにはにかむ、あの笑顔。脳裏に浮かぶのはアキラの笑顔、笑顔、笑顔……やっと私だけに少しづつ見せてくれるようになったあの笑顔を……
 ……だが、此処で負けたら、あの笑顔はどうなる。私は決めた筈ではなかったのか。
「(そうだ。この身が朽果て、例え消え去ろうとも。最後の瞬間まで、アキラの為に……全力を、尽くす!)」
 ――――この全ては、アキラの為に。

「負けて……たまるかぁぁぁぁ!!!!!!」



~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅥ~



 命中の直前、私は無意識領域メモリ補正によるフライバイワイヤをカットしてマニュアル操作に切り替え、更に右翼ハードポイントにマウントされていた『LC3レーザーライフル』や『バニッシュミサイルポッド』といった重量の嵩む大型武装を中心に構成されたヘビーウェポンバインダーを強制投機した。
 片側だけを投機した事により機体の重量バランスは大幅に変化・悪化し、その結果機体は一瞬のうちに水平バランスを保てなくなり、危険なほどに大きく左へ捻じ曲がる。
 更に投機されたヘビーウェポンバインダーに荷電粒子砲が直撃し、消滅する前に荷電粒子の高熱によりミサイルが誘爆。バランスを崩す事によって直撃からギリギリ逃れていた機体に対し、更にその爆風を受け吹き飛ぶようにして、強引な回避を果たす。
「なんて無茶を……」
 必殺の一撃を回避され、呆れるように初めてその表情を大きく崩すアガサ。
「コレはおまけだッ!!!」
 更に回避直後に発射した左翼下のバニッシュミサイルがカウンター攻撃として襲い掛かり、アガサはそれに対応する為、左肩の展開式砲身だった荷電粒子砲を格納しつつ、右肩にセットされているガトリング砲を連射して迎撃を行う。
「ねここ、後退ッ!」
 そして私はその間に体勢を整える為、一旦急速後退し、再び針葉樹林の中へとその身を隠す。
「……そろそろ、頃合ね」
 隠れる寸前に見たアガサは、何か呟いたように見えたのだが、今の私にはその内容を考えている暇など全くなかった。
「――――3番カット、6番の出力2割増しにして……とりあえずこれで、大丈夫だな」
 森の中でアサルトモードに可変し、片側だけになってしまったヘビーウェポンバインダーに対応するように機体バランスを調整しながら、ねここのIFF反応がある場所に向けて低空で飛行する。
『止むを得ない……ねここ、一度合流する。合流したら……』
『にゃあ゛ッ!!!?!?』
 対した距離ではなかったが、何時また砲撃が再開されるかわからない状況下では少しの時間も無駄に出来ない為、無線で先に連絡を取ろうとするが、返ってきたのは慌てふためくようなねここの声だった。
「あれは……ッ」
 その理由は直に判明した。私の向かう先、ねここのいる方角から派手な銃撃音が轟いてきたのだ。視界をズームすると木々の間を逃げ惑うねここの上から銃撃を浴びせかける飛鳥型……緋夜子の姿があった。
「やってくれる……!」
 どうやらアガサが囮になって私たちの注意を前方に引き付けている間に、低空を飛行して後方から侵入したらしい。地雷は緋夜子がばら撒いた物とすれば、後方からの攻撃は当然と言える。もっと早く挟撃の可能性に気づくべきだった。
 ねここを翻弄している緋夜子の姿は、標準的な飛鳥の装備に加え、背中に装備した噴式推進『朱鷺』にフレキシブルアームを介して左右に2基の回転翼『飛輪』を追加装備し、その飛輪の上面ラッチには『三七式一号二粍機関砲』が背負い式に装備され、外側に付けられている翼のウェポンラックには『flak17 1.5mm機関砲』がそれぞれ2基づつ備え付けられている。そして左腕にも『三七式一号二粍機関砲』を備えており、まるでガンシップの如き重武装と化している。
 そして低空・中~低速能力に優れたレシプロエンジンを持つ飛鳥型らしく、あれだけの重武装ながらも木々の間を器用に立ち回り、上空から腕の『三七式一号二粍機関砲』と両翼に取り付けられた計4基の『flak17 1.5mm機関砲』を一斉掃射して、ねここの装甲をジリジリと削り取ってゆく。
「ねここ落ち着け! 機銃程度なら防御フィールドで十分対処出来るッ」
 そう叫びながらもねここを支援する為、左翼にまだ残っているLC3レーザーライフルを一射し、眩い粒子が暗い森の中を照らすようにして突き抜けてゆく。
「ひゃぅ! 来ましたわね……ッ」
 元々牽制以上の意味はなく、当然直撃はしなかったが側面からの奇襲効果もあり、一旦攻撃を控えて間合いを取り直す緋夜子。機雷原の方へと後退してゆく。
「だ、ダメなのぉ! 前にしか出せないから当たっちゃうの!」
  そして一息つけたねここのその言葉で、何故彼女が逃げ惑っているか合点がいく。緋夜子は高い可動範囲を持つ3基の回転翼『飛輪』を完全に制御し、非常に柔軟かつ軽快でトリッキーな空中機動でねここを翻弄し、側面や背面からの痛打を浴びせかけてきている。
 緋夜子が重武装とは言っても、それは砲門数だけの事であり、重装甲のレッドミラージュに対して飛鳥の装備では威力不足な事甚だしい筈なのだが、装甲の施されていない間接やスラスターへの直撃を貰ってはひとたまりも無い。
 しかも『飛輪』3基の推進力は伊達ではないらしく、最初に受けたダメージで不完状態なのに加えて、地形的不利も重なってはいるものの、あのレッドミラージュが引き離す事が出来ないでいた。
「とにかく下が……。あ、しまっ!?」
 緋夜子が間合いを計った隙に、此方も後退しろと声に出した瞬間、過ちに気づく。そしてその代償は小さかざる物だった。少し後退した時には後方から再びロケット弾と迫撃砲が雨のように降り注ぎ、周囲を爆発と業火が支配し、私たちは慌てて地雷原のほうへと引き返す。
「チ……これでは前門の虎、後門の狼か」
 緋夜子の方に突出すれば並行追撃の末、機銃弾を大量に浴びる羽目に陥り、その挙句最後は地雷原が待ち受けている。かといってアガサの方へ後退すれば、ロケット弾の雨と荷電粒子砲の狙い撃ちが待っている。ましてや空には大量の浮遊機雷がばら撒かれ、谷の上空は無形の屋根と言うべき物が張られてしまっている。
「――――屋根?」
「にゅ、ネメシスちゃん?」
 その時、思考のピースが、思いもよらない形で組み合わさった気がした。
「……そうか、私としたことが。――――フ、フフフフフ」
「ネ……ネメシスちゃんが壊れたの……あうぅ」
 私は今まで、何をしていたのだろう。幸せなぬるま湯に浸かり、闘争心まで失ってしまっていたのだろうか。それとも敵である彼女たちに流され気圧されて相手のペースに呑まれ、すっかり大人しく受身の甘ちゃんな戦い方になっていてしまったらしかった。
「ねここ、私が合図したら主砲を最大出力・最大拡散で前方上空に向かって撃て」
「え、でもそこには誰もいないの。何で……」
「お前は私の支援をするんだろ! 説明してる暇は無い。ぶっ放せッ!!!」
「――うん。了解なのぉ!!!」
 一瞬戸惑いをみせたねここだが、次の瞬間には意識を切り替え、背中に折りたたまれた開放式荷電粒子砲を起動させる。砲身の周辺に眩い光が蕩い始め、やがて光は収縮し、超高熱の太陽の輝きとなる。
「カウント合わせ……! 3・2・1・撃てぇ!」
「ファイナルねここぉ……すぱぁーくっ!!!!!」
 ねここの叫びと共に虹色に輝く極太の光の束が発射され、周囲の光のブレを伴いながら、一直線に空へ向かって突き抜ける。虹色に輝く光の巨砲は進路上の空間を光で染め上げ、直撃コース上に滞空していた浮遊機雷は爆発することなく存在を抹消し、周囲の浮遊機雷もその高熱の煽りを受けて誘爆を起こす。
 やがて周囲を夏の昼間のように白く照らし出した光が消えた時、上空にはポッカリと大きなトンネル状の回廊が出現していた。
「今だっ!!!」
 唯一の安全航路になった空の回廊を、最大加速で一気に突き抜け、蒼い大空へとその翼を羽ばたかせる。
 だがその直後、再び飛来したロケット弾によって浮遊機雷がバラ撒かれ、回廊は直に封鎖されてしまう。結果分断されてしまう私とねここ。当初私が恐れていた事態の中の1つだった。
「やはりか……だがっ!」
 私は意に介さず、むしろ逆に高度を上げながらアガサのいる後方へとその機首を向ける。更に左翼下にまだもう1発残っていた大型で中~長距離用の『バニッシュミサイル』を発射し、追加で『LCレーザーライフル』を遠距離収束モードに切り替え、ロケット弾の火点へ向けて連射で叩き込む。あれだけの重武装、しかも足回りは通常型と同じとなれば、機動力は相当低いと判断できる。いくら防御フィールドでガードされたとしても、多量の重火力をピンポイントで叩き込めば多少の効果は見込めるはずだ。
 そして着弾を見届けることなく、更に垂直上昇するように高度を上げてゆく。
『あらら、ねここを地上に1人取り残して逃げ出すなんて。貴方はねここを見殺しにするつもり?』
 無線に再び入ってくるアガサの声。爆発の影響かノイズが混じるが、あの澄まし声は健在のようだ。
『――嗚呼、そうだ。
 この高高度からならば、地上に這い蹲るメイド、お前を上空から嬲り殺しに出来る。その為ならねここの犠牲など……考慮する必要に値しない』
『――――あら、そう。なら遠慮なく……』

「お……お姉様は、やらせませんわっ!!!!!」

 その時、後方斜め下から高速で接近してくる1つの機影。それは急速上昇しつつ、腕の『三七式一号二粍機関砲』を発砲しながら肉薄してくる飛鳥型……緋夜子の姿だった。
『馬鹿っ、緋夜子下がりなさいっ!』
 アガサの声が此方の無線にまで響くが、時既に遅い。
「掛かったぁっ!」
「ふぇっ!?」
 私は怒りの形相の緋夜子目掛け、バニシュミサイルポッドの外側に追加設置していた『UUM-7マイクロミサイルポッド』に搭載されたミサイルを放つ。5発×3層式の短距離ミサイルを一気に連続発射し、緋夜子を全方位から包囲するような軌道でロケットモーターの噴射煙が大空に描かれてゆく。
「こ、これくらい自分で処理してみせますのっ!」
 緋夜子は急ブレーキをかけるように制動を掛け、回避マニューバでしつこく追いすがるミサイルの着弾時間を引き延ばしながら、腕と翼に装着された7門もの機関砲を全力斉射して、肉薄するミサイルを片っ端から撃ち落していく。
「ど……どうですの。これがワタクシの実力ですわ!」
 その時、全力を以ってミサイルを撃墜しきった緋夜子が、安堵と疲労から僅かにその動きを凍結させる。
 ――私は、その瞬間を待っていた。
「嗚呼、凄いよ。――今だねここ、撃てっ!!!」


「ファイナルねここぉ……すぱぁーくっ!!!!!」

 再び地上から大空へ向けて、虹色に輝く光の柱が、その直線上に存在する全ての物を飲み込むように突き抜けてゆく。
「な!? ちょッ、はぅわーッ!!!!!」
 回避しようとした緋夜子だったが、直前に動きを凍結させていた事から動作が遅れ、更に最大拡散で発射された砲撃の有効範囲は極めて大きく、完全な直撃こそ免れたものの、拡散した荷電粒子によるダメージで薄い装甲はズタズタに引き裂かれ、背中に装備された2基の回転翼『飛輪』はプロペラが破損して双方ともその機能を停止し、主翼は既に根元から消えている。
 重装甲にとっては低い威力なのかもしれないが、基本的に装甲に重きを置けない飛行型……特に緋夜子のような比較的軽量で運動性を重視するタイプにとって、その威力は絶大だった。
「お、落ちるっ!? 落ちていきますわー!?」
 残った最後の『飛輪』も機能不全を起こしたらしく、下降すると言うより殆ど墜落するような速度で谷底へ堕ちてゆく緋夜子。
 途中で浮遊機雷に接触しそうになるが、その直前に地上からの対空砲によって撃墜される。恐らくはアガサが撃ち落したのだろう。
「よし追撃するぞ。メイドが来ない内に、確実に仕留める!」
『了解なの』
 だが今の攻撃によって、アガサの大まかな位置が特定出来た。あの位置ならば、戦車型で鈍足なアガサよりも確実に私たちの方が早く到着できるだろう。
『――――到着なのっ……ぇ、え、えええ!?』
 高高度にいた私よりも、地上にいたねここの方が早く到着できたようだ。……だが、明らかに様子がおかしい。
「どうしたねここ。状況を説明しろ、ねここっ!?」
 だが、ねここからの通信は、それっきり途絶えてしまう。
 そしてその直後、前方……ねここのいる方角に、虹色の輝きが満ち……そして、消えた。
「ま、まさか……」
 私はアガサの空けた回廊から低空へ侵入し、墜落地点へと急ぐ。
 墜落地点は最初にねここが穿った回廊の中だったらしく、木々も無くなっている為に、上空からでもはっきりと視認する事が出来た。
「なっ!?」
 そして私の眼に映ったその状況は、墜落した緋夜子を守るように正面に立ち塞がり、空気中の水蒸気が蒸発して、何かが焼けるような耳障りな音を発する荷電粒子砲の砲口を敵に向けるアガサと……レッドミラージュを失い、無残に崩れ落ちるねここの姿だった。
「ごめん……なの」
 倒れたままの態勢でそれだけを呟くと、そのままガクリと首を垂れ、動かなくなるねここ。……ダメージが限界を超えたらしい。
「くっ……! しかし何故こんなに早く……」
「――貴方が私がドン亀だと思い込むのは勝手ですが、一方的な思い込み・慢心ほど、自らを滅ぼす行為もまた、ありませんよ」
「…………ッ」
 そうアガサに瀟洒な微笑と共に言われ、返す言葉もない。
 最初に真正面から見た時の映像では全く確認出来なかったのだが、今上空から見るとはっきりと認識できた。
 彼女はその背中、アームユニットよりも更に一段後ろに、本体以上の容積を持つ巨大な推進装置を装備していた。『インパルス・フロートユニット』が左右に分割して装着され、中央には巨大なエネルギーパックとスラスターの複合推進装置が鎮座している。
「そうか、半重力システムで……」
 あれだけの重武装だ。射撃の反動以前に、本来は立っている事すら困難な筈なのだ。それがああも平然としていられたのは、背中のフロートユニットで機体を浮かせていた為に出来た事なのだろう。
「緋夜子が受けた痛みと屈辱……そっくり貴方にも返してあげます」
 凍てつくような鋭いアイスブルーの瞳に熱い感情の炎を宿し、『Zel L・R スナイパーライフル』の銃口をピタリと此方の眉間へと、正確に照準をつけてくる。
「やれるものなら……!」
 隙を窺う為、ゆるやかに横滑りするように低空飛行しながら、此方もLC3レーザーライフルの砲口をアガサに向ける。
 ……だが射撃の精度では、残念だがとても勝ち得るとは思えない。――ならば。
「ほぅ、いい度胸ね」
 デットウェイトと化した空のミサイルポッドを強制排除し、パイルバンカーをその手に握り締め、構え直す。
「私は、どんな時でも、突き抜けるだけ……!」
「ならば……」
 これが、最後の賭けだ。

「「勝負!」」

 『レネット』が加速すると同時に『Zel L・R スナイパーライフル』が火を噴き、弾丸が私の意識を奪うべく亜音速で飛来してくる。私は全ての意識を集中し……頭だけをごく僅かにスライドさせ、ギリギリの所で回避する。額に吸い込まれ損ねた弾丸は、身代わりになったヘッドセンサー・アネーロを粉砕し、私の視界を奪ってゆく。
 だが、私は構わない。ハードポイントに唯一残った武器である左翼のLC3レーザーライフルの砲身を突き出し、突撃前に記憶した場所へと突き進むだけ。
 アガサからは迎撃火器として右肩外縁にセットされたガトリング砲の掃射が始まるが、右にスライドしてこれを回避する。右舷全般をカバー出来る様に取り付けられており、その構造上、左には撃てないからだ。
「甘いっ!」
 だがアガサは直に『GA9ヴィントシュトース』の巨腕を突き出し、防御フィールドを発生させてくる。
 私はそれに対し、突き出された発生器基部に、パイルバンカーの機先を全力で叩き付けた。余りの高加速状態で重防御の物体に叩き付けた為にタングステン芯の先端がひしゃけ、砲身にも捻りが生じるが構いはしない。――そして発生器に抉りこむようにして突き刺さったパイルバンカーの引き金を、全く躊躇うことなく引く。
「なにいっ!?」
 驚愕の表情を見せるアガサ。その瞬間に内部に直接破壊エネルギーを叩き込まれたフィールド発生器、『GA9ヴィントシュトース』、そして当然の結末として無茶をし過ぎたパイルバンカーもろとも大爆発を起こす。
「――――フ」
 防御フィールドが展開されていたお陰で、本体へのダメージは殆ど無く、攻撃を防ぎきった形になったアガサ。それに引き換え此方は爆風の直撃を受け、全身が切り刻まれ、無残に装甲が剥離し、翼も折れ砕け、推力は急速に失われていく。
「まだまだぁ!!!!!」
 だが勢いだけは殺すことなく、そのまま突き抜け肉薄して、両肩武装の死角である懐へ飛び込み、唯一残ったLC3レーザーライフルを、がら空きになったアガサの腹部へと叩きつける!
「…………ぁ……ぐ」
「私の勝ちのよう……です……ね」
 そして、アガサのなだらかな腹部には、黒い槍と化したライフルがひしゃけながらも突き刺さり、私は最後の引き金を、ゆっくりと……

「――――最後まで、甘ちゃんね」

 この状況で余りにも場違いなそのセリフ。そして飄々とした口調。思わず眼を丸くして見上げた彼女の表情は、瀟洒な微笑を浮かべていた。
 ――そう、引き金を引こうとした、その瞬間。豊満なアガサの乳房が、激しい閃光とともに大爆発し、私はその乳房と共に閃光の中へと消えていった。



 ――気分は、最悪だ。
「く……言い訳はすまい。しかし最後のアレはなんだ。あんな破廉恥で非常識な……!?」
 仮想空間から現実空間に戻るや否や、私は2人に噛み付いていた。
 それはバトルの最後の瞬間。私の眼には、どう思い返してもいきなり乳房が爆発したようにしか見えなかった。あんな武器・戦術があってたまるか。
「……あれは、指向性胸部爆裂装甲です」
 赤面し、微妙に目線を逸らしながらアガサが応える。その反応を見る限り、元凶は誰だか明らかだろう。誰もあんな物を好き好んで装備はしない筈だ。
「えぇ、特注品ですの。多少お値段は張りましたが、絶品の奥の手でしょう?」
 にんまりと自慢げに語る鈴乃。あまり自慢されても困るのだが……
「お……お嬢様の為なんですからね」
「うふふ、上出来よアガサ。ちゃんと流行の『ツンデレ』を身につけてきたようね」 
「お嬢様、そういう意味ではないです……」
 まだ顔を赤く染めながらも、努めて澄まし顔を作ろうとしているアガサ。彼女も彼女で気苦労が多そうだ。大体ツンデレが流行とは、一体何時の時代の話だろう。
「――――さて」
「!」
 その瞬間、他愛もない会話を楽しんでいたような和やかな空気は掻き消え、ゾクリと悪寒を覚えずにはいられない、鋭く冷ややかな瞳で此方を一瞥する。先程も体験した事だが、この豹変ぶりには、早々慣れるものではない。
「私たちの勝利ですわね。貴方はチャンスを与えられながら、それを掴み取る事が出来得なかった。
 ――貴方も、それまでのようね」
 期待はずれだった事を嘆くように、落胆し蔑んだような瞳で、冷酷な視線を投げつけてくる鈴乃。
 敗北した私としては、もう何も返すべき言葉を持たない。
「そして、負けたからには……この私の言う事には絶対服従してもらいましょう。よろしいですわね?」
「……はい」
 鈴乃は不敵な笑みを浮かべながら、満足そうにゆっくり頷く。死か、それとも贄か。いずれにせよ、アキラの元にはもう戻れないかもしれない……
 だが、鈴乃の言葉は私の予想範囲を完全に飛び越えていた。それは……

「ならば、汝ネメシスに命じます。このわたくしのメイドとなり、僕として仕えなさい。そしてメイドの何たるかを学び、汝の主人に対して永遠の忠節を尽くすのです」





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