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ウサギのナミダ

ACT 1-20



 月曜日の夜、九時閉店少し前に現れた客は、息を切らして店に入ってきた。
 端正であろう顔には疲労が濃く、目は赤く充血している。
 徹夜明けであろうか。
 夜通し楽しくフザケていたわけではないようだ。
 その証拠に、疲れ切ったその顔の、両の瞳だけが、意志の光を強く放っている。
 もちろん、今彼の置かれた状況を考えれば、楽しくフザケる気分ではないわけだが。
 右手には痛々しい包帯。デイバッグを担いでいる。
 シャツの胸ポケットからは、うさ耳の神姫が顔をのぞかせていた。
 息を整えている、その青年に声をかける。

「いらっしゃい……遠野くん、だったかな?」
「はあ、はあ……店長……ご相談が、あります」
「……自分の中の整理はついたのかい?」
「……はい!」

 迷いのない返事だった。
 すべてを決めて、ここへ来たのに違いない。
 ホビーショップ・エルゴへと。
 青年の短くも熱い答えに、胸に炎が宿ったような気がした。
 日暮夏彦はそういう男だった。
 日暮店長は、アルバイトの店員と、彼の神姫・ジェニーに後を任せると、遠野貴樹を店の奥へと誘った。



 ティアを神姫学校のスペースに預け、俺は店長に続いて店の奥へと入った。
 わざわざティアを預けたのは、これから先の話をティアには聞かせられなかったからだ。
 俺がこれから何を使って、何をするのか。
 それを聞いたら、ティアはショックを受けるだろうし、俺を止めようとするだろう。
 しかし、俺にはこの方法しか思いつかなかった。
 だから、ティアには教えられない。
 ティアを救うために。

 店の奥、事務所兼休憩室のようなところに連れてこられた。
 お世辞にも広いとは言えない。
 だが、内緒話をするにはぴったりだった。
 日暮店長は、電源が入ったままのPCの側の椅子に座り、向かいの席を俺に勧めた。
 席に着く。
 俺が小さなテーブルの上にデイバッグを置くと、店長はPCのそばにあった雑誌を俺の方に出した。
 例のゴシップ誌の今週号だった。
 ……つまり、店長は俺が今置かれている状況や、何の相談に来たのか、だいたい把握しているということだ。

「……話が早いですね」
「菜々子ちゃんから、この件で事前に連絡を受けていてね……先に調べさせてもらった」

 やはり、私立探偵か何かなのだろうか。神姫専門の。

「店長の広いコネクションを見込んで、お願いがあります」

 俺はデイバッグの中から、「それ」を取り出した。
 取り出したものは二つ。
 パッキンで厳重に包んだものと、メディアケース。
 俺は日暮店長の前にそれを差し出した。

「見てもいいかい?」

 包みを手にした店長に、俺は頷いた。
 慎重にパッキンについたテープを剥がしていく。
 包みは手のひらにすっぽり収まるほどの長細いものだ。
 パッキンの下から、さらに布のハンカチが出てくる。
 店長はそっと、その布をめくった。

「……っ」

 さすがにちょっと驚いたらしい。
 いくら神姫のボディを見慣れているといっても、人型のものに頭がないと、やはり生理的に嫌悪を感じてしまうのだろう。
 その布の下にあるもの……それは、かつてのティアのボディだ。人間そっくりに作られ、あらゆる性的虐待に対応できる冗長性を兼ね備えた違法ボディ。

「……こっちのメディアケースは?」
「ティアの、過去の記憶です。ティアのメモリにはいっていたものを、光学ディスク三枚とメモリカードにそれぞれ収めてあります」

 これが俺の最後の切り札だった。
 違法ボディとティアの記憶。それは『LOVEマスィーン』が違法営業であることを裏付ける。
 それゆえにティアは店から追われているが、それゆえに武器にもなる。

「この二つは、ティアが……俺の神姫が風俗店に所属していた証拠になるはずです。記憶の方には、風俗店のスタッフや常連客の記録もあります」
「……」
「これで……神姫風俗店『LOVEマスィーン』を告発したいんです。
 ただし……ティアには何の関わりもないように」

 俺が譲れないことは、そこだった。
 ティアが警察の証拠として持ち去られたら、どうなるか分かったものではない。
 この件はティアになんの影響も及ぼさないように事を進めなくてはならない。
 日暮店長は、俺が差し出したものを、手にとっては眺めている。

「警察には連絡したかい?」
「していません。警察に相談したら……ティアを押収すると言うにきまっていますから。だから、日暮店長のところに相談に来たんです。久住さんが、神姫関係の探偵のようなことをしている、と言っていましたので」
「探偵、ね……」

 店長は苦笑した。
 そして、俺を見た。真っ直ぐで熱い視線が俺を射る。

「ひとつ聞きたいんだが……これを警察が知れば、君の神姫はともかく、君自身が警察から呼ばれるかも知れない。君にとって都合が悪いことになるかも知れんぞ?」
「かまいません」

 即答だった。予測の範囲内だ。その覚悟は、昨晩終えていた。

「俺は、どうなってもいいんです。警察に証言しにいってもいい取り調べを受けてもいい、それで何か罪状があるなら甘んじて受けます。裁判で必要なら、証言だってしに行きます」
「……たかが、神姫一体のために?」
「……それで、ティアが安心して暮らせるようになるのなら」

 店長の物言いに、俺は一瞬むっとしたが、それが揶揄ではなく、真剣な問いだということを、彼の視線が物語っていた。
 俺はそれに応えるように、言葉を紡ぐ。

「俺は……ティアを無理矢理に自分の神姫にしました。自分の好みの武装をさせて、戦わせて……俺はティアに夢を叶えてもらったんです。
 でも、それはティアが望むことじゃなかったかも知れない。それでもティアは笑ってくれるようになってきたから……その笑顔を守ることが、俺の、マスターとしての、責任だと思っています。
 たとえ、俺のすべてをかけることになっても……ティアを守りたい。それが夢を叶えてくれたティアにしてあげなくてはならないことだから」

 俺の奇妙な主張を、日暮店長は真剣な表情で聞いてくれている。

「無理な相談であることは、承知の上です。
 でも、俺が頼れる伝手は、日暮店長しかいなかった。
 俺が言うことが無理でも、次善の策を一緒に考えてください。
 どうか……お願いします」

 俺は深く頭を下げた。
 日暮店長が、深く息をつく気配。

「君が警察に捕まったら、君の神姫はどうするんだ? ひとりぼっちになってしまうだろう」
「そのときは、久住さんに預けます。彼女なら分かってくれるだろうし……信じていますから」
「そうか……」

 日暮店長は、視線をはずすことなく、俺を強く見つめている。
 俺も視線を逸らさない。
 もう決めたことなのだ。俺の決心は揺らがない。
 やがて、日暮店長が笑った。

「わかった。なんとかしてみよう」
「……あ、ありがとうございます!」
「あ、これは借りておくぜ? 大丈夫、悪いようにはしない」
「……で、俺はどうすれば……?」
「そうだな……とりあえず、待っていてくれ。君が必要なとき、何かあったときには連絡する」

 店長は左手を差し出した。握手に応じる。
 日暮店長の握手は、やはり熱く堅いものだった。
 これから店長が何をするのか、俺には想像もつかないが。
 だが、彼は理屈抜きに信じられる、そんな気がしていた。



 閉店作業も終わり、アルバイトも帰った夜遅く。
 ジェニーは自分のマスターを捜している。

「もう、マスターったら、なにしてるんでしょう……」

 閉店直前にきたお客さんを相手していた。
 だが、そのお客さんが帰った後も、店の仕事をほったらかして、姿をくらましたままだ。
 はたして、日暮夏彦は、自分の部屋のPCの前で、にやけていた。
 そのPCの画面を見て、ジェニーの頭は沸騰した。

「マスタアアアァァーーーーーーー!!? 仕事さぼって何やってんですかああぁぁ!!」

 ディスプレイには、さきほど神姫学校に預けられていた、ある神姫の痴態が表示されている。

「うわああぁぁ!? ジェニーさんっ!? いや、ちょっと落ち着けって!?」
「これが落ち着いていられますかっ! 仕事さぼって何やってるかと思えばっ!!」
「だからっ!! これが次の仕事のネタなんだってええぇっ!?」

 ジェニーは、いましもファイナルアタックライドをかましそうになったブレイドブレードを、すんでのところで止めた。

「次の……仕事?」
「ああ。久々の副業だぜ?」

 にやり、と笑う夏彦。その口調からふざけた調子は消えていた。
 PCのディスプレイに表示された画像が次々と変わる。
 あられもない、を通り越したどぎつい画像の数々に、ジェニーは目を逸らした。

「ったく……神姫風俗でこんなことやってたなんてな……反吐が出る」
「じゃあ、なんでこれ見ながら、さっきはにやにや笑ってたんですかっ」
「いや、あれは思い出し笑いよ?」

 きょとんとするジェニーを見ながら、夏彦はまたさっきのように笑い出す。

「だってよ、自分のすべてをかけても、神姫の笑顔を守りたいって言うんだぜ? あの青年は」
「神姫の笑顔を……?」
「そうだ。俺と同じくらいの神姫バカだ。笑わずにはいられないぜ……うれしくってな」

 そう。閉店間際に入ってきた、あの青年は言ったのだ。
 自分のすべてをかけても、自分の神姫を守りたいと。
 笑顔を守りたいと。
 夏彦はティアの記憶を紐解いた。
 彼女が風俗の神姫だったと知っていてなお、その内容にショックを受けた。
 彼女の記憶を見てもなお……あの青年はティアを自分の神姫にして、さらに守りたいと願うのだ。夢を叶えてくれた、と感謝すらしているのだ。
 神姫バカだ。
 夏彦からの最高の誉め言葉だ。
 そんな男に出会えたことが、嬉しくて仕方がない。
 そして、心が熱くなる。

 ジェニーには、その夏彦の気持ちがよく分かっていた。
 なぜなら、自分もそうだから。
 あのクールな青年は、あの神姫の笑顔を守りたい、と言ったという。
 マスターと神姫が笑い合う姿。それはジェニーが一番好きな光景だ。
 だが……。

「でも、マスター。……このままでは彼の神姫は……笑えないのではないですか?」
「うん。よくわかってるじゃないか、ジェニーさん」

 もしあの青年が捕まったりすれば、ティアはマスターと一緒にいることはできない。
 彼女は無事でも、心から笑うことなんてできないだろう。

「だからさ……俺は、遠野くんもティアちゃんも、両方救いたい……彼らが心から笑いあえるように」
「……何かいい方法が……?」

 ジェニーの問いに、夏彦が今回の作戦を囁いた。

「……ま、俺たちの負担がめちゃくちゃ増えるんだが」
「やりましょう」

 ジェニーは間髪入れずに答えた。
 いま、一人の神姫の笑顔を守るために、すべてを賭けることを決意したマスターがいる。
 そして、彼はわたしたちの力を頼ってきた。
 わたしたちは彼の願いを叶えることができる。
 やらない理由がどこにある?
 なぜなら。
 わたしたちはそのために戦っている。
 『G』の力はそのためにこそあるのだから。

「……これからしばらく、徹夜だぜ?」
「でも、やるのでしょう、マスター?」

 夏彦は笑って頷いた。

「決まりだ。早速始めるぜ、相棒」

 夏彦は携帯電話を取り出し、アドレス帳から目当ての名前を呼びだして、電話をかけた。

「ああ、もしもし、たっちゃん?
 そう、俺。……残業? 仕事熱心だねぇ。
 で、ものは相談だ。最近旬のネタがあるんだが……」



 それからしばらく、俺は結局、いつもの日常生活に戻った。
 すぐにでも警察から連絡が来るのではないかと身構えていたが、拍子抜けするほどに何もなかった。
 あの店長が動いてくれたところで、すぐに警察が動くとは限らない。
 そう気がついて、結局俺自身に他に何をすることもなく、大学に行って勉強したりしていた。
 ティアのことは心配だったので、できる限り連れ歩くことにした。
 ティアは時々俺を見上げ、何か言いたそうにしている。

「どうした?」
「……なんでもありません」

 そう言って、口をつぐんでしまう。
 レッグパーツの訓練は、夕方からやっている。
 幸いなことに、ティアはスランプから脱したようで、順調に進んでいた。
 ティアは多くを語らないが、週末の事件で何か心境の変化があったようだ。
 それがいい方向に向いているなら、それでいい。

 久住さんからは、よくメールが来るようになった。
 内容は他愛もないもので、俺たちやエルゴの店長について尋ねることもなかった。
 最近、ゲーセンに来ている四人の女子高生と仲良くなったらしい。
 俺も思い当たるグループがあった。どうやらその女の子のグループらしかった。
 ここのところ平日もゲーセンに出向いて、彼女たちにバトルロンドの稽古を付けているという。
 楽しそうな様子が、文面から伝わってきた。
 今回の件で、久住さんにはいろいろと世話になってしまった。
 落ち着いたら、改めてお礼を言いに行こう。

 そんな風に平日を過ごしていた俺だった。
 今思えば、このときにはすでに事態は激しく動いていたのだろう。
 それについて、俺が気がつく術は何もなかった。
 事態が判明したのは、土曜日の朝のことだった。

 その日は、ティアと出会ってから、もっとも長い一日になった。
 一日の始まりを告げたのは一本の電話だった。
 大城からの、突然の電話。

「なんだ、こんな朝早くから」
「いいから、テレビ見てみろ、テレビ!!」

 俺はテレビの電源を入れる。
 朝のニュースが画面から流れ出す。
 そして……俺は驚愕した。

『……昨晩、いわゆる神姫風俗に対し、警察による全国一斉摘発が行われました。
 これはMMS保護法制定以来、初めての一斉取り締まりとなります。
 MMSを利用した風俗営業は、風俗営業法違反だけでなく、MMSに対する性的虐待によるMMS保護法違反の疑いもあり……』

 日暮店長との会談から五日。
 俺たちを取り巻く世界は、急速にその様相を変えようとしていた。








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