「血迷ったか!」
特攻を仕掛けてきたエリアーデを迎え撃つ為、アルテミスが手を上げ号令をかけた。
「ってぇぇぇぇ!」
集中する砲火は激しいものだった。隙間なく撃ち続かれるガトリングとレーザーライフル・インフェルノキャノンの最初の量を遥かに超えた集中砲火によって粉塵が巻き上がりエリアーデの姿は見えなくなってしまった。
「撃ち方やめ!警戒は怠るな、必ず生きている」
警戒しながら辺りをうかがうラトに粉塵の中から一つの大きな影が襲いかかってきた。
「きゃあ!」
驚き悲鳴を上げるラト、朱天改は僅かに逸れラトを捉える事は出来なかった。
「おしい!」
「まさか!」
姿を見せたエリアーデにアルテミスは驚いた。いや予想はしていた、装備の頑強さから生きてはいるだろうと、しかしあの集中砲火のダメージが全く見られない。
「下がれ!体勢を立て直す!」
ラトはアルテミスの撤退命令を聞きたくても聞けなかった。エリアーデがことごとく退路を塞ぎ逃げられないのだ。
「逃がしませんわ」
「ラト!」
レトが命令を無視してラトが駆け付ける。二体によるガトリングガンの挟撃
「レト!気を付けて!」
「了解、ラト来るよ!」
「鬱陶しいですわ!」
朱天改が振り下ろされるがそこにはもうラトはいない。
「当たらないよ!」
「それじゃ、これはどうですの!」
エリアーデの背部ユニットの右肩から槍の穂先に似たものが射出される。
「見え見えだっての」
ラトに難なく避けられ壁に突き刺さる。ガトリングガンを構え攻撃を再開するラト
「ラト危ない!」
「かかりましたわね」
「え?」
予期せぬ後ろからの衝撃、エリアーデ側に飛ばされるラト。混乱しているラトの目に見えたのはアンカーの射出口から伸びる糸のようなもの
「まさか」
気付いた時にはもう遅かった。あれは避けさせるのが狙い、壁のパネルを剥がすのが目的、そして後ろからの衝撃は剥がされたパネルがぶつかったものだった。宙を飛ぶラトの終着点にはエリアーデが構えて待っていた。
「おやすみなさい」
「かはっ」
ラトの腹部にチーグル改の左拳がめり込んだ。
「ラト!」
倒れるラトに気を取られ無防備になっていたレトに朱天改が迫る。
「いただきですわ!」
「させん!」
ギリギリだった。全てがギリギリの中で千姫が間に合った。レトに迫る朱天改を千姫が為虎添翼(イコテンヨク)で受け流した。軌道を逸らされた朱天改がフロアパネルを破壊する。
「く!早く引け!」
受け流した千姫の腕が悲鳴を上げる。予想以上の威力、受け流してこれならばまともに受けてはひとたまりもない。構え直される朱天改
「逃がしませんわよ!」
頭上からの大振りの朱天改、それを避けるのは千姫にとって造作もない事、いくら威力があろうと当たらなければ意味はない。しかし避けられない。後ろにはレトがいる。覚悟を決める千姫。
『千姫!』
金属同士がぶつかる特有の音、しかし衝撃は無かった。
「間に合った」
「ですね」
サイファとハウリンが朱天改を受け止めていた。しかし代償は大きかった。ハウリンの腕武・万武とサイファのコルヌにひびが入った。
『エリアーデ、一旦下がって仕切りなおすよ』
「でも、今なら押し切れますわよ」
『いや、ここは下がるんだ。レトを倒せなかったのは残念だけど、そろそろアレの反動が来る』
「……分かりましたわ」
悔しがりながらも下がるエリアーデ。クロエの予告通り反動が襲ってきた。一時的なパワーダウン、これを気取られてはいけない。
サイファ達も距離を置き仕切り直しとなる。
「どうやってあの砲火を・・・」
アルテミスが疑問を呟いた。アルテミスが知りうる限り、どんなに強固であってもあの集中砲火で無傷でいられる方法が無い。稀にバリアを使う者もいるがそれでも多少防げる程度で完全に防ぐ事は不可能だ。
「イージスですわ」
エリアーデが答えた。イージス、あらゆるものを防ぐ神の盾の名を。
「イージス?……イージス?………イージス!?…まさかあんなもの使えるわけが!」
電磁防御兵装イージス、海外の軍隊でも使用されている戦車の砲弾すら防ぐ絶対防御の盾と名高い兵器だが展開中のエネルギーロスが激しく、それに伴う莫大なエネルギー消費はとても神姫に扱えるものではない。
「そのイージスの簡易版ですけれど、確かにあんなもの神姫サイズにして扱おうなんてバカしか思いつかないでしょうね。でも展開の規模と時間の調節次第では扱えるんですのよ」
「それでも」
アルテミスの疑問は解消しきれない。使う以前にそもそもどうやって縮小出来たのだ?それに仮にも兵器の一種、どうやって情報を得た?機密情報扱いのはず、それにエネルギーの問題が解決出来ない。
「あなたのおかげですわ。あなたが前方に火力集中してくれたおかげで出来た芸当ですわ。敬意を表して私のマスターが貴方に言いたい事があるそうですわ。『アルテミス、君はとても優秀だ。あの統率力は他の神姫に真似できないだろう。だけど優秀であるがゆえにとても読み易かった。みんなの特徴を捉えた素晴らしい指揮、勝とうとする意志、どれをとっても一級品、だけどそれでは私達には勝てない。私が恐れていたのは前衛組での足止めそしてそれを巻きこむのを恐れずに行われる後方組による圧倒的な火力での射撃、そうすれば君は勝つ事が出来た。だけど君はそれを選ばない、選ぼうとしない、真っ先にその選択を消したはずだ。なぜならこの勝負の勝つ条件は最後まで生き残る事、だから君はみんながなるべく生き残る様な選択をする。そう考えれば楽なものだよ。君にとって最悪の状態を作っていけばいいのだから、最後に言っておくよ。君はとても優秀だ』以上ですわ」
アルテミスが奥歯を噛んだ。
「…バカ…にして……」
「どうしましたの?」
エリアーデが嘲る様に微笑みかける。それにアルテミスが激昂した。
「バカにするな!」
普段から冷静なアルテミスが感情を剥き出しにし襲いかかろうとした。それを身体を張って止めるマオとハウリン
「落ち着け!挑発に乗るな!」
いさめる千姫、しかしアルテミスの怒りは収まらない
「だけど!」
「冷静さを失うな!お前の判断を鈍らせる作戦だろうが!」
『千姫の言う通りよ。相手の挑発に乗らないで冷静に行きましょう』
「お姉さまは悔しくないのですか!?」
『悔しいに決まってるでしょ!あんな馬鹿にされたの初めてよ!……でもここで取り乱せば相手の思うつぼ、だからここは少し冷静になって』
オーナーの言葉にアルテミスが少し落ち着きを取り戻す。
「お姉さま……すみません。自分を見失う所でした」
「あら、残念ですわ。来たら歓迎して差し上げましたのに」
もうアルテミスは挑発に乗らなかった。イージスの反動であるエリアーデのパワーダウンも回復し、いつでも行ける体制を作る。
「マスター晶」
「なにサイファ」
「私はエリアーデとクロエ、いえ、特にクロエの評価を変えなければいけません。あの昼行燈、おそらくまだ本気を見せていません」
「そうね。初めて見たわ、クロエさんがエリアーデに作戦と指示を出すところ、エリアーデの我が儘な性格に救われたってところかしら……やっぱりカッコいいなクロエさん」
「……マスター…」
緊迫を崩す晶の恋する乙女っぷりに呆れるサイファ
『アルテミス、相手は狡猾さと凶悪を併せ持った魔王よ。だから……』
「みなさん、作戦を変更します。少々危険ですが千姫とサイファを中心に接近戦を仕掛けて長期戦に持ち込んでください。エリアーデのスタミナ切れを狙います」
特攻を仕掛けてきたエリアーデを迎え撃つ為、アルテミスが手を上げ号令をかけた。
「ってぇぇぇぇ!」
集中する砲火は激しいものだった。隙間なく撃ち続かれるガトリングとレーザーライフル・インフェルノキャノンの最初の量を遥かに超えた集中砲火によって粉塵が巻き上がりエリアーデの姿は見えなくなってしまった。
「撃ち方やめ!警戒は怠るな、必ず生きている」
警戒しながら辺りをうかがうラトに粉塵の中から一つの大きな影が襲いかかってきた。
「きゃあ!」
驚き悲鳴を上げるラト、朱天改は僅かに逸れラトを捉える事は出来なかった。
「おしい!」
「まさか!」
姿を見せたエリアーデにアルテミスは驚いた。いや予想はしていた、装備の頑強さから生きてはいるだろうと、しかしあの集中砲火のダメージが全く見られない。
「下がれ!体勢を立て直す!」
ラトはアルテミスの撤退命令を聞きたくても聞けなかった。エリアーデがことごとく退路を塞ぎ逃げられないのだ。
「逃がしませんわ」
「ラト!」
レトが命令を無視してラトが駆け付ける。二体によるガトリングガンの挟撃
「レト!気を付けて!」
「了解、ラト来るよ!」
「鬱陶しいですわ!」
朱天改が振り下ろされるがそこにはもうラトはいない。
「当たらないよ!」
「それじゃ、これはどうですの!」
エリアーデの背部ユニットの右肩から槍の穂先に似たものが射出される。
「見え見えだっての」
ラトに難なく避けられ壁に突き刺さる。ガトリングガンを構え攻撃を再開するラト
「ラト危ない!」
「かかりましたわね」
「え?」
予期せぬ後ろからの衝撃、エリアーデ側に飛ばされるラト。混乱しているラトの目に見えたのはアンカーの射出口から伸びる糸のようなもの
「まさか」
気付いた時にはもう遅かった。あれは避けさせるのが狙い、壁のパネルを剥がすのが目的、そして後ろからの衝撃は剥がされたパネルがぶつかったものだった。宙を飛ぶラトの終着点にはエリアーデが構えて待っていた。
「おやすみなさい」
「かはっ」
ラトの腹部にチーグル改の左拳がめり込んだ。
「ラト!」
倒れるラトに気を取られ無防備になっていたレトに朱天改が迫る。
「いただきですわ!」
「させん!」
ギリギリだった。全てがギリギリの中で千姫が間に合った。レトに迫る朱天改を千姫が為虎添翼(イコテンヨク)で受け流した。軌道を逸らされた朱天改がフロアパネルを破壊する。
「く!早く引け!」
受け流した千姫の腕が悲鳴を上げる。予想以上の威力、受け流してこれならばまともに受けてはひとたまりもない。構え直される朱天改
「逃がしませんわよ!」
頭上からの大振りの朱天改、それを避けるのは千姫にとって造作もない事、いくら威力があろうと当たらなければ意味はない。しかし避けられない。後ろにはレトがいる。覚悟を決める千姫。
『千姫!』
金属同士がぶつかる特有の音、しかし衝撃は無かった。
「間に合った」
「ですね」
サイファとハウリンが朱天改を受け止めていた。しかし代償は大きかった。ハウリンの腕武・万武とサイファのコルヌにひびが入った。
『エリアーデ、一旦下がって仕切りなおすよ』
「でも、今なら押し切れますわよ」
『いや、ここは下がるんだ。レトを倒せなかったのは残念だけど、そろそろアレの反動が来る』
「……分かりましたわ」
悔しがりながらも下がるエリアーデ。クロエの予告通り反動が襲ってきた。一時的なパワーダウン、これを気取られてはいけない。
サイファ達も距離を置き仕切り直しとなる。
「どうやってあの砲火を・・・」
アルテミスが疑問を呟いた。アルテミスが知りうる限り、どんなに強固であってもあの集中砲火で無傷でいられる方法が無い。稀にバリアを使う者もいるがそれでも多少防げる程度で完全に防ぐ事は不可能だ。
「イージスですわ」
エリアーデが答えた。イージス、あらゆるものを防ぐ神の盾の名を。
「イージス?……イージス?………イージス!?…まさかあんなもの使えるわけが!」
電磁防御兵装イージス、海外の軍隊でも使用されている戦車の砲弾すら防ぐ絶対防御の盾と名高い兵器だが展開中のエネルギーロスが激しく、それに伴う莫大なエネルギー消費はとても神姫に扱えるものではない。
「そのイージスの簡易版ですけれど、確かにあんなもの神姫サイズにして扱おうなんてバカしか思いつかないでしょうね。でも展開の規模と時間の調節次第では扱えるんですのよ」
「それでも」
アルテミスの疑問は解消しきれない。使う以前にそもそもどうやって縮小出来たのだ?それに仮にも兵器の一種、どうやって情報を得た?機密情報扱いのはず、それにエネルギーの問題が解決出来ない。
「あなたのおかげですわ。あなたが前方に火力集中してくれたおかげで出来た芸当ですわ。敬意を表して私のマスターが貴方に言いたい事があるそうですわ。『アルテミス、君はとても優秀だ。あの統率力は他の神姫に真似できないだろう。だけど優秀であるがゆえにとても読み易かった。みんなの特徴を捉えた素晴らしい指揮、勝とうとする意志、どれをとっても一級品、だけどそれでは私達には勝てない。私が恐れていたのは前衛組での足止めそしてそれを巻きこむのを恐れずに行われる後方組による圧倒的な火力での射撃、そうすれば君は勝つ事が出来た。だけど君はそれを選ばない、選ぼうとしない、真っ先にその選択を消したはずだ。なぜならこの勝負の勝つ条件は最後まで生き残る事、だから君はみんながなるべく生き残る様な選択をする。そう考えれば楽なものだよ。君にとって最悪の状態を作っていけばいいのだから、最後に言っておくよ。君はとても優秀だ』以上ですわ」
アルテミスが奥歯を噛んだ。
「…バカ…にして……」
「どうしましたの?」
エリアーデが嘲る様に微笑みかける。それにアルテミスが激昂した。
「バカにするな!」
普段から冷静なアルテミスが感情を剥き出しにし襲いかかろうとした。それを身体を張って止めるマオとハウリン
「落ち着け!挑発に乗るな!」
いさめる千姫、しかしアルテミスの怒りは収まらない
「だけど!」
「冷静さを失うな!お前の判断を鈍らせる作戦だろうが!」
『千姫の言う通りよ。相手の挑発に乗らないで冷静に行きましょう』
「お姉さまは悔しくないのですか!?」
『悔しいに決まってるでしょ!あんな馬鹿にされたの初めてよ!……でもここで取り乱せば相手の思うつぼ、だからここは少し冷静になって』
オーナーの言葉にアルテミスが少し落ち着きを取り戻す。
「お姉さま……すみません。自分を見失う所でした」
「あら、残念ですわ。来たら歓迎して差し上げましたのに」
もうアルテミスは挑発に乗らなかった。イージスの反動であるエリアーデのパワーダウンも回復し、いつでも行ける体制を作る。
「マスター晶」
「なにサイファ」
「私はエリアーデとクロエ、いえ、特にクロエの評価を変えなければいけません。あの昼行燈、おそらくまだ本気を見せていません」
「そうね。初めて見たわ、クロエさんがエリアーデに作戦と指示を出すところ、エリアーデの我が儘な性格に救われたってところかしら……やっぱりカッコいいなクロエさん」
「……マスター…」
緊迫を崩す晶の恋する乙女っぷりに呆れるサイファ
『アルテミス、相手は狡猾さと凶悪を併せ持った魔王よ。だから……』
「みなさん、作戦を変更します。少々危険ですが千姫とサイファを中心に接近戦を仕掛けて長期戦に持ち込んでください。エリアーデのスタミナ切れを狙います」
再びの乱戦、その中でエリアーデが狙いを定めたのはマオチャオ型のマオ
エリアーデの片手で振るわれる朱天改がマオを狙う
「ダメだ!まともに受けるな!」
千姫が叫ぶ。
「切れ味のない刃物なんか怖くなっ!」
受け止めた瞬間に衝袖(ヒューシウ)が軋み唸りを上げ始めた。想像以上にこの一撃は重過ぎた。エリアーデが微笑を浮かべる。
「ふふ、怖くないですって?じゃあこれはどう?」
さらに力を込めると衝袖が下がり、刃がマオの首筋を捉えた。
「うっ」
「さようなら」
朱天改を両手で握り、斬り伏せる。
「三体目ですわね。次はどなたかしら?」
予想外だった。というのが観客達の率直な意見だろう。ここまで圧倒的な強さを持っているのに何故ランカーとして名を連ねていないのか。
「来ませんの?それじゃこちらから行かせてもらいますわよ!」
その鈍重な見た目からは想像できない速度は決して速すぎるものではないが十分な脅威の一因となっていた。
四本のサブアーム、チーグル改とそれによって振るわれる重厚な朱天改による攻撃は他を寄せ付けない嵐のようだった。
「くっ、近づけない」
「全員下がりなさい!下がってスタミナ切れを…」
アルテミスとサイファの心に一抹の不安が過ぎる。スタミナ、電力の切れる五分はとうに過ぎ、開始から30分経っているのにどうしてここまで動けるのか、何かカラクリがあるのだろうが今はこの作戦に賭けるしかない。
アルテミス達の不安をよそにエリアーデは攻撃の手を緩めない、それどころか更に苛烈になっていく。
逃げの一手に徹した神姫達の回避能力は高かった。が逃げ切れず捕まり倒される者が出始めた。
「捕まえた」
レトの頭部をチーグル改で掴み、床に叩きつける。
「ぐあっ」
気絶したレトの腹部を膝で圧し掛かる様に抑えるエリアーデ、そして動きが止まった所に二体の神姫が攻撃を仕掛ける。
「「もらった!」」
「甘いですわ」
飛鳥とハウリンによるコンビネーション攻撃を朱天改とチーグル改二本で見事なまでに捌き、膠着状態へと持ち込む。
「まさか、ここまでとは」
ハウリンは驚いた。まさか己が拳をサブアームに阻まれるとは
「強い」
飛鳥も信じられなかった。朱天のような大剣で斬撃の全てを捌かれるとは
「あなた方もなかなか強いようですけど、まだまだですわね」
「く!私達が抑えているうちに早く!」
飛鳥とハウリンが更に力を込め、抑えにかかる。
「ふふ、自分達が抑えているから文字通り手出しできないと思っているのでしょう?でも切り札というモノがあるのですわ!」
「離れろ!」
サイファの声に二人が離れる。それとほぼ同時にエリアーデの切り札であるモノが披露された。
ドン!
空気を震わせる独特の重音、それは
「なぜ、そんなものを」
銃火器を扱わないはずのエリアーデによる膝のカノン砲、驚くサイファにエリアーデが答えた。
「驚きまして?サイファ、私確かに銃火器は苦手ですけど、撃てないとは言っていませんわよ?ましてこの距離外しようがありませんわ」
密着させての零距離ニーカノン。エリアーデの膝に隠し武装として装備されているのだが、実はエリアーデ自身初めて使った武器だった。
立ち上がるエリアーデ、レトは立ち上がる気配を見せなかった。
「さぁ四体目ですわね。次はどなた?・・・あら?」
力が抜けたように膝をつくエリアーデ
「時間がきた様です。卑怯などと言わないでください、これも勝つ為の最善の一手です」
アルテミスの言っていたスタミナ切れ、これで動けなくなるはずだった。しかしエリアーデには焦り一つ浮かばずそれどころか笑みを浮かべたのだ。
「ふふ、あっははははははは!どうして短期決戦型の私が一時間の勝負に了解したと思っているのかしら?」
「なに?・・・まさか!」
何かに気づいたサイファ、動けないエリアーデに止めを刺そうと二体の神姫が迫った。
「「止め!」」
「不用意に近づくな!」
「もう遅いですわ」
スタミナ切れで動かないはずのチーグル改に力が籠り、朱天改を力一杯薙ぎ払った。
「な!?」
「がっ!」
ギリギリまで引き付けられていた為回避する事も出来ず、薙ぎ払いによって吹き飛ばされるハウリンと飛鳥、それによって二体は脱落した。
「やられた!」
「魔王め!」
アルテミスとサイファが苦々しい顔をした。
気を引き締めていたはずなのに、まさかスタミナ切れの作戦を読まれ、それを逆手に取られるとは。
「ふふ、これも勝つ為の最善の一手と言うモノですわ。でもこういう策と言うのはどうも好きになれませんわね。クロエここから先は私の好きにやらせてもらいますわよ」
『了解、それと手の内はもう全て明かしていいですよ。と言ってももうバレているようなものだけどね』
「みなさま、残念ですけれど今日の私にスタミナ切れはありませんわよ。まぁ最後の敵と言うモノは往々にして理不尽なものですわ」
このステージにいる限り外部供給パーツを通じてエリアーデには常に電力供給される。つまり最初から最後まで無敵状態、まさしく魔王と言ったところか
「さぁ、みな様、準備はよろしいかしら?私の全力受け止めてくださいませ」
残り、アルテミス、千姫、サイファ、ウィトゥルース、計四体
エリアーデの片手で振るわれる朱天改がマオを狙う
「ダメだ!まともに受けるな!」
千姫が叫ぶ。
「切れ味のない刃物なんか怖くなっ!」
受け止めた瞬間に衝袖(ヒューシウ)が軋み唸りを上げ始めた。想像以上にこの一撃は重過ぎた。エリアーデが微笑を浮かべる。
「ふふ、怖くないですって?じゃあこれはどう?」
さらに力を込めると衝袖が下がり、刃がマオの首筋を捉えた。
「うっ」
「さようなら」
朱天改を両手で握り、斬り伏せる。
「三体目ですわね。次はどなたかしら?」
予想外だった。というのが観客達の率直な意見だろう。ここまで圧倒的な強さを持っているのに何故ランカーとして名を連ねていないのか。
「来ませんの?それじゃこちらから行かせてもらいますわよ!」
その鈍重な見た目からは想像できない速度は決して速すぎるものではないが十分な脅威の一因となっていた。
四本のサブアーム、チーグル改とそれによって振るわれる重厚な朱天改による攻撃は他を寄せ付けない嵐のようだった。
「くっ、近づけない」
「全員下がりなさい!下がってスタミナ切れを…」
アルテミスとサイファの心に一抹の不安が過ぎる。スタミナ、電力の切れる五分はとうに過ぎ、開始から30分経っているのにどうしてここまで動けるのか、何かカラクリがあるのだろうが今はこの作戦に賭けるしかない。
アルテミス達の不安をよそにエリアーデは攻撃の手を緩めない、それどころか更に苛烈になっていく。
逃げの一手に徹した神姫達の回避能力は高かった。が逃げ切れず捕まり倒される者が出始めた。
「捕まえた」
レトの頭部をチーグル改で掴み、床に叩きつける。
「ぐあっ」
気絶したレトの腹部を膝で圧し掛かる様に抑えるエリアーデ、そして動きが止まった所に二体の神姫が攻撃を仕掛ける。
「「もらった!」」
「甘いですわ」
飛鳥とハウリンによるコンビネーション攻撃を朱天改とチーグル改二本で見事なまでに捌き、膠着状態へと持ち込む。
「まさか、ここまでとは」
ハウリンは驚いた。まさか己が拳をサブアームに阻まれるとは
「強い」
飛鳥も信じられなかった。朱天のような大剣で斬撃の全てを捌かれるとは
「あなた方もなかなか強いようですけど、まだまだですわね」
「く!私達が抑えているうちに早く!」
飛鳥とハウリンが更に力を込め、抑えにかかる。
「ふふ、自分達が抑えているから文字通り手出しできないと思っているのでしょう?でも切り札というモノがあるのですわ!」
「離れろ!」
サイファの声に二人が離れる。それとほぼ同時にエリアーデの切り札であるモノが披露された。
ドン!
空気を震わせる独特の重音、それは
「なぜ、そんなものを」
銃火器を扱わないはずのエリアーデによる膝のカノン砲、驚くサイファにエリアーデが答えた。
「驚きまして?サイファ、私確かに銃火器は苦手ですけど、撃てないとは言っていませんわよ?ましてこの距離外しようがありませんわ」
密着させての零距離ニーカノン。エリアーデの膝に隠し武装として装備されているのだが、実はエリアーデ自身初めて使った武器だった。
立ち上がるエリアーデ、レトは立ち上がる気配を見せなかった。
「さぁ四体目ですわね。次はどなた?・・・あら?」
力が抜けたように膝をつくエリアーデ
「時間がきた様です。卑怯などと言わないでください、これも勝つ為の最善の一手です」
アルテミスの言っていたスタミナ切れ、これで動けなくなるはずだった。しかしエリアーデには焦り一つ浮かばずそれどころか笑みを浮かべたのだ。
「ふふ、あっははははははは!どうして短期決戦型の私が一時間の勝負に了解したと思っているのかしら?」
「なに?・・・まさか!」
何かに気づいたサイファ、動けないエリアーデに止めを刺そうと二体の神姫が迫った。
「「止め!」」
「不用意に近づくな!」
「もう遅いですわ」
スタミナ切れで動かないはずのチーグル改に力が籠り、朱天改を力一杯薙ぎ払った。
「な!?」
「がっ!」
ギリギリまで引き付けられていた為回避する事も出来ず、薙ぎ払いによって吹き飛ばされるハウリンと飛鳥、それによって二体は脱落した。
「やられた!」
「魔王め!」
アルテミスとサイファが苦々しい顔をした。
気を引き締めていたはずなのに、まさかスタミナ切れの作戦を読まれ、それを逆手に取られるとは。
「ふふ、これも勝つ為の最善の一手と言うモノですわ。でもこういう策と言うのはどうも好きになれませんわね。クロエここから先は私の好きにやらせてもらいますわよ」
『了解、それと手の内はもう全て明かしていいですよ。と言ってももうバレているようなものだけどね』
「みなさま、残念ですけれど今日の私にスタミナ切れはありませんわよ。まぁ最後の敵と言うモノは往々にして理不尽なものですわ」
このステージにいる限り外部供給パーツを通じてエリアーデには常に電力供給される。つまり最初から最後まで無敵状態、まさしく魔王と言ったところか
「さぁ、みな様、準備はよろしいかしら?私の全力受け止めてくださいませ」
残り、アルテミス、千姫、サイファ、ウィトゥルース、計四体