「さてと、準備はいいかな」
試合当日、最寄の玩具店に試合手続きをした恒一たちは、簡易控え室で装備の準備をしていた。
「はい、ガトリングとスナイパーライフル、それと秘密の装備…すべて万端でっす!!」
装備を装着したソルティは敬礼をし、そのまま恒一の方に飛び乗った。
「…それにしても、すごい装備ですね…。こんな装備で大丈夫なんでしょうか」
ソルティの装備を見て、シュートレイは少しあきれた顔になっていた。
「これでも厳選して選んだのです、本当なら、もっとすごい武器を装備する予定だったのですよ」
得意げに自分の装備を自慢するソルティ。しかしその姿はアンバランスといえる状態だった。上半身は武器やブースターなどの武装が装備されているが、下半身の装備は足首のランディングギアを兼ねるブーツだけであった。
「大丈夫、俺もセッティングに協力したんだ、準備は万全さ。それに、今回は初対戦だからな、気楽にやるさ」
「そうはいっても、対戦相手はそうとは思っていないかもしれないじゃないですか」
心配しているシュートレイに対して、恒一は彼女の頭を指でたたいた。
「相手は全力でかかってくるからな、こちらのことはお構いなしだろう。だが、これはソルティが決めたことだ、俺たちが口出しするようなことじゃない」
そしてシュートレイを自分の腰ポケットに押し込め、ソルティを呼んだ。
「じゃ、もう時間だから行くぞ」
「OK、それではいきま~す」
ソルティは恒一の肩に飛び乗った。バッグを片手に持って、恒一はそのまま会場へと向かった。
試合当日、最寄の玩具店に試合手続きをした恒一たちは、簡易控え室で装備の準備をしていた。
「はい、ガトリングとスナイパーライフル、それと秘密の装備…すべて万端でっす!!」
装備を装着したソルティは敬礼をし、そのまま恒一の方に飛び乗った。
「…それにしても、すごい装備ですね…。こんな装備で大丈夫なんでしょうか」
ソルティの装備を見て、シュートレイは少しあきれた顔になっていた。
「これでも厳選して選んだのです、本当なら、もっとすごい武器を装備する予定だったのですよ」
得意げに自分の装備を自慢するソルティ。しかしその姿はアンバランスといえる状態だった。上半身は武器やブースターなどの武装が装備されているが、下半身の装備は足首のランディングギアを兼ねるブーツだけであった。
「大丈夫、俺もセッティングに協力したんだ、準備は万全さ。それに、今回は初対戦だからな、気楽にやるさ」
「そうはいっても、対戦相手はそうとは思っていないかもしれないじゃないですか」
心配しているシュートレイに対して、恒一は彼女の頭を指でたたいた。
「相手は全力でかかってくるからな、こちらのことはお構いなしだろう。だが、これはソルティが決めたことだ、俺たちが口出しするようなことじゃない」
そしてシュートレイを自分の腰ポケットに押し込め、ソルティを呼んだ。
「じゃ、もう時間だから行くぞ」
「OK、それではいきま~す」
ソルティは恒一の肩に飛び乗った。バッグを片手に持って、恒一はそのまま会場へと向かった。
ソルティ、初出撃です! 後編
「でやああああっ!!!」
試合が始まり、フィールド内でソルティは縦横無尽に動き回った。しかし、対戦相手の夢魔型神姫は余裕を見せているのか、その場を動こうともしなかった。
『ここは無重力空間だ、あまり動き回るのはよくないぞ。お前はまだ先頭に不慣れだから、落ち着いて行動するんだ』
ソルティの耳元から恒一のアドバイスが聞こえた。
「あ、そうでした。これからは落ち着いて動くです」
今回のバトルフィールドは宇宙空間、重力がない上にどこからか飛んでくるデブリを避けながら攻撃しなければいけないのだ。
「よし、ここは相手の様子を見てみるです。プチマシーンのケイ君、ミー君、偵察してきてくるです」
「「アイヨ」」
ソルティのバックパックから射出されたプチマシーンのケイ・ミーは、夢魔型の動きを追い始めた。
「…そんなことするんだ、おばかさんだね」
それを知っていたのか、夢魔型は不敵な笑みを浮かべて急に移動速度を上げた。ケイとミーはそのスピードについていけなかった。
「「チーフ、うちらのスピードじゃ追いかけることはできませんぜ」」
「しょうがないです、早くこっちに帰ってくるです」
命令を聞いたケイとミーはソルティのそばまで帰ろうとした。しかしその瞬間、2機は夢魔の杖に貫かれてしまい、そのまま消滅してしまった。
「ふん、このメイアさまをたぶらかそうとしても無駄だよ。こっちは全部お見通しだからね」
メイアと名乗った夢魔型は、そのままソルティに向かって突進していった。
「なんてことです、ぼくの相棒を壊すなんて…」
『ソルティ、前を見ろ!!』
しかしソルティは、メイアの体当たりでデブリのある場所まで飛ばされてしまった。
「あんた、このバトルは初めてなんだって?それじゃあついてないね、なぜなら、このあたしに負けるんだからね!!」
メイアはウイングを鎌に変形させ、ソルティに襲い掛かった。
試合が始まり、フィールド内でソルティは縦横無尽に動き回った。しかし、対戦相手の夢魔型神姫は余裕を見せているのか、その場を動こうともしなかった。
『ここは無重力空間だ、あまり動き回るのはよくないぞ。お前はまだ先頭に不慣れだから、落ち着いて行動するんだ』
ソルティの耳元から恒一のアドバイスが聞こえた。
「あ、そうでした。これからは落ち着いて動くです」
今回のバトルフィールドは宇宙空間、重力がない上にどこからか飛んでくるデブリを避けながら攻撃しなければいけないのだ。
「よし、ここは相手の様子を見てみるです。プチマシーンのケイ君、ミー君、偵察してきてくるです」
「「アイヨ」」
ソルティのバックパックから射出されたプチマシーンのケイ・ミーは、夢魔型の動きを追い始めた。
「…そんなことするんだ、おばかさんだね」
それを知っていたのか、夢魔型は不敵な笑みを浮かべて急に移動速度を上げた。ケイとミーはそのスピードについていけなかった。
「「チーフ、うちらのスピードじゃ追いかけることはできませんぜ」」
「しょうがないです、早くこっちに帰ってくるです」
命令を聞いたケイとミーはソルティのそばまで帰ろうとした。しかしその瞬間、2機は夢魔の杖に貫かれてしまい、そのまま消滅してしまった。
「ふん、このメイアさまをたぶらかそうとしても無駄だよ。こっちは全部お見通しだからね」
メイアと名乗った夢魔型は、そのままソルティに向かって突進していった。
「なんてことです、ぼくの相棒を壊すなんて…」
『ソルティ、前を見ろ!!』
しかしソルティは、メイアの体当たりでデブリのある場所まで飛ばされてしまった。
「あんた、このバトルは初めてなんだって?それじゃあついてないね、なぜなら、このあたしに負けるんだからね!!」
メイアはウイングを鎌に変形させ、ソルティに襲い掛かった。
(こ、このままだとやられてしまうです…、こうなったら、あれをやるしかないです!!)
覚悟を決めたソルティは、バックパックのブースターを全開にし、そのままメイアに突進した。
「なにそれ、体当たりでもする気?まあいいや、このまま切り裂いてやる!」
メイアはそのままの体勢で突進してくるソルティめがけて鎌を振り落とした。
「やった…って、ナにこれ?!」
振り下ろした先にあるのはソルティではなく、背中にあったバックパックだった。
「そ、そんな…。あの馬鹿はどこにいった?」
その直後、背中から何かが当たり、メイアのバックパックと武器を破壊した。
「油断大敵、よく見ないからそうなるんです!!」
彼女の後ろには、ソルティが狙い打つ体勢をとっていた。
「なるほど、いっぱい食わされた、というわけだ。初心者だとおもって油断したよ。でもね、まだ武器はあるんだ!!」
メイアは脚部のフィンを手に持ち、ソルティに襲い掛かってきた。
『ソルティ、相手は接近戦でケリをつける気だ。だが、今のお前には接近戦に対応する武器はない。このまま距離をとって攻撃するんだ』
「わかりましたです、離れて攻撃を仕掛けるです」
しかし、ソルティが行動に移す前にメイアが高速で接近し、間合いを詰められてしまった。
「ほら、ぐずぐずしてるから」
そしてフィンカッターでライフルを切り刻んだ。
「こうなるんだよっ!」
メイアは高らかに笑うと、ソルティの腹部に蹴りを入れた。その反動でソルティは遠くに飛ばされてしまった。
『なんてすばやい動きをする神姫なんだ…。ソルティ、まだ大丈夫か?無理しなくてもいいんだぞ』
しかし、ソルティは首を横に振った。
「大丈夫です、ぼくにはまだ、切り札があるのです」
『そうか、でも無理するなよ。これは練習試合みたいなもんだからな』
ソルティはうなずいて、切りかかろうとするメイアに立ち向かった。
「っははは、丸腰のくせに立ち向かう気かい?『無謀』って言葉知らないんだ」
しかし、ソルティはそのまま突進した。
(相手はぼくのことを甘く見てる。そこに隙があるはずだ)
一体どこから自信が沸いてくるのだろう。ソルティは一瞬、そう思った。しかしそれは次の瞬間には忘れていた。なぜなら、いま自分ができることを精一杯やることが、自分と恒一のためになるからと信じているからだ。そのためにはまず勝つことと、ソルティは決心した。
「さあ、覚悟するんだね」
カッターを振り下ろすメイア。が、その瞬間、彼女は信じられない事実を目の当たりにする。
「な…なんだ?」
なんと自分の武器が折られたのだ。
「どうして…丸腰なはずじゃなかったのか…」
メイアはソルティの方を見た。そこにはナイフを持った彼女の姿があった。
『これは、ヒートメタルナイフ…』
恒一も驚いていた。なぜなら、自分はこんな装備を持たせた覚えはなかったからだ。おそらく、このナイフはソルティ自身が密かに装備していたのだろう。
「そ、そんな武器であたしを倒すなんて、片腹痛い…」
その瞬間、メイアのツーテールの片方が音もなく切り落とされ、宇宙空間に漂った。
「…やった?」
渾身の力を出し切ったソルティは、メイアの方を見た。
そこには、さっきの出来事で呆然となった彼女の姿があった。
「か、髪の毛が…」
「え?」
そして、そのままうずくまった。
「ううっ…、あたしの、ウエーブのかかったツーテールが…」
どうやらメイアはツーテールを切られたショックを隠しきれない様子みたいだ。
「か…勝ったのかな…勝ったんだよね?」
ソルティはわけにわからないまま、うずくまったまま動こうともしないメイアを見ていた。その直後、時間切れのブザーが鳴りひびいた…。
覚悟を決めたソルティは、バックパックのブースターを全開にし、そのままメイアに突進した。
「なにそれ、体当たりでもする気?まあいいや、このまま切り裂いてやる!」
メイアはそのままの体勢で突進してくるソルティめがけて鎌を振り落とした。
「やった…って、ナにこれ?!」
振り下ろした先にあるのはソルティではなく、背中にあったバックパックだった。
「そ、そんな…。あの馬鹿はどこにいった?」
その直後、背中から何かが当たり、メイアのバックパックと武器を破壊した。
「油断大敵、よく見ないからそうなるんです!!」
彼女の後ろには、ソルティが狙い打つ体勢をとっていた。
「なるほど、いっぱい食わされた、というわけだ。初心者だとおもって油断したよ。でもね、まだ武器はあるんだ!!」
メイアは脚部のフィンを手に持ち、ソルティに襲い掛かってきた。
『ソルティ、相手は接近戦でケリをつける気だ。だが、今のお前には接近戦に対応する武器はない。このまま距離をとって攻撃するんだ』
「わかりましたです、離れて攻撃を仕掛けるです」
しかし、ソルティが行動に移す前にメイアが高速で接近し、間合いを詰められてしまった。
「ほら、ぐずぐずしてるから」
そしてフィンカッターでライフルを切り刻んだ。
「こうなるんだよっ!」
メイアは高らかに笑うと、ソルティの腹部に蹴りを入れた。その反動でソルティは遠くに飛ばされてしまった。
『なんてすばやい動きをする神姫なんだ…。ソルティ、まだ大丈夫か?無理しなくてもいいんだぞ』
しかし、ソルティは首を横に振った。
「大丈夫です、ぼくにはまだ、切り札があるのです」
『そうか、でも無理するなよ。これは練習試合みたいなもんだからな』
ソルティはうなずいて、切りかかろうとするメイアに立ち向かった。
「っははは、丸腰のくせに立ち向かう気かい?『無謀』って言葉知らないんだ」
しかし、ソルティはそのまま突進した。
(相手はぼくのことを甘く見てる。そこに隙があるはずだ)
一体どこから自信が沸いてくるのだろう。ソルティは一瞬、そう思った。しかしそれは次の瞬間には忘れていた。なぜなら、いま自分ができることを精一杯やることが、自分と恒一のためになるからと信じているからだ。そのためにはまず勝つことと、ソルティは決心した。
「さあ、覚悟するんだね」
カッターを振り下ろすメイア。が、その瞬間、彼女は信じられない事実を目の当たりにする。
「な…なんだ?」
なんと自分の武器が折られたのだ。
「どうして…丸腰なはずじゃなかったのか…」
メイアはソルティの方を見た。そこにはナイフを持った彼女の姿があった。
『これは、ヒートメタルナイフ…』
恒一も驚いていた。なぜなら、自分はこんな装備を持たせた覚えはなかったからだ。おそらく、このナイフはソルティ自身が密かに装備していたのだろう。
「そ、そんな武器であたしを倒すなんて、片腹痛い…」
その瞬間、メイアのツーテールの片方が音もなく切り落とされ、宇宙空間に漂った。
「…やった?」
渾身の力を出し切ったソルティは、メイアの方を見た。
そこには、さっきの出来事で呆然となった彼女の姿があった。
「か、髪の毛が…」
「え?」
そして、そのままうずくまった。
「ううっ…、あたしの、ウエーブのかかったツーテールが…」
どうやらメイアはツーテールを切られたショックを隠しきれない様子みたいだ。
「か…勝ったのかな…勝ったんだよね?」
ソルティはわけにわからないまま、うずくまったまま動こうともしないメイアを見ていた。その直後、時間切れのブザーが鳴りひびいた…。
試合終了後、バトルステージから戻ってきたソルティは、にこやかな表情で敬礼した。
「ただいま戻りました!」
恒一もこれに応じて答える。
「お疲れ、ソルティ。いい試合だったぞ」
そして、ソルティの頭を指でなでてあげた。
「あ、ありがとうです…。ぼく、たいちょーの期待に答えることができたですか?」
「ああ、ばっちり答えてくれたぜ。これでお前も立派な神姫になったな」
恒一はソルティを右肩に乗せ、オーナールームから出た。
「ううっ、こんなところで負けるなんて…」
悲しそうな言葉が反対側から聞こえてきた。おそらく、対戦相手のメイアの声だろう。
「泣くなメイア、お前は十分がんばったじゃないか」
「でも克矢兄、こんな負け方じゃ納得いかないよぉぉ…」
どうやらメイアはこの勝負のつけ方に納得がいかないらしい。
「今回のバトルは模擬戦のようなものだろう、勝ち負けは関係ないはずだ。それに、この勝負を引き受けたのはおまえ自身のはずだぞ」
「でも、でも…」
渋るメイアだが、一応オナーの言うことにはしたがっているようだった。
「逢坂さん、さっきの試合に付き合ってくれてありがとうございます。ところで、この子と喧嘩でもしたんですか?」
一部始終を見ていた恒一は、対戦相手のオーナー、逢坂に話しかけた。
「いや、うちのメイアがさっきの試合内容が不服だと言い出すんです。自分はこの負け方は納得いかないって…」
「そ!だって、あんなことするなんて反則だもん…。あたしの命と同じくらい大切なツーテールを切り落とされたんだから」
ぷりぷり怒りながら恒一たちをジロジロと見るメイア。どうやらあの時ソルティが切り落としたツーテールのことで怒っているみたいだ。
「そういうことはうちでゆっくり反省すればいいさ」
やさしい言葉でメイアを慰めた逢坂。しかし、メイアは納得がいかない感じだった。そして、彼女は恒一に対してさっきの話のことをを切り出してきた。
「ねえ、あんたはどう思う?こんな事されたんだから代償くらい払ってくれるよね…」
しかし、恒一は首を横に振った。
「わかってないなあ、これは試合中の出来事だから、仕方ないんだよ。それに、バトルをするときはこういうことは日常茶飯事だ。過去に戦った神姫でも、一部パーツを切り落とされたままで戦うってことはあったからね」
少しきつい口調でメイアに言い聞かせる恒一。それを聞いたメイアは、少し戸惑ってしまった。
「つまり、戦いにはそういうことが付きもの、ということだよ。それに、切り落とされたからって、バーチャルバトルだから、本当には切られてないだろ?たとえリアルバトルで切り落とされても、心まで切られたわけじゃないから、安心していいんだ」
恒一の言葉を聴いたメイアは、急におとなしくなった。
「…確かにバーチャルだから本当は切られていないけど、あたしのプライドが許さなくて…それで、そんなことを…」
「わかってくれればそれでいいさ。でも、お前のオーナーには謝っておくんだぞ。あれだけ迷惑をかけたんだからな」
「ぼくからもお願いするです」
ソルティも一緒にメイアにお願いをした。
「…分かった」
メイアは口をへの字にしたまま頷いた。意外と素直なところもあるみたいだ。
「でもね」
「何だ?」
「さっきのはあたしの全力じゃないから、次闘うことがあったら覚悟しておきなさいよ。今度はそっちに赤っ恥かかせてやるんだから」
やっぱり素直じゃないんだな…。恒一とソルティはそれぞれ同じことを思っていた。
「こっちこそ、ただでは負けませんです!」
「すごい自信だこと、今度勝つのはこっちだからね」
「やれやれ、早くも次のバトルのことでもめるのか」
あきれる恒一たちを尻目に、ソルティとメイアはお互い火花を散らしていた。この二人が再び闘うときにとんでもないことを巻き起こすのだが、それは後の話である…。
「ただいま戻りました!」
恒一もこれに応じて答える。
「お疲れ、ソルティ。いい試合だったぞ」
そして、ソルティの頭を指でなでてあげた。
「あ、ありがとうです…。ぼく、たいちょーの期待に答えることができたですか?」
「ああ、ばっちり答えてくれたぜ。これでお前も立派な神姫になったな」
恒一はソルティを右肩に乗せ、オーナールームから出た。
「ううっ、こんなところで負けるなんて…」
悲しそうな言葉が反対側から聞こえてきた。おそらく、対戦相手のメイアの声だろう。
「泣くなメイア、お前は十分がんばったじゃないか」
「でも克矢兄、こんな負け方じゃ納得いかないよぉぉ…」
どうやらメイアはこの勝負のつけ方に納得がいかないらしい。
「今回のバトルは模擬戦のようなものだろう、勝ち負けは関係ないはずだ。それに、この勝負を引き受けたのはおまえ自身のはずだぞ」
「でも、でも…」
渋るメイアだが、一応オナーの言うことにはしたがっているようだった。
「逢坂さん、さっきの試合に付き合ってくれてありがとうございます。ところで、この子と喧嘩でもしたんですか?」
一部始終を見ていた恒一は、対戦相手のオーナー、逢坂に話しかけた。
「いや、うちのメイアがさっきの試合内容が不服だと言い出すんです。自分はこの負け方は納得いかないって…」
「そ!だって、あんなことするなんて反則だもん…。あたしの命と同じくらい大切なツーテールを切り落とされたんだから」
ぷりぷり怒りながら恒一たちをジロジロと見るメイア。どうやらあの時ソルティが切り落としたツーテールのことで怒っているみたいだ。
「そういうことはうちでゆっくり反省すればいいさ」
やさしい言葉でメイアを慰めた逢坂。しかし、メイアは納得がいかない感じだった。そして、彼女は恒一に対してさっきの話のことをを切り出してきた。
「ねえ、あんたはどう思う?こんな事されたんだから代償くらい払ってくれるよね…」
しかし、恒一は首を横に振った。
「わかってないなあ、これは試合中の出来事だから、仕方ないんだよ。それに、バトルをするときはこういうことは日常茶飯事だ。過去に戦った神姫でも、一部パーツを切り落とされたままで戦うってことはあったからね」
少しきつい口調でメイアに言い聞かせる恒一。それを聞いたメイアは、少し戸惑ってしまった。
「つまり、戦いにはそういうことが付きもの、ということだよ。それに、切り落とされたからって、バーチャルバトルだから、本当には切られてないだろ?たとえリアルバトルで切り落とされても、心まで切られたわけじゃないから、安心していいんだ」
恒一の言葉を聴いたメイアは、急におとなしくなった。
「…確かにバーチャルだから本当は切られていないけど、あたしのプライドが許さなくて…それで、そんなことを…」
「わかってくれればそれでいいさ。でも、お前のオーナーには謝っておくんだぞ。あれだけ迷惑をかけたんだからな」
「ぼくからもお願いするです」
ソルティも一緒にメイアにお願いをした。
「…分かった」
メイアは口をへの字にしたまま頷いた。意外と素直なところもあるみたいだ。
「でもね」
「何だ?」
「さっきのはあたしの全力じゃないから、次闘うことがあったら覚悟しておきなさいよ。今度はそっちに赤っ恥かかせてやるんだから」
やっぱり素直じゃないんだな…。恒一とソルティはそれぞれ同じことを思っていた。
「こっちこそ、ただでは負けませんです!」
「すごい自信だこと、今度勝つのはこっちだからね」
「やれやれ、早くも次のバトルのことでもめるのか」
あきれる恒一たちを尻目に、ソルティとメイアはお互い火花を散らしていた。この二人が再び闘うときにとんでもないことを巻き起こすのだが、それは後の話である…。