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ウサギのナミダ

ACT 0-4


 朝。
 わたしが目覚めると聞こえてきたのは、すぐ右手にあるパソコンのキーボードを叩く音だった。
 キーを叩く人は遠野貴樹。
 きのう、わたしのマスターになった人。

「お……おはようございます……」
「おはよう」

 おずおずと声をかけたわたしに、あっさりと、そしてどこかそっけなく返事が来た。
 シーツ代わりのハンカチを引き寄せ、マスターになった人の顔を見つめる。
 端整な顔立ち、だと思う。
 細いフレームの眼鏡をかけ、理知的な印象だ。
 それが口調とも相まって、少し冷たい印象を受けるけれど。
 どんな人なのだろうか。
 コーヒーカップを口元に運ぶ横顔。
 いままで、わたしが会ったお客さんたちとも違う印象。
 真面目そうで、理知的な瞳は、いつもまっすぐにわたしを見る。
 彼の指の動きが止まると、その瞳がわたしを映した。

「よし、行くか」
「えっ……?」

 キーボードを叩いていた手が、わたしに伸ばされてくる。
 わたしは身構える。身体を固くしてしまう。
 いや、すくんでしまうのだ、恐怖に。
 わたしに伸ばされる手は、いつだって、酷いことの予兆だったから……。
 わたしの様子を不審に思われたのか、手は一瞬止まった。
 けれど、すぐに動き出してわたしを包み込むように掴むと、そのまま彼の胸元へと移動する。
 そして、わたしはシャツの胸ポケットにおさまったのだった。
 ……酷いことなんて、何もされなかった。
 それが当たり前だと思えないほど、わたしは酷いことの方に慣れすぎていた。



 身体をすくませ、何かを耐えるように掴まれるのを待つ姿には、正直へこんだ。
 俺が「何もしないから、安心しろ」と言い聞かせても、おそらく態度を変えることはないだろう。
 この身をすくませる態度は、ティアが過去にされてきた仕打ちに起因するのだと思う。
 だとしたら、言い聞かせるだけでは変わらない。
 ティアが俺を本当の意味でマスターと認めてくれない限りは。
 だからその時を待ちながら、辛抱強く待つしかないのだった。

 俺は家を出ると、ゆっくりとした足取りで歩き出した。
 外は快晴。早朝の爽やかな空気が気持ちいい。
 俺はこの時間に散歩をするのが好きだった。
 それが自分の神姫と一緒なら、きっと楽しいことだろう。
 俺のひそかな夢の一つだった。



 マスターのシャツのポケットは、わたしにあつらえたようにちょうどいい大きさだった。
 リズミカルな振動は、マスターが歩を進めている動き。
 わたしは少し顔を出してみる。
 ……まぶしい。
 マスターの部屋も、とても明るいと感じたわたしだったけれど、外の世界はさらに光に溢れていた。
 色に、溢れていた。
 世界を覆う空は、見たこともないような青だった。
 建物の壁は、その建物ごとに何種類もの色があった。
 たくさんの植物が道に沿って植えられていて、それもただの緑色ではなかった。
 一本の木に、たくさんの緑色が集まって、一つの緑に見えている。
 色とりどりの自動車、道行く人の洋服もカラフル。
 なにより、全ての色がはっきりとしている。
 光が、溢れている。
 木々が揺れる。
 顔を出したわたしの頬を、やわらかな空気が撫でていく。
 これが、風?
 マスターはゆっくりと歩いていく。
 その胸元から見る世界は、わたしが初めて目にするものばかりだった。

 やがて、マスターとわたしは、公園へとやってきた。
 公園というものを初めて目にしたわたしは、心を奪われてしまった。
 見たこともない大きな空間には、色とりどりの緑色が溢れかえっていた。
 天井はどこまでも続く空の青。
 現実の場所とは思えない。
 いままで、わたしが知っている場所とはあまりにも違う。
 わたしは知らなかった。想像もしていなかった。
 世界は……

「広いですね……」

 わたしは思わず呟いていた。



「ああ、この公園は、このあたりでは一番大きい」

 なんて答えた俺は、後悔することになった。
 ティアの呟きにそんな意味が隠されていようとは思いもしなかった。
 ティアの真意を知るのはずっと後だったが、何というトンチンカンな答えをしたのだろう、と今でも後悔に苛まれる。
 俺にとってはいつもの散歩道でも、ティアにとっては初めて見る外の世界だったのだ。
 そんなティアの感傷を想像だにせず、俺は公園の遊歩道を歩いていく。



 マスターの歩みには迷いがなかった。
 まるで自分の家の中のように、歩いていく。
 マスターにとっては、何度も来た場所なのだろう。
 ふと、疑問に思って、思い切って、本当に思い切って、マスターに尋ねてみた。

「マスター……今日は、どこへ行くんですか?」

 おそるおそる見上げると、マスターは何故か驚いたような顔をしていた。

「どこへって……どこへも行かないぞ?」
「……え?」
「あえて言えば、ここが目的地か……」

 ここが目的地だというのに、マスターはひたすらに歩き続けている。
 マスターは一体何をしに来たというのだろう?
 このときの記憶を思い出すたびに、わたしは恥ずかしさにいたたまれなくなる。
 目的などあるはずがない。
 マスターは散歩をしに、この公園までやってきたのだから。
 こうして歩いていること自体が目的だなんて、あの時のわたしには思いも及ばないことだったのだ。
 だけど、マスターはこう言ってくれた。

「そうだな、おまえに、この公園を見せたかったんだ」

 このときのマスターの声は、この上もなく優しかった。


 散歩から戻って一休みすると、マスターはパソコンに向かってなにやら作業をはじめた。
 おそるおそるディスプレイを覗いて見ると、武装神姫の情報サイトをチェックしているみたいだった。
 でも、わたしにはどんな情報をマスターが欲しているか分からない。
 マスターは、時折腕を組んで考えては、マウスを操作し、次々にサイトをチェックしていく。
 マスターは情報収集に夢中で、わたしを気にかけない。
 わたしは手持ちぶさたになった。
 マスターのパソコンから音楽が流れてきている。
 マスターは作業中、音楽データをかけっぱなしにしているのだ。
 いくつもの曲が聞こえてくる。
 あ、わたしも聴いたことのある曲。
 お店で音楽を聴く機会は、踊りをするときだけだった。
 お客さんのための踊り。
 でも、音楽に乗せて身体を動かすことは、わたしの数少ない楽しみの一つだった。
 自然と、踊りたいという気持ちがわき上がってくる。
 マスターはサイト検索に夢中。
 右手に広がっている作業用のスペースは、わたしが踊るのには十分すぎる広さだった。
 わたしは立ち上がり、リズムを取る。
 そして、曲の途中から動き出す。
 身体はすんなりと、覚えていた振り付けを再現する。
 曲に合わせて踊る、踊る。
 すぐに夢中になる。
 周りのことなど意識せずに踊る。
 お店にいた頃は、そうでもしなければ踊り続けることが出来なかった。
 その習慣が出てしまったのか、今も意識が踊りだけに向いている。

 ……そして、わたしが踊り終わったとき、こちらを向いてわたしを見つめているマスターと目があった。
 気が付かなかった。マスターがわたしを見ていることに。
 わたしはマスターの命令もなく、勝手に踊ったりして、しかも、マスターの作業の邪魔をするなんて……なんてことを……!

「あ、あ、あのっ、そのっ……わ、わたし……ご、ごめんなさ……」
「もう一回やってみろ」

 あわてて謝ろうとするわたしにかけられた一言は、意外なものだった。

「曲は同じなら踊れるか?」
「えっ? ……あ、は、はい……」

 マスターはマウスを簡単に操作する。
 するとパソコンから、先ほどと同じ曲が流れはじめた。
 わたしは曲のリズムに合わせて体を動かす。
 再び滑り出すように踊り始めた。
 でも、表情がこわばっていたかも知れない。手や足の先の動きがぎこちなかったかも知れない。
 だって、マスターがじっとわたしを見つめていたから。
 静かに、まっすぐに、踊るわたしを見つめている。
 マスターの瞳からは表情は読みとれなかったけれど。
 わたしは、なんだかとても恥ずかしかった。お店で踊ったどんな踊りよりも。
 お客さんのあざとい視線を受けているときよりも。
 マスターの視線は、わたしの全てを見透かしているようで。

 やがて曲が終わり、わたしは静かに踊りを終える。
 マスターを見ると、視線はディスプレイの方を向いていた。

「やはり、バランスがいいな」
「は……?」
「思った通りだ。おまえはバランス感覚が平均よりもずばぬけている」
「はあ……」

 マスターの言葉がぴんとこなかった。
 わたしが踊っている間、マスターはわたしのデータを何かモニターしていたようだけれど、それが何なのか、詳しいことは分からない。

「うん……やっぱりこれにしよう」
「何を……ですか?」
「おまえの装備だ」

 マスターはわたしの方にディスプレイを向けた。
 ものすごい勢いで、ジャンプ台から飛び出した男の人。
 画面から飛び出してきそうな勢いの動画が表示され、わたしは思わず驚いてしまう。
 画面の中の人は、車輪のついた靴を履いていた。
 道でない場所さえ、自由自在に、駆け回り、飛び跳ねる。

「ローラーブレード……」
「知っているのか?」
「あ、はい……実際のものを見るのは初めてですが……」

 一般常識として、メモリには記録されていた。
 でも、こんなに激しく、華麗に、そして自由に動くものだとは初めて知った。

「おまえ用の装備として、武装神姫向けにアレンジしたローラーブレード型の脚部パーツを作ろうと思う」
「え……でも……」

 そんな装備は、公式の装備にはないはずだった。
 いや、移動用の車輪付脚部パーツや、トライク型に代表される地上用の神姫の装備には、それに近いものはある。
 だけど、さっきの映像のように、小型で高速機動が可能な地上用装備は、少なくともわたしのメモリに登録されている武装神姫公式装備カタログの中にはない。

「その装備では、公式戦には出場できないのでは……?」
「別に、公式戦に出たいわけじゃない」

 マスターはこう言った。

「俺は、まだ誰も見たことのない様な、ただ一人の武装神姫を作りたい」

 ただ一人の武装神姫。

「それが可能なら、公式大会に出られなくてもいい。どこかのゲームセンターに、誰もしない戦い方の神姫がいる。そんな風に言われるのが、俺の夢だ」

 マスターの夢。

「おまえは、踊るように、舞うように、美しく戦うんだ。ギャラリーも、対戦相手のマスターも、神姫も。おまえの戦いぶりで魅了することが出来たなら……」

 魅了することが出来たなら……。

「最高だな」

 わたしは、夢の中にいるような気分だった。
 わたしは、マスターの夢を実現するために、ここにいる。
 ここにいて、マスターのお手伝いが出来る。
 それはなんて素晴らしいことなんだろう。

「で、でも……わたしなんかで、大丈夫でしょうか……?」
「だから、『わたしなんか』って言うな」

 怒られてしまった。

「苦労はするだろう。練習も膨大な時間が必要になる。だが、それでも、俺は俺の夢を叶えたい。……おまえには苦労をかけることになるが。なにしろ、ベースとなる戦闘プログラムもないからな」
「いいえ……! わたしは、わたしでよければ、がんばりますっ」

 わたしは、はじめて……夢を持った。
 マスターの夢を叶えること。
 誰も見たことがないような、踊るように、舞うように戦う武装神姫。
 この日から、わたしの武装神姫としての修行が始まった。








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