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ウサギのナミダ

ACT 1-22



 ギャラリーにはどう見えているだろうか。
 おそらくは、力と技がぶつかり合う、真っ向勝負に見えているだろう。
 確かに、雪華は正々堂々、真っ向勝負を挑んできた。
 逃げない。揺らがない。
 ミスティ得意のレンジに踏み込んでまで勝負を挑んでくる。
 その姿勢を貫き、勝利を目指す。
 それこそが『クイーン』の二つ名の由来であり、神姫プレイヤーから人気を集める理由だった。
 だが、バトルの当事者は思い知る。
 真っ向勝負? とんでもない。
 劣勢とか、そう言うレベルじゃない。

『そこでリバーサル! 二連撃!!』

 菜々子の指示が飛ぶ。
 もう何度目かの得意技。
 この間合い、このタイミング、この速度、そして身体をロールさせながら繰り出す二連撃。
 熟達したアーンヴァルでも、このリバーサル・スクラッチはかわせない。
 だが。
 雪華は、これを紙一重でかわす。手にした剣で反撃すらしてみせる。

「くっ……!」

 正々堂々? 真っ向勝負?
 違う。
 これは「練習」だ。
 こっちの本気を練習台にしてしまう、圧倒的実力差。
 ミスティは敵を見上げる。
 空中に浮かび、羽を広げた雪華は、まるで降臨した大天使のようだ。
 その美しい姿に、ミスティは戦慄した。


「本身は抜かないのかよ!?」
「あれは、そう簡単に抜けるもんじゃないのよ!」

 虎実の叫びに、菜々子は応える。
 虎実は、ミスティの攻撃が雪華に全く効いていないことを見抜いているようだ。
 『本身を抜く』には、試合前からしっかり心構えをする必要がある。
 バトル中に切り替えるような便利な使い方はできない。
 それに、たとえ本身を抜いたところで、食い下がれるかどうか。

(……まさか、これほどとは)

 菜々子は戦慄する。
 正々堂々のバトルロンドで、こうもあしらわれるのは初めての経験だった。
 どうすればこれほどの実力が身につくというのか。
 だが、諦めるわけにはいかない。
 せめて一矢報いなくてはならない。
 『エトランゼ』の名に賭けて。
 そして、遠野とティアにつながなくてはならない。
 菜々子は絶望と戦いながらも、ミスティに矢継ぎ早に指示を出していく。



 帰りの電車の中、わたしはずっと考えていた。
 マスターのこと。
 マスターがわたしを守るために、すべてを賭けてもいいと、言ってくれたのだという。
 エルゴの店長さんがそう言っていた。
 わたしには、マスターの想いが分からない。
 わたしの過去が暴かれたせいで、あれほど酷い目に遭わされたというのに。
 それでもなお、わたしを自分の神姫にするために、全力を尽くしてくれている。
 マスターのその想いが伝わって、店長さんを動かし、刑事さんを動かし、風俗のお店がなくなって、多くの風俗の神姫が救われた。
 それほどの大きな想いをわたしに向けてくれている。
 なぜですか?
 なぜ、それほどまでに、わたしにこだわるんですか?
 わたしはそんな価値のある神姫ですか?
 わからない。
 わかりません。
 わたしにできることなんて、マスターのそばにいて、マスターの指示通りに走るこくらいなのに。
 シャツの胸ポケットから、マスターを見上げる。
 マスターは物思いに沈んでいるようだった。
 この間までのつらそうな表情でないのは救いだったけれど。
 わたしはマスターの心に寄り添えないままだった。
 刑事さんはわたしに、素晴らしいマスターの神姫であることを忘れてはいけない、と言った。
 それはもちろんなのだけれど。
 そのマスターのために、わたしは何がしてあげられるんだろう……?



 時間がないので、昼食は電車の中でパンをかじった。
 一度アパートにとって返し、ティアの武装一式を手にして駅前に戻る。
 ゲームセンターに着いた時には、久住さんの電話から、もう二時間以上が過ぎていた。
 久々のゲームセンターの入り口。
 俺は少し感傷的になる。
 一歩を踏み出すのが少し怖い。
 俺は店の出入りを拒否されているわけで、躊躇するのも分かって欲しいところだ。
 久住さんはいるだろうか。
 自動ドア越しだと、奥の様子は分からない。
 彼女がいてくれないと、俺は針の筵なんだが。
 それでも俺が足を進められたのは、今朝方の出来事があったからだろう。
 すくなくとも、もう店に黒服の男たちが現れることはない。
 自動ドアが開く。
 まず俺の耳に聞こえてきたのは、神姫の怒声だった。

「なぜだっ!! なぜあんな淫乱神姫にばっかりこだわるんだ!?」

 叫んでいるのはハウリン。
 その声を受け流しているのは、銀髪のアーンヴァルのようだ。

「迷惑なエロ神姫なんかより、あたしの方がよっぽど強いのに!!」
「随分とご挨拶だな、ヘルハウンド」

 俺が静かに言うと、武装神姫コーナーにいた全員が俺を見た。

「黒兎のマスター……」

 ヘルハウンドは怒りの眼差しを俺に向けてきた。
 憎悪すら込められていそうだった。

「……遠野くん!」

 ギャラリーから抜け出して、久住さんが駆け寄ってきてくれた。
 いつものようにジーパン姿のラフな格好。俺は安心したような、残念なような、複雑な気分になった。

「連絡ありがとう。……遅くなってごめん」
「ううん。来てくれてよかった」

 いつもよりも微笑みが弱々しく見えるのは気のせいだろうか。
 そのとき、ギャラリーの一角から、声があがった。

「おいっ! 黒兎のマスター!! ど、どの面下げてここにきたっ!!」

 三強の一人、『ブラッディ・ワイバーン』のマスターがこちらを指さして喚いている。
 俺にはそれほどショックはなかった。
 こうした中傷は予想の範囲内だったので、心構えもできている。
 と、いきなり久住さんがワイバーンのマスターを睨みつけた。

「わたしが呼んだのよ。文句ある?」

 耳が凍傷になってしまいそうなほどに冷たい声。
 ワイバーンのマスターはそれだけで、急に黙り込んでしまった。
 ギャラリーも、何か言いたげな表情だが、黙ったままだ。
 ……いったい、どうなっているんだろうか。
 俺が驚きを隠せずにいると、久住さんの後ろから、さきほどの銀髪のアーンヴァルを肩に乗せた青年が近づいてきた。

「あなたが、ハイスピードバニー・ティアのマスターですね?」

 人が良さそうに微笑む青年と、真剣な面もちの銀髪の神姫。
 その後ろに、カメラ用のベストを着用した、年上の女性がいる。

「……遠野くん、彼らがティアを助けてくれたの」
「高村優斗です。こちらは僕の神姫で、雪華」

 青年とその神姫は、礼儀正しく会釈した。
 それから、後ろの人物を示し、

「それから、この人は、僕らの取材をしている、『バトルロンド・ダイジェスト』の三枝めぐみさん」
「よろしく~」

 三枝さん、というその女性は、ひらひらと手を振った。
 俺も挨拶する。

「遠野貴樹です。それと、俺の神姫のティア」
「は、はじめまして……」
「ティアを助けてもらって……助かりました。感謝してます」

 もう一度俺はお辞儀をした。
 顔を上げると、高村と名乗った青年は、ゆるやかに首を振っていた。

「いえ、大したことではありません。
 僕たちも、対戦希望の相手を助けられてよかった」

 やはり、そうか。
 俺はその一言で確信する。
 この青年と神姫は、海藤の家で見た映像の、彼らだ。

「まさか、あの『アーンヴァル・クイーン』がティアを助けてくれたとは、正直驚きです」
「僕たちも驚いていますよ。……ああ、僕たちのこと、もう知ってるんですね」
「……秋葉原のチャンプが俺たちと対戦を希望するなんて……冗談じゃなかったんですか」
「まさか。冗談であんなこと言ったりしません」

 高村はそう言って微笑んだ。
 やたらと人が良さそうな青年だと思う。
 その高村の肩に座る、美貌の神姫が口を開いた。

「あなた方との対戦に、ここまで足を運ぶ価値がある、と考えてのことです。
 バトルが所望です。いかがですか、『ハイスピードバニー』のマスター?」

 長い銀髪を背に流した神姫の言葉は、威厳すら備わっているように感じられる。
 なるほど、『クイーン』二つ名は伊達ではない、か。
 俺は雪華の問いに、静かに答えた。答えは決まっていた。

「残念だが、お断りする」

 ギャラリーがどよめいた。
 全国大会レベル、しかも優勝候補とのバトルだ。対戦してみたいと思う方が普通だろう。
 しかも、三強の対戦希望を断ってまで、俺たちとのバトルに集中しようとしているのだから、神姫プレイヤーなら受けて立つのが筋と言うものだ。
 久住さんが俺の肩にそっと手をおいた。

「遠野くん、彼らはティアを助けてくれたのよ?」
「わかってる。でも、それとこれとは話が別だ」

 その手を、俺は邪険にならないようにそっと、はずした。
 そして、俺は雪華に向き直って言い切った。

「ティアを助けてくれたことには感謝してる……本当に、感謝してもしきれない。
 でも、君たちとバトルはできない」
「なぜです? 理由を教えていただけますか?」
「……君たちがマスコミの取材を受けているからだ」

 高村の背後にいた女性は、きょろきょろと辺りを見回すと。

「あ、あたし……!?」

 三枝さんは、自分を指さして、びっくりしていた。
 俺は高村に話を続ける。

「対戦を申し入れてくるんだから、今俺たちがおかれた状況は知っているんだろう?」
「あぁ、うん。先週来たときに、どうも様子がおかしかったので、調べさせてもらいました」
「だったら分かると思うけど……いま、こんな風に俺たちがゲームセンターで歓迎されていないのも、雑誌記事のせいでね。
 今俺は、完璧なマスコミ不信なんだ」
「……それで、僕たちの挑戦を受けないのと、どういう関係が?」
「『バトロンダイジェスト』の、君たちの記事は俺も読んでる。テレビ放送であんなことを言ったんだ。当然、俺たちとのバトルも記事にするつもりなんだろう?」

 雑誌記者の三枝さんは俺の言葉に頷いた。

「だったら、対戦なんて受けられない。結果がどうなるにせよ、何を書かれるか分かったものじゃない。今の状況に拍車をかけられたら、たまらないからな」
「……ちょっと! さっきから黙って聞いていれば随分な言い方ね! うちとあんな低俗雑誌を一緒にしないでもらいたいわ!」

 三枝さんがたまりかねたように口を挟んだ。
 彼女がカチンときているのももっともだ。
 なぜなら、俺自身、わざとひどい言い方をしているのだから。

「俺からしてみれば、大して変わらない。
 三枝さん、と言いましたか。
 あなただって、バトロンダイジェストの記事を書くにあたっては、俺たちに無様に負けて欲しいでしょう?
 『クイーン』の連載記事なら、俺だって雪華の華々しい活躍が書きたい。
 俺たちみたいな醜聞のただ中にいる神姫プレイヤーを叩きのめす記事なら、うってつけですから」
「なんてこと言うの……うちに記事が載れば、あなたたちだって、評価があがって、誤解が解けるかも知れないじゃない!」
「随分と上から目線ですね。
 俺は取材をしてもらいたいだなんて、一言も言ってない。
 むしろ迷惑だ。
 だったら、あなた方はむしろ、取材させてくださいとお願いする立場なんじゃないんですか?」

 三枝さんは言葉に詰まった。
 少し心が痛む。
 マスコミへの不信感は本当だ。だが、三枝さん個人に恨みがあるわけじゃない。
 三枝さんをダシにして、このバトルを断ろうとしている。だから、彼女に悪いところがあるわけではないのだ。
 久住さんの手が、また俺の肩におかれた。

「遠野くん……言い過ぎよ」
「……わかってる」

 俺は一瞬だけ、彼女の手に触れた。
 久住さんはため息をついただけで、何も言わなかった。分かってくれたのだろうか。
 俺と三枝さんが睨み合う。
 一瞬の沈黙。
 それを破ったのは、雪華の声だった。

「それならば、ティアとの対戦は取材をしないようにしてもらいます」
「って、ちょっとぉ!?」

 あわてたのは三枝さんだ。

「あなたたちとは、全国大会までの動向のすべてを取材する契約でしょう!? たとえ草バトルとはいえ、取材しないわけにいかないわよ!」
「ならば、契約を解除します。そうすれば、ティアと戦える」

 三枝さんが絶句した。
 マスターの高村が口を挟む。

「雪華……『バトルロンド・ダイジェスト』からは、いっさいの取材を断らない代わりに、スポンサードを受けている。そういうわけにはいかないよ」
「スポンサー契約など無くても、わたしたちは全国大会を戦えます。また、契約があるからといって、勝ち抜けるとは限りません。
 セカンドリーグの全国大会選手でも、そんな契約をしているのはほんの一握りでしょう。大多数の選手と同様の条件でも、わたしたちは十分に戦えるはずです」

 ……何か話が大事になってきた。
 雪華の言うスポンサー契約は、神姫プレイヤーが特定の企業や団体と契約を結んで、バトルロンドの活動資金や武装などを出してもらうことだ。
 そのかわりに、その神姫はメーカーが提供する武装やパーツを使用したり、ボディなどにメーカーロゴをペイントしたりして、広告塔としての役割を果たす。
 通称「リアルリーグ」と呼ばれるファーストリーグは、そうしたスポンサー契約も盛んに行われている。
 セカンドリーグではあまりそういう話はない。セカンドリーグ上位の有名神姫プレイヤーくらいだろうか。
 雪華は『バトルロンド・ダイジェスト』と契約を結んでいるらしい。
 バトルロンド専門誌からスポンサー契約を受けているとは、どれだけ実力があるということなのだろうか。
 それにしても、俺たちとの対戦がそこまで重要か?
 スポンサー契約がなくなれば、資金面で厳しくなる。
 そうした契約自体が少ないセカンドリーグとはいえ、全国を勝ち抜くにあたって、資金がないよりはあった方が有利であるはずだ。
 それを雪華は、俺たちとの対戦で捨ててもいいと思っている。
 いったい、何を考えているのだろう。

「だったら、そんな腰抜けほっといて、俺たちの挑戦を受ければいいじゃねーか。俺たちは取材、大歓迎だぜ?」

 その声に、ギャラリーも沸く。
 口を挟んだのは、『玉虫色のエスパディア』のマスターだった。
 どうも、三強はクイーンに対戦を申し入れて、ことごとく断られたようだ。
 にやにやとした笑みを張り付けた顔に、雪華は冷たい一瞥を放った。

「……あなた方との対戦は、意味がありません」
「な……なんだと……!?」
「わざわざここまで足を運んできた意味がないのです。
 わたしたちがハイスピードバニーやエトランゼと対戦を望むのは、彼女たちが唯一無二の戦い方をしているからです。
 わたしが東東京地区大会のインタビューで挙げた武装神姫は、いずれもそういう戦いを展開し、大会にはエントリーしない神姫ばかりです。
 わたしはそのような神姫との戦いを望んでいます。
 ただ強いだけの神姫なら、ここまで来る必要がないのです」 

 高村は、雪華の言葉に、肩をすくめて頷いていた。
 なるほど。確かに、ティアの戦い方は唯一無二だろう。雪華はそこに価値を感じているということか。
 三強は確かに強いが、大会にでてくる神姫に比べると見劣りがする。戦い方も、標準の域を出ない、というところか。
 見れば、玉虫色のマスターは、口をぱくぱくさせながら、怒りの矛先を向ける方向を失っているようだった。
 神姫にあそこまで言われたなら、もっと噛みついてきてもいいはずなのだが……何か思うところがあるのだろうか。
 そんなことを考えていると、左胸のあたりから声がした。

「マスター……」
「どうした、ティア」
「雪華さんとの対戦、受けてください……お願いします」

 突然何を言い出すんだ。
 俺は驚いて、ティアを見下ろす。
 雪華の様子を見ていたティアは、不意に俺の方へ視線を向ける。
 その顔には必死さが滲んでいた。









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