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ウサギのナミダ

ACT 1-24



 雪華の持つ武器は唯一、その黄金の錫杖だった。
 彼女の背丈よりも長いその錫杖は、様々な武器の集合体だ。
 錫杖の頭はビームガンであり、その柄に伸びるのは二本の剣である。
 他にも様々なパーツが組み合わされている。
 この錫杖を様々に組み替えて、状況に応じた武器にカスタマイズし、対応する。
 この錫杖こそが、雪華のオールラウンダー・スタイルを支えている。



 戦闘は雪華の射撃で開幕した。
 錫杖の頭をはずし、ビームガンを握る。間髪入れず、断続的な斉射がティアを襲う。
 ティアはそれをかわす。
 フィギュアスケートのような小刻みなステップでかわしきる。
 視線は雪華に固定したまま。
 まるで舞うような回避。
 舞手にリズムを送る楽士は、拍子を早めていく。
 ビームガンの射出音と着弾音はまるで舞台のBGM。
 舞手のティアは、ステップの速度をさらに早めた。
 舞いながら振り上げる手には、こちらもビームガン。
 光線の応酬。
 二人の攻防は、荒野の廃墟に、レーザー光の煌めくダンスの舞台を幻出させた。
 やがて、銃撃の応酬の速度に耐えられなくなったティアが、ステップの軌道を変えた。
 路地に飛び込み、舞台から退場する。
 雪華もまた、上空へと舞い上がり、退場する。
 残された無人の舞台は、空疎な廃墟のストリートに戻っていた。


 ため息のような歓声。
 二人の神姫の攻防は、ギャラリーから見てもアーティスティックな応酬だったろう。
 しかし、当事者はそんな余韻に浸っている暇はない。
 今ので計ることができた雪華の実力。
 俺が気がついたのは、雪華の基本能力の高さだ。
 遠距離、中距離の射撃精度が恐ろしく高い。
 ティアの機動が他の神姫と違う独特なものでなければ、あっと言う間に雪華の射線に捕らえられていただろう。
 今の攻防で、俺がティアに細かく指示を出していたことに、気がついたギャラリーは、はたして何人いたか。
 こちらは神経をすり減らしたが、向こうはほんの小手調べに過ぎないだろう。
 俺は頭をフル回転させ、ティアに次の指示を出す。
 雪華をこっちの土俵に引きずり込まなくては、五分にさえ持ち込めない。
 『アーンヴァル・クイーン』とはそう言う相手だった。



『あれをかわしきる……とは』
「予想外だったね、雪華」
『並の神姫ではない、ということ。それは望むところです、マスター』
「こちらの射撃がまずかったわけじゃない。僕たちが見たことのない特殊な機動が、こちらの的を微妙にはずしてるんだ」
『了解。以降は誤差を修正します』
「でも、あちらもまだいろいろしてきそうだけど」
『そうでなくては、ここまで来た意味がありません』
「確かに。……今度はこちらから行こう」
『はい』



 飛行タイプとのバトルにおいて、細い路地に身を隠すのは、ティアの基本戦略だ。
 飛行タイプの神姫は大きな翼を持っているので、建造物の隙間の路地などは、進入が難しい。
 また、特徴である高速の戦闘機動も大幅に制限されてしまう。
 対して、ティアはむしろ路地の方がその能力を発揮できる。
 スピードを落とさずに動くことができるし、壁走りも交えて三次元的な機動で相手を翻弄する事ができるのだ。
 しかも、遮蔽物の間を走るので、空中からの攻撃も難しい。
 このバトルで、唯一ティアが有利な場所が路地、といっても過言ではなかった。
 だが。

「なっ……!?」

 俺とティアの叫びが重なった。
 雪華は、鳥の羽を模した機械の翼を、蝶が止まるときのように縦にできる限り折りたたみ、ティアが疾走する路地に侵入してきたではないか!
 ビームガンを構えている。
 疾駆するティアを狙い打つ。
 ティアは地面の上でステップターン。
 雪華の攻撃はことごとく砂埃に吸い込まれていく。

「ティア、出し惜しみはなしだ! 壁も使って反撃!」
『はいっ!』

 たとえクイーンと呼ばれる神姫であろうとも、この場所での機動力の不利は覆せない。
 ティアは雪華の銃撃を華麗にかわしながら、壁に乗る。
 そして壁面を走り出す!

『なんと……!?』

 雪華は一瞬驚愕の表情を浮かべた。
 これで驚いてもらっては困る。
 ティアはその隙を突いて、反撃した。
 サブマシンガンの斉射。弾丸の連なりが空中に線を描く。
 しかし雪華は、機動の不自由なこの路地で、最小限の動きでこれをかわした。

『まだまだっ!』

 珍しい、ティアの気合い。
 ティアは路地の間を跳ね、走り、スピンして、複雑な三次元の軌道を描き出す。
 そこから繰り出される銃撃はランダムな模様の弾幕だった。
 しかし。
 雪華はそれらを回避した。
 道幅いっぱいを使ってわずかに横にずれるのと、上下の運動のみによって。

「……ばかな」

 知らず、声が口から漏れた。
 そんなデリケートな空中機動は、エウクランテ・タイプや飛鳥・タイプに代表される空戦型のいずれの神姫でも見たことがない。
 とんでもない技量だ。
 またしても、射撃の応酬。
 ティアは壁の上をステップターンで回避し続ける。
 雪華の銃撃がティアを追う。
 ティアが跳ねた。
 左の壁から右の壁へ、ハイジャンプの背面跳びのように、飛び移る。
 ティアが空中で引き金を絞った。

『くっ……!』

 この一撃は、雪華の意表を突いていたようだ。
 弾丸は、雪華のヘッドギアに命中し、破壊した。
 おおっ、とギャラリーが沸く気配。
 雪華は身体を振ると、推力を上へ向け、路地から離脱していく。



「大丈夫か、雪華?」
『ヘッドギアが破壊されました。センサーが使えません。ですが戦闘に問題はありません』
「なんだか、らしくない被弾だったけれど?」
『マスターには見えていませんでしたか』
「何を?」
『あのジャンプ中の射撃……ティアの視線は、わたしに向いていませんでした』
「なんだって?」
『そして、あの速度での三次元機動……壁面での滑走……見たことがない』
「滑走面さえあれば、地面のごとく、どこでも走ることができるようだね」
『ふふふ……これは、想像以上の好敵手です、マスター』
「ならば、なおのことじっくりといくかい?」
『ええ……彼女のすべてを見せてもらいましょう』



 美緒はこのバトルに心を奪われていた。
 とてつもなく美しい攻防だった。
 初めて会った者同士が、息のあった踊り手のようにフィールドを舞う。
 それは装備に頼った力押しでは、決して成し得ない。
 修得した技の応酬が、無駄な攻撃を排し、きらめくような攻防を成すのだ。
 積み重ねたもののすべてが、このバトルに現れている。
 バトルの経験が浅い美緒にもそれはわかった。
 彼女は強い憧れを抱く。
 わたしも、こんな風にバトルロンドを戦ってみたい、と。
 それは彼女だけではないはずだ。
 見る者が憧れを抱くほどの、それほどのバトルだと思う。
 勝負は互角。
 そう、ティアはあの軽装で、クイーンの実力に渡り合っている。
 ならば、戦い方次第で、わたしも戦うことができるのではないか。
 フル装備の武装神姫とも、ライトアーマーで戦えるのではないか。
 ティアが見せているものは、軽量装備の可能性だ。
 ……いつかわたしも、こんなふうに美しいバトルを。
 そう思って隣に立つ仲間達を見る。
 案の定、目を輝かせながら、バトルに見入っていた。



 ギャラリーには互角の戦いに見えているのだろうか。
 もしそう見えているのならば、何も分かってはいない。
 久住さんが言っていた「次元が違う」という言葉を、俺は今、身を持って実感していた。
 三手先まで読んで、ティアに指示を出すが、それはクイーンの誘いに乗らされたのだということを、彼女の動きで悟らされる。
 こちらから仕掛けたとしても、それさえ彼女の手の内なのだ。
 それをなんとか、指示の切り替えと、ティアのアドリブで辻褄を合わせる。
 そんなことを、俺たち得意のエリアに踏み込んできてまでしてのけるのだ。
 俺の背筋に冷たいものが走る。
 とんでもない化け物だ。
 俺が作戦を考え、実行していくことは、ティアの勝利の可能性をひとつひとつつぶしていく行為に等しかった。
 それでも俺たちは戦いをやめるわけにはいかない。
 バトルは絶望に向けて加速していく。
 しかし、俺には一つだけ希望があった。
 読み切れないクイーンの戦闘パターンに、たったひとつだけ確実なことがある。
 幸いにも、ティアの動きは、今までで一番というほどのキレを見せている。
 おそらくは手加減をしている雪華の攻撃なら、なんとかかわしきることができるはずだ。
 俺はクイーンが動き出すそのときを待ち続ける。



「だめだ……全然通じてねぇ……」

 大城はため息混じりに呟いた。
 彼も神姫プレイヤーである。日々腕を磨いているからこそ、ティアのバトルを幾度と無く見ているからこそ、分かる。
 しかも、クイーンのバトルを見るのは、ミスティ戦に続いて二度目だ。
 あの『アーンヴァル・クイーン』に、ティアの攻撃は通用していない。
 雪華の攻撃もティアには当たらないが、それはティアの技が今日に限ってキレまくっているからだ。
 だが、クイーンはほとんど受け身の姿勢を崩さない。
 仕掛けるのは誘いの時だけだ。
 クイーンがティアを本気で倒しにかかったら、ものの三十秒ももたないのではないか。

「倒すチャンスなんか……あるのかよ……」

 ほとんど独り言だった。
 それに、菜々子がやはり呟くように答えた。

「同じだわ……」
「え?」
「クイーンのやり方……わたしたちと同じ」

 菜々子は気がついていた。
 雪華はティアを相手に「練習」している。
 あらゆる局面を想定した位置取りと攻防。
 相手の攻撃パターンのすべてを引き出そうとする動きだ。
 それは、菜々子とミスティが戦ったときも同じだったのだ。
 なぜそんなことをするのか、菜々子には分からない。
 しかし、同じように「練習」しているのであれば……

「一度だけ、チャンスがあるかも」
「なんだって?」
「これから一度だけ、クイーンがどう出てくるかわかる攻撃があるのよ」

 はたして、遠野は気付いているだろうか?



 クイーンは状況を様々に変えながら仕掛けてくるが、ただひとつ、まだ仕掛けてきていないレンジでの攻撃がある。
 近接格闘。
 もし、クイーンがあらゆる攻撃をティアに対して試しているのなら、必ず接敵しようと動く瞬間があるはずだ。
 そこを逆手に取る。
 そのためには、雪華の動きを読み切って、ティアに指示を出さなくてはならない。

 道幅の広いメインストリート。
 ティアと雪華の射撃戦は続いている。
 空中にいる雪華に対し、地上を走るティアはそれだけで不利だ。
 銃撃には牽制を混ぜ、雪華を誘導しようと試みている。
 サイドボードの武器も残り少ない。
 雪華がティアのエリアまで踏み込まんと、高度を建物よりも低くしていることが幸いだった。
 そして、来た。
 望んだ位置。
 雪華はストリートの片側に身を寄せる形で浮いている。
 俺は指示を出す。
 ティアは地を蹴り、雪華側の廃墟の壁を走った。
 雪華に向けて加速。
 壁の上を駆け上がる。
 この動きは誘い。どうだ?
 雪華に動きがあった。
 黄金の錫杖を近接武器に組み替える動作。
 見逃さない。それを待っていた!
 サイドボードを操作し、とっておきの武器をティアに送り込む。

「撃てっ!」
『はいっ!』

 ティアは手にしたロケットランチャーガンを構えた瞬間、発射した。
 狙いは前もって指示してあったとおり、雪華の左側。壁のある方。

『くっ……』

 雪華は少ない動きで回避した。
 しかしそれは想定の範囲内だ。
 撃ち落とされてもいい。回避されてもかまわない。
 はたして、弾丸は雪華の近距離、左側の壁に着弾。
 大きな爆炎を上げた。
 それこそが狙いだ。
 ヘッドギアを破壊されている雪華は、ティアの位置の把握にセンサーを頼れない。
 だから一瞬、雪華の目をくらませられればいい。
 一瞬、動きを止められればいい。
 ティアに最後の武器を送り込む。
 コンバットナイフ。
 爆炎を貫いて飛び出したティア。
 動きを止めている雪華。
 ティアは得意のナイフを握り、突進する!
 乾いた音と共に、二つの影が一つになった。

 はたして。
 ティアのナイフは、雪華の錫杖の柄によって受け止められていた。

「嘘だろ……」

 あの奇襲、あのタイミング、雪華がティアの動きに反応できただなんて……!

『よい攻撃です。……わたしも少し焦りました』

 雪華が静かに告げる。
 あの攻撃で、少し焦っただけ……だと。
 白き女王は、ティアを膝蹴りで引き剥がす。

『くはっ……!』

 ティアの身体が空中に放り出される。
 まずい!
 ホイールが接地していなければ、ティアには回避の手段がない。
 雪華はビームガンを持ち直す。
 そして、表情も変えずに、浮遊するティアに向けて撃った。

『きゃああああぁあっ!!』

 為すすべもなく撃たれたティアの悲鳴が響く。
 錐揉みしていたティアの身体が、地面に叩きつけられた。
 二、三度跳ねて、地面を転がる。
 うつぶせになって、ようやく止まったティアの身体は、砂埃にまみれていた。

 俺は呆然としていた。
 すべてを尽くして掴んだチャンスだった。
 これ以上はない奇襲、思い描いたとおりだった。
 それでも届かない。

「……化け物め」

 ティアは地面にうずくまったまま、身動きできずにいる。
 サイドボードの武器も尽きた。
 もう、為す術がない。
 俺たちの負けだった。



 雪華は、廃墟のストリートを睥睨している。
 視線の先には、地に落ちた対戦相手の神姫。
 雪華の視線は厳しい。
 圧倒的な優勢にあっても、その瞳からはいまだ戦意が衰えない。
 黒い小さな神姫をみつめながら、雪華は自らの主を呼んだ。

「マスター」
『なんだい?』
「『レクイエム』の使用許可を」

 厳かに告げる。
 雪華の耳に、高村が息を飲む気配が届いた。









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