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第五話:説得姫



 俺は真那たちを引き連れ、廃人探偵事務所の情報に従ってイーダの出没場所に来ていた。
 そこはあまり人目につかない廃工場であり、あまり人気のない薄気味悪い場所だった。確かにここならば羽を休むのには丁度良い。あまり騒ぎもなければトライクを隠すにもうってつけだ。

「ここがそうっぽいな……」
「いるようには見えないですけど……」

 俺が確信の言葉を発するとルナがそれを疑っているかのようにヘッドセンサーで索敵を始める。確かに完全な確定情報というわけでもない。そう思うのも無理はない話だろう。
 が、俺の当てとルナの疑いのどちらが当たったかどうかはすぐにわかった。
 ……翡翠色の影が……現れたからだ。

「……そこにいるのは誰?」

 他人を突き放すような冷たい声が響き渡る。俺はその声のする方を見る。そこには流線的な翡翠色のトライクに乗った神姫……イーダが警戒しているのが見えた。

「貴方が……『そう』なんですか?」
「貴方達も私の命を奪おうとする者達なのね……。どうして放っておいてくれないの? どうして私を殺しにくるの? 私は……ただ……生きたいだけなのに……」

 蒼貴が出来るだけ優しく話しかけてみるが、イーダはその言葉に騙されまいとしているかの様に警戒を緩めない。
 どうも同じような手口で騙し討ちをしようとした先客がいたらしい。誰だか知らんが余計な事をしてくれやがって……。

「違います。私はただ、貴方と話がしたくて……」
「話? そんなもの……誰が騙されるものですか!!」
「本当です!」
「嘘だ! 前の奴もそう言って襲ってきた! そうして私を殺すつもりなんだ! お前も……その一人だ!!」

 イーダは蒼貴が何かを喋ろうとした瞬間、トライクモードを解き、巨大なサブアームクローで蒼貴を薙ぎ払わんとそれを振るった。
 蒼貴はそれに反応し、後ろに後退する事でそれを回避し、間合いを取った。
 だが、イーダの攻撃はまだ終わってはいなかった。彼女は自分の手に機銃を保持してそれを連射する。マシンガンタイプであるそれは非常に連射性が高く、速やかに弾幕を作り上げる。
 蒼貴は迫る弾幕に近くにあった小さな廃材を両手に持ってそれを盾にする事でそれを防御する。

「まだまだ!」

 イーダの声が響く。蒼貴は危険を感じ取ってすぐに廃材を手放し、右へと素早く転がり込んだ。その刹那、宙を浮いていた廃材が熱を帯びながら真っ二つになった。
 切り裂かれたそこからイーダが現れる。彼女の手にはブレードが握られていた。
 硬いはずの廃材を一刀両断にするその切れ味は俺の想像を遥かに超えていた。一体、このブレードのために何体の神姫が犠牲になったのだろうか。想像もできない。

「やるわね。貴方。この連携を避け切ったのは貴方で二人目よ」
「話を聞いてください! 私は貴方を助けたいんです!!」
「助ける? 笑わせないで。どうやって貴方が私を助けるの?」
「オーナーが保護します! 口は悪いですが、凄く大事にしてくれるんです!!」
「人間は信用ならないわ。そんな甘ったれた方法なんかじゃ、私に安息は来ない!!」

 聞く耳を持たないイーダは、今度はトライクモードに変形し、蒼貴に急速に接近し、突進を仕掛けた。
 蒼貴は突進を左にあった遮蔽物に飛び込む事で回避し、壁を背にして次の攻撃を待つ。

「逃げ続けて何になるんですか!? その内、バッテリーも切れて力尽きてしまいます!」
「そんなもの何とかしてみせる! これまでもそうして生き延びてきた!!」

 イーダはマウントされてある機銃をエクステンドモードに変更し、弾速の早い射撃を仕掛ける。
 蒼貴は弾が発射される前に配工場を支える鉄骨に隠れ、それを防御する。しかし、イーダはそのまま蒼貴に突っ込もうと鉄骨を回り込んで突進してきた。
 彼女は別の遮蔽物……土嚢の山に身を隠してその攻撃をやり過ごす。

「メンテナンスも受けられず、たった一人の貴方にいったいどんな安息が待っているというのですか!?」
「一人じゃダメ!? オーナーがいなければ何も出来ないあなた達とはもう違うの!!」
「その先に何があるんですか!? 私には何もありませんでした!! ……あったのは誰も見向きもしない石ころの様な世界だけです!!」
「嘘……。そんな……そんなわけ無いじゃない!!」
「世界はそんなに甘くなんてないです!」
「黙れ!!」

 蒼貴はその攻撃には大ジャンプで対応する。余計なものも武装も何もない軽い身体は宙を舞い、トライクモードの上に取り付いた。

「出来る! でも!!」

 イーダは蒼貴を振り払うために変形を解除する。彼女は変形に巻き込まれかねないため、トライクから離脱せざるを得なくなり、それを手放した。

「もらった!!」

 イーダは後退の際、宙を舞っている蒼貴に機銃を連射した。そこでは自由に動く事ができず、彼女はその攻撃に身を晒す羽目になった。
 さらにイーダはサブアームクローを拳として固めると、それで蒼貴を殴り飛ばす。追撃を受けた彼女は吹き飛ばされ、壁に打ち付けられた。

「あうっ!」
「蒼貴!」
「尊さん! 許可を!!」
「ダメだ! そうしたら全てが台無しになる!! あいつを信じろ!!」

 蒼貴がやられた事でルナが前へ出ようとしたが俺はそれを止める。そんな事をすれば、もう力づくをするしかなくなる。
 それだけは避けなくてはならない。あいつの気持ちを捻じ曲げる事になってしまう。

「回避の技術は褒めてあげるけど、何で攻撃しないの? ……そもそもなんで武器を持っていないの?」

 壁にもたれかかる蒼貴に接近し、ブレードを構えるイーダは彼女に問う。彼女は既に蒼貴が一切の武器を持っていない事に気づいていたらしい。
 そうだ。確かに蒼貴は武器を持っていない。苦無すら仕込んでもない始末だ。武装は全て俺が持っているのである。

「貴方を助けるためには……武器なんて……いらない……です」
「この期に及んでまだそんな事を……!」

 その言葉にイーダは動揺を始めた。武装も無く、敵意もなく、何の思惑もなく、ただ避けて手を差し伸べ続ける蒼貴の行動が理解できないでいる様だった。

「私は貴方を……」
「それ以上言わないで!!」

 イーダは蒼貴の消え入る声を遮るためにブレードを振るった。蒼貴は無防備。このままではあいつが真っ二つになる。

 ――蒼貴! 避けろ!!

 心で叫ぶが彼女には届かず、むしろその攻撃すらも受け入れるかの様に両手を広げた。そして、その一撃は……



 寸での所で止まった。



「どうして避けないの……!? 怖くないの!!?」

 さらに動揺をするイーダは涙声で蒼貴に叫ぶ。

「……信じていました。……それだけです」
「信じて……いた? この私を……?」
「そういう事だ。何でお前を蒼貴が助けたかったか……わかるか?」

 弱っている蒼貴に無理をさせないように今度は俺が彼女の言葉を引き継ぎ、イーダの傍へと移動し、座り込んだ。

「そいつは何度もCSCを抜き取られた奴なんだ。クレイドルに入ると過去の奴の記憶が蘇ってくる事があるんだってよ」
「何度も……?」

 その言葉にイーダは驚き、蒼貴を見る。

「そうだ。あまりにも弱く、勝てなかったから何度もCSCを付け替えられ、ついには捨てられた。そして今は俺の部屋に紛れ込んできてそのまま、俺の神姫になったのさ。……だからわかるんだよ。同類だからな。だからこそお前を助けると決めたんだ。お前はそんな奴すらもそのブレードで斬り捨てるのか? ……答えろ」
「それは……」
「考えてもみろ。お前は急速充填機を盗んで何とかバッテリー切れを凌いでいるようだが、それがいつまで持つって言うんだ? 店は警戒を強めている。限界はお前が思っている以上に近くまで迫っているんだ」

 そう。イーダがそういう事をしたために神姫ショップではかなり警戒を強めているという事がここに来る前、ネットニュースで公表されていた。
 こうなってくるとまた盗みに入って無事でいられる確証はどこにもない。いや、捕まったらもうただでは済まないだろう。
 それにメンテナンスもろくに受けられない状況だ。躯体そのものの限界もいずれ来て動けなくなる可能性だってある。
 神姫が独りで生きるというのは事実上、限界があるのだ。

「しまいには人間が信用出来ないだ? ……勝手に人間を全否定するな! 信用ならない事をしたのは『人間』ってものそのものじゃねぇ! お前が見てきた前の馬鹿共だけだろうが!! そうして蒼貴みたいな良い奴までも知らずに斬り捨てて、一生後悔していくつもりか!? 取り返しのつかない時になって、後悔したってもうおせぇんだよ!!」

 俺は真剣な顔をしてイーダを叱る。
 確かに『人間』である賞金稼ぎがイーダを捕まえようとしたのだろう。しかし、それは『彼ら』であって『人間』という種族そのものが総出でやった訳ではない。
 人間はそんな無個性には出来てはおらず、そんな馬鹿げた事を誰もがするというのならばこの世の中は終わっている。
 個性なくして世界は成り立たない。現実だろうが、ネットだろうが、架空だろうが同じ事だ。個性が無い世界など死の先にしかありはしないのだから。

「誰にも大事にされずに……孤独の中、倒れて逝ったら……どうするってんだよ……?」
「私……そんな……うわぁぁぁぁっ!!」

 俺に叱られたイーダは俺の言葉に泣き叫び始め、自分が握り締めていたブレードを手放して地面に座り込んでしまった。これから自分はどうしたらいいのか、もうわからないと顔には刻まれてあった。
 こいつは孤独だ。暗い中、たった一人で当てのない自由を手にするために頑張っていたのだ。しかし、それは心を満たす事は無く、ただ、賞金稼ぎが狙って来る恐怖が心を蝕み、イーダの心を少しずつ傷つけていた。
 そしてもうそれは限界に来て、さらには俺が彼女の気持ちをへし折ったために頭が真っ白になってもう、何も考えられなくなってしまったのである。
 その時、そんな彼女に蒼貴は痛む自分の身体を起き上がらせ、泣き崩れるイーダをそっと抱きしめた。

「もう……貴方を独りにはしません。私が……傍にいます。オーナーも……傍にいてくださいますから……」
「蒼貴……さん? ごめん……なさい……。痛い事して……ごめんなさい……!」

 ようやくイーダが蒼貴に「ごめんなさい」を言った。彼女はようやく誰かに心を開く事が出来た瞬間の様に俺は思えた。
 ったく……世間知らずでおませな嬢ちゃんだぜ。こういうのはしっかり叱ってやらないととんでもない事をしでかすからな。これ以上の騒ぎにならなくってよかったわ……。

「いいんです。わかってくれたんですからちょっと痛かったですけど、もう大丈夫です。それと私の事は蒼貴とお呼び下さい。私達……友達ですよね?」
「友達……?」
「はい。そこにいるルナさんも、真那さんも、私を拾って下さったオーナーも皆……」
「うん……。ありがとう……ありがとう……」


「私を叱ってくれてありがとうございます。蒼貴のオーナーさん」

 しばらく蒼貴の胸の中でひとしきり無き、胸の中のものをすっきりさせたイーダが礼を言ってきた。その顔はもう、独りで苦しんでいるものではなかった。
 ようやく自分が辿り着くべき所へ辿り着いたという安心感で満たされていた。
 こいつは端から見ればとても気丈で一人でも我慢できる様に見える。だが、実際は蒼貴以上に甘えん坊で、独りでいたくなんてないと思っている。
 こうして最初から素直になってくれればいいんだが、状況が状況だから仕方は無いか。

「か、勘違いすんな。勝手に背伸びして粋がってんじゃねぇ。そういう手間のかかるへそ曲がりが一番ムカつくから口出ししてやっただけだ。俺は」
「は、はい……」
「オーナーはこういう方なんです。結構、素直じゃないので気にしないで下さいね」
「そうそう。ミコちゃんは、口は悪いけど愛情は人一倍くれるもんね?」
「うっせぇな……」

 何だか知らんが、言われたい放題だ。だが、ここで言い返しても勝てそうな気がしないため空気を読むことに専念する事とし、黙っておく。

「あの……蒼貴のオーナーさん……?」
「なんだ?」
「私の……私のオーナーになってくれませんか? 何て言うか……お父さんみたいに叱ってくれる人っていなかったから……」
「お、お父さん?」

 俺はその言葉に大いにずっこけた。俺はいつからそんなのになったのだろうか。

「あっははは!! ミコちゃんがお父さんだって!!?」
「よくいるよね。こういうぶっきらぼうだけどちゃんと叱ってくれる人って」
「はい。オーナーはそれの典型かもしれません」
「そうね。よかったじゃない。お父さん?」

 それを聞いた真那、ルナ、蒼貴は全員で大いに笑い始めた。こいつら、何でもかんでもネタにしてくれる……。ほんと、勝てる気がしねぇや……。

「お前らなぁ……」

 俺は苦笑して皆を見る。もう、この場にいる全員が戦いという姿勢を解いていた。どうやらこれで騒ぎは終われそうだ。

 ――後は……この傍迷惑な嬢ちゃんの盗んだ所に謝りに行って充電器の代金払って一応の解決……俺の財布の中身、大丈夫だといいんだがなぁ……。

 俺がイーダの責任を代わりに取るために金の勘定を頭で考え始めているとどこかから扉を激しく開ける音が鳴り響いた。






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