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えむえむえす ~My marriage story~

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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
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アルトアイネス奮闘姫
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双子神姫
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武装神姫のリン
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ウサギのナミダ

ACT 1-25



 高村がCSCをセットし、目覚めたその日からすでに、雪華の目標はバトルロンドで頂点に立つことだった。
 高村自身もバトルロンドに参戦するつもりでいた。
 しかも相当本気でやるつもりでいたから、有名な神姫ショップにフルチューンを依頼し、素体ではほぼ最高レベルのパフォーマンスが出せるアーンヴァルを手にした。
 素体が神姫の性格に影響したのか、CSCの組み合わせの問題なのかはわからない。
 目覚めた雪華は誇り高く、バトルに勝利することを一番とした。
 ただし、卑怯な振る舞いはしない。あくまで正々堂々、実力で勝つ。それが雪華の誇りであった。
 しかし、それは茨の道だ。どんな神姫でも不得手な相手はいる。卑怯な戦い方をする奴もいる。真っ向勝負で勝とうというのは、なかなか難しい。
 それでも、雪華は卑怯な真似は一切しなかった。
 高村が感心するのは、雪華が努力を惜しまない姿勢だった。
 フルチューンしたボディなら、性能差で渡り合うことができる。武装を選べば、並の神姫に負けることはない。
 にもかかわらず、雪華はそれをよしとしなかった。
 とにかく基本動作の反復練習を飽きることなく、今も続けている。
 時には、近接武器だけ、遠距離狙撃用ライフルだけでバトルに出て、納得いくまで実戦経験を積むこともあった。
 才能と努力。その二つが結実して、類稀な強さを手にした。
 そして、どんな相手とでも真っ向勝負で勝利を収めてきた。

 しかし。
 いつの頃からだろう。
 雪華は自らの成長に限界を感じていた。
 雪華は大会に出て頂点に立つことを望んでいる。
 故に、戦う相手は大会出場を目的とした神姫が多くなる。
 だが、大会で勝てる神姫というのは、パターンが限られて似通ってくるのだ。
 戦闘がマンネリ化してきた、とでも言おうか。
 対戦するどの相手も、どこかで戦ったことがある武装神姫ばかりに見えるようになった。
 もちろん、強い神姫もいる。
 だが、想定の範囲内での攻撃しかしてこない。
 限られた範囲での技を極め、純度を増す、というのも一つの強さなのだろう。
 しかし、雪華はその範囲内での強さでは、もう限界を感じていた。
 自分はこれ以上強くなれないのか。
 そう思ったとき、雪華は焦りさえ覚えた。
 彼女は頂点を極めるため、強くならなければならない。
 どんな攻防にも勝てる強さを身につけなければ。
 雪華はそれを戦闘での「引き出し」の多さに求めた。
 それは大会出場の神姫とばかり対戦していては得られないもの。
 大会にエントリーしていなくても、名の通った武装神姫はたくさんいる。
 そうした神姫を求めて、雪華と高村はあちこちの神姫センターやゲームセンターに足を運んだ。
 まるで武者修行だ。
 だが、その武者修行はあたりだった。
 思いもよらない変わり種の、強い神姫たちと出会い、対戦できた。
 その対戦に勝つ度に、自分が少しづつ強くなっていることを実感する。
 そして今日もまた、目の前に特別な神姫がいる。
 ティアとの対戦は、今の雪華にとって、どんなことよりも優先されるべきことだった。  



「マスター。『レクイエム』の使用許可を」
「……いや、雪華。相手はもう動けそうにもない。『レクイエム』を撃つまでもないじゃないか」

 マスターの逡巡する声に、雪華は厳かに告げる。

「いいえ。『ハイスピードバニー』は強敵です。ならば、手抜きは礼を失するというもの。我が最大の攻撃を持って、幕引きとしたく思います」

 そう、雪華はティアを「強敵」と認識していた。
 大会で出会った多くの神姫でも、ここまで食い下がった相手はほとんどいない。
 武装がオリジナルで、見たことのない戦闘スタイルを駆使し、ノーデーターでの対戦であり、相手の得意なフィールドであることを差し引いても、これほど噛み合う対戦になるとは思いもしなかった。
 雪華の胸は昂揚で沸き立っていた。
 強敵と戦えることの喜び。そして、その戦いに勝利することで、私はまた一つ強くなる。
 マスターの、あきらめたようなため息が、聴覚センサーに届く。

「……わかった。追加パーツ転送。『レクイエム』使用許可」

 高村の声と共に、サイドボードから追加のパーツが転送される。
 それと同時に、黄金の錫杖が変形する。
 ビームガンを中心に再構成された錫杖は、航空機を思わせるシルエットに変わる。
 追加のパーツの支持用のハンドルがドッキングする。
 雪華の前に現れたのは、高出力のビームキャノンだった。
 ノーマルのアーンヴァル・タイプとは異なる、鳥状の翼が大きく開く。
 翼の縁が金色にまばゆく輝き始めた。
 エネルギーの奔流が翼を伝い、雪華を通じて、ビームキャノン『レクイエム』に流れ込む。
 溢れ出るエネルギーが光の粒子となって、雪華の周りを舞っている。
 まるで高位の天使が光臨する様のように、観客の目に映った。



 痛みは、わたしにとって、諦めを促す信号だ。
 お店にいたとき、痛みや苦しみを受けると、「諦める」ことでそれらを適当に処理し、やりすごしてきた。
 そうしなければ、耐えることができなかった、あそこでは。
 落下の衝撃で体中がきしむ。
 腹部には熱い痛みがある。雪華さんに撃たれたのだ。
 わたしはお腹を抱えてうずくまり、その痛みに耐える。

 ……もう、諦めてもいいですか?
 わたしは必死に戦ったけれど。
 もう、立ち上がれません。
 だって、痛いんです。
 とてもとても痛いんです、体中が痛いんです。
 痛くて痛くて痛くて泣いてしまいそうです。
 だから、諦めてしまえば……。

 心の中から、別のわたしが声を上げる。

 ……何を?
 何を諦めるというの。

 この試合……? 負けてもいいでしょう?
 だって相手は全国大会の優勝候補なんだもの。
 わたしはこんなに痛い思いをしているんだから……。

 別のわたしは、何も言わず、ある画像を認識させた。
 閉じたわたしの瞼に映る人の顔。
 ……マスター。
 わたしは、はっとなり、瞳を見開く。

 思い出す。
 あの時の、マスターの冷たい眼差しを。
 マスターの右手に巻かれた包帯を。
 マスターが手を差し出したときの、震えた声を。
 ネットの掲示板に書かれた悪意の言葉を読んだときの気持ちを。
 あのときの、耐え難い、心の痛みを。

 いいはずない。
 負けていいはずない。
 諦めていいはずがない!

 わたしは拳を握り、地面の砂をぎゅっと掴んだ。

 痛い? 何が? 撃たれたお腹が? 打ちつけられた身体が?
 こんなもの。
 あの時の心の痛みに比べれば。
 どれほどのものだっていうの!!

 そう、わたしは誓った。
 すべてを賭けて、マスターに尽くすと。
 マスターがわたしにしてくれたように、わたしもマスターのためにすべてを賭けると。
 まだわたしは、このバトルですべてを賭けてはいない。

 歯を食いしばる。
 両腕をつっぱると、上半身をわずかに持ち上げた。
 わたしはまだ走れる。
 わたしにはまだ技がある。
 マスターにも知らせていない、とっておきの技。
 いま、ここで使う。
 マスターに勝利を捧げるために。



 雪華はティアに照準を定める。
 ティアは未だ動かない。うずくまったままだ。
 先日の全国大会地区予選でも、使用することのなかった最大の技。
 今こそ放とう。
 ここで出会えた未知の強敵に、最大の敬意を払って。

「レクイエム……シュートッ!!」

 雪華の叫びとともに、ビームキャノン『レクイエム』から虹色の光芒が放たれた。
 埃にまみれたストリートを薙ぎ払う。
 次の瞬間、メインストリートに光の絨毯が敷き詰められた。
 放出されたエネルギーの光芒は、地面に着弾すると、無数の光弾になって炸裂した。
 弾け飛ぶ無数の小さな光弾は、触れたものに確実な破壊をもたらす。
 炸裂音が幾重にも重なり、轟音となって、廃墟の街に響き渡る。
 はじけた光弾は、さらに細かい粒子となり、一瞬舞い踊る。
 それによって、薙ぎ払われた攻撃範囲内のストリートは、光で膨れ上がった。
 その下にあるものは完全なる破壊。
 まさに鎮魂歌……その名に恥じない、美しくも無慈悲な必殺攻撃。
 あまりの攻撃の美しさに、ギャラリーから感嘆のため息が漏れた。


 虎実はきつく目を閉じて、観戦用の大型ディスプレイから顔を背けた。

「あんなの……かわせっこねぇ……」

 ミスティは手で口元を押さえながら呟く。

「そこまで……する必要が……あるっていうの、クイーン……」

 菜々子と大城は、厳しい表情のまま、大型ディスプレイから目が離せないでいる。 四人の少女たちも、口元を押さえて見入っている。
 三強でさえ、呆けた表情でディスプレイを見入るばかりだ。 
 誰もが雪華の勝利を確信していた。
 それは、雪華本人も、マスターである高村でさえも例外ではなかった。



 そのとき、状況を正しく理解できていたのは、ティア本人だけであったかもしれない。
 俺は信じられない思いでモバイルPCの画面を凝視していた。
 自分を取り巻くギャラリーの気配さえ遠く感じる。

 「……ティア……おまえ……」

 ティアをモニターしているモバイルPCには、すべて限界を突破した数値が映し出され、画面は真っ赤に染まっていた。
 そして、いまも刻々と数値は上昇を続けている。



 地表を覆っていた光の靄が晴れる。
 風が砂煙を吹き払っていく。
 後に残されたのは破壊の爪痕。
 攻撃範囲内にあったものは、古ぼけた建物であれ、乾いたアスファルトであれ、何もかもが細かな瓦礫と化している。
 『アーンヴァル・クイーン』雪華は、ゆっくりと地表に下降していく。
 『レクイエム』は、彼女のエネルギーを大半使用する、まさに最終の必殺技だ。
 アーンヴァルの飛行能力も、エネルギー低下の影響を否めない。
 だからこそ、乱発できる技ではないのだ。
 勝利を確実にするための必殺攻撃……それが『レクイエム』だった。
 降下しながら、雪華は勝利を確認するため、自らの破壊の跡に目を向ける。
 ……だがしかし、そこにティアの残骸は見受けられなかった。
 雪華は怪訝な顔をした。
 身動きの取れないティアが、あの攻撃をかわしたとは思えない。
 瓦礫の下に埋まってしまったのだろうか?
 それもあるかもしれない。
 だが、おかしい。
 それならばなぜ、ジャッジAIから勝利のコールがなされない?

 あまりに低い一つの可能性に、雪華の思考が至るより早く。

「雪華、上だっ!!」

 マスターの短い注意を、雪華が認識するよりも早く。

 ティアの鋭い膝蹴りが、雪華の背中に降ってきた。









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