ショーケースの中の君
「いらっしゃいませ~」
とある場所に一軒、時代錯誤な建物があった。
瓦張りの屋根に、どこか古きよく時代の香りを感じさせる、一風変わった店。ここの看板には『真神よろず本舗』と大きく書かれていた。
「こんにちは真野さん、今日はどんなパーツが入ってるかな」
この日の夕方、高校生くらいの少年が店内に入ってきた。
「やあ翔くん、昨日こんなものが入ってきたんだけど、どうかな?」
この店の店長である真野が翔に一押しの商品を見せる。それは大型のパワーアップパーツだった。
「これ、けっこう高いんじゃないの?高校生の小遣いじゃ難しいよ」
「変形するからね、それなりの値は張るけど、極上の技術を使用しているから、スムーズな変形をするよ」
ごらんの通り、ここでは神姫をはじめ、様々なロボットキットを販売している。その中には比較的安いパーツやもちろん、普通のルートでは手に入りにくい高級モデル、オーダーメイドキットなども扱っているのだ。
「ところで翔くん、リリィは元気でいるかい?起動してからもう半年以上経つんじゃない?」
ここは翔がリリィのオーナーになるきっかけとなった場所でもある。ある日、この店のショーケースで飾られていたフェレットタイプを見たとき、彼は決心したのだ。
「そうだね、あの時のこと、今でも忘れないよ。あの寂しそうな顔は…」
とある場所に一軒、時代錯誤な建物があった。
瓦張りの屋根に、どこか古きよく時代の香りを感じさせる、一風変わった店。ここの看板には『真神よろず本舗』と大きく書かれていた。
「こんにちは真野さん、今日はどんなパーツが入ってるかな」
この日の夕方、高校生くらいの少年が店内に入ってきた。
「やあ翔くん、昨日こんなものが入ってきたんだけど、どうかな?」
この店の店長である真野が翔に一押しの商品を見せる。それは大型のパワーアップパーツだった。
「これ、けっこう高いんじゃないの?高校生の小遣いじゃ難しいよ」
「変形するからね、それなりの値は張るけど、極上の技術を使用しているから、スムーズな変形をするよ」
ごらんの通り、ここでは神姫をはじめ、様々なロボットキットを販売している。その中には比較的安いパーツやもちろん、普通のルートでは手に入りにくい高級モデル、オーダーメイドキットなども扱っているのだ。
「ところで翔くん、リリィは元気でいるかい?起動してからもう半年以上経つんじゃない?」
ここは翔がリリィのオーナーになるきっかけとなった場所でもある。ある日、この店のショーケースで飾られていたフェレットタイプを見たとき、彼は決心したのだ。
「そうだね、あの時のこと、今でも忘れないよ。あの寂しそうな顔は…」
翔は半年前のことを思い出していた。ショーケースで飾られていたフェレットタイプの寂しげな表情…。起動していない状態で飾られていたので、余計に寂しそうに見えたのだ。
(何とかして買うことが出来ないものか…)
そのときから翔はお金を貯める為に短期のバイトを始めた。ケースに飾ってあるあの子を迎え入れるために。
それから一ヶ月が過ぎた。給料をもらった翔は、フェレットタイプを買うためによろず本舗にやってきた。しかし、ショーケースを見た翔は、愕然とした。
ショーケースに飾ってあるはずのフェレットが消えているのだ。
「…間に合わなかったか」
翔は悔しい思いをかみ殺し、そのまま店を出ようとした。しかしそのとき、誰かが翔を引きとめた。
「君、ちょっと待って」
振り向いたその先には、この店の店長らしき人物がいた。
「君はいつもショーケースを眺めている男の子だね。君が探している子は、ここにいるよ」
店長=真野は戸棚にある箱を取り出し、過去のふたをゆっくりと開けた。
「…これは…」
「君がこの子を迎えにきてくれると信じていたから、大切に保管していたんだ。もちろん、メンテナンス済みだよ。あと、武装やオリジナルのクレイドル、予備の燃料電池も入ってるから、確認してみて」
真野は翔にフェレットタイプが入った箱を渡した。
「お金、そんなに持っていないのですが…」
「それはおまけさ。展示品だし、少しはサービスしないと」
翔は給料からお金を出すと、お礼を言った。
「ありがとうございます、このご恩、絶対に忘れません」
「おいおい、そんなにかしこまってどうしたんだよ。僕は当たり前のことをしただけだから。それに、ここでは敬語使うの禁止。堅苦しいのって、僕は好きじゃないんでね。だから、僕のことは友達と思っていいんだ。これも何かの縁だし」
真野は翔に手を差し伸べる。翔もそれに答え、手を握り返した。
こうして、翔はリリィのオーナーになり、真神よろず本舗の常連になったのだ。
(何とかして買うことが出来ないものか…)
そのときから翔はお金を貯める為に短期のバイトを始めた。ケースに飾ってあるあの子を迎え入れるために。
それから一ヶ月が過ぎた。給料をもらった翔は、フェレットタイプを買うためによろず本舗にやってきた。しかし、ショーケースを見た翔は、愕然とした。
ショーケースに飾ってあるはずのフェレットが消えているのだ。
「…間に合わなかったか」
翔は悔しい思いをかみ殺し、そのまま店を出ようとした。しかしそのとき、誰かが翔を引きとめた。
「君、ちょっと待って」
振り向いたその先には、この店の店長らしき人物がいた。
「君はいつもショーケースを眺めている男の子だね。君が探している子は、ここにいるよ」
店長=真野は戸棚にある箱を取り出し、過去のふたをゆっくりと開けた。
「…これは…」
「君がこの子を迎えにきてくれると信じていたから、大切に保管していたんだ。もちろん、メンテナンス済みだよ。あと、武装やオリジナルのクレイドル、予備の燃料電池も入ってるから、確認してみて」
真野は翔にフェレットタイプが入った箱を渡した。
「お金、そんなに持っていないのですが…」
「それはおまけさ。展示品だし、少しはサービスしないと」
翔は給料からお金を出すと、お礼を言った。
「ありがとうございます、このご恩、絶対に忘れません」
「おいおい、そんなにかしこまってどうしたんだよ。僕は当たり前のことをしただけだから。それに、ここでは敬語使うの禁止。堅苦しいのって、僕は好きじゃないんでね。だから、僕のことは友達と思っていいんだ。これも何かの縁だし」
真野は翔に手を差し伸べる。翔もそれに答え、手を握り返した。
こうして、翔はリリィのオーナーになり、真神よろず本舗の常連になったのだ。
「そういえばそうだったね。あのときから君が積極的にここに来ることになったのは。店に来るといつもリリィのことを話てたね」
「おかげでリリィもここまで育ったよ。これも真野さんのおかげだよ」
昔話に二人の話が弾んでいく。そのうちに日は暮れ、時計も7時を過ぎた。
「店長、そろそろ閉店の準備始めていいですか」
店先から店員の声がこだまする。
「お、もうこんな時間か。すまないね翔くん、遅くまでつき合わせてしまって」
「真野さんこそ、いつもより楽しそうだったよ。じゃ、また今度」
店の出口に出ようとする翔。しかし、真野は思い出したかのように引き止めた。
「翔くん、頼みがあるんだけれど、今度の土曜日あいてるかな?」
「リリィの練習に付き合うくらいかな」
「そうか、だったらついでに頼まれてくれないかな」
真野は翔にあるものを渡した。それは地図と手紙、それと電車代が入ったバインダーだった。
「ここって…真野さんの知り合いの店?」
「まあ、そんなところかな。ここは神姫ショップの中でも有名な場所でね、神姫のオーナーでも知る人がいないといわれている場所なんだ」
翔はそれを聞いて、少し興味を持った。しかし、渡された手紙を見て、不思議そうな表情になった。
「でも、どうして手紙を…。真野さんが直接持っていけばいいじゃないか」
「いや、この日は用事があってね、行くことが出来ないんだ。それに、この店は君が行かないと意味がない。一度ここの店長に会ってみるといい。気さくな人だから、なんでも聞いてみるといいよ」
真野は翔に言い聞かせると、そそくさと店の中に戻っていった。
「この店の店長って…、どんな人なんだろう」
翔はバインダーを覗き込んだが、すぐに閉じた。リリィが寂しそうな顔で帰りを待っているからだ。
「おおっと、こうしちゃいられない」
翔はリリィが待つ我が家へと足を急がせる。夜空は雲ひとつない星空が広がっていた。
「おかげでリリィもここまで育ったよ。これも真野さんのおかげだよ」
昔話に二人の話が弾んでいく。そのうちに日は暮れ、時計も7時を過ぎた。
「店長、そろそろ閉店の準備始めていいですか」
店先から店員の声がこだまする。
「お、もうこんな時間か。すまないね翔くん、遅くまでつき合わせてしまって」
「真野さんこそ、いつもより楽しそうだったよ。じゃ、また今度」
店の出口に出ようとする翔。しかし、真野は思い出したかのように引き止めた。
「翔くん、頼みがあるんだけれど、今度の土曜日あいてるかな?」
「リリィの練習に付き合うくらいかな」
「そうか、だったらついでに頼まれてくれないかな」
真野は翔にあるものを渡した。それは地図と手紙、それと電車代が入ったバインダーだった。
「ここって…真野さんの知り合いの店?」
「まあ、そんなところかな。ここは神姫ショップの中でも有名な場所でね、神姫のオーナーでも知る人がいないといわれている場所なんだ」
翔はそれを聞いて、少し興味を持った。しかし、渡された手紙を見て、不思議そうな表情になった。
「でも、どうして手紙を…。真野さんが直接持っていけばいいじゃないか」
「いや、この日は用事があってね、行くことが出来ないんだ。それに、この店は君が行かないと意味がない。一度ここの店長に会ってみるといい。気さくな人だから、なんでも聞いてみるといいよ」
真野は翔に言い聞かせると、そそくさと店の中に戻っていった。
「この店の店長って…、どんな人なんだろう」
翔はバインダーを覗き込んだが、すぐに閉じた。リリィが寂しそうな顔で帰りを待っているからだ。
「おおっと、こうしちゃいられない」
翔はリリィが待つ我が家へと足を急がせる。夜空は雲ひとつない星空が広がっていた。