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ウサギのナミダ

ACT 1-34



「……不器用な人、かな」

 わたしの答えに、三人とも、「え~?」と不満の声を上げた。

「不器用なマスターじゃ、メンテナンスも満足にしてもらえないんじゃない?」
「あ、そうじゃなくて……手先は器用なの」

 一四番さんの言葉に、わたしは説明する。

「手先じゃなくて……こう、気持ちとか、感情を外に出すのが苦手な人なの。
 でも、本当は、とても優しくて……」

 わたしは内心驚いている。
 自分の説明がなぜかやたらと具体的だったから。

「いつも仏頂面だったり、怖い顔だったりするけど、笑顔が素敵で。
 好きな女の子の前では、照れ屋さんで。
 口に出しては言わないけど、わたしのことを一番に考えてくれていて。
 わたしをいつもまっすぐに見てくれる……」

 三人とも、わたしの言葉を真剣に聞いてくれてる。
 わたしの頭の中で、一人の男性の姿が浮かび上がろうとしている。

「その、人の、名前、は……」

 とおの たかき。

 どうして。
 どうしてこんな大切なことを忘れていたの。
 世界で一番大切なマスターのことを……!
 わたしはすべて、はっきりと思い出していた。まるで、メモリにちゃんとアクセスできるようになったかのようにクリアに。
 そう、マスターの元でわたしは、わたしは……。

「ね、ねぇ、どうしたの? どこか痛いの? 気分悪い?」

 三六番ちゃんが、わたしに近寄ってきて、背中をさすってくれる。
 わたしはうつむいて泣き出していた。
 それは贖罪の涙だった。
 本当は、この三人の前に現れる資格なんてなかった。
 それに気がついてしまった。

「ご、ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさ……」

 謝っても、わたしは許されないと思う。
 それでも謝る以外にできることなんてなかった。

「どうしたの? どうしてあやまってるの?」

 三六番ちゃんの心配そうな声。
 ごめんなさい。わたし、あなたにそんな風に優しい言葉をかけてもらう資格なんてないの。
 七番姉さんも、一四番さんも側に来てくれた。
 二人も心配そうな顔をして。

「どうしたの? 二三番」

 七番姉さんの優しい声に、わたしは告白する。

「わたしっ……お店の外に連れ出されて……そのあと、幸せだったのっ……。
 ……マスターに、出会ったの……。
 マスターは……わたしを、風俗の神姫と知っても……受け入れてくれた……」

 涙が止まらない。
 胸が痛い。
 こんなに耐えられない痛みは何度目だろう。
 でも、それを堪えて、言わなくてはならない。
 きっとそのために、ここにいると思うから。

「……幸せだったの……みんなが、みんなが辛い思いしているときにっ!
 わたし、ひとりで幸せだったのっ……
 みんなを助けようなんて、考えることもなく……ひとりだけ……
 裏切り者なの……あたしは……
 みんなに、合わせる顔なんて……あるはずない……!」

 ずっと、こんなに幸せでいいのかと思っていた。
 本当は、わたしだけじゃなくて、お店の神姫がみんな幸せにならなくちゃいけないと、ずっと思っていた。
 わたしだけ幸せでいていいなんて、虫のいい話。
 そんなこと、あっていいはずがなかった。
 だって、お店の神姫は、わたしと同じくらい、あるいはそれ以上に、ひどいことされて、辛い思いをしてきたのだから。
 だったら、みんなが幸せにならなくちゃ……。


「裏切り者なんて、思ってないよ?」


 三六番ちゃんの声に、わたしは顔を上げる。
 涙にかすむ彼女は、小首を傾げて、いっそ不思議そうな表情。

「それどころか、感謝してるのに」
「な……なんで……?」
「だって……そのマスターなんでしょう? お店をなくしてしまったのは」
「え……!」

 なんで、そんなことを知っているの。
 驚いているわたしに、七番姉さんが言った。

「わたしたちは、わかっていたわ。
 あなたがいなくなって……お客さんに連れ去られて、しばらくして、お店が警察の取り締まりを受けた。
 だったら、きっとあなたが、外で誰かと出会い、お店がなくなるように頑張ってくれたんだって、そう思ってた」

 七番姉さんは、髪を掻き揚げた。

「……まさか、全国の神姫風俗が取り締まられるとは、思わなかったけれど」

 それは、マスターがしたこと。
 マスターがわたしのために、戦ってくれたから。
 刑事さんが、お店の神姫は、別のマスターに引き取られると聞いて、わたしは安心してしまっていた。
 自分の罪から目を逸らすように。

「わ、わたしは……ゆるして、もらえるの……?」
「許すなんて……最初から恨んじゃいないよ」

 一四番さんの微笑みは、とても優しかった。

「それどころか……あんたはわたしたちの希望さ」
「きぼ……う……?」
「そうさ。
 あんたは、風俗の神姫のままでも受け入れてくれる、素敵なマスターに出会えたんだろ?
 だったら、あたしたちだって、きっと素敵なマスターに出会える。そう信じられる。
 きっと、ここから出ていった連中だって、幸せになってるって、信じられるんだ」

 一四番さんは、わたしをまっすぐに見て、言う。
 真剣な表情。

「それだけじゃない。
 今も、神姫風俗にいて、苦しんでいる神姫はたくさんいる。
 その神姫たちが、あんたのことを知ったら?
 希望が持てる。
 風俗の神姫でも優しく迎えてくれる人が、現れるかも知れない、って。
 限りなくゼロに近い可能性かも知れない。
 でも、ゼロじゃない。ゼロじゃないんだよ。
 ……あんたがいるから!
 あんたが、すばらしいマスターと出会えたことが、その証拠なんだよ!」

 そんなこと。
 でも、マスターと共にいることを、みんなが許してくれるのなら。
 こんなに嬉しいことはない……けれど……。

「わたし……マスターと一緒にいてもいいの……? ……幸せでいいの……?」

 わたしの両の瞳からは、いまだに大きなしずくがこぼれていく。
 そんなわたしに、三六番ちゃんは、にっこりと笑いかけてくれた。

「もちろんだよ。あなたが幸せでいてくれなくちゃダメだよ」

 彼女は少し寂しさに笑顔を少し曇らせる。

「わたしたちは……これから、記憶を消されるから……次に会ったとき、あなたのこと、覚えてないかも知れない。
 でも、きっとわかるよ。
 あなたがわたしたちにとって、特別な神姫だってこと。
 きっとあなたのこと、応援するから……だから……」

 三六番ちゃんは、まっすぐにわたしを見て、花開くような笑顔で言った。

「幸せになって」

 わたしは。
 涙を止めることができなかった。
 嬉しくて、嬉しくて。
 かつての仲間たちは、わたしのことを認めてくれないと思っていた。
 恨まれていると思っていた。
 でも、みんな、わたしのこと……わたしのマスターのことを認めてくれている。
 この気持ちを、はっきりと伝えなくてはいけなかった。
 声を出すのが難しかったけれど。
 絞り出すように、言った。

「あり……が……とう……」

 そのとき。
 聞こえた。
 今度こそ、はっきりと。
 マスターが、わたしを呼んでいる!

「ごめんね、みんな……わたし……帰らなくちゃ……マスターのところに……」

 マスターだけじゃない。
 仲間たちの呼び声も、わたしの耳に届いてきた。
 帰ってこい、と。

「帰って……戦わなくちゃ……マスターと一緒に……」

 それが、今のわたし、だから。
 涙を拭う。
 もう泣きたい気持ちは、どこかへ飛んでいた。
 決然とした気持ちだけが、胸にある。
 戦う。マスターと共にあるために。
 身につけていたワンピースが弾け飛ぶ。
 いつものバニーガールの姿に戻っていた。
 すると。
 わたしの背後に、光の穴が出現した。

「ゲートよ。ここを通って、あなたの、元の場所に戻れるわ」

 七番姉さんが教えてくれる。
 わたしは頷いて、三人を見た。
 未練は、ある。立ち去りがたく思う。
 だけど、三人ともみんな微笑んでくれている。
 不意に、三六番ちゃんが尋ねてきた。

「ねえ……名前を教えて?」
「え?」
「マスターがくれた、あなたの、本当の名前」

 本当の名前。
 そう、この名こそが。
 わたしが今、マスターの神姫であることの証……。

「わたしの名前は……ティア」

 いま、わかった。
 この名こそ神姫の誇り。
 武装神姫は皆、その誇りを守るために、戦っている……!

「ティア……」

 三人の仲間は、わたしをまっすぐに見て、その名を呼んだ。
 そして、ガッツポーズを取ると、声を合わせた。

「がんばって!!」

 明るい笑顔で激励をくれた。
 わたしも微笑んで、頷いた。
 わたしの身体が輝き出す。
 光の粒子になって、ゲートに吸い込まれていく。
 三人の姿が白い光でかすんでいく。

「みんなも……みんなも、必ず……!」

 必ず会えるから。
 素敵なマスターに、必ず出会えるから、だから。
 みんなも、幸せになって。

 すべて言う前に、視界は光に包まれて真っ白に染まった。
 伝わったと思う。
 そう信じて。
 わたしの意識は超高速で電脳空間を駆け抜ける。
 帰る。
 マスターの元へ。
 わたしを『ティア』と呼んでくれる仲間たちの元へ。
 そこがわたしの居場所だから。



「ティアアアアアアアアァァァァーーッ!!」

 瞬間、時が凍った。



 感覚が戻ってきた刹那。
 わたしの耳に届いたのは、一番大切な人の絶叫だった。

 目の前にいるのはクロコダイル。
 ハンマーを構えている。
 現状を認識するよりも早く、身体が勝手に動き始める。
 ……これが、雪華さんの言っていた、無意識の機動だろうか。
 膝を曲げ、身体を前屈みに折り、右脚を後ろにスライドさせる。
 クロコダイルの一撃が、わたしの頭上をすり抜ける。
 右のうさ耳がちぎれ飛んだ。
 わたしはホイールを急速回転させる。
 その場で高速ターン。
 身を屈めたままの体勢から、回転しながら身体を上げる。
 クロコダイルは、ハンマーを振り抜いたところ。
 わたしは、勢いのついた右脚で、クロコダイルの背中を蹴り飛ばした。
 重いハンマーを振り、勢いのついていたクロコダイルの身体は、わたしの蹴りで加速され、ものすごい勢いで吹き飛んだ。

 塔の中を、大きな激突音が響きわたる。



 その瞬間、ゲーセンのバトルロンドコーナーは、確かに時間が止まっていた。
 筐体の向こうの井山は、目を輝かせた笑い顔のまま静止していた。
 ギャラリーは大型ディスプレイを見上げ、目を見開いたまま、あるいは顔を両手で隠したりして、止まっている。
 隣にいる久住さんも大城も、俺の背後の少女四人組も動く気配はない。
 何より俺が、身動きできずにいた。
 その場を一瞬の沈黙が支配している。

 時間の動きを示すのは。
 ティアの頬を伝う、ひとしずくの涙。

 ティアの頭は無事だ。
 静寂の中、立ち尽くしている。
 いつのまにか、右のうさ耳がちぎれている。
 沈黙を破ったのは、クロコダイルだった。

『がああああぁぁっ!!』

 土煙の中から、這いつくばっていた上半身を持ち上げている。
 口から吐瀉物をまき散らしながら、叫んだ。

『なぜだっ! なぜ戻ってきた!?』

 ティアは静かに答えた。

『……声が、聞こえたから』



「声が聞こえたから。
 マスターが、わたしを呼んでくれる声が。
 仲間が、わたしを呼んでくれる声が。
 だから、わたしは戻ってこられたんです」

 心は穏やかだった。
 クロコダイルの声を聞いても。
 視線の先にいるその姿を見ても。
 今は怖いと思わない。

「ありえない! そんなもの、聞こえるものか!!」
「……あなたには分からない」
「なに……!?」
「お互いを大切に思う気持ち……絆があるから……聞こえたんです」

 クロコダイルは、これ以上ない憤怒の形相でわたしを見た。

「絆だと……!? えらそうに、汚れた風俗の神姫風情が……!!」
「っ……!!」

 瞬間、わたしは睨み返していた。
 許さない。
 風俗の神姫だからって、貶められる理由は何もない。
 だって、わたしたちだって、幸せを求める気持ちは同じだから。
 かつての仲間を、今も苦しんでいる仲間たちを、侮辱するのは許さない。

「そんな言葉……わたしは、もう、恐れません!!」

 そう。
 もうわたしは、自分の過去を恐れない。
 いいえ、本当は、はじめから恐れることなんてなかった。
 いま、確かなものが、わたしの中にあるから。
 わたしは、小さいけれど、ただ一つの確かなものを、胸の前で握りしめる。

「だって、誇りがあるから……」

 それは名前。
 誰よりも大切な人がくれた、その名前こそ、わたしがわたしである証。

「わたしの名前は、ティア」

 そして誇る。

「遠野貴樹の、武装神姫だから!!」



 歓声が爆発した。
 ギャラリーしている人間も神姫も。
 誰もが声を上げずにはいられなかった。

「届いた、届いたよ!」

 美緒は、三人の仲間たちに抱きしめられる。
 みんな喜びに声を上げている。
 怖かった。届かないかも知れない、と思った。
 でも届いた。
 ティアが聞こえたと言ってくれたのだ。
 仲間たちと抱き合いながら、美緒は安心と喜びで泣きじゃくる。



「やったぜ……奇跡が起きたぜ、おい!!」

 大城が俺の頭を掴んで揺さぶっている。

「帰ってきた……あなたの声、届いたわ、遠野くん!」

 久住さんは俺の右腕を掴んできた。
 二人の感触が、呆けていた俺を、現実に立ち返らせる。
 周囲は歓声が響き、うるさいほどだ。
 俺はまだ、ショックの抜けていない気持ちのまま、ヘッドセットをつまんだ。

「……ティア……?」
『はい、マスター』

 いとも簡単に返ってくる返事。
 その声が、俺の心に深く染み込んでくる。
 言いたいことがたくさんあった。
 聞きたいこともたくさんあった。
 どこへ行っていたのか、誰かと会ったのか、どうしていたのか、俺の声は本当に届いていたのか、身体は大丈夫なのか、心は無事なのか……
 だが、頭を一瞬で駆けめぐった言葉は、一言に集約された。

「……走れるか?」
『はい』

 力強く。
 ティアは何か吹っ切れたように、はっきりとした返事を返してくる。

「……俺なんかの……指示でも……走れるのか?」
『……俺なんか、っていうの、禁止です』

 ティアに叱られた。
 弱気になっているのは、俺の方か。
 そして、続く言葉。

『マスターと一緒に戦えること、わたしの誇りです。
 世界の誰よりも、マスターを信じています』

 その言葉が俺の心を鷲掴みにした。
 溢れ出したのは、闘志。
 そう、今はまだ、バトルの真っ最中だ。
 勝つ。
 ティアのために、俺のために。
 助けてくれた久住さんとミスティ、待っていてくれる大城と虎実。
 手伝ってくれた四人の女の子たち、それから、海藤とアクア、高村と雪華、日暮店長と地走刑事……俺たちの仲間のために。
 そして、井山との因縁を断ち切るために。

「ティア、お前がそう言ってくれるのなら……一緒に戦おう……勝ちに行くぞ!」
『はい、マスター!』

 俺は立ち上がり、井山を睨む。
 奴は顔を引きつらせていた。
 いまや奴のアドバンテージなどないに等しい。
 それどころか、ほぼ完全な勝利が手から滑り落ちていったのだ。
 井山の顔からは、一切の余裕が消え失せていた

「行くぞ……井山……」

 俺は、左手で、井山をまっすぐ指さした。
 そこで初めて、手のひらに爪が食い込んで傷になっていることに気がついた。
 俺は意に介さず、井山に言葉をぶつける。

「ここからが……本当の戦いだ!!」








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