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うららかな3時ごろ。日差しが少しだけ柔らかくなってきたこの時間。

今日のおやつはゴマプリン。
この間、お店で買ったのが思いのほか美味しかったので、自分でも作ってみようと思ってやってみた。
ゴマの香りとタマゴの優しい甘さがいい感じ、シロップも甘すぎず出来た、成功っ。

やっぱりお菓子はいいな、優しい気持ちになれるから。

「……スウィートジャンキー、柚子…………」
「いいじゃない……好きなんだもん……」

キッチンカウンターに座り込んで、私のほうを見ていた小さな姿。
最近迎えた私の、友達。

武装神姫、イーダ型。瑠璃唐草(ルリカラクサ)って名前。
中学生になってもなかなか人に話しかけられない私の、新しい友達。
「…………砂糖漬けの柚子」

―――ちょっと口数が少なくて、珍しい性格だけど。






お母さんあたりは、神姫に対して『中学生にこんなの大丈夫なの?』という感じだったけど、実は割りと気に入ってるのかも。
こないだ、お母さんと悟郎お兄とルリで芸能界談義してた気がする。

悟郎お兄ってのは、私の従兄弟で、時たま家に遊びに来る。いわく、私とお母さんのお菓子が目当てなんだとか。
童顔だけど、とてもカッコイイ人だった、んだけど……。
ある日女装したお兄が家に来て『悟郎という名前は捨てたわ、今はマリコよ!』とか、物凄いこと言った上に……。
―――なんで、オカマさんになったんだろう。元が童顔だから、そういう格好すると似合うのはわかるんだけど……。

お母さんも最初はショックだったみたいだけど、2日くらいで気にならなくなったみたい。
順応性高すぎだよ、お母さん……。

「あら柚子、今日は何作ったのー?ちょっと香ばしい、ゴマの香りがー」
回想すればお母さん登場。お菓子の香りにつられてきたのかな。
「ゴマプリンだよ。駅前のお店のが美味しかったから」
「ああーあれねー、どれどれお味見タイム」
ひょいっと、冷えた陶器の器に満たされたゴマプリンを拾い上げ、スプーンで早速一口なお母さん。
「……おおお、これはなかなか……」
「でしょ?自分でもいい感じかなって」
パクパクと口の中にプリンを放り込む。好評みたい。
と、突然私を見て、少し遠い目をする。
「なーんか……お菓子作りは完全に柚子のほうが上だわぁ……」
「え、えええ!?」
な、なにお母さん!?いきなりそんな!
「ちょっとなんか寂しいわー、慰めてルリちゃーん」
「…………」
「お、お母さん……」
ルリは、小さい手でお母さんの頭をなでなでしてる。
なんていうか、シュール……。
「ルリちゃんはいい子よねぇー、ちょっと無口だけど」
「……個性」
「個性!言うわねー」

―――割りとどころか物凄く仲いい気がする。

「それはそうと柚子、ちょっとお使いいいかしらね」
「と、唐突だね……なに?」
いきなりこっちに振られるとびっくりしちゃうよ。
「今夜久々におナスと鶏のカレー作ろうと思うんだけど、スパイスが足りなくてー」
「あれ、切れてた?」
最近、そんなにスパイスの類使うようなメニューだったかなぁ?
「クミンとカルダモンがねー。あんまり使ってないから切れてるのも忘れてたわ」
「そんなものかもね……うん、わかった」
とりあえず、行くまえに使った後のキッチンを片付けようとして。
「片付けは母さんやっとくから」
「いいの?」
「蒸すのに使った大鍋で作るから、少しだけ都合いいのよ」
まだ熱い、湯気を立ててるお湯と網の入った四角い大鍋を、お母さんはよいしょと持ち上げて。
「ほら、さっくり行ってきなさい。お金は帰ってきたら払うから」
「じゃあ……ささっと行ってこようかな……ルリも来る?」
「…………行く」
カウンター上のルリが、私の掌に飛び乗った。
「寄り道はいいけど6時までには帰ってきなさいねー、スパイスの足りないカレーなんてイヤよー」

それから自室へいって、ハンドバッグにお財布とか携帯とか詰めたその上に、ルリをちょこん、と乗せる。
……なんか、バッグの重さがいつもと違うなぁ……余計なもの入れてないはずなのに。
「……ハコ入り娘」
「バッグだってば」
「……細かい」
「細かくないよ……」
―――うん、やっぱり珍しい性格。





そんなこんなで、買い物に出たら目的のものをあっさりと見つけて終了。
クミンとカルダモンだもの、すぐそこのスーパーで簡単に手に入る。
お母さんは寄り道してもいいって、言ってたけど……さっさと帰っちゃおうかなぁ。


「……柚子……お願い……」
え?
ルリ、なんかすごい、珍しいこと言わなかった……?
「お、お願い?何?」



「神姫センターで……バトル……してみたい…………」



こんなこと今までなかった、というか、そんな素振りすらなかったのに?
「……バトルって、あれ?バトルロンドのこと?」
「…………うん」
―――意外も意外だよ。まさかバトルロンドやりたいなんて言い出すなんて。
「…………いままで、やってみたかったけど……柚子の性格から言わないでおいた」
「な、なんで……?」
確かに、戦うとか、あんまり好きじゃないけれど、お願いされればちゃんと考えたのに。
「…………指示、下手そう」
「ゔっ……」
その一言は、ちょっとグサっときたよ!
「…………普段から、そういうのいまいちだし……学校でも失敗してるし」
「う、うぅ……」
あんまり言わないでルリ……落ち込んじゃうよ……。
「……大丈夫…………自分で考えて動くから」
フォローになってない!






わいわいという人のざわめきと、大型モニターに映っている神姫同士の激しい攻防。
遂に来てしまった、神姫センター……それもバトル目的で。
「大丈夫かなぁ……」
実のところ、心配だった。
バトルなんかさせて、ルリが壊れちゃったりしないか。
それ以外にもいろいろと歩けど、何より、ソレが一番心配だった。
「……バーチャルでやれば、大丈夫…………」
「ばーちゃる?」
えっと、仮想バトル、だっけ?
「…………データ上のやり取りだけだから、直接傷ついたり、しない……」
「そーなんだ……」
なら、大丈夫……かな。
声のトーンが少しだけ上がってるような気がする。
嬉しそうな、そういう感じみたいな。
―――もしかして、こういうの好きなのかも。
「バーチャルでも……直接傷つかないだけで、腕とか足とか……落ちるけど……」
や、やっぱり心配だ!?


ともあれ、ルリに薦め(?)られてBMAのユーザー登録とか、なんかいろいろやらされた。
神姫の名前のとこだけ、係員さん焦ってたけど。



そんなに珍しいかな、瑠璃唐草って名前。





完成したBMAオーナーズカードを使って、早速やってみることにした。
場所は……1箇所空いてる。
「あ!」
「…………何?」
「ほら!あれが無いよ!あれ!」
「…………だから、何?」
「あれだよ、ほら……買ったときについてきた、あの、でっかい腕タイヤとか!」
「…………武装?」
「あれがないと、その、戦えないんじゃない……?」
いままでバトルさせたことないから分からないけど、まがりなりにも『武装神姫』なわけだから……。
武器とかないと、流石に色々無茶なんじゃないかなぁ……。

「大丈夫…………持ってきた」
「そう、だから……え、ええええ!?」
いつの間に持ってきたの!?
「……バッグの底に……入れてある……」
ほ、本当にいつの間に……?
「だから、なんか重かったんだね……」
「…………抜かり無し」
おみそれしました……この子ってば。


筐体のシートに座り込んで、ルリに武装させてみる。
バッグから、持ってきたって言う武装を取り出して……。

―――この武器どうやって取り付けるのー!
緑色のいろんなものがごちゃごちゃしてて、よくわからない。


「……自分でやる…………手伝って欲しかったら言うから……柚子はカード入れて……」
ごめんなさい、ダメなオーナーで……。
言われるままに、筐体についてる口カードヘを差し込む。


―――えっと……初めてだから、これ選択すればいいのかな?
ロゴの映ってるディスプレイに、<初めての方はこちら>という選択肢があったので、手元のパネルでなんとか選んでみた。
―――パソコンのキーボードよりは、分かりやすいなぁ。

控えめな演出とともに、操作とゲームのチュートリアル(でいいんだっけ)が表示される。
それを私は、ふむふむと読み進める。
―――他のゲームみたいに、操作するんじゃなくて、本当に指示するだけなんだ……。
うまく、できるかな……。


「柚子……できた」
「あ、え、うん、手伝いとかなくて、大丈夫だった?」
「大丈夫……ほとんど背負うだけだったから……」
そ、そっか。
見れば、大きなタイヤのようなものを二つぶら下げて、銃……?と、刀みたいなものを持っている。
結構、印象変わるんだね、武装って。
「……そっちは、いいの……?」
「うん……説明も読んだし、ここのポッドに入れればいいみたい」
カード挿入口の上にある、透明なポッドの口が開いている。
カードの挿入に反応して開くみたい。
「じゃ…………行って来る」
「いって、らっしゃい」


ルリが中に入り込むと、ポッドの口が閉じて、筐体の奥のほうにポッドごと移動していった。
ディスプレイには、フリーバトル、1on1、対戦相手は待機中の同ランクオーナーからアトランダム、とでている。


同じランク同士で、1対1ってことでいいのかな。


<店内で待機中のオーナーとのマッチングが成立しました。セットアップに移行します>



セットアップってことは、これから戦闘準備。気を引き締めよう。
パネルをたどたどしく操作して、まずは表示された武器の情報とか見てみようかと―――。


『……今の柚子が難しいこと考えるの、ムリ……』
「え?ルリ?」
ディスプレイの向こう側に、いつものジト目で見つめるルリがいた。
あ、もうバーチャルで話できるんだ。
『テストもしたことないから……柚子には……ちょっとムリ』
うぅ、ひどい言われようだけど……事実だから、しょうがない、かも。
『……大丈夫、負けても壊れたりしない……柚子は、見てて…………』
「い、いいの?指示とか、しなくて……?」
『……戦闘のこと、判る……?』
うぅぅう……。
「……ごめん、わかんない……」
ルリに、頭が上がらないよ……情けないなぁ……。
『柚子は、見てるだけでいい…………それだけでも、私は強く、なれるから』
「え?」
い、いま、さっきよりもっとすごいこと言わなかった?
『…………見ててくれるだけで……がんばれる、から……』
ヘルメットを深く下げて、顔が見えなくなったルリ。
でも、今の言葉で、私は物凄く嬉しくなった。
こんなこと言われたの、初めてだから。
「……よし、がんばれ瑠璃唐草っ、指示はできないけど、応援してるから!」
コクリ、とわずかに頷いた様に見えた、ルリの頭。

そして、対戦相手のネームが表示される。


<オーナー名:SAKUYA>
<神姫:フランドール>

さぁ、こい!初めてでおこがましいかもだけど、やるからには。


勝つっ!








ここの強い、って連中もあらかた食い尽くした。
何てことは無い、鼻っ柱ばかり高い、中身の無い奴らばかりだった。

鼻息ばっかり荒くて、いざ戦りあってみれば、装備に頼るだけのバカだけ。
神姫の能力や装備相性もまるでなってない。
大体、強力な武器だけありゃ勝てるってものじゃないんだ。
小学生のガキじゃあるまいし、そんなこともわからないのか。

結局、奴らはアラストルを剥ぎ取ることさえ出来ずに、斬破を抜かせる程度の相手ですらなかった。

現在は筐体の中でマッチング待機。
入り込んで待機するのはいいけど、試合拒否するヤツしか、もう残ってないと思うけど。
ネットワークマッチで、また他店の相手とかな。


<店内で待機中のオーナーとのマッチングが成立しました。セットアップに移行します>


……へぇ、意外だな。まだ戦ろうってのがいたんだ。



―――どんな相手かな、マスター。



さぁね、ただの無謀か、でなきゃマゾだね。



―――楽しめる相手だと、いいよね。



うん、つまんない相手じゃないのを願おうかな。














廃墟となったビル街を、ルリが駆ける。両側についたタイヤを器用に使って。
ここはステージとしては一番ベーシックらしい。

で、始まったけど、相手の姿は見えない。
ど、どうしよう。
『…………スタート地点は基本ランダム…………』
「じゃあ、最初は探さなきゃいけないんだ」
『……そう……索敵は、今やってる……』
わかんないことだらけで始まった、初めての戦い。
まだ、不安が心に残ってるけど……。

いや、ルリを信じるんだ、私。
大丈夫、きっと大丈夫。


『いた……隠れてはいなかった……なぜ……』

「もう見つかったの?」
『……堂々と、隠れもせず…………ほら、あれ』

崩れたビルの間を歩いてくる、大きな影。
近づいてくるにつれ、輪郭だけだったソレの姿がはっきりしてきた。

大きな二本の腕に、大きな剣を携えて。
羽のような板が1枚ずつ、左右に付いてて。
あの大きな腕と同じ、黒い色の巨大な脚。

その巨大なシルエットの真ん中。
スカイブルーのツーテールを二本なびかせ、腕を組みながら。
紅い瞳が、こちらを鋭く見据えている。
ルリよりも大きくて、なんだかすごい威圧感があった。
『ストラーフタイプ……チーグルとサバーカと、大きなバックパック……見たところ火器は無し……』
「ストラーフって、今でも人気があるって、あの悪魔型……の方だっけ?」
今まででいろんなタイプの神姫が発売されてるけど、第1弾の2種類―――天使型と悪魔型はまだ品薄の状態が続いてるらしい。
『うん……接近戦が得意なことが、多い……』
「じゃあ、近づかないほうがいいってこと?」
『……そう……だから、距離を取りつつ攻める……』
ルリは右手の、なんだか水鉄砲みたいな銃を構えて―――撃った。
銃声が連続で轟いて、光の筋が次々に飛んでいく。
同時に始めと同じ体制をとり、タイヤで高速バック。

すごい、バトルってこんななんだ。

効果音だけ聞いてると、ハリウッドのアクション映画みたいな感じ。
目の前の光景は、映画では観たこともないけど。


撃ってる方向、あのストラーフの方を見てみる。
さっきの、見つけたときの姿とは少し違う、大きな腕の横から生えてる羽が、体の前を覆っていた。
―――表面が揺らいでる?
直後、カンカンと硬いものに当たる音が響いて、光の線が四方に散らばってく。


効いてないの!?


『……あれは…………斥力の防壁?』
「せ、せきりょく?」
聞いたことない単語、なに、せきりょくって。
『……判りやすく言うと……バリア』
「え、え、そんなのもあるの!」
ば、バリアって!
『電磁斥力……高いから……普通は使う人、あまりいないけど……』
「……勝てる?あんなのに」
そういう装備があるってことは、物凄く強いってことなんじゃ。
『…………別に、購入とか改造は……ランク関係ないから……サードでも、たまにいるらしい…………』
そーなんだ。
ていうか、そういう情報はどうやって手に入れてるんだろう。
『インターネットで……いくらでも…………』
パソコンでインターネットかー。私はうまく扱えないからなぁ……。
って、地の文章読んじゃだめ!そんなメタフィクションなことしない!
『…………いまどき、そういうのは珍しくも……』
こらーっ!






―――なんか、バトルに慣れてない感じがする……。



初心者かな?



―――多分……その割には、基本的な動きは出来てるし、斥力を見破ったみたいだよ。



へぇ。



―――ほら、いつまでも撃ち続けたりしないで、すぐに引いた。ぼくのレンジに入らないようにしてるね



本当に初心者なら驚きだね。すごいセンスもってるじゃないか。



―――装備に頼ったアイツラよりは、ずっと楽しめそう。



そうだね……次で打ち込んで、手ごたえを見てみよう。いなせれば合格、ホンキでいくよ。



―――Do it(やるよ)







「とにかくどうするの、銃が効かないんじゃ……あとはその剣しか」
『一応……チャクラムもある…………』
タイヤパーツから、黒くて鋭い爪がわきわきと動いてる。ちょっと不気味。
「でも、近づいたら危ない……どうすれば」
『……いっそ近づいて、バリアを強引に破るっての……あるけど……』
「逆にやられちゃうよ!あんな大きい剣を二本も持ってるんだもん……」
あんなのあたったら、バラバラになっちゃうよ!
『防御には自信……あるけど……』
「でもダメ!危ないのはダメ!」
『……バトルなのに…………言ってること滅茶苦茶』
「だっ、だって……って、向こう動いた!?」
『……!』

ストラーフが動いた。
仁王立ちしているときより、足を少し開いて、少しだけ前に体を傾けてる。
なんかゴォォって、すごい音してるんだけど……。
『……来る……!』
来るって!?
そう思ったその直後、凄まじい勢いでストラーフがこっちに向かってきた。
さっきのルリの走りよりもずっと速い!
『速、い……ッ』
「ルリっ、逃げて!」
必死になって叫んで、ルリもタイヤを使って逃げようとしたけど。



相手の方が、速かった。



『...You shall die(キミ、死ぬよ)』



ストラーフが一言発したのが聴こえた。
いろんな音が交錯してるのに、それだけは聴こえた。
直後、ルリが横に吹っ飛ばされるのを見た。
エメラルドグリーンの破片を、いくつか撒き散らしながら。



「る……ルリぃっ!」
2回ほどバウンドして、瓦礫の上に転がった。
こんな、ひどい……!
「ルリ!大丈夫!?」



『…………柚子……うるさい……大丈夫、だから』


アスファルトの破片を振り払いつつ、のそりとルリが起き上がった。
武装のところとか、歪んだりヒビが入ったりしてる。
もってた銃は……瓦礫にぶつかった衝撃で変形してしまっていた。

そのとき、再びその場をつんざく、あの轟音。
「っ!ルリ、早くその場から逃げて!また来た!」
黒い色に彩られた巨体が、またこっちに来る。
『……間に、合わない』
「えええ!?」
『いまので……ホイール、歪んで……走れない……』
「え、え、ど、どうしたら……!」
そんな、逃げられない、なんて!
このままじゃ、ルリが負けちゃう……壊されちゃうよ!


いくらバーチャルでも、ルリが壊されるシーンなんて見たくない!


『迎え撃つ……』
「む、むかえうつ……って、どういうこと?」
『……迎撃とも言う』
「言い方なんか問題じゃなくて!」
あんなのを!?
『目一杯抵抗、して……一矢報いてやる……』
「で、でも……いくら本当には壊れないって言っても!」



『…………やられっぱなしじゃ、格好悪い、から……』

かっこなんかどうでもいいのに、ルリが無事でいてくれればいいのに!







―――やる気なんだ……ふふ、いいよ、面白い。



あの一撃をモロに喰らった時には、ああ、ダメかと思ったのにね……ガッツはあるな。



―――慣れてないのが、残念だな……ぼく的に。



確かに、もっと経験積めばもっと面白い相手になるのに……いまやるのが惜しいなぁ。



―――まぁでも、しょうがないよ。出されたものは残さず食べなきゃね。




とりあえずは、ここで幕引き。いつも通り叩き潰せばいい、フランドール。



―――OK Master。








それからは、もう、どうにもならなかった。
ルリのタイヤパンチは一発だけ当たったけど、ソレで終わってしまった。

左の方の大きな刀で切られて、右の剣で潰されて。
本体の方の腕が持った、大きな日本刀で腕を切り落とされて……足を、切り落とされて……。

何度もやめてって叫んだ。泣きながら、慣れないパネルを操作して、相手側に何度もコールして。
ルリの言うことを振り切って、降参しておけばよかった。
そうすれば、こんなことにはならなかった。

ルリが叫んでる、呻いてる。
私が聞いたことも無い、悲痛な叫びが、ずっと木霊してる。


最後は、手足がなくなってしまったルリを……持ち上げて……。





首を、撥ねた。





「ごめんね……ごめんね……ルリ……」
筐体から戻ってきたルリを、私は抱きしめて、ただひたすらに謝った。
ごめんね、としか、言えなかった。
胸の中がぐちゃぐちゃで、どうにかなりそう。

「…………柚子……大丈夫、だから……壊れて……ないから」
そう、ルリは壊れてはいない。今のところ異常も無い。
けど、震えてる。
大丈夫だって言ってくれるけど、それが余計に辛い。
「大丈夫じゃないよ……あんなに、恐い目にあったのに……」


ぐしゃぐしゃな気持ちのまま、装備もカードも乱雑にバッグにつめて、筐体から出る。


『―――やっぱえげつねぇよなぁ。強いのをいいことに好き放題やりがやって』
『―――俺もボッコボコにされた。すげー腹立つわ』
『―――マジざけんな、ガキのクセによ……出てきやがった』

後ろの方から聞こえた、不機嫌そうな男の人達の声。
相手も、筐体から出てきたみたい。

ふと、顔を上げる。

視線の向こう側に、私よりも小さい、女の子がいた。
黒と赤の、暗色の衣装と、その中で銀色に光るアクセサリー。
手にはさっき戦ったのと同じ、ストラーフをのせて。

『くそッ、気分悪ィ』
『クソガキめ……』

女の子がこっちを見た。
―――嗤ってる。私と、私の手の中のルリを見て。
あんな酷い事しておいて、さも、勝って当然という態度。

その子はすぐに私から視線を逸らし、出口の方へ悠々と歩き出した。


















―――それからというもの、私とルリは変わってしまった。
私は今以上に人見知りが激しくなって、友達との付き合いも少なくなった。


ううん、私はまだマシなのかもしれない。


ルリは……神姫を怖がるようになった。
街中で神姫を見かけると、身体が震え始めてしまう。
なるべくそれを表に出さないようにはしてくれてるけど……それが、余計に辛い。
特に、ストラーフを見たときは、はっきりと判ってしまうほど……酷く震えて。
口数も前より少なくなって、ずっとヘルメットを下げたまま。


そしていつからか、その恐怖感は違うものへ変わっていく。


それは、いままで経験したことの無い、激しい感情。

身を焦がすような、異常な熱さ。胸の中で炎が燃え上がっているような。



―――それは、憎悪。



恐怖と憎悪を抱きながら、私とルリは力を求めた。
あのストラーフに勝つために、あのストラーフを倒すために。
私とルリが味わった痛みと恐怖をそのまま、突き返すために。
そのために、経験を積まなければ。装備を整えなければ。


全ては


―――あの悪魔を―――








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