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ウサギのナミダ

ACT 1-5



 週末、俺はティアとともにゲーセンの入り口をくぐる。
 まっすぐに武装神姫のバトルロンドの筐体のあるコーナーに向かう。
 バトルロンドのコーナーは今日も盛況だ。
 大型の観戦用ディスプレイには、白熱の戦いを中継している。

「あっ、遠野くん!」
「来た来た」

 壁際にいてディスプレイを見上げていた二人が、俺を見つけて手を振った。
 久住菜々子さんと、大城大介。
 俺も軽く手を挙げて、二人に歩み寄る。

「やあ。今日はどんな感じ?」
「絶好調~」

 にっこりと笑って、久住さんは右手でVサインを作る。

「三強の二人相手に一勝ずつ」
「それは確かに絶好調だ」

 このゲーセンでは、独自にバトルロンドのランキングバトルが定期的に行われている。
 武装神姫の公式リーグにも三つのランキングと全国規模のポイント制度があるが、それとは別である。
 神姫センターやゲームセンターなどで独自に行われるポイント制のランキングのことだ。
 定期的に行われるトーナメントでポイントを取得し、その合計ポイント数で、ランキングを決める。
 よりローカル色の強い武装神姫ランキングだ。
 このゲーセンでは、現在の上位陣は三人で、三強と呼ばれている。
 この三強に対しては、名の知れたエトランゼ=ミスティと久住さんのコンビと言えども苦戦しているようで、いまのところ負け越し気味らしい。

「でも、これで勝ち星もほぼ五分に戻ったし。これも、遠野くんに教えてもらった新戦術のおかげね」
「そうかな」
「遠野よ、あんまりミスティの肩を持つなよ。おかげで俺達まで勝てなくなっちまう」

 大城が頭を掻きながらぼやく。
 虎実はミスティと何度も対戦しているが、ミスティが大幅に勝ち越しているらしい。

「ああ……菜々子ちゃんとのデートがまた遠のく……」
「そんな賭、まだしてるの?」
「してません、してません」

 俺が久住さんを横目で睨むと、彼女はあわてて首を振った。
 ティアとミスティの二戦目も、ティアの辛勝だった。
 そのときに、思い切って、デートを賭に使わないで欲しいと言ってみた。
 なぜか、久住さんはあっさりOKし、二度としないと約束したのだった。
 久住さんは約束を忘れずに、守ってくれているようだ。
 だったら、いつもの、大城の妄言か。

「まあ、仮に賭があっても、わたしは虎実には負けないけどね?」

 自信たっぷりの声はミスティ。
 誰がどう聞いても、ミスティは虎実をからかっているのだが、

「あぁん!? だったらいますぐ、ここで決着つけてやろうか、テメェ!!」

 虎実はあっさり挑発に乗った。
 言葉遣いの悪さは、マスター譲りだろうか。
 虎実は口汚くミスティを罵るが、当のミスティはどこ吹く風、とばかりに受け流している。

「やれやれ、やかましいこと。そんなに言うなら、今日は一勝くらい譲ってあげてもいいわ。
 あんまり勝敗が開いてもかわいそうだし?」
「んだと!? なめんなよ! リアルバトルで白黒つけてもいいんだぜ、アタシは!!」

 どこまでも白熱しそうな舌戦に、ティアがおそるおそる口を挟んだ。

「ふ、ふたりとも……ケンカはよくないとおも……」

「ティアは黙ってて!」
「アンタは黙ってろ!」

 同時に怒鳴られて、ティアはびくっと身体を震えさせた。
 半泣きになりながら、俺の胸ポケットの中で縮こまる。
 二人とも、そうおどかしてくれるな。
 二人のケンカは、止める者もなく、ますますエスカレートしていく。
 肩の上で大きな声を出されて困っている久住さんと大城は、なぜか俺を見た。
 やれやれ、結局こういう役回りか。
 俺は小さく溜息を一つつく。

「だったらもう、普通にバトルして決着つけろよ、今日のところは」

 とたんに、二人の怒鳴り声がぴたりとやんだ。
 俺を見て、また互いににらみ合う。

「まあ、わたしの方は依存はないわ」
「……トオノに免じて、普通のバトルで勘弁してやる」
「あとで文句付けないでよね」
「そっちこそ!」

 久住さんと大城は、苦笑しながら、俺の肩をぽん、と叩いた。

「ありがとう」
「いつも助かるぜ」

 二人はお互いのパートナーを連れて、筐体の方に向かう。
 俺は小さく肩をすくめた。
 ミスティと虎実は、ウマが合わないのか、しょっちゅういがみ合って、そのままバトルになる。
 お互いのマスターが何か言っても、火に油を注ぐようなものなので、仲裁は俺に回ってくるのだった。
 ちなみに、ティアとミスティは仲がいいので、ケンカになった試しはない。
 虎実はティアを毛嫌いしているというか、ほとんど無視して、話しかけてもそっぽを向かれる。バトルも、最初の一回以来、したことがない。なぜかティアを避けている。なぜだろう?
 マスター同士は、神姫たちとは関係なく、普通に話をする。
 最近はなにかとこの三人一緒にいることが多くなった。
 特にチームを組んでいるわけでもないのだが、他のプレイヤーからは三人組と見なされているようだ。

「あいかわらず、陸戦トリオは仲がいいな」

 常連さんたちの間では、俺達三人はそんな風に呼ばれているらしい。
 声をかけてきたのは、このゲーセンでも古参の常連プレイヤーである。

「お、ヘルハウンドの。……あれで仲がいいって言うのかな」
「ケンカするほど仲がいい……ってな、黒兎のマスター」

 何度も手合わせをしているプレイヤーであるが、お互いに名前は知らない。
 そのため、お互いの神姫の二つ名やあだ名で呼び合っている。

「で、よければ対戦しないか? 今日は陸戦トリオとやりたくてな」
「ふむ……いつも通り、ステージは廃墟か市街地。それでいいか?」
「もちろんだ。市街地ステージにしよう」
「わかった」

 俺は頷くと、空いている筐体の方へ向かった。
 俺がヘルハウンドと呼んだ神姫は、ハウリン・タイプのカスタムだ。
 左右の肩に装着されたフレキシブルアームの銃火器が、神姫自信の頭と合わせて三頭に見えるので、「ヘルハウンド・ハウリング」という二つ名を持つ。
 このゲーセンでバトルロンドの筐体が置かれた頃からの古参の常連だ。
 もちろん実力もあり、ランバトでは三強の一角だ。

 正直、ティアは苦手な相手である。
 ティアは片手武器に頼っているため、火力が高くない。
 そのため、重装甲を持ちながら機動力もある、ハウリンやマオチャオは分の悪い相手だ。
 だが、苦手だからといって対戦しないでいては、苦手克服の突破口も見つけられないのだ。
 三強ほどの実力者が相手なら、なおさら断る理由もない。
 今日試すべき戦術や技を頭に思い浮かべながら、俺は筐体に座る
 アクセスポッドにティアを送り込んだ。
 ヘッドセットを耳に装着して、準備を終える。

「行くぞ、ティア」
「はい、マスター」

 今日もティアと共に戦う。
 気の置けない仲間がいて、バトルを楽しむ相手がいる。
 夢にまで見た武装神姫のマスターとしての日々は、とても楽しく、充実していた。


 ……奴が来るまでは。


 その日の夕方遅く。
 何度かバトルをこなし、そろそろ帰ろうかと思い始めていた頃。
 バトルを終え、アクセスポッドからティアが出てくる。
 ティアは立ち上がり、俺の方を振り向いた。
 いつものように、ちょっと不安そうな顔で俺を見る。
 俺は安心させるように少しだけ笑って頷いた。
 すると、ティアは花が開くように微笑んだ。
 俺はティアに手を伸ばそうとしたその時、

「ねえ、アケミちゃん!? アケミちゃんじゃないか!! どこ行ってたんだよ!?」

 と大きな声が聞こえてきた。
 ……その時は、まさか俺達にかけられたとは思いもしなかった。
 その声に、びくり、と体を震わせて、ティアが反応した。
 ゆっくりと、首を回し、声の方向に顔を向ける。
 相手の顔を認めた瞬間、ティアの愛らしい顔が、これ以上ない恐怖の表情を形作り、凍った。
 さすがにティアの反応がおかしいと思い、俺も声の主を見る。

 声の主は、やたら太った、大柄な男だった。
 黒縁眼鏡をかけ、髪はぼさぼさに伸ばし放題、しわだらけのシャツとジーパンという、見るからに他者の嫌悪感を煽るような姿だった。
 見たことのない男だった。……いや、どこかで見たような気もする。
 あまりにステレオタイプといえば、そう見える人物ではある。
 背後に二人の男を付き従えていた。仲間だろうか。

「ひゃはっ、やっぱりアケミちゃんだ。ボク、ボクだよ、井山淳一さ! 覚えてるだろ? さあ、ボクと一緒に帰ろうねぇ……」

 男はアクセスポッドに手を伸ばそうとする。
 俺はその手を払い、アクセスポッドを自分の手で塞いだ。

「おい、人の神姫に無断で触れるのはマナー違反じゃないのか」

 自分の声が必要以上に厳しくなっていると自覚する。
 見ず知らずの人物が、他人の神姫に無断で触れようとするのは、重大なマナー違反だ。
 大切なパートナーに、知らない人間が触れたりしたら、誰だって怒るだろう。
 神姫のマスターであれば、言われるまでもない常識である。
 ましてや、ティアは男性に掴まれることをことのほか恐れている。
 俺が過敏な反応を示すのも、むしろ当然だ。
 だが、振り払われた手をさすりながら、いかにも心外、という表情で、その男は言った。

「人の神姫だって? 誰の神姫? 君の神姫ってこと? 違うだろ? その子はボクのアケミちゃんじゃないか!」

 何を言ってるんだ、こいつは?
 頭がおかしいのではないのか。

「こいつはティア。俺の武装神姫だ。あんたのアケミとかいう神姫とは人違い……いや神姫違いだ」
「何言ってるんだよ! 違ってるのはそっちだろ? その子は、『LOVEマスィーン』って店の、登録ナンバー23。僕が連れ出したアケミちゃんに間違いないよ!」

 ……おかしくなかった。
 あの夜の、ティアをゴミ捨て場に投げ捨てた、あの男か!

「『LOVEマスィーン』の神姫は、みんなカスタムヘッドで、あの店にしかいない娘ばっかりなんだ。
 ボクはずっとアケミちゃんの常連だったんだ。いっつも可愛がってあげていたんだから、見間違うわけがないもんね」
「神姫違いだと言っているだろう。そんな店は知らない。変な言いがかりはよしてくれ」
「じゃあ、どうやってその娘を手に入れたんだよ? 製品じゃないヘッドの娘をさぁ!」

 ……なかなか痛いところをついてくる。
 だが、正直に言うわけにもいかない。そんなことをすれば、ますます増長してしまう。

「なぜ見ず知らずのあんたに、そんなこと話す必要がある? 確かにティアはマスプロダクトモデルじゃないが、カスタムの神姫を手に入れる方法はいくつもある」
「だから言ってるだろ! その子は間違いなく、『LOVEマスィーン』にいた神姫なんだよ!」

 目の前の男は、とうとう見苦しく喚きはじめた。

「ボクは、あのヒドイ店から、必死でその娘を連れだしてあげたんだ!
 仕方がない事情があって、手放さなくちゃいけなくなったけど……だから、アケミちゃんは、ボクの神姫なんだよ! ボクにオーナーの権利があるんだ!
 ヒドイ店から救い出してあげた恩を返す義務が、その子にはあるんだよっ!!」

 ……風俗店から神姫を無断で盗んで、店のスタッフから逃げ切れなくなったことを神姫のせいにして投げ捨てたくせに……いまさらオーナー気取りかよ。
 この井山とかいう男にそう言ってやりたかったが、言えるわけがない。
 俺に出来るのは、関係ない、とシラを切り通すことだけだった。

「あくまで関係ないって言い張るつもり?」
「言い張るも何も、本当のことを言っているだけだ」
「……分かったよ。確かに、このままじゃ、君にも神姫がいなくなっちゃうわけだもんね。
 だったら、その子を買い取ってあげるよ。それとも、新品の武装神姫と交換がいい? どっちでも、君が好きな方で取り引きしようよ」

 こいつは結局何も分かっちゃいなかった。
 俺は、いまだに身体を硬直させているティアをつまみ上げた。

「ひっ」

 ティアが小さな悲鳴を上げる。
 ごめんな。
 俺は素早くシャツの胸ポケットにティアを納めた。
 胸ポケットのあたりから、小さな震えが肌に伝わってくる。
 俺は決意を新たにする。
 右手で胸ポケットを包むようにして、そして井山を睨みつけた。

「あんたがどんな条件を出そうと、ティアを渡す気はない」

 俺ははっきりと言い切った。
 こんな奴に……こんな最低な野郎にティアを渡したりはしない。
 ティアを性欲のはけ口にすることしか考えていない奴に触れさせたりしない。
 絶対に。
 俺の言葉を聞いて、井山は怒り心頭と言った様子だった。

「なんだとぅ! こっちが下手に出ていれば、つけあがって!」
「つけあがっているのはそっちの方だろう。人の神姫を突然よこせと言ってきて、しまいには逆ギレだ。常識知らずも甚だしい」
「……そこまで言うなら、仕方ない。君がアケミちゃんを持っていられなくなるようにしてやる!」

 なんだと?

「……今のうちだぞ、その神姫をボクに渡さなければ、後悔することになるんだから!」

 初対面のこの男が、一体何をしようというのか。
 お互いのことなど何も知らないのに、なぜそんなことができるというのか。

「後悔なんて、するはずがない。あんたが何をしようとも、俺はティアを手放さない」

 俺は高をくくっていた。
 この井山という男に、俺達を害する真似などできるはずがない、と。
 しかし、井山は薄気味悪い笑い顔を浮かべて、言った。

「ひゃはははは、知らないよ、後悔したって知らないよ。あとで君がどんな顔をするか楽しみだなぁ! また来るからね!」

 井山はそう言い捨てて、ゲーセンの出入り口へときびすを返した。
 奴の最後の態度は、異様に自信たっぷりだった。
 それを不思議に思わないでもなかったが、不機嫌な気持ちの方が勝っていた。

「二度と来るな」

 背を向けてゲーセンを出ていく井山一行の背中に、小さく吐き捨てた。
 俺は筐体に残っていた装備を片づけ始める。
 井山とのくだらない会話が、思ったよりも長くなった。
 急いで席を立たねばならない。

「遠野くん……」
「遠野……」

 忙しく手を動かしている俺を呼ぶ声がある。
 久住さんと大城だった。

「さっきの会話、聞いちゃった……ごめんなさい」

 あれだけ大きな声で話していれば、聞こえるだろう。

「さっきのデブの言ったこと……本当か?」
「何が?」

 大城の問いに、俺は短く聞き返した。
 自分でも、声が固くなっていることがわかる。
 本当は、大城の問いなど、聞かなくてもわかっているのだ。

「ティアが、その……風俗にいたって……」

 大城はらしくない、歯切れの悪い口調で言った。
 久住さんも、居心地悪そうな表情で俺を見ている。
 いや、武装神姫コーナーにいるプレイヤーたちも神姫も皆、俺達を見てひそひそと話をしている。

「関係ない」

 俺は曖昧な言葉でそう言いきった。
 ティアは確かに、神姫風俗にいたかも知れない。
 でも、今は違う。俺の武装神姫だ。
 だが、ティアの過去を詳しく話す必要はない。もう、関係のない話であり、俺の胸の奥深くに収めておけばいいだけのことなのだ。

「だけど、ティアの様子は尋常じゃなかった。あのデブのこと知ってたみたいだし、明らかに怖がっていたじゃないか。だったら、あのデブの言うことだって……」
「関係ない」

 俺は大城のせりふをぶった切って、言い放った。
 俺は二人を見た。戸惑っているような様子だった。
 久住さんは、さっきから、何か言いかけては口をつぐむ。
 女の子にはデリケートな話の内容ではある。
 俺は大城を見据え、言った。

「さっきの奴とは初対面だ。確かにティアは中古の神姫をメンテナンスしたのだけど、俺がオーナーになる前の素性なんて何も関係ない。今のティアは武装神姫だ。それで十分じゃないのか」

 自分でしゃべっていても、棒読みだと自覚した。
 こんな口調でしゃべってたら、不信がられるのも当然だ。
 でも、嘘はつきたくなかった。
 だから、過去のことは「関係ない」という言葉で濁している。
 それがさらに二人の不信を招いているのだとしても、仕方がない。
 武装の片づけは終わった。
 大城がまだ何か言い募ろうとする。
 俺はそれを手で制した。

「すまない、今日は気分が悪い。先に帰る」
「あ、あぁ……」
「またね……」

 ゲーセンではいまだに俺達を隠れ見ながらのひそひそ話が続いている。
 こういう空気は嫌いだった。
 俺は足早にゲーセンを後にする。
 胸ポケットの中で、ティアはまだ震えていた。


 このときはまだ、奴のことを侮っていた。
 奴の話は噂にはなるかも知れないが、俺が無関係を装ってさえいれば、時間が解決してくれるだろう、と思っていた。
 まさかあれほどまでに打ちのめされることになろうとは、夢にも思っていなかったのだ。








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