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 唐突だが、少々『具足』と言う防具について説明させて欲しい。
 正式名称を『当世具足(とうせいぐそく)』。
 簡単に言ってしまえば、戦国時代の甲冑である。

 戦国の世といえば、織田信長を始めとし鉄砲を取り入れた戦術が展開され始めた時代でもある。
 鉄砲は然程の訓練も要らず、熟達した剣の達人を一方的に討ち取れる最強の武器だ。
 それは即ち、戦場が一騎打ちの連続で構成されるものではなく、射撃の的となる一対多数が容易に発生しうる場所となった事を意味する。
 故に、今までの一騎打ちを前提とした、旧態依然の鎧が通用しなくなった時代でもあったのだ。

 もちろん伝統に則り、そのような鎧を使い続けた武将も居た。
 しかし、世は戦国。下克上がまかり通る乱世である。
 歴史は無くとも実力のある武将が、時代に即した鎧を纏い、古い格式を打ち破って行った時代だったのだ。
 生き残ったのは当然、具足を身に纏う新たなる時代の担い手達であった。

 故に、『当(いま)の世の鎧』即ち『当世具足』と呼ばれるのである。

 その構成は複雑を極める反面、ひどくシンプルでもある。
 それは生産性をも視野に入れた設計であるが故。
 すなわち、部位ごとの細分化が進み、破損した部位を取り代えるだけで戦場における即時修復を可能とした、非常にシステマチックな構造であったと言える。



 さて、ここに一人の男が居た。
 その身に纏うは、仏胴、草摺、佩楯、立挙、篠臑当、甲懸、袖、篠籠手、摘手甲、兜鉢、腰巻、眉庇、吹返、しころ、面頬、垂、襟廻。
 それは完全武装の鎧武者に他ならない。
 白髭をあしらえた面頬から覗く目は、暗く怨念に燃え盛る怨嗟の炎。
 腰の刀は銘を『凶夜(まがつよ)』、斬られた相手は三日三晩、原因不明の腹痛に苦しむという古今無双の妖刀である。
 そんな物を携える男などこの伊藤組には、……いや。天海はおろか、日本、世界を探してすら一人しかおるまい。
 そう、狂える親馬鹿。伊藤観柳斎その人である。
 伊藤組の大広間にて、組員を従え怨嗟の炎を背負いてただ、怨敵島田祐一を待っていた。
 上座の脚椅子に座り配下を従えるその姿は、現代よりもむしろ戦国の世でこそ絵になっただろう。
「……遅いぃ。まだ来ぉぬのかぁ、島田祐一ぃい……」
 ガチャリ、と具足を鳴らして、身を震わせる観柳斎。
 その背後に音も無く現れたのは、忠臣永倉辰由である。
「組長」
「辰由かぁぁ……。……ワシの可愛いぃぃぃ、美空たんを誑かすぅぅぅ、島田とやらはぁ如何したぁ?」 
 返す返すも声は若〇規夫でイメージして欲しい。
「……それが、既に、お嬢の部屋に……」
「な、何!? 許さん。許さんぞぉぉ島田祐一ぃぃぃぃ!!」
 ガチャリ、と甲冑を鳴らし立ち上がる極道の長!!
 そして、美空の部屋を目差すべく、一歩前へ踏み出した。
「あ、組長。迂闊に歩かれると……」
 珍しく、辰由の警告が間に合わなかった。
「ぬっ!? ぬおぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
 観柳斎、転倒。
 鎧が重かったらしい。
「ぬぅ、起き上がれん……」
 自力では起き上がれないらしいが、それでも必死に力を込める観柳斎。
 余談だが、西洋の全身甲冑(フルプレートメイル)等と同じく、この手の防具は騎乗による移動が前提である。
 元より、歩行が考慮されていない事も少なくないようで、馬に乗るのに専用の台を用意し、そこまで従者に左右から支えてもらって移動すると言う光景もあったらしい。
「ふんっ!! ……ふぅん!! ……ぬぅ、妙じゃな? ぬぐぐぐぐ……。ぬぉおぉぉっ!!」
 もがく組長。見守る部下達。
「ふん、ふん、ふぅんっ!! ……くぅう、こうなれば全力じゃ」
 さっきから如何見ても全力です。
「ぬぉりゃあぁぁぁぁぁっ!!」
 雄叫びと共に、金ぴかのピアノを背負った男の幻覚が浮かび―――。
 ―――ぐぉぎゅぐっっ!!
 伊藤観柳斎の腰骨から、シャレにならない音がした。

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、腰が、腰がぁぁぁぁっ、…痛い、痛すぎるぅぅぅぅ……!!」
 先程まで満足に動かなかった甲冑がジタバタ転げまわる。
 華麗に回避した辰由は別として、数名の部下と、部屋を仕切る襖を数枚薙ぎ倒し、庭に落ちて尚のた打ち回る重甲冑。
 よっぽど痛かったのか、庭先で転がり、灯篭を粉砕した挙句が……。

 ―――ドボン。

「……………はっ!?」
 あまりの事態に我を忘れていた辰由が、この音で正気に返った。
「く、組長が。組長が池に落ちたぁ!!」
「だれか、誰かぁ。ロープ、ロープ。それとクレーン車!!」
「ロープじゃダメだ、ザイルかスチールケーブルを!!」

 さて、突然ですがここで問題です。
 伊藤組組長、伊藤観柳斎の着ていた鎧の重さはどの位でしょうか?

 参考までに、水を吸って重くなった巨体+甲冑は、組員10名の尽力を持って20分後に救助されたという。
 なお、普通の人間は、訓練されていたとしても8分以上は息を止められない事を明記しておく。
 その上でなお、観柳斎が死ななかった事も併せて明記しておく。

 今更人類の記録を塗り替えた程度で、ことさら驚く人も居ないだろうし……。



鋼の心:番外編 ~Eisen Herz~

伊藤組のとある一日(後編)




「……なんか、庭。騒がしくない?」
「どうせ父さんが暴れてるのよ。気にしなくていいわ」
 美空の部屋で、床に置かれたクッションに座る祐一。
 美空は小さなテーブルを挟んで、ベッドに腰掛けていた。
「……って、マスター!! スカート、スカート!!」
「ん? 何?」
 因みに伊東美空。本日はスカート着用である。
「……ぁ!」
 気付いた美空が慌ててスカートを押さえるが、羞恥心があるなら座る時に気づくべきだと思う。
「……えっと。見えた、よね?」
「うん」
「祐一さん、そこは嘘でも『見てない』って言う所です」
「そっか」
 フェータの苦言に、祐一は意外そうな顔をする。
「……んで、何色?」
「白」
 アイゼンの質問に即答する祐一。
「だぁあ!! 忘れろー!!」
 その側頭部に美空のキックが炸裂。
 丁度、蹴りやすい高さに頭があった。
「ちょ、マスター。ダメですよ!!」
「……美空が迂闊。……普段から慎みを持たないから、こういう時に困る」
「……うぅ、皆して私を悪者みたいに……」
「……如何考えても美空が悪い」
「まったくです、祐一さんしっかりしてください。マスターも悪気は無かった筈なんで……」
「ああ、大丈夫。……たぶん」
 祐一は、心配そうに見上げるフェータに答えて身を起こす。
 首がかなり痛かった。

 伊東美空。
 彼女に付き合うのは、忍耐と耐久力が必須である。


 さて、同時刻。
 庭では『観柳斎サルベージ作戦』が展開されているのだが、組員の半数は別の場所に居た。
 即ち、美空の部屋のドア前である。
「……ぬぐぐぐぐぅ……。あのガキャぁ、ちっこい姐さんとの距離が近すぎる!!」
「くそう、馴れ馴れしくしやがって、許せねぇ!!」
「み、見ろ!! 何か出したぞ!?」


「来る途中、コンビニでアイス買ってきたんだけど、食べる?」
 そう言って、祐一は袋からカップアイスを三つ出す。
「食べる食べる。何があるの?」
「……バニラと、コーヒーに、イチゴ、それからチョコ」
「イチゴ!! ……でもチョコも捨て難い……」
「じゃあ私はバニラで」
 そう言って、フェータがバニラを確保。
 アイゼンは無言でコーヒー味の蓋を開けていた。
「それじゃあ、美空は僕と半分こする?」
「うん」
(まったく、マスターったら子供なんですから……)
 娘を見守る母親の心境で、ほほえましそうな表情を浮かべるフェータ。
(まぁ、私は大人ですから……)
 そう一人ごち、フェータは横目で祐一と美空の様子を伺う。
「はい、あ~ん」
「あ~ん」
「うぇ!?」
 とんでもない事していた。
「ちょっと待って下さいマスター!! 流石にそれは許せません!?」
「え、何?」
「フェータ?」
 疑問符を顔に浮かべる美空と祐一。
「祐一さんのスプーンで『あ~ん』なんて羨ましいマネはゆるしません、それじゃあ間接キスじゃないですか!?」
「え? あ。……………ぅきゃぁ!?」
「だから照れ隠しに殴るのはやめt―――、ぐはぁ!?」
 美空パンチで吹き飛ぶ祐一。
「って祐一さん!? ―――っきゃぁ!?」
 無謀にも、支えようとしたフェータを巻き込み部屋の端まで転がっていく祐一。
 因みに。既にコーヒー味を食べ終わっていたアイゼンは。
「……危ない所だった。もぐもぐもぐもぐ」
 祐一を見捨てて華麗に回避。
 抜け目無くキャッチした祐一のスプーンでチョコ味のアイス(祐一用)を食べていた。
 ……なんか、ものすごい勢いで……。

「……あ~、その……。……ゴメン、大丈夫?」
「う、うん。なんとか、ね」
「マスター。その内祐一さん、死んじゃいますよ?」
 咄嗟に庇われたのだろう。祐一の腕に抱きかかえられる様にしていたフェータが、盛大に溜息を付いた。


(野郎、ちっこい姐さんに、ちっこい姐さんに、抱 き つ き や が っ た ! !)
(許さねぇ。……奴だけは絶対に許さねぇ……)
(……クキキキキキ。……ノウミソ、ノウミソ、ブチマケテ、テテテテ、ヤ、ヤル、ルルル)


「それはそうと、祐一さん。最近左腕に違和感があるのですが……」
「…ん~。フリッサーの影響かな? ちょっと見せてみて」
「お願いします」
 そう言ってボディスーツを脱ぎだすフェータ。
 構造的に、腕を露出させる為には上半身を肌蹴ねばならない。


(――――――っは!! や、やりやがった。……あのヤロウ!!)
(ち、ちっこい姐さんを、ちっこい姐さんを……。剥きやがったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)
(ぐぎぎぎぎ、かひゅー、かひゅー、かひゅ~っ。ふしゅるるるるるるぅ)


「ねぇ、フェータ。……そういうメンテとかって、普通先に私(オーナー)に言わない?」
「ええと。……マスターの場合ですと対処に不安が……」
 不満そうな美空から、あからさまに目を逸らすフェータ。
「でもメンテ位は美空にだって出来るでしょ?」
 関節部に溜まっていた微細なゴミを、綿棒で取り除く祐一。
 僅かなゴミではあるが、フェータはそれすらも敏感に違和感として感じたのだろう。
「……ちなみにマスターだったら、私の調子が悪くなったら如何します?」
「え?」
 きょとん、と目を丸くし考え込む美空。
「……ええと……」
 ややあって。
「TVの調子が悪い時って。…………叩くよね?」
「これからもよろしくお願いしますね、祐一さん」
「ああ、任せてくれ。フェータ」


(……て、て、て、手を握っただとぉ!?)
(信じられねぇ。……俺でさえ、ナデナデしてもらうのが精一杯だって言うのに……)
(模擬戦終了。リミッターを解除する)


「ゃぁん、……祐一さぁん。くすぐったいです」
「あ、ゴメン」
「……。(あれ? 何この桃色空気)」
「……。(……ズルイ)」


(……ころす。ころころする。ころころしてやるぅぅぅぅぅっ!!)
(俺の、俺のちっこい姐さんがぁ。あんなチャラ男にぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃ!!)
(涙)


「……ってか、想像以上に調整がピーキーだな……。これで故障知らずていうのは、よほど身体制御に熟達していないとなら無いだろうに……。さすがはフェータって所か……」
「いえ、単にマスターに修理をさせられないので、狂いが生じたら動作補正で対応しているだけですよ」
「……今、サラッともの凄い発言を為さいませんでしたか?(何故か敬語)」
「……実に化け物」
「ふふん、それを見越してワザワザ私はメンテをしなかったのよ(エッヘン)」
「「「……」」」
「あぁ!? 何故か三対の白い目が、白い目がぁぁぁ!?」


(お嬢うるせぇ!! 何言ってるのか聞こえねぇよ!?)
(くぅう、ちっこい姐さんが何故か不審な物を見るような目で……!!)
(今は……、今は耐えてください、ちっこい姐さん!! 必ずや俺が、あの野郎を三途の川の向こう側に叩き出してやりますからぁ!!)
(てめぇ、抜け駆けする気か!? 止めは俺が刺すんだ!!)
(なんだと、貴様に俺の憤りが分かるか!?)
(貴様こそ、俺の猛る小宇宙を感じれるのか!?)
 走る緊張感を断ち切ったのは彼だった。
(―――待つッス)
 ぎしっ、ぎしっと。階下から廊下へ上がってくる一人の男。
(奴にトドメくれるのは自分ッスよ)
 その名は。
(や、山南!? 貴様はAK喰らって死んだはず!?)
 確かに、文字通りAK“喰らって”居ましたが……。
(山南、やはり生きていたのか)
(自分は不死身ッス!!)
 まるで最終回に脈絡も無く再登場した、どこぞの仮面ライダー *1 見たいな台詞を吐く山南三郎。
(そして、怨敵島田祐一を倒す為に、新たなる技を身に着けて帰ってきたんッスよ!?)
(なっ、なんだってー!?)
(見るッス!! これが自分の新しい『力』ッス!!)
 山南三郎、右手を突き出し、唸り声を上げる。
(ぅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。……完成ッス!!)
 そして、右腕から、それが出現する!!
(馬鹿な、この能力は!?)
(世界一の冒険屋として名高いあの男の『力』か!?)
 そう。
 山南三郎の右手には、彼が喰らった鉄塊が完全な形で再生されていた。
 その名もAK47。俗にカラシニコフと呼ばれるアサルトライフルだった。

 こんなの。

(……………)
(……………)
(お前はEATMANか!?)
(っーか、この状況でAK出して如何するつもりだ!?)
(武器ならみんな持っとるんじゃい!! 撃つに撃てん状況だから困っとるんじゃろが!!)
(ああ、痛いッス。自分病み上がりッス!?)
(ウルせぇ、無駄に目立ちやがって!!)
(おまけに行数無駄遣いしやがって、話が進まんだろが!!)
 山南三郎は再びタコ殴られた。
(まて、部屋の様子を見ろ!!)
(―――!?)



「はい、これで完璧」
「わぁ。ありがとうございます祐一さん」
 嬉しさのあまり、祐一の指に抱きつくフェータ。
「あはは、大げさだな」
「だって、マスターが直すとより壊れるのですから始末に終えません」
「……美空の修理はどちらかと言うと破壊工作」
 我が物顔で寛ぎまくり、寝そべってフェータのBL小説読んでるアイゼン。
「アイゼンさん。どちらかと、ではなく。完全に、破壊工作です」
「……ん、そだった」
「そうですよ。アイゼンさんったら、あははは」
「まったく。うっかり屋さんだな、アイゼンは。あははは」
「……ごめん、ちょっと間違えた。あははのは」
「……なんか最近、あたしの扱いが酷いと思うの」 

 仕様です。



(お嬢凄い邪魔!! 見えない、見えないよ!?)
(なんだ、どうなった!? お嬢の影で見えん!!)
(早くどけ、お嬢!! 俺はお嬢よりちっこい姐さんが気になるんだぁ!!)
(お嬢が邪魔でちっこい姐さんが見えないッス!!)
 本当に酷い連中である。



 そして、事態は更に混迷を極める。
 そう、奴が復活したのである。
「ぬぅ!! ワシの可愛い美空たんは無事か!?」
「組長。そんな事よりちっこい姐さんがぁ」
「さっきなんかあの野郎につんつんさてたんでぇ!!」
「許さねぇ。殺す、殺す、殺すぅ!!」
「うぉおおおお、俺の、俺のちっこい姐さんがぁぁぁぁぁ」
「誰がお前のだ、ちっこい姐さんは俺のだぁ!!」
「なんだと、貴様。もう一回言ってみろ!!」
「―――静かに。なにやらお嬢が立ち上がりました」
 辰由の言うとおり、美空が立ち上がる。
 時刻は11:30。
「あら、もうこんな時間。そろそろお昼だわ」
「そうね。祐一もお昼食べて行くといいわ」
「え、いいの?」
「いいって、いいって」

(良く無ぇよ、お嬢!!)
(早く帰れ、って言うか死ねぇ!!)
(むしろ殺すぅ!!)

「今日は特別に、あたしがお昼を作るわっ!!」
「え゛!?」

(―――!?)
(み、美空たんの、料理、だと………!?)
(しかも張り切っていらっしゃる)
 辰由の見立てでは、美空の料理は張り切るほどに酷くなる。
 そして、今日の美空の張り切りようと来たら。
 過去最高、であった。
(……きょ、今日こそは……。死人が、出ますね……)
 そして、それが自分でない保証など何処にも無い。
 その日、永倉辰由は、死を覚悟した。



「…………………………。あ、そうだ。チョーヤバァ。私ってばァ京子とォ食事の約束してったッポイ。チュー訳でェもう帰る」
 一息で捲し立て、アイゼンは逃げた。
 ものの見事に、華麗に逃げた。
 少し言語野が可笑しくなっていたが無理も無い。美空の料理を一度でも味わえば、嫌でも分る。でなけりゃ死ぬ。
 そして、アイゼンがドアを開けたということは、つまり。
「あら、あんた達そんな所で如何したの?」
「…………ちょ、ちょっとおしくら饅頭の練習などを……」
 意味不明である。
「まぁいいわ。それよりお昼あたしが作るから皆も期待して良いわよ」
「………あ。……は、い……」
「さぁ、頑張るぞぉ!!」
 美空さん腕まくり。
 お願いですから頑張らないで下さい。
 そう言える者は一人も居なかった。
 ただ一人、空気読まない“奴”、即ち島田祐一を除いて。

「美空、料理なんか出来たんだ?」
「もちろん、女の子の必修技能よ」
 何故そうまで自信満々なんだろう?
 美空の腕を知る組員達が戦慄の中で思う。
「美空、一つ質問」
「何?」
「料理のサシスセソ、言ってみ」
「ええと、『サキシトキシン』『シアン化水素』『水酸化ナトリウム』『セレン』『ソマン』……よね?」
「…………………………あ~。……美空。……俺と一緒に作ろう、な?」
「……え?」
 美空脳が空転を開始する。
「祐一とお料理?」


 こうして美空と祐一はフェータ、アイゼン(捕まった)を引きつれ台所へと向かった。



 まめちしき。
 『サキシトキシン』『シアン化水素』『水酸化ナトリウム』『セレン』『ソマン』
 これらが含まれる食べ物を食べると、普通死にます。気をつけましょう。



 1時間後。



「できたよ~」
「お待たせしました……」
 笑顔の美空と、疲れた顔の祐一が現れる。
「あ、兄貴。どうしやしょう?」
「サブ、何時もの金魚鉢を……」
 夜店などの運営も伊藤組の重要な仕事だ。
 その関係上、金魚は容易に手に入る。
「あ、お嬢!! あんな所にH2Oの混合気体が!?」
「え、何?」
(今です!!)
 美空が目を離した一瞬のうちに、永倉辰由、スプーンで料理を僅かに掬い、金魚鉢に落とす!!
「美空、H2Oって酸素だよ」
「……なんだ、そんなの何処にでもあるじゃない」
「申し訳ないッス。でも一瞬見えたもので……」
 美空に謝る山南はもちろんの事、組員全員が金魚鉢に視線を向けていた。
(……特に、目立った変化は無いようですね……)
 例えば、金魚が死んだり、巨大化したり。
 あるいは全く別種の異界生物へ変貌したり。
(……酷い時には瞬時に白骨化して、水が沸騰し始めましたからねぇ……)
 遠い目をする永倉辰由。
 それはどちらかと言うと、芹沢博士の領分です。
 苗字的に。
「まあ、とにかく食べてみてよ…」
「うむ」
 むしゃむしゃ食べ始めるのは馬鹿親、伊藤観柳斎。
「流石は美空たん。何時もながらの美味しい料理じゃ!!」
 この人だけは美空の料理が平気、…………でもないが、根性で食べてしまうので、これをもって食べられるとするのは危険である。
 つまり、だれか普通の人間が、毒見として食べる必要があるのだ。
(……自分が行くッス!!)
(山南、危険です!!)
(でも、兄貴。誰かが食べて危険性を図らねば……!!)
(……くっ!! サブ。貴方の犠牲は無駄にはしませんよ)
「行くッス!!」
 山南。ソレを一口、口に入れた……。

(……どうです、サブ。体に異変は?)
(今の所、無いッス)
(皮膚にウロコが生えたり、右手が喋ったりはしませんね?)
(大丈夫みたいッス)
(では、体が緑色になって巨大化したりは?)
(しないッス)
(目からオプティックブラストが出たり、ザ・ブレイダーに変身してしまったり、は?)
(無いみたいッス)
「……馬鹿な、お嬢の料理が、無害だと!?」
「そんな筈が無い!! こんな事、絶対に有り得ん!!」
「わ、分かったぞ。きっとみんなで幻覚を見ているんだ!! これは幻なんだ!!」
「そうだ、そうに違いない。お嬢の料理が無害だなんてあって良い筈が無いっ!!」
「なるほど。臭いを嗅いだ時点で全員ヤラれていたのか、あっはっは。それなら納得だ!!」

「いや、その……」

「あぁん?」
 困った顔で話しかける祐一を、組員一同が睨む。
「……一応、僕が監督しておいたので、有毒物質は入ってないのですが……」
「………………なに?」
 組員が固まった。
「変な薬品は入れるのを阻止しましたし……」
「ん?」
「野菜を漂白剤で洗おうとするのも止めました」
「おぉう?」
「ついでに、調味料も計って使うように指導しましたし……」
「……え~と」
「食べて死ぬような物ではない筈ですが……?」
「………」
「………」
「……つまり何か? 坊主が、お嬢の料理を、食える物にしたって事か?」
「流石に、美空に任せると地球の裏まで貫通しそうな溶解物質が出来そうだったので……」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
 ただ一人、がつがつ食べ続ける観柳斎を除いた全員の時間が止まる。
 一秒。
 二秒。
 三秒。
「……坊主。……いや祐一さん!! お嬢を、お嬢をよろしくお願いいたしやす!!」
『お願いいたしやす!!』
 組員一同、総員土下座。
 美空の料理を食べても、死ななくて済むと判れば祐一がまるで神様に見える。
 下手すると彼を生き神に祭り上げ、新興宗教をうち立てかねない崇拝ぶりであった。
 っつーか、気の早い連中は既にお供え物などしながら拝んでいる。

 そう、命を賭して美空の料理に挑む伊藤組の面々にとって、まさに祐一は救いの神だったのだ。

 かくして、伊藤組のヒエラルキーが書き換えられた。
 こんな感じに。

 ちっこい姐さん≧島田祐一>美空の料理>(越えられない壁)>伊藤観柳斎>稲造>永倉辰由≧美空本人>組員一同

「組長。僭越ながらこの辰由。祐一さんにならば、お嬢をお任せしても宜しいのではと考えますが……」
 早速、辰由が残る障害の排除に掛かる。
 即ち、観柳斎に祐一を認めさせねばならないのだ。
「……辰由」
「はっ」
「てめぇ、それは本気で言っているのか……?」
「事はこの伊藤組の存続に関わります。組長、お嬢のためにも、ここは一つ引くわけには行かないものでしょうか?」
「………………」
 腕組みをし、瞑目する観柳斎。
 もちろん、何も考えていない。
「組長!!」
「組長!!」
「親分!!」
「組長ぉ!!」
 組員達も口々に辰由の支援に回る。
「……坊主、ワシと一緒に道場へ来い」
「……いいですけど?」

 かくして、舞台は伊藤組の道場へと移る。

「……ワシの娘が欲しいというのならば、せめてこのワシを突破して見せろ」
「……えっと」
「ワシより弱い男が、美空たんを守れるものかー!!」
 両腕を広げ、腰を落とし、突進してくる観柳斎。
「ぬおりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」
「えい」
 祐一は普通に蹴った。
 丁度良い高さに頭があった。
 顔面に足が突き刺さるようにめり込んだ。
「ひでぶ」
 観柳斎は、ずるりとその場に崩れ落ちる。
「WINNER!! 祐一さん!!」
 辰由が祐一の手を取り高く掲げる。
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
 勝利の興奮に沸く組員一同。
「ま、まてぃ。わしはまだ―――」
 起き上がろうとする観柳斎の後頭部を誰かが踏み抜いた。
「―――ぶぎゅらぁっ!?」
 誰だか知らんが、ナイス判断である。
 そして、次から次へと組員たちが駆けつけ、勝者を胴上げし、勝利を誇ったのである。

 倒れた観柳斎の上で。

 かくして。一つの騒動が終わり一人の男が倒れた。
 伊藤組には平和が訪れ、祐一の危機は本人が知るより先に去った。
 しかし。

「……ぬふふぅ、許さんぞ、島田祐一ぃ。断じて許さんぞぉ……!!」

「ようし、今度こそ祐一をぎゃふんと言わせる料理を作るわよ!! さあ皆、味見して!!」

 第二第三の悲劇は、すぐ其処まで迫っている。
 それはもう確実に……。



 伊藤組の逆襲。
 観柳斎VS雅、灼熱の決戦に続かない。








 もはや、事此処にいたって言う事無し!!
 全部ドラクエとアーマードコアとうみねこが悪いんです。

 はい。

 と言う訳で1年以上の時を経て、伊藤組の後編でした。

































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