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ウサギのナミダ

ACT 1-29



 結論から言うと、雪華とティアのバトルは、伝説になった。
 別に、俺や高村、ティアと雪華がそう望んだわけではない。
 これはある意味、雑誌記者の三枝さんの、俺に対する報復と見ている。

 あのバトルから数日後、「バトルロンド・ダイジェスト」の記者である、三枝めぐみさんから、直接俺に電話があった。
 どこから俺の電話番号を入手したのだろう?
 そう尋ねると、

「情報源に対する守秘義務があるので、答えられないわん♪」

 と、はぐらかされた。
 三枝さんという女性は、終始こんな風にふざけたような口調で話す。
 三枝さんの用件は、先日の、ティアと雪華のバトルを記事にさせて欲しい、ということだった。

「その件は、最初に断ったはずですが」
「だから、直談判するために、電話したのよぅ」

 三枝さんはとにかく記事にしたいということを熱っぽく語った。 
 だが俺は、頑として首を縦には振らなかった。
 神姫風俗が大幅に縮小された今、自ら波風を立てることはない。
 それに、高村たちにも影響があるかも知れない。
 彼らは全国大会を控える身の上だ。変な噂を立てられて、迷惑をかけるかも知れない。
 そういうことを説明した上で、とりつく島もなく断ったのだが。
 三枝さんはめげなかった。毎日のように電話してきた。この記事に賭ける情熱は十分すぎるほどに伝わってきた。
 そして、三枝さんはこう言った。

「だったら、記事を読んで判断して。
 遠野くんが気に入らないところは直すようにするから。
 直接会って話をしましょ」

 俺は根負けした。
 ある日、大学帰りの夕方に、大学近くの喫茶店で、三枝さんと待ち合わせた。
 彼女から原稿のプリントアウトを受け取り、読む。
 雪華の連載記事は、俺も読み続けてきた。それだけに、読み応えのある記事に仕上がっている。
 あのふざけた口調で話す人物が書いたものとは思えないほどに。
 だが、それでも俺は断るつもりだった。
 読み終わった原稿を渡すと、三枝さんはがばっ、と俺に頭を下げた。

「ちょ、ちょっと、三枝さん……」
「お願い! 記事にさせて!
 絶対いい記事にするから!
 今回のバトルを記事にできなかったら、わたし、雑誌記者として一生後悔する!
 次の号に載せるには、もう時間がないの!
 だからお願い!」

 いつもふざけた口調の三枝さんが、このときばかりは真剣な声色だった。

「そう言われても……」
「あなたがどうしても直して欲しいところは、ちゃんと直す。何か条件があるなら、それも飲む。だから……」
「……高村と雪華は、承知してるんですか?」

 それが一番気にかかるところだ。
 彼らに迷惑はかけたくない。

「もちろん、了承済み。もうコメントももらってるわ」

 俺は小さくため息をついた。
 高村たちは、俺たちとバトルしたことで非難にさらされるようなことがあっても、大丈夫なのだろうか。
 だが、あの雪華なら、たとえブーイングを浴びようとも、堂々としているような気はする。
 彼らが了承しているなら、あとは俺の気持ち一つということか。

「……わかりました」

 俺は渋々頷いた。
 納得したわけではなく、単に俺が根負けしただけだった。
 三枝さんは顔を上げると、きらきらと目を輝かせ、まわりの視線も関係なく、子供のようにはしゃいだ。
 ……やっぱり断ればよかっただろうか。

 それでも、記事の内容には条件を出した。
 バトルを記事にする上で、神姫の名前が分からないのでは話にならないので、ティアの名前は記述を許可した。
 バトルの写真も、ティアの顔は出してもいいことにした。
 考えてもらいたい。
 「神姫T」とか書かれ、顔に目隠しされた写真が掲載されては、よけいに怪しいというものではないか。
 ただし、俺の顔と名前は一切出さないように言い含めた。
 俺の素性がばれたら、日常生活が危うくなる可能性があるからだ。
 もちろん、俺とティアのコメント取材には一切応じない。
 高村たちのコメントでも、俺たちに対する具体的な記述については許可できない、と三枝さんに言った。

 三枝さんはこれらの条件をあっさり飲んだ。
 あとで修正版の原稿を送ってもらい、チェックしたが、約束は守られていた。
 俺は少しだけ安心して、記事にOKを出した。
 せめて、ティアが掲載されているバトロンダイジェストは買おう、と思った。

 だが、俺は分かってなかった。 
 三枝さんが嘘をついている……いや、すべてを俺に話してなかったということに。


 そのバトロンダイジェストの発売日。
 俺は最新号を購入すべく、コンビニに立ち寄って、雑誌コーナーに足を向けた。
 雑誌コーナーの棚を見て。
 俺はひっくり返った。大真面目にその場ですっころんだ。

 バトルロンド・ダイジェスト最新号は置いてあった。
 その表紙。
 雪華と……なんとティアが写っている。
 しかも、あのバトルの後、泣いているティアを雪華が抱きしめているシーン……その写真だったのだ。
 表紙には大きな文字でこう書かれている。

「特集:~ 絆 ~ 武装神姫はなんのために戦うのか?」


「……聞いてないぞ……?」

 俺はうめく。
 完全に不意打ちだった。
 とりあえず雑誌棚から、バトロンダイジェストを一冊ひったくると、大急ぎで会計をすませた。
 さすがに立ち読みする勇気はなかった。
 コンビニの店員がいぶかしげに俺を見ていたような気がするが、一切無視した。

 なお、バトロンダイジェストの隣には例のゴシップ誌が置いてあったが、すでに神姫がらみの記事は掲載されていない。
 神姫風俗摘発の後に指導が入ったらしく、謝罪文まで掲載されていた。
 大城が後に教えてくれた。

 アパートに帰って、雑誌を開く。
 最新号の巻中のカラーページが、表紙にあった特集にまるまる当てられていた。
 三枝さんが俺に見せた原稿は、記事の三分の二程度。バトルの詳細な解説が主な内容だ。
 残りの隠されていた部分は、試合後の様子である。泣きじゃくるティアと、敗北を認めた雪華。
 あの時の様子が詳しく書かれている。

「うわあぁ……」

 一緒に記事を見ていたティアが奇妙な声を上げた。
 まあ、俺もそんな声を上げたいような気分だった。
 俺に見せられなかった後半部は「武装神姫はなんのために戦うのか」という問題提起になっていた。
 雪華は「マスターのために戦う」ことこそが、武装神姫としての本分であることをコメントしている。

「人は武装神姫を戦わせる。それは名声のため、お金のため、バトルの楽しさであるかも知れない。
 戦わせる理由はマスターによって様々だ。
 しかし、神姫にとって、戦う理由は皆同じだ。。マスターの望みを叶えるために戦っている。
 もう一度振り返ってみて欲しい。
 神姫は何を思い、なぜ戦うのか。
 自分はなぜ、自分のパートナーを戦わせているのか、を」

 記事はこう結ばれていた。
 そして、その問いかけに答えるように、特集記事の後半は、神姫とマスターの絆を思い起こさせる、過去の名勝負のダイジェストが紹介されていた。

 読み終わった俺は、速攻で三枝さんに電話をした。
 もちろんクレームを入れるためだ。
 しかし。

『あらん、君の要望は全部通してるわよん♪』

 ……この間の真剣な口調はどこへやら。
 また人を小馬鹿にしたような口調で煙に巻こうとする。
 確かに、記事の内容は、俺の要望をすべて通したものだった。それは間違いないのだが。

「だけど、表紙に巻中特集なんて言ってなかったじゃないですか!」
『いつもの連載記事とも言ってないけどぉ?』

 ……これが社会人の知恵という奴なのか。
 こういうずるがしこいだけの大人にはなるまい。

『でもぉ、今回の特集、大反響なのよぅ♪
 朝から電話がひっきりなしにかかってきてね、編集者としては嬉しい悲鳴だわ♪』

 それは、この間のバトルが公に、広く知れ渡ったことに他ならない。

「それが困るって言ってるんです!
 だいたい、クイーンに悪影響が出たら、どうするつもりなんですか!?」
『あ、それは大丈夫』
「は?」
『雪華も高村君も、別にかまわない、って言ってたわん♪』

 ……余裕だな、クイーン。

『あ、また電話。今日のお姉さんは忙しいの。まったねぇん♪』

 電話は一方的に切られた。
 くそう。
 確かに、記事の内容は好意的なわけだし、俺の要望も通っているから、前みたいに問題になることはないと思うが……。
 三枝さんは、記事は大反響だ、と言っていた。
 それが俺たちにどんな影響を及ぼすのか、想像もつかない。
 眉間にしわを寄せて考えていたからだろうか。
 ティアが少し心配そうな顔で俺を見上げている。

「心配するな。大したことじゃない……いままでに比べたらな」

 俺はティアに少し笑いかける。
 そうすると、ティアもほっとしたように微笑んだ。
 そうだ、これでいい。
 俺たちはもう、何も恐れることなどないんだ。
 何があっても大丈夫だと、今は思えるようになった。


 ところが、事態はいつも予想の斜め上を行く。
 土曜日にゲームセンターに行くと、俺たちに対する態度は一変していた。
 俺たちが店に入ると、いきなり取り囲まれた。
 いままで俺たちを罵倒していた連中が、手のひらを返したように賞賛の言葉を口にする。
 誰もが俺たちとの対戦を望み、サインまで求めてくる奴まで出てくる始末だった。
 その人波をかき分けて、現れた神姫プレイヤーたちがいた。
 彼らは『ハイスピードバニー』とのバトルをするために遠征にやってきたマスター達だった。
 どうやって俺の正体を知ったのだろう。わざわざ俺たちのホームグラウンドであるこのゲームセンターまで探り当て、やってきたのだった。
 大勢の客にバトルロンドのコーナーまで引きずられそうになり、俺は……逃げ出した。
 ありえない、と思った。
 いままで俺たちをさんざん苦しめておいて、雑誌に掲載された瞬間から態度を一八○度変えるなんて。
 俺は軽い人間不信に陥った。


「……そういうわけで、呼びつけたりして、ごめん」
「仕方ないわ。ゲーセンじゃ、ゆっくり話もできないものね」

 駅前のミスタードーナッツに駆け込んだ俺は、久住さんに電話をして、わざわざここまで来てもらった。
 ゲーセンであんなことにならなければ、呼び出すこともなかったのに。
 節操のない客達に恨みがましく思うのは、俺の心が狭いからだろうか。
 それでも、久住さんが微笑んでくれているのが救いだった。

「久住さんには改めてお礼を言いたくて……ありがとう。何もかも、君のおかげだ」
「大したこと、してないわ」

 いつか聞いた言葉を、久住さんはまた口にした。

「……エルゴの店長が何かしてくれたのね」
「ああ……詳しくは教えてくれなかったけど」

 ふと思い出す。
 エルゴの、日暮店長の言葉。

『菜々子ちゃんを救ってやってくれ』

 あれはどういう意味なのだろう。
 それを当の本人に聞いてみてもよかったのだが、目の前の久住さんからはそんな影など微塵も感じられない。
 俺は尋ねる気をなくして、代わりにこう言った。

「今度、エルゴの店長にもお礼にいかなくちゃ。買い物もあるし」
「買い物? ティアに?」
「ああ。ティアのレッグパーツを改良するんだ。その部品を揃えにね」

 そう。俺はティアの武装の改良を計画している。
 雪華とのバトルでわかった、レッグパーツの限界値とティアの機動の最大値。
 そして、新しい戦い方。
 それらを含めて、レッグパーツをバージョンアップする。
 そうすれば、ティアの戦いにはさらに大きな幅ができるだろう。

「ね、そのお買い物、わたしも一緒に行っていい?」

 久住さんからの嬉しい申し出。

「……どうかな。ライバルに手の内を見せるのは」
「えー?」
「冗談だよ。久住さんさえよければ、一緒に行こう」

 頬を膨らませた久住さんは、俺が承諾すると一転、にっこりと笑った。
 女の子はずるいと思う。
 こっちの必死の攻撃を、笑顔一つで無しにしてしまうのだから。

「しかし……ゲーセンがあんな状態だと、対戦で新装備が試せないな……」
「べつに、あのゲーセンにこだわってるわけじゃないんでしょう?」
「まあ、そうなんだけど……」

 だからといって、全く知らないゲーセンに行くのははばかられる。
 なおさら何が起きるか分からないからだ。

「だったら……近くていいところ知ってるけれど」
「え? どこ?」
「わたしのホームグランドのゲームセンター。どう?」
「なるほど……」

 いいアイデアだった。
 久住さん行きつけのゲーセンならば、おかしなところではないだろうから、安心だ。
 久住さんも一緒に来てくれるなら、ミスティを相手に練習もお願いできる。
 大城たちが来ないのも、都合がいい。

「今度、案内してくれるかな」
「もちろん、いつでも」 

 久住さんはまた反則な笑顔を見せる。
 俺はそんな彼女を眩しく見つめた。
 ふと、久住さんは少し真顔になって、俺に尋ねた。

「でも、バトルに随分熱心ね。何かあるの?」
「ああ……約束があるんだ」
「約束……?」

 そう、約束だ。
 俺たちをバトルロンドに引き留めた、虎実との約束。
 レッグパーツの改良をそれに間に合わせたい。
 大きな障害を乗り越えてきた俺たちの今を見せることで、虎実の思いに報いたいと考えている。

「ふうん、虎実がそんなことをね……」
「そのためというわけじゃないけど、戦いの幅は広げておきたい。虎実も相当パワーアップしているだろうから」
「ねえ、もし虎実と対戦することになったら、わたしも観に行っていい?」
「もちろん。それに、それまでの練習相手をお願いしたいんだけど」
「……ライバルに手の内を見せてもいいの?」
「まいったな……勘弁してくれ」

 俺と久住さんは笑いあった。
 こうして笑っていられるのも、目の前の人を筆頭に、様々な人の支えがあったからだ。
 今の自分たちは孤独ではないと、身に染みて思う。
 俺はテーブルの上を見る。
 俺と久住さん同様、ティアとミスティも穏やかに笑いあっている。
 俺はそんな神姫たちの姿に目を細めた。









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