ハロウィンパーティー最終日
最終日とあって200人は入るはずのイベントホールに入りきれないほどの人数が集まっていた。
混みあうサロンルームで昼食を終え、食後のコーヒーを楽しむクロエと晶
「今日で最終日ですけど体調はどうですか?」
「万全ですよ。サイファもメディカルルームで最終調整中です」
「武装の方はどうです?要望があれば出来る限りでやりますけど」
「そうですね。特に不満は無いようですけど、もう少しスピードとトップの時の安定感が欲しいって言ってましたね」
「スピードと安定ですか、スピードの方は出来る事は出来ますけどあれ以上は厳しいですよ。出力強化をして装甲もかなり削っていますし、これ以上削るとなると自分のスピードに負けて破損しますからね。安定感も欲しいとなると素材から見直しての自作パーツって事になりますけど・・・」
「すみません、一応聞きますけど自作になるとその金額は・・・」
「バックユニットだけで少なく見積もっても、10万以上は覚悟した方が・・・」
「無理です。学生でアルバイトしながらの一人暮らしにはそんなお金出せません。でも普通自作って安く上がるんじゃ」
「自作と言っても部品屋から買って組み上げるって訳じゃなくて。素材から作る訳ですから有名店にオーダーするようなものですよ。それにさっき上げた値段だって一番少ない見積もりだからその倍以上は・・・」
既製品や自作で満足出来ない全国ランカーや凝ったオーナーは自分の要望通り作ってくれる店に頼む。
「ますます無理ですよ」
「まぁ神姫はお金がかかりますからね。それに大きな不満でないなら現状はそのままでいいと思いますよ?今の武装で出来るところまでやってそれで満足出来ないのだったらオーダーすると良いですよ」
「そうですよね。無理して変える必要ないですよね。あ、そろそろ時間ですね」
「もう時間ですか、それじゃがんばってきてください」
「はい!」
晶の背中を見送るクロエの携帯に一通のメールが届く。
「それじゃ、私もそろそろ行きますか」
晶の去って行った方向に背を向け雑踏の中に消える。
最終日とあって200人は入るはずのイベントホールに入りきれないほどの人数が集まっていた。
混みあうサロンルームで昼食を終え、食後のコーヒーを楽しむクロエと晶
「今日で最終日ですけど体調はどうですか?」
「万全ですよ。サイファもメディカルルームで最終調整中です」
「武装の方はどうです?要望があれば出来る限りでやりますけど」
「そうですね。特に不満は無いようですけど、もう少しスピードとトップの時の安定感が欲しいって言ってましたね」
「スピードと安定ですか、スピードの方は出来る事は出来ますけどあれ以上は厳しいですよ。出力強化をして装甲もかなり削っていますし、これ以上削るとなると自分のスピードに負けて破損しますからね。安定感も欲しいとなると素材から見直しての自作パーツって事になりますけど・・・」
「すみません、一応聞きますけど自作になるとその金額は・・・」
「バックユニットだけで少なく見積もっても、10万以上は覚悟した方が・・・」
「無理です。学生でアルバイトしながらの一人暮らしにはそんなお金出せません。でも普通自作って安く上がるんじゃ」
「自作と言っても部品屋から買って組み上げるって訳じゃなくて。素材から作る訳ですから有名店にオーダーするようなものですよ。それにさっき上げた値段だって一番少ない見積もりだからその倍以上は・・・」
既製品や自作で満足出来ない全国ランカーや凝ったオーナーは自分の要望通り作ってくれる店に頼む。
「ますます無理ですよ」
「まぁ神姫はお金がかかりますからね。それに大きな不満でないなら現状はそのままでいいと思いますよ?今の武装で出来るところまでやってそれで満足出来ないのだったらオーダーすると良いですよ」
「そうですよね。無理して変える必要ないですよね。あ、そろそろ時間ですね」
「もう時間ですか、それじゃがんばってきてください」
「はい!」
晶の背中を見送るクロエの携帯に一通のメールが届く。
「それじゃ、私もそろそろ行きますか」
晶の去って行った方向に背を向け雑踏の中に消える。
ステージ上には二日間のイベントを経て選ばれた歴戦の10人の神姫とそのオーナー、そして色とりどりのレーザー光線にスポットライトと鳴り響くバックミュージックを共に誰よりもド派手に、前日よりもバージョンアップし過ぎたかなりきわどい衣装の煌めく魔女?の恰好をした司会者が出てきた。
「さぁ!みなさんお待ちかねの~ハロウィンパーティー最終日!二日間を勝ち抜いた10人の勇者のみなさん!今日を勝ち抜けば豪華景品が授与されます!その景品は~こちら!来年日本で行われる世界神姫女王杯のS席ペアチケットと仙石神姫センター限定の一年間のフリーパス!」
盛り上がる観客に気分を良くする司会者
「それでは!ダンジョンにコロッセオと続き最後のイベントはこちらです!」
突如照明が落ちどよめいていると、ステージ上のスクリーンに映像が映し出された。それはハロウィンの名にふさわしいおどろおどろしい古城、今度は神姫センターの隣にある神姫ビッグホール内に作られた大掛かりな仕掛けこの城を使ってのイベントだ。
「魔王城!みなさんにはこの魔王城を使ってRPGをしてもらいます。10名でパーティーを組んでもらい協力して、最上階に居る魔王を倒していただきます。この魔王を倒すもしくは制限時間経過時点で生き残っている方が今回のイベントハロウィンパーティーの勝者となり、豪華景品を受け取っていただきます!」
魔王を倒すだけ、聞けば一見簡単に出来そうだがそうはいかない。司会者があの不吉な笑みを浮かべたのだ。
「ただし、魔王城ですので当然、配下である悪の神姫を倒しながら進んで行くことになるわけですが、今回の魔王は強いですよ。何しろあの有名な神姫に来ていただいたんですから、正体は見てのお楽しみ!なんてケチな事は言いません!それでは魔王に出てきていただきましょう!」
スクリーンに魔王城最上階内部が映し出されると観客達が大興奮しはじめた。昨日は歴代ワールドクィーンが来たのだそれ以上となると、もう想像がつかない。
最上階内部では大量のスモークが焚かれ、スクリーンは白一色になった。
「ほほほほほっ、けほっ!こほっ!ちょっと!煙多すぎ!」
本当に大量のスモークに咽る魔王、ようやくスモークが晴れると少し涙目のエリアーデがいた。
「けほ、こほっ、あ・・・んんっ!私がお相手して差し上げますわ」
カメラに気付き、咳払いし澄まして見せるが少し遅かった。静かな会場、呆気にとられるなどそういう問題ではなくただリアクションに困っているという雰囲気が流れる。
そんな中、晶だけが驚いていた。
「何なのですの!この盛り上がりに欠ける雰囲気は!」
それを見ていたクロエはエリアーデが不憫に感じた。
「うん、まぁそうなるよね。これは」
この雰囲気の諸悪の根源は昨日のせいでもある。歴代のワールドクィーンが5人も来たのだ、それに司会者の煽りも一因とも言えよう、ああ言われたら観客は勝手にワールドクィーンが今日も登場すると思うだろう。しかしそんな中でも登場してきたエリアーデのハートの強さには恐れ入る。
「もう!イベントなんて関係ありませんわ!全滅させてやる!」
とても魔王らしい一言だった。
エリアーデの全滅宣言で幕を閉じた開幕式
関係者控室の一室、イベント開始まで1時間ほど空きが出来たのでクロエの部屋に芽衣とアムが遊びに来ていた。
「驚きましたよ。まさかクロエさん達が最後のメインイベントだなんて、でもどうして?」
「企画者の人に直接、今回のイベントに是非エリアーデに協力して欲しいと言われましてね」
「私が一番美しいからなんて言われては悪い気もしませんわ。だから渋々ながら協力してあげる事にしたのですわ。ですわよねクロエ?」
「そうなんですか?すごいです!」
アムの羨望の眼差しを受けて胸を張るエリアーデと何故か目を逸らしたクロエ
「あぁ、そうだね」
言えなかった。本当は一番見た目が悪役っぽいから選ばれただなんて言えるわけない。ようやくバナナチョコヂェリカンで機嫌が少しずつ直しているのに今そんな本当の事を言ったら参加者どころかイベントそのものを壊しかねない。
「十対一なんて大丈夫なんですか?」
「あぁ、そこいら辺はね。今回特別処置って事でまぁ、いろいろ面白い事にはなっていますよ。あ、そろそろ時間ですね。エリアーデ」
「あまり乗り気ではありませんけど、行くしかありませんわね」
「さぁ!みなさんお待ちかねの~ハロウィンパーティー最終日!二日間を勝ち抜いた10人の勇者のみなさん!今日を勝ち抜けば豪華景品が授与されます!その景品は~こちら!来年日本で行われる世界神姫女王杯のS席ペアチケットと仙石神姫センター限定の一年間のフリーパス!」
盛り上がる観客に気分を良くする司会者
「それでは!ダンジョンにコロッセオと続き最後のイベントはこちらです!」
突如照明が落ちどよめいていると、ステージ上のスクリーンに映像が映し出された。それはハロウィンの名にふさわしいおどろおどろしい古城、今度は神姫センターの隣にある神姫ビッグホール内に作られた大掛かりな仕掛けこの城を使ってのイベントだ。
「魔王城!みなさんにはこの魔王城を使ってRPGをしてもらいます。10名でパーティーを組んでもらい協力して、最上階に居る魔王を倒していただきます。この魔王を倒すもしくは制限時間経過時点で生き残っている方が今回のイベントハロウィンパーティーの勝者となり、豪華景品を受け取っていただきます!」
魔王を倒すだけ、聞けば一見簡単に出来そうだがそうはいかない。司会者があの不吉な笑みを浮かべたのだ。
「ただし、魔王城ですので当然、配下である悪の神姫を倒しながら進んで行くことになるわけですが、今回の魔王は強いですよ。何しろあの有名な神姫に来ていただいたんですから、正体は見てのお楽しみ!なんてケチな事は言いません!それでは魔王に出てきていただきましょう!」
スクリーンに魔王城最上階内部が映し出されると観客達が大興奮しはじめた。昨日は歴代ワールドクィーンが来たのだそれ以上となると、もう想像がつかない。
最上階内部では大量のスモークが焚かれ、スクリーンは白一色になった。
「ほほほほほっ、けほっ!こほっ!ちょっと!煙多すぎ!」
本当に大量のスモークに咽る魔王、ようやくスモークが晴れると少し涙目のエリアーデがいた。
「けほ、こほっ、あ・・・んんっ!私がお相手して差し上げますわ」
カメラに気付き、咳払いし澄まして見せるが少し遅かった。静かな会場、呆気にとられるなどそういう問題ではなくただリアクションに困っているという雰囲気が流れる。
そんな中、晶だけが驚いていた。
「何なのですの!この盛り上がりに欠ける雰囲気は!」
それを見ていたクロエはエリアーデが不憫に感じた。
「うん、まぁそうなるよね。これは」
この雰囲気の諸悪の根源は昨日のせいでもある。歴代のワールドクィーンが5人も来たのだ、それに司会者の煽りも一因とも言えよう、ああ言われたら観客は勝手にワールドクィーンが今日も登場すると思うだろう。しかしそんな中でも登場してきたエリアーデのハートの強さには恐れ入る。
「もう!イベントなんて関係ありませんわ!全滅させてやる!」
とても魔王らしい一言だった。
エリアーデの全滅宣言で幕を閉じた開幕式
関係者控室の一室、イベント開始まで1時間ほど空きが出来たのでクロエの部屋に芽衣とアムが遊びに来ていた。
「驚きましたよ。まさかクロエさん達が最後のメインイベントだなんて、でもどうして?」
「企画者の人に直接、今回のイベントに是非エリアーデに協力して欲しいと言われましてね」
「私が一番美しいからなんて言われては悪い気もしませんわ。だから渋々ながら協力してあげる事にしたのですわ。ですわよねクロエ?」
「そうなんですか?すごいです!」
アムの羨望の眼差しを受けて胸を張るエリアーデと何故か目を逸らしたクロエ
「あぁ、そうだね」
言えなかった。本当は一番見た目が悪役っぽいから選ばれただなんて言えるわけない。ようやくバナナチョコヂェリカンで機嫌が少しずつ直しているのに今そんな本当の事を言ったら参加者どころかイベントそのものを壊しかねない。
「十対一なんて大丈夫なんですか?」
「あぁ、そこいら辺はね。今回特別処置って事でまぁ、いろいろ面白い事にはなっていますよ。あ、そろそろ時間ですね。エリアーデ」
「あまり乗り気ではありませんけど、行くしかありませんわね」
「ふふははははははははっ!!小賢しいですわ!」
イベントが始まり蓋を開けてみればクロエの心配をよそに意外とノリノリだった。
司会者の言っていた魔王の手下達は二日間を生き抜いた神姫達には非常に物足りないもので予定よりも早く到着、待っていたのは
バックユニットから伸びる四本のサブアームと大鎌のような翼、ミニスカートのように並んだ6機の小型ブースター、顔は半分マスクで覆われ口元でしか表情は窺えない。それら鋼の塊を支えるのは獣のような力強い二本の脚。魔王にふさわしい姿をしたエリアーデ
そして現在バトルの真っ最中。
エリアーデを囲むように前衛をサイファと千姫達による五人で担当し後衛が位置に就くまで時間を稼ぐ。
「サイファ!いけるよ!」
「よし!前衛下がるぞ!」
下がると同時に砲火が集中する。
『エリアーデ、守りを固めるんだ』
ウィルトゥース・アーンヴァルとムルメルティアによる砲撃、ゼルノグラートの速射でエリアーデは動く事が出来ずにいた。
「ああもう!」
緩む事のない砲火に防御一徹のエリアーデが苛立ち始め、このままで終わりかと思われた時に、切れた。
「舐めるなぁぁぁぁぁぁ!」
直撃覚悟で防御を解き、撃ち終わり直後で硬直していたムルメルティアに力一杯、朱天改を投げつけた。予想外の動きに護衛をしていたマオチャオが反応できなかった。
「きゃああぁぁぁぁぁぁぁ」
硬直が解けず朱天改をまともにうけたムルメルティアが脱落した。
「まず一体!」
崩れた一角へ走り出し、それを追うように弾丸も飛んでくる。
「マオ!かまわず逃げろ!」
千姫の言葉にマオが戸惑った。
「でも!」
「早く!」
「う~ごめん!」
マオには目もくれずエリアーデは床へ刺さっていた朱天改の陰へとまわる。
「撃ち方やめ!」
アーンヴァルの号令に砲火が止んだ。肩で息をするエリアーデ
「ふ~、ふ~、さすがですわ、サイファに千姫、『双銃』のレトとラト、そして『光指す者』アルテミス。噂通りの切れ者ですわね」
「ありがとう。でも貴方も噂以上です。『拳様』まさかあの包囲を突破するとは見た目以上に固いようですね」
「当たりまえですわ。クロエが私の為に作ったモノを簡単に砕けるとは思わないで」
「惚気ですか」
とアルテミス
「のろけだな」
千姫が
「はいはい、ノロケノロケ」
とサイファ
「「ノロケ~ノロケ~」」
レトとラトがハモる
冷やかされるエリアーデの顔が紅くなる。
「う、うるさいですわ!別に惚気た訳ではっ・・・!」
朱天改から顔を出した所をレトに撃たれた
「あら、惜しい」
狙撃の指示をしたアルテミスが笑顔で悔しがるふりをする。
「卑怯ですわよ!」
「戦いの最中に気を抜く貴方が悪い」
「もう許せませんわ!」
『エリアーデ、落ち着くんだ』
「なんですの!」
『落ち着いて、今うかつに動いて勝ちを捨てるのかい?』
「く!分かりましたわ。何か策があるんですの?」
『はっきり言ってない』
「な!何ですのそれ!」
『まぁ落ち着いて』
「これが落ち着いて」
『最後まで聞くんだ。この状態を切り抜けるにはとても厳しいが人数を減らすしかない。アルテミスの指示で軍隊のように動く相手、特にレトとラトのガトリングと息の合った連携はチャージが必要な高威力の大砲組より足を止められてしまうから厄介だ。まずはこのレトとラトを倒す必要がある』
「倒すってだから、その手段を―」
『アレを使うよ』
「アレって、アレはエネルギーの消費が激しすぎて実戦には使えないって、装備もしていませんわよ」
『今日はフル装備って言ったはずだよ。アルテミスをどうにかするにはそれくらいの意外性が必要だ。それに今日なら出来るはずですよ?今日だけならね』
クロエの含みのある言葉にエリアーデが微笑んだ。
そうだった。これが我がマスター、私に全力を出させてくれる最高のマスターだ。
「そうでしたわね。忘れていましたわ、今日は何も気にしなくて良いんでしたわね」
エリアーデが立ち上がり刺さっていた朱天改を抜き放つ
「行きますわよ!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
エリアーデが特攻を仕掛けた。
イベントが始まり蓋を開けてみればクロエの心配をよそに意外とノリノリだった。
司会者の言っていた魔王の手下達は二日間を生き抜いた神姫達には非常に物足りないもので予定よりも早く到着、待っていたのは
バックユニットから伸びる四本のサブアームと大鎌のような翼、ミニスカートのように並んだ6機の小型ブースター、顔は半分マスクで覆われ口元でしか表情は窺えない。それら鋼の塊を支えるのは獣のような力強い二本の脚。魔王にふさわしい姿をしたエリアーデ
そして現在バトルの真っ最中。
エリアーデを囲むように前衛をサイファと千姫達による五人で担当し後衛が位置に就くまで時間を稼ぐ。
「サイファ!いけるよ!」
「よし!前衛下がるぞ!」
下がると同時に砲火が集中する。
『エリアーデ、守りを固めるんだ』
ウィルトゥース・アーンヴァルとムルメルティアによる砲撃、ゼルノグラートの速射でエリアーデは動く事が出来ずにいた。
「ああもう!」
緩む事のない砲火に防御一徹のエリアーデが苛立ち始め、このままで終わりかと思われた時に、切れた。
「舐めるなぁぁぁぁぁぁ!」
直撃覚悟で防御を解き、撃ち終わり直後で硬直していたムルメルティアに力一杯、朱天改を投げつけた。予想外の動きに護衛をしていたマオチャオが反応できなかった。
「きゃああぁぁぁぁぁぁぁ」
硬直が解けず朱天改をまともにうけたムルメルティアが脱落した。
「まず一体!」
崩れた一角へ走り出し、それを追うように弾丸も飛んでくる。
「マオ!かまわず逃げろ!」
千姫の言葉にマオが戸惑った。
「でも!」
「早く!」
「う~ごめん!」
マオには目もくれずエリアーデは床へ刺さっていた朱天改の陰へとまわる。
「撃ち方やめ!」
アーンヴァルの号令に砲火が止んだ。肩で息をするエリアーデ
「ふ~、ふ~、さすがですわ、サイファに千姫、『双銃』のレトとラト、そして『光指す者』アルテミス。噂通りの切れ者ですわね」
「ありがとう。でも貴方も噂以上です。『拳様』まさかあの包囲を突破するとは見た目以上に固いようですね」
「当たりまえですわ。クロエが私の為に作ったモノを簡単に砕けるとは思わないで」
「惚気ですか」
とアルテミス
「のろけだな」
千姫が
「はいはい、ノロケノロケ」
とサイファ
「「ノロケ~ノロケ~」」
レトとラトがハモる
冷やかされるエリアーデの顔が紅くなる。
「う、うるさいですわ!別に惚気た訳ではっ・・・!」
朱天改から顔を出した所をレトに撃たれた
「あら、惜しい」
狙撃の指示をしたアルテミスが笑顔で悔しがるふりをする。
「卑怯ですわよ!」
「戦いの最中に気を抜く貴方が悪い」
「もう許せませんわ!」
『エリアーデ、落ち着くんだ』
「なんですの!」
『落ち着いて、今うかつに動いて勝ちを捨てるのかい?』
「く!分かりましたわ。何か策があるんですの?」
『はっきり言ってない』
「な!何ですのそれ!」
『まぁ落ち着いて』
「これが落ち着いて」
『最後まで聞くんだ。この状態を切り抜けるにはとても厳しいが人数を減らすしかない。アルテミスの指示で軍隊のように動く相手、特にレトとラトのガトリングと息の合った連携はチャージが必要な高威力の大砲組より足を止められてしまうから厄介だ。まずはこのレトとラトを倒す必要がある』
「倒すってだから、その手段を―」
『アレを使うよ』
「アレって、アレはエネルギーの消費が激しすぎて実戦には使えないって、装備もしていませんわよ」
『今日はフル装備って言ったはずだよ。アルテミスをどうにかするにはそれくらいの意外性が必要だ。それに今日なら出来るはずですよ?今日だけならね』
クロエの含みのある言葉にエリアーデが微笑んだ。
そうだった。これが我がマスター、私に全力を出させてくれる最高のマスターだ。
「そうでしたわね。忘れていましたわ、今日は何も気にしなくて良いんでしたわね」
エリアーデが立ち上がり刺さっていた朱天改を抜き放つ
「行きますわよ!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
エリアーデが特攻を仕掛けた。