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ウサギのナミダ

ACT 0-6



「着けてみた感じは、どうだ?」

 意外と悪くない。
 自分の脚を全く別のモノに交換したにも関わらず、思ったほど違和感は感じない。

「いい……と思います」

 むしろ、昨日まで練習で履いていた、ローラーブレードの方が違和感があった。
 脚にはめた、その先の車輪は自分の一部ではない感じだった。
 でも、新たにマスターが用意してくれた、この脚部パーツは、つま先から車輪まで、文字通り身体の一部であるように思える。

 マスターが作ってくれた、オリジナルの脚部パーツを、今日初めて装着した。
 わたしの脚は、太ももの接続部を境に、ごつい機械の脚に変貌していた。
 足首の部分には、前後に車輪がついている。
 後輪の方が大きくて、後ろに張り出していた。
 足首の中には超電動モーターが入っており、車輪による高速移動が可能なはずだ。
 これが、わたしが与えられた武装。
 マスターが時間をかけて、パーツを集め、組み上げた、オリジナルの装備。
 わたしはこの十日ほど、ローラーブレードの特訓に明け暮れた。
 装備が完成するまでに、「滑走する」動作をメモリにたたき込んだ。
 主な動作は、アイススケートを中心にしたメニューだったが、それもフィギュアスケートやスピードスケート、アイスホッケーに至るまで多彩なメニューが用意された。
 それだけではない。スキー競技もアルペンからフリースタイル、ジャンプにクロスカントリー、エアリアルまで、動作を真似た。
 もちろん、ローラーブレードもエックスゲームを参考に、メニューが用意された。
 これらはすべて、今日渡されたこの装備を使いこなすためのものだ。

「でも……脚に車輪をつけた装備もすでにあるのでは?」
「確かにな。あるにはあるが、種類が少ない。俺が望む性能を再現するものは、俺の知る限りない」
「なぜ、ですか?」
「自由度の問題、だろう」
「自由度……?」
「装備、そして戦闘行動の自由度だ」

 マスターは、わたしのこうした疑問に、とても丁寧に答えてくれる。
 わたしがマスターの意図を理解してバトルできるように、との配慮だそうだ。
 マスターは相変わらず無表情だったけれど、たくさんの言葉をかけてもらえることが、わたしは嬉しかった。

「エックスゲームのような機動を実現するには、装備が制限される。重い武器はもちろん、動きを阻害するようなかさばる装備は身につけられない。自然、小火器や格闘武器に限られる。
 重装備にすれば、火力は得られるが、独特の機動は得ることができない。
 それに、結局は地上戦用装備にならざるを得ない。
 武装神姫は装備を付け換えるだけで、簡単に空を飛ぶことができる。そっちの方が、戦闘機動の自由度は高い。
 ローラーブレード型にこだわらなくたって、強力な脚部パーツはたくさんある。そっちの方が、装備と機動力を両立させるには適している。
 だから、足首に車輪を装備している神姫はすべからく、移動するために装備しているのであって、戦闘機動をするためじゃない」

 つまり、わたしの脚部パーツを使うには、重装備では意味がない、他の装備を考えた方が攻撃力と機動力のバランスがいい、ということだ。

「それなら、なんで……」

 わたしは、沸き上がった疑問を、素直に口にしてみた。

「なんで、マスターは、ローラーブレード型の装備を作ったんですか?」

 理由の一つは、わかる。
 それは誰も使わない装備であり、誰もしない戦い方だからだ。
 誰もしない戦いをすることが、マスターの夢だからだ。
 けれど、マスターから語られた理由は、意外なものだった。

「……美しいからだ」
「……え?」
「滑走する競技というのは、美しさを競う競技でもある。
 フィギュアスケートはその代表だ。
 スキーでも、モーグルはスピードだけでなく、滑走時の姿勢や、エアの技、着地の出来を採点される。
 スキージャンプも、飛行姿勢や着地姿勢を採点されるんだ。
 あらゆるエックスゲームは観客を魅了することに主眼が置かれている。
 『滑走』という行動をバトルに取り入れることで、より美しく、より魅せる戦いができるんじゃないか、と考えている。
 ……そんなところだな」

 前にマスターは言っていた。
 『自分たちだけの戦い方で、ギャラリーを魅了できれば最高だ』と。
 わたしに与えられたこの脚部パーツは、その夢に直結している。
 それにしても、マスターが『美しいから』という理由でこの装備を作ったことが、なんとなくおかしかった。
 でも、笑うのは失礼なので、マスターに見えないように、顔を伏せてこっそりと微笑んだ。



 ティアに答えた『美しいから』という理由は、我ながらちょっと気恥ずかしかった。
 だが本心だ。
 圧倒的な火力で殲滅するよりも、限られた手段を駆使して勝利する方が、心に残る。
 それが美しい動作ならばなおさらだ。

「さあ、テストを始めよう」

 俺はティアに言った。
 この十日間、ティアにはローラーブレードの特訓を施した。
 いまでは、エックスゲームのトッププレイヤーも顔負けの腕前だ。
 それだけ習熟が早いのには理由がある。
 神姫は様々な動作を記録し、それを忠実に再現することができる。
 それをさらに応用して、条件を少しづつ変えて、動作をすることも可能だ。
 事前にシミュレーションを行っておけば、さらに精度は高くなる。
 そうやって、成功の条件を積み重ねていけば、人間には修得が難しい技も、神姫は難なく修得できるのだ。
 もちろん、武装神姫素体の運動性能の高さもそれを手伝っている。

 ティアは緊張の面持ちだった。
 スピードスケートの選手のようにスタート姿勢を取る。

「行きます!」

 高い声と共に、一気に走り出した。
 場所は俺の部屋の中。
 片づけた部屋の最長距離を走ろうとする。
 ティアの行く手には障害物はない。
 超電動モーターがオンになり、ホイールが回転し始める。
 乾いたホイール音が響いた。

「わっ、わわわっ!」

 素っ頓狂なティアの声。
 両足首が身体よりも先に出ようとしている。
 体のバランスが一気に崩れた。
 ティアは尻餅をつき、床の上にすっころんだ。

「いったぁ……」

 ……やっぱりそうなったか。
 ティアは涙目になりながら、小さなお尻をさすっている。
 ティアはローラーブレードを操るように走り出したのだろうが、車輪が自分で回転するので、勝手が違ったのだ。
 自転車とバイクでは、乗り方が違うのと同じだ。
 だが、使いこなせれば、より速く、自由に滑走することが出来るはずだ。



 訓練を始めてから三時間経った。
 そのころには、ローラーブレードと同じように、このレッグパーツを操れるようになっていた。
 レッグパーツに慣れてみれば、こちらの方ができることの幅が広いことが実感できる。
 ローラーブレードと違うのは、わたしの意志で、ホイールの回転を自在に操作できること。
 回転数を上げるのも下げるのも、逆回転すらさせるのも自在だ。
 武装を直接コントロールできる神姫ならではの能力だった。
 これによって、停止している状態からその場ですぐにスピンしたり、直立したまま姿勢を変えずに移動したりもできる。
 ホイールにモーターがついているから、スピードもさらに出すことができる。
 もしかすると、いままで思いもしなかった動きができるかも知れない。


 その週末、土曜日の朝。
 いつものように、わたしはマスターに連れられて、近所の、あの広い公園まで、散歩に来た。
 いつもと違うのは、わたしがあの新しいレッグパーツを装着していること。
 なぜ、レッグパーツを装着して連れ出されたんだろう?
 わたしはマスターの言うことに従っただけだけれど、その理由はなんとなく聞きそびれてしまっていた。
 今日も外は快晴。
 やわらかな風が、わたしの頬をなでて、吹き抜けていく。
 気持ちがいい。
 わたしは、マスターのシャツの胸ポケットで、マスターが刻む歩みのリズムを感じていた。
 マスターは公園に着くと、広場のすみにあるベンチに腰掛けた。
 公園の広場は、芝生が敷き詰めてある広い場所。芝生はよく手入れされており、緑がきれいだった。
 その周りには遊歩道が整備されている。
 コンクリートの遊歩道は、普通の道路よりでこぼこが少なくて、滑らかな感じがする。
 マスターは、胸ポケットに手の甲をかざし、わたしに出てくるように促した。
 何が始まるというのだろう?
 胸ポケットから出たわたしを、マスターは遊歩道に降ろした。
 そして、マスターの口から出た言葉は、意外なものだった。

「思い切り、走ってこい」
「……え?」
「お前が好きなように、走りたいだけ、走ってこい」

 わたしが、好きなように……?
 マスターの意図が理解できないでいる。

「あの……わたしが自由に走って、何の意味が……?」
「走ってみれば、わかる」

 わたしは改めて、自分が立っている遊歩道のまわりを見渡した。
 今、わたしの目の前には、広大な地平が広がっていた。
 ここなら、壁に阻まれることもなく、どこまでも走ることができる。
 わたしは、もう一度マスターを見上げた。
 マスターはわたしに視線を合わせる。
 早く行け、と促している。
 何か不安だった。
 マスターの具体的な指示なしに、自由に滑走するということが、初めての体験だったから。
 それでも、わたしは遊歩道の先を見据え、スタートの構えを取る。

「行きます……!」

 頭の中でカウント。
 三、二、一、スタート。
 わたしはまず、全力で走ってみることにした。
 ここなら壁に阻まれる心配もなく、どこまでも加速できる。
 スピードスケートの選手のように、前かがみになって両腕を振り、左右の脚で大きく蹴り出す。
 蹴り出すときに、重心を乗せた方の脚のホイールを加速させる。
 今まで感じたことのない、爆発的な加速。
 疾走する。
 流れてゆく。
 遊歩道に沿って並んでいる木々が、形を失って、わたしの後方へと流れてゆく。
 風が。
 風が左右にわかれ、わたしの横を吹き抜ける。

 ああ……わたしは……
 いま、風になっているんだ。

 ものすごい解放感がわたしを包み込む。
 ただ走るという行為が、こんなにも自由なものだったなんて!
 わたしは、夢中になって走り出した。
 一歩ごと、わたしは身も心も風に溶けてゆくようだった。
 気持ちの赴くままにジャンプ。
 つむじ風になったように、四回転。
 あっさり決まって、着地。
 驚くほど簡単だった。
 ローラーブレードの時は、相当練習して、やっとできるようになったというのに。
 マスターのくれたレッグパーツは、わたしの想像以上のポテンシャルを秘めている。
 それを十二分に引き出すことができたら……あらゆる滑走競技の技が可能なはず……それ以上のことだって。
 ならば、試してみよう。
 いまのわたしに可能な最高のトリックを。
 もうすぐ、公園の遊歩道を一周する。
 試すのはマスターの目の前。
 わたしは、さらに加速する。



 ティアが公園を一回りしてきた。
 あいつはどんな風に感じたろうか。
 なによりも、滑走することが楽しいと、気持ちがいいと、感じてくれれば、それでいい。
 ティアをここで走らせることは、それが目的だった。
 深い意味はない。
 だが、俺が始めてスキーをしたときのような嬉しさを感じて欲しかったのだ。
 滑走するということは、日常から解き放たれ、自由になる瞬間なのだ、と。
 ティアが俺のいる方へと疾走してくる。
 スピードを落とす気配がまったくない。
 ……おいおい、何をするつもりだ?

 俺の目前、ティアは身体をひねると、スピードはそのままに、片足で踏み切った。
 ジャンプ。
 高い。
 フィギュアスケートの選手のように、両腕を身体に寄せ、回転する。
 だが、その回転は複雑で、身体をロールさせながら宙返りもしている。
 踏み切りはフィギュアスケートだったが、空中の回転はフリースタイルスキーのエアリアルだ。
 木の葉のように宙を舞う。
 人間ではありえない長い滞空時間の後、ティアはきれいに着地を決めた。

「あはっ!」

 ティアの、短い笑い声が、聞こえた。
 あいつ、笑ったのか。
 そうか。
 知らず、俺の口元からも笑みがこぼれる。
 ティアが俺の予想を超える、超絶の技を決めたことも嬉しかった。
 でも、それ以上に、ティアが笑えたことが嬉しい。
 今まで頑なだった彼女の心が、確かに喜びを感じている証拠だったから。



 わたしは、公園をさらに半周して折り返し、マスターの元に戻ってきた。
 もう、このレッグパーツの動作は掴んでいた。
 ランドスピナーを加速させ、わたしはまた風に乗る。
 マスターが待つ公園のベンチの手前でジャンプ!
 月面宙返りを決めて、ベンチの上に着地した。
 膝を着いていたわたしの頭上から、拍手の音が降り注いだ。
 マスター。
 マスターが、わたしに拍手をしてくれている……。
 見上げると、マスターはいままで見たこともないような笑顔で、わたしを迎えてくれていた。

「想像以上だ。素晴らしかった」

 その言葉が、どんなに誇らしかっただろう!
 わたしは嬉しくて、とても嬉しくて、マスターに気持ちを伝えたいと思う。

「あ、あの……すごく、すごく、楽しかったんです! 走ることが、楽しくて、気持ちよくて、自由で、嬉しくて……!」

 自分の口から転がり出た言葉が、あまりにもとりとめなくて、いま興奮していることを自覚する。
 マスターは、そんなわたしの拙い言葉を聞いてくれた。
 いつものまっすぐな視線でわたしを見ながら。
 そして、微笑みを浮かべながら、こうまとめた。

「そのレッグパーツ、気に入ったか?」
「はいっ!」

 それはよかった、とマスターはまた笑ってくれた。








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