ソルティ、初出撃です! 前編
「それではたいちょー、いってきまーす」
ここは店舗に設置してあるバトルルーム。そこで恒一は新メンバーである神姫を出場させていた。
「気ぃつけていけよ、今日はお前の初出撃の日なんだからな」
「わかってますよ、では、いきます」
敬礼したパートナー神姫は、そのままバトルゾーンに向かっていった。
「ソルティ、大丈夫なんでしょうか?あんなに調子に乗ってるのでは、先が思いやられます…」
横に座っているシュートレイが心配そうに恒一の顔を見ていた。しかし、そんなシュートレイの心配をよそに、恒一本人はまるでそれが関係なさそうなけろっとした顔をしていた。
「心配すんな、今回のバトルは勝ち負け関係ないから。とにかくソルティの実力を見るこった」
「でも、相手は死神と呼ばれている神姫です。あの子がやられる可能性だって…」
「だーいじょーぶ、ほら、もう試合が始まるぞ」
その直後、試合開始の合図が鳴り響いた。
ここは店舗に設置してあるバトルルーム。そこで恒一は新メンバーである神姫を出場させていた。
「気ぃつけていけよ、今日はお前の初出撃の日なんだからな」
「わかってますよ、では、いきます」
敬礼したパートナー神姫は、そのままバトルゾーンに向かっていった。
「ソルティ、大丈夫なんでしょうか?あんなに調子に乗ってるのでは、先が思いやられます…」
横に座っているシュートレイが心配そうに恒一の顔を見ていた。しかし、そんなシュートレイの心配をよそに、恒一本人はまるでそれが関係なさそうなけろっとした顔をしていた。
「心配すんな、今回のバトルは勝ち負け関係ないから。とにかくソルティの実力を見るこった」
「でも、相手は死神と呼ばれている神姫です。あの子がやられる可能性だって…」
「だーいじょーぶ、ほら、もう試合が始まるぞ」
その直後、試合開始の合図が鳴り響いた。
話は一月前にさかのぼる。
ある日の夕方、恒一のアパートに小包が届いた。
「なんだ、また父さんからかよ」
早速あけることにした恒一は、中身が例のあれであることに気づいた。
「何でしょうか…、って、これは神姫の新商品じゃないですか」
後ろから見ていたシュートレイが驚いた顔をしていた。
「なるほど…父さんのやつ、また俺をダシにして実践データを集めるつもりだな」
「あの人の考えることです、そう思ったほうがよさそうです」
恒一は新製品の神姫を手に取り、じーっと見つめた。
「ほお、ミリタリータイプの神姫かよ。これはゼルノグラードタイプだな」
素体からして、迷彩調のカラーリングが施されているため、これがゼルノグラードタイプだということははっきりしていた。武装からしても、ガトリングやライフルなど、あからさまにこの神姫が重火器型だということを物語っている。
「…じゃ、早速起動してみっか」
ゼルノグラード素体を手にとった恒一は付属のクレイドルをパソコンに繋げ、CSCをセッティングした神姫をそこにおいた。
(この瞬間が緊張するんだよな…)
恒一はアプリケーションソフトを起動させ、登録を開始した。
『本日は当商品をお買い上げくださいましてありがとうございます。それでは、オーナーのご登録をお願いいたします』
「登録か…、こんなこと、お前以来のことだからな、ちょっとどきどきするぜ…」
久しぶりの登録に、恒一は緊張していた。
「隊長…、早く登録してください。こっちもどきどきしてきたじゃないですか」
「あ、そうだな。…俺の名前は恒一、木野恒一だ。呼び方は…そうだな、『隊長』で」
思い切って自己紹介のように名乗る恒一。その瞬間、神姫はにこっと笑い、次の登録に進んだ。
『次に私の名前を登録してください』
名前か…。恒一は悩んだ。いい名前が思いつかないのだ。シュートレイの場合も、考えた末に名づけているため、今回も悩みに悩んだ。
「ブラスト、は、イメージじゃないし、シュレイドはほかの神姫にいるし、エルザもいるし…」
うまい名前が思い浮かばない、恒一はちょっとしたスランプに陥っていた。
「だめだ、いい名前が思い浮かばない…。俺って、想像力ないのかも」
「しっかりしてください隊長、名前くらいじっくり考えればいいじゃないですか。いま思い浮かばなくても、きっと次の日くらいには思いつきますよ」
「とはいっても、今登録しないと最初からやり直さないといけないんだ。自分の名前を登録したんだし、なおさら後には引けないだろ」
一度決めたことは後に引かない性格なのが恒一の変なところである。そんなところだけは、人より頑固なのだ。
「そうですか…。では、一息入れてからまた考えましょう。今コーヒー入れてきます」
シュートレイはキッチンに向かい、テーブルの上にあるコーヒーのビンのふたを開け始め、スプーンをうまく使ってインスタントコーヒーの粉末をコーヒーカップの中に入れていった。
「このくらいでいいでしょうか…」
シュートレイは時々恒一にコーヒーを入れているので、このような作業はお手の物である。そして、ポットからお湯を注ぐと、スプーンでかき混ぜた。
「はい、コーヒーできましたよ」
キッチンに入って来た恒一は、テーブルに置いてあるコーヒーカップを手に取り、そのまま口に運んだ。
「…シュートレイ、お前、コーヒーの中に何をいれた?」
「コーヒーとお砂糖を少し…って、これ、塩じゃないですかっ!!」
どうやらシュートレイは砂糖と塩を間違えて入れたようだ。
「ごめんなさい、塩とお砂糖のケースが似ていたもので…」
「まったく、砂糖と塩を間違えるなんて、いまどきの子供だってしないぞ。…塩?」
恒一は塩という言葉に、ものすごい反応を見せた。
「た、隊長、私が間違えたから怒ってるのでしょうか?そのことなら許してください」
「いやシュートレイ、お前のおかげで名前がひらめいたぞ」
コーヒーカップを持ったまま、恒一はパソコンデスクに駆けていった。そして、モニターの前で名前の登録の続きを始めた。
「お前の名前はソルティ、小粒でぴりりと辛いソルティだ」
ソルティの名前を呼んだ恒一は、そのままゼルノグラードタイプ神姫の顔を見た。
『ソルティですね、登録完了しました。それでは、処理が完了するまでしばらくお待ちください』
それから数分後、再起動した神姫=ソルティは、改めて自己紹介を始めた。
「こんにちは~、ぼく、ソルティ。たいちょー、よろしくお願いしますなのです」
意外な話し方をするソルティに、二人は唖然としていた。
「…隊長、どこか間違ったことしませんでしたか?」
「いや、別に何もやってないぞ。普通にセッティングしただけだし」
「そうですか?」
戸惑う恒一とシュートレイ。その様子を見ていたソルティは、質問をしてきた。
「あの~たいちょー、これからぼくは何をすればいいですか?もっとお役に立ちたいのです」
「…そうだな、これからお前にいろいろなことを教えてやる。せっかく俺が起動させたんだからな、一から十まで教えてやるよ」
恒一の言葉に、ソルティは素直にうなずく。
「りょーかいです、たいちょー」
ある日の夕方、恒一のアパートに小包が届いた。
「なんだ、また父さんからかよ」
早速あけることにした恒一は、中身が例のあれであることに気づいた。
「何でしょうか…、って、これは神姫の新商品じゃないですか」
後ろから見ていたシュートレイが驚いた顔をしていた。
「なるほど…父さんのやつ、また俺をダシにして実践データを集めるつもりだな」
「あの人の考えることです、そう思ったほうがよさそうです」
恒一は新製品の神姫を手に取り、じーっと見つめた。
「ほお、ミリタリータイプの神姫かよ。これはゼルノグラードタイプだな」
素体からして、迷彩調のカラーリングが施されているため、これがゼルノグラードタイプだということははっきりしていた。武装からしても、ガトリングやライフルなど、あからさまにこの神姫が重火器型だということを物語っている。
「…じゃ、早速起動してみっか」
ゼルノグラード素体を手にとった恒一は付属のクレイドルをパソコンに繋げ、CSCをセッティングした神姫をそこにおいた。
(この瞬間が緊張するんだよな…)
恒一はアプリケーションソフトを起動させ、登録を開始した。
『本日は当商品をお買い上げくださいましてありがとうございます。それでは、オーナーのご登録をお願いいたします』
「登録か…、こんなこと、お前以来のことだからな、ちょっとどきどきするぜ…」
久しぶりの登録に、恒一は緊張していた。
「隊長…、早く登録してください。こっちもどきどきしてきたじゃないですか」
「あ、そうだな。…俺の名前は恒一、木野恒一だ。呼び方は…そうだな、『隊長』で」
思い切って自己紹介のように名乗る恒一。その瞬間、神姫はにこっと笑い、次の登録に進んだ。
『次に私の名前を登録してください』
名前か…。恒一は悩んだ。いい名前が思いつかないのだ。シュートレイの場合も、考えた末に名づけているため、今回も悩みに悩んだ。
「ブラスト、は、イメージじゃないし、シュレイドはほかの神姫にいるし、エルザもいるし…」
うまい名前が思い浮かばない、恒一はちょっとしたスランプに陥っていた。
「だめだ、いい名前が思い浮かばない…。俺って、想像力ないのかも」
「しっかりしてください隊長、名前くらいじっくり考えればいいじゃないですか。いま思い浮かばなくても、きっと次の日くらいには思いつきますよ」
「とはいっても、今登録しないと最初からやり直さないといけないんだ。自分の名前を登録したんだし、なおさら後には引けないだろ」
一度決めたことは後に引かない性格なのが恒一の変なところである。そんなところだけは、人より頑固なのだ。
「そうですか…。では、一息入れてからまた考えましょう。今コーヒー入れてきます」
シュートレイはキッチンに向かい、テーブルの上にあるコーヒーのビンのふたを開け始め、スプーンをうまく使ってインスタントコーヒーの粉末をコーヒーカップの中に入れていった。
「このくらいでいいでしょうか…」
シュートレイは時々恒一にコーヒーを入れているので、このような作業はお手の物である。そして、ポットからお湯を注ぐと、スプーンでかき混ぜた。
「はい、コーヒーできましたよ」
キッチンに入って来た恒一は、テーブルに置いてあるコーヒーカップを手に取り、そのまま口に運んだ。
「…シュートレイ、お前、コーヒーの中に何をいれた?」
「コーヒーとお砂糖を少し…って、これ、塩じゃないですかっ!!」
どうやらシュートレイは砂糖と塩を間違えて入れたようだ。
「ごめんなさい、塩とお砂糖のケースが似ていたもので…」
「まったく、砂糖と塩を間違えるなんて、いまどきの子供だってしないぞ。…塩?」
恒一は塩という言葉に、ものすごい反応を見せた。
「た、隊長、私が間違えたから怒ってるのでしょうか?そのことなら許してください」
「いやシュートレイ、お前のおかげで名前がひらめいたぞ」
コーヒーカップを持ったまま、恒一はパソコンデスクに駆けていった。そして、モニターの前で名前の登録の続きを始めた。
「お前の名前はソルティ、小粒でぴりりと辛いソルティだ」
ソルティの名前を呼んだ恒一は、そのままゼルノグラードタイプ神姫の顔を見た。
『ソルティですね、登録完了しました。それでは、処理が完了するまでしばらくお待ちください』
それから数分後、再起動した神姫=ソルティは、改めて自己紹介を始めた。
「こんにちは~、ぼく、ソルティ。たいちょー、よろしくお願いしますなのです」
意外な話し方をするソルティに、二人は唖然としていた。
「…隊長、どこか間違ったことしませんでしたか?」
「いや、別に何もやってないぞ。普通にセッティングしただけだし」
「そうですか?」
戸惑う恒一とシュートレイ。その様子を見ていたソルティは、質問をしてきた。
「あの~たいちょー、これからぼくは何をすればいいですか?もっとお役に立ちたいのです」
「…そうだな、これからお前にいろいろなことを教えてやる。せっかく俺が起動させたんだからな、一から十まで教えてやるよ」
恒一の言葉に、ソルティは素直にうなずく。
「りょーかいです、たいちょー」
それからというものの、恒一はソルティを一人前の神姫にするために、数々の訓練を受けさせた。もちろん、外の散歩やショップなどにも連れて行った。ソルティは少しずつではあるが、いろいろなことを覚えていった。しかし、その傍らで見ていたシュートレイは少しやきもちを焼いていた。
そんなある日、シュートレイから射撃練習を受けていたソルティに、恒一はある話を持ちかけた。
「お前も結構いろんなことを覚えたよなぁ。そうだ、一度対戦してみるか?」
恒一はソルティをバトルに出場させようとしているのだ。もちろん、シュートレイはそれに反対した。
「起動してまだ一ヶ月もたってないのに対戦させる気ですか、私は反対です」
「わかってくれよシュートレイ、ソルティにはバトルの経験が必要なんだ。これから厳しい戦いを勝ち抜くためには、実践が手っ取り早いんだ」
シュートレイはそのことに対して疑問を持っていた。なぜなら、自分ですらそんなに短い期間での出場はないのだから。
「…それでしたら、まず私と対戦してから結果を出してもいいのではないのでしょうか?模擬戦くらいはしないと…」
「それもいいが、模擬戦よりは実際に相手と闘わせたほうがいい結果が出せるし、ソルティ本人もプラスになるだろ。それに勝ち負けに影響ないんだし」
「納得いきません、この子にもしものことがあったらどうするんですか?」
話は平行線に終わり、結局、今日はなにもすることができなかった。二人の話のせいで何もできなかったソルティは、少しふてくされ気味な態度になった。
「もっとやりたかったのに、つまーんなーい」
そしてそのまま自分のクレイドルにもぐりこんでしまった。
「ありゃあ、怒らせちゃったかな」
「こうなったのも隊長のせいですよ。あの子ももっといろいろ覚えたかったでしょうに」
「とはいってもなあ。やっぱ無謀だったかな、いきなり実践させるのは」
反省した恒一は、そのままキッチンに消えていった。
(…隊長も反省していることですし、今日のところは許してあげますか)
シュートレイもため息をつきながらも、心の中では許しているのだった。
そんなある日、シュートレイから射撃練習を受けていたソルティに、恒一はある話を持ちかけた。
「お前も結構いろんなことを覚えたよなぁ。そうだ、一度対戦してみるか?」
恒一はソルティをバトルに出場させようとしているのだ。もちろん、シュートレイはそれに反対した。
「起動してまだ一ヶ月もたってないのに対戦させる気ですか、私は反対です」
「わかってくれよシュートレイ、ソルティにはバトルの経験が必要なんだ。これから厳しい戦いを勝ち抜くためには、実践が手っ取り早いんだ」
シュートレイはそのことに対して疑問を持っていた。なぜなら、自分ですらそんなに短い期間での出場はないのだから。
「…それでしたら、まず私と対戦してから結果を出してもいいのではないのでしょうか?模擬戦くらいはしないと…」
「それもいいが、模擬戦よりは実際に相手と闘わせたほうがいい結果が出せるし、ソルティ本人もプラスになるだろ。それに勝ち負けに影響ないんだし」
「納得いきません、この子にもしものことがあったらどうするんですか?」
話は平行線に終わり、結局、今日はなにもすることができなかった。二人の話のせいで何もできなかったソルティは、少しふてくされ気味な態度になった。
「もっとやりたかったのに、つまーんなーい」
そしてそのまま自分のクレイドルにもぐりこんでしまった。
「ありゃあ、怒らせちゃったかな」
「こうなったのも隊長のせいですよ。あの子ももっといろいろ覚えたかったでしょうに」
「とはいってもなあ。やっぱ無謀だったかな、いきなり実践させるのは」
反省した恒一は、そのままキッチンに消えていった。
(…隊長も反省していることですし、今日のところは許してあげますか)
シュートレイもため息をつきながらも、心の中では許しているのだった。
それから数日後、ソルティはあるお願いを恒一に言ってきた。
「たいちょー、ぼく、試合に出たいんだけど」
意外だった。なんとソルティからバトルに出たいと言いにきたのだ。恒一とシュートレイは、お互いにビックリした表情になった。
「まさか、ソルティからこんなことを言ってくるなんて…」
「俺も驚いたよ、どうして急に言い出したんだろうな」
驚く二人に対し、ソルティは話を続けた。
「このあいだ、テレビで試合を見たんだけど、ものすごくかっこよかったんだよ。ぼくも一度でいいから試合に出たいんだけど、いいかな…?」
なるほど、理由はこれか…。二人は妙に納得した表情になり、うなずいた。
「で、お前はこの試合に出たいというのかい?」
「うん、出たい。ぼくも射撃上手になったし、出てもいいでしょ?」
「そうだな、出ても…」
恒一が言いかけた瞬間、シュートレイが口をふさいだ。
「も、もう少し考えてから決めるから、ソルティは練習でもしてらっしゃい」
そして、隣の部屋に恒一を連れていった。
「…うん、わかった」
一人残されたソルティは、きょとんとした顔で練習を始めた。
隣の部屋へ連れて行かれた恒一は、シュートレイの説教を聴かされる羽目となった。
「いったいどういう考えをしてるんですか?いきなり了承しようとするなんて」
「いや、あいつも出たがってるから、ちょっとしたバトルなら出してもいいかな、と…」
「でも、もう少し練習してからでもいいのではないのでしょうか?このまま出したらただではすまないと思うのですが…」
シュートレイの必死の説教を聴いていた恒一は、ため息をついて答えた。
「いままでの状態じゃだめなんだよ、いくら練習や模擬戦をしても、ある程度しか伸びない。ソルティが成長するには、ほかの相手と闘わせるのがいい方法なんだ。ソルティ自身も試合に出たいって言ってるし、本人にとってもそれが一番だと思うんだ」
シュートレイはしばらく考えた後、決心を固めて答えを出した。
「解かりました、隊長がそんなに言うのなら仕方ありません。ソルティをバトルに出しましょう。ただし、もしものことがありましたら、責任は取ってくださいね」
「分かってる、それじゃ、今からエントリーしてくるから、留守番頼むぜ」
恒一はシュートレイを置いて、となりの部屋に戻っていった。
「このままではあの子のためにならない、ということですね…。それにしても、隊長の突拍子のよさには、相変わらずあきれますね…」
留守番する羽目になったシュートレイの口から、ため息が漏れた。
「たいちょー、ぼく、試合に出たいんだけど」
意外だった。なんとソルティからバトルに出たいと言いにきたのだ。恒一とシュートレイは、お互いにビックリした表情になった。
「まさか、ソルティからこんなことを言ってくるなんて…」
「俺も驚いたよ、どうして急に言い出したんだろうな」
驚く二人に対し、ソルティは話を続けた。
「このあいだ、テレビで試合を見たんだけど、ものすごくかっこよかったんだよ。ぼくも一度でいいから試合に出たいんだけど、いいかな…?」
なるほど、理由はこれか…。二人は妙に納得した表情になり、うなずいた。
「で、お前はこの試合に出たいというのかい?」
「うん、出たい。ぼくも射撃上手になったし、出てもいいでしょ?」
「そうだな、出ても…」
恒一が言いかけた瞬間、シュートレイが口をふさいだ。
「も、もう少し考えてから決めるから、ソルティは練習でもしてらっしゃい」
そして、隣の部屋に恒一を連れていった。
「…うん、わかった」
一人残されたソルティは、きょとんとした顔で練習を始めた。
隣の部屋へ連れて行かれた恒一は、シュートレイの説教を聴かされる羽目となった。
「いったいどういう考えをしてるんですか?いきなり了承しようとするなんて」
「いや、あいつも出たがってるから、ちょっとしたバトルなら出してもいいかな、と…」
「でも、もう少し練習してからでもいいのではないのでしょうか?このまま出したらただではすまないと思うのですが…」
シュートレイの必死の説教を聴いていた恒一は、ため息をついて答えた。
「いままでの状態じゃだめなんだよ、いくら練習や模擬戦をしても、ある程度しか伸びない。ソルティが成長するには、ほかの相手と闘わせるのがいい方法なんだ。ソルティ自身も試合に出たいって言ってるし、本人にとってもそれが一番だと思うんだ」
シュートレイはしばらく考えた後、決心を固めて答えを出した。
「解かりました、隊長がそんなに言うのなら仕方ありません。ソルティをバトルに出しましょう。ただし、もしものことがありましたら、責任は取ってくださいね」
「分かってる、それじゃ、今からエントリーしてくるから、留守番頼むぜ」
恒一はシュートレイを置いて、となりの部屋に戻っていった。
「このままではあの子のためにならない、ということですね…。それにしても、隊長の突拍子のよさには、相変わらずあきれますね…」
留守番する羽目になったシュートレイの口から、ため息が漏れた。