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鋼の心 ~Eisen Herz~


第24話:Marionette Handler




『EXAMINE DATA LINK』

 待機状態のフランカーが、接続されたアイゼンからのデータリンクで起動を開始する。

「MAIN TRANS ENGINE
 No.1 2 ON
 No.3 4 OFF
 No.5 6 7 8 ON」
『CONFIRMED,DEUS MACHINA」
《HELLO,I AM FLANKER》

 覚醒したAIの合成音が起動を告げると同時に、アイゼンは出撃準備に作業を移行。

『O.K.FLANKER:,YOUR NUMBER IS 1
 INSTRUMENT RECORDER ON』

 基本的にフランカーのAIとアイゼンの間に会話は要らない。
 両者はリンクした瞬間からほぼ同一の個となるからだ。
 必然、会話はマスターである祐一とAIとの間で交わされる事となる。 

《PERMISSION TO SORTIE》
『PERMISSION GRANTED
 GOOD LUCK,FLANKER 1』

 然程長くもない起動及び出撃手続きが終わる。
 試合開始まであと3、2、1。

「……行きます」

 フライトフォームのフランカーに乗り、アイゼンが戦場の空に羽ばたいた。


『さて、敵はデルタ1……。油断は禁物だが、珍しく基本性能で圧倒されない相手だ』
「……」
 無言で頷いているのだろう、そんな気配が通信機越しに伝わってくる。
『フランカーの性能なら問題無く対処できる相手のはずだけど……』
「…ん?」
『正直、何をしてくるか分からない。油断できないだけじゃない。警戒は密に、どんな異変も見逃さないで…』
「……ん、分かった」
《Warning!! Contact Enemy your twelve o'clock, 60m(正面に敵機確認、距離60m)》
 頷く端からAIによる警告。
 高速で流れる視界の中央に見慣れたフォートブラッグの姿。
「……デルタ、……1」
 馴染みの相手だけに、基本性能の把握も正確にしてある。
 アイゼンと同様に、試合開始と同時に全力で前進してきたのなら、接敵距離とタイミングは納得がいく。
 だがしかし、この神姫に限って言えばそれは逆に不自然だった。
『……直接戦闘力の低いデルタが、試合開始早々に堂々と表わすなんて……』
「……なにか、企んでると思ったけど?」
『まぁ、素直に殴りあうタイプじゃないから、何かしてくる筈だけど……』
「……ん」
 警告を受けながらも、アイゼンは速度を緩めない。
 強力ではあるが制約の多い【フェルミオン・ブレイカー】以外にまともな火器の無いフランカーでは、必然的に交戦距離はインレンジでの格闘戦に偏る事になる。
 敵が何であれ、接敵は必至なのだ。


 そもそも。
 デルタ1と言う神姫は、戦闘を前提にしていない。
 結果として2体の分身を操り、単体でありながら3体の神姫による強力な連携攻撃を駆使するものの、それは結果としてそうなっただけに過ぎない。
 それが証拠に、単体でのデルタの性能は低いのだ。
 むしろ劣悪と言っても良いだろう。
 アイゼン自身も基本性能に自信は無いが、それはあくまでも平均値から落ちるというだけの話。
 不利である事は否めないものの、高性能な神姫たちに対してもまるで及ばない訳ではない。
 だがしかし、デルタは違う。
 元より、神姫としての性能、即ち“動くこと”そのものが度外視されているのだ。
 神姫の基礎性能である運動能力や照準精度は、彼女にとってある意味ではオマケで付いているだけの余剰機能に過ぎない。
 デルタの真髄はむしろ、情報処理能力にこそある。
 通常の神姫とは比較にもならない情報処理能力は、複数のボディを制御する事すらたやすい。
 それこそがデルタシステム。
 ただ一人からなる三騎の猟兵、それこそがデルタという神姫の真髄であった。

 が。

 こと今回のこの大会において、それは何のメリットにもならない。
 不特定多数のオーナーが参加する大会において、ルールは厳粛に守られねばならないが故に……。
 デルタシステムは明らかに反則として扱われるからだ。

 要するに、今のデルタは分身も使えず、身体機能も劣悪なただのザコも同然の筈だった。


(……罠を仕掛ける時間は無い筈。それに、能力的にも私以下……。つまり完全に無防備……)

≪Assault form wake up≫
≪“RayBlade”Disposition≫

 空中で戦闘形態であるアサルトフォームにシフト。
 勢いを殺さぬままに飛び込みながらレイブレードを展開……。
「……殺った!!」
「まだです」
 必殺の間合いで振り上げた光刃は、そのまま大きく弾かれた。
「―――!?」
 攻撃の失敗を悟ると同時に、防御しながらのバックステップで離脱。
 状況が予想外の時は即座に離脱。
 教え込まれた戦闘の基礎を忠実に守りつつ、アイゼンは周囲を索敵する。
「……反撃された?」
『いや、デルタは動かなかった筈だ』
 ならばそれはデルタの攻撃ではない。
 罠を仕掛ける時間が無かった事は確か。故に、それは伏兵とみて間違いないだろう。
 しかし、分身が使えない以上……。
「……って事は……、ぷちマスィーンズ……」
 アイゼンの呟きに応じるかのごとく、ネコ型のぷちが物陰から飛び出してくる。
「―――っ!!」
 正確に顔面と武器を狙う攻撃をバリアでガード。
 繊細なセンサー類が集中している顔面や、僅か五本の細い指で保持された武器を直接狙うのであれば、ぷちの低い攻撃力であっても充分な成果を出すことが出来る。
 しかし。先に闘った焔星のような強化型のぷちでは無い以上、その攻撃力はフランカーのバリア、斥力場シールドであれば容易に防ぐことが出来るレベルでしかない。
「どんなによく狙っても、流石にバリアには通じませんか……」
「……ん」
 困ったように苦笑するデルタに頷き返し、アイゼンは再びレーザーブレードを構える。
「……ぷちの攻撃は効かない。……他に手が無いのなら、私の勝ち……」
 デルタの身体性能はアイゼンよりも下。
 デルタシステムの分身やトラップ、或いはぷちマスィーンズで補わなければアイゼンを相手に勝ち目など無い。
 そして、分身が無く、トラップを仕掛ける時間も無く、ぷちマスィーンズの攻撃が通用しない以上、最早デルタ単体ではアイゼンには対抗できない。
「予め言っておきますが、この戦い、私の武器はぷちマスィーンズだけです。……それも、特別な改造を施している訳でもありませんし、私本体にはハンドガンの一つも用意していません」
「?」
 首を傾げるアイゼンに、追い詰められている筈のデルタが悠然と解説を続ける。
「トラップツールも持っていませんし、爆弾も無し……。本当にただぷちマスィーンズだけで勝つつもりなんですよ……」
「……?」
 悪寒がする。
 追い詰めている筈のアイゼンの方が、何故か劣勢に立たされているような感覚。
 何かがおかしい。
 何かを忘れている。
 そんな、感覚。
 だから。

『逃げろ、アイゼンっ!!』
「!!」
 祐一の指示に反射的に身体が動いた。

 アイゼンがフルバリア状態でバックステップし距離を離すのと、デルタがぷちに攻撃を命じたのはほぼ同時。
 そして、それまでアイゼンが立っていた地面が、圧倒的な火力で根こそぎ抉り取られたのは次の瞬間だった。
『―――!?』
「……!!」
 歪なすり鉢上に抉られた地面。
 そして、その先で立ったまま見続けるデルタ。
「繰り返しますよ? 私の武器は、完全に無改造のぷちマスィーンズです。……ただし、総数1000体ですが……」
「!?」
 両手を広げるデルタの背後に、雲霞の如く無尽蔵に湧いて出るぷちマスィーンズ。
 その全ての銃口がアイゼンを狙い……。
 一斉に火を噴いた。


「総数1000体!?」
 その事実の意味を知るからこそ、リーナは叫ばずにはいられなかった。
「通常の神姫ならばリーダーぷちを介してようやく4,5体。……それも、素体側にかなりの負荷をかけた上でです……。つまり、デルタさんは単純計算で普通の神姫の200倍以上の情報処理能力があると言う事に……」
「……違うわ」
 リーナはフェータの解析を即座に否定する。
「普通のぷちは“狙撃”なんかしない。……できない」
 見上げるモニターには、アイゼンを取り囲みながら乱舞し、次から次へと弾丸を叩き込んでくるぷちの群れ。

 リーナの言うとおり、通常のぷちマスィ~ンズは狙撃などしない。
 通常の操作では、指定された標的へ攻撃をするのが関の山だ。
 狙撃などの高度な操作は、神姫本体の制御を中断し、細かく指示を行う必要がある。

 だがしかし、デルタはそれをしていない。
 否。
 常に、その状態でぷちマスィ~ンズを操作しているのだ。
 ……総数1000体にも及ぶぷちマスィ~ンズの全てを、同時に。

「個々の制御には多分、普通のぷちの十倍以上のリソースを割り振っているのでしょうね……。……行動を見る限り、相互リンクも実装しているみたいだし……」
「……で、では。……デルタさんの処理能力は……」
「恐らく、通常の神姫の数千倍から事に拠ったら数万倍に達しているかもしれない……」
「……そんな。それって、神姫の能力じゃありませんよ?」
 数万倍。
 よほど特殊なモノを除けば、デルタは現存する全ての神姫を合計したものより高い情報処理能力を持つことになる……。
 それは、事と次第では、世界中のあらゆる情報処理システムを凌駕するという意味にもなりかねない。
 言うなれば、超大国の軍事戦略コンピュータよりも数段上のシステムが神姫の形をしていると言っても過言では無いと言う事だ。
「……そうね、あれはもう神姫じゃない……。……その域を超えてしまった何か……、よ……」
(村上衛……。貴方は人造の“神”を造り上げたとでも言うつもり?)
 リーナはその視線の先で、“神”姫が……、デルタ1が……、薄く笑ったように見えた。


『……っ!! マズイぞ』
「……」
「さあ、如何するのですか。祐一さん? アイゼンさん? 1000対1の絶望的な戦況をどんな策略でひっくり返すつもりなのですか?」
『……くっ!!』
 返答に詰まる間にも無数の銃弾がアイゼンのバリアを穿つ。
「手など皆無なのですよ? このまま押し切るだけで、ボク達の勝ちは確定なのですから……」
 言われなくても分かっている。
 この状況自体が既に“詰み”だ。
 デルタの操るぷちの大群は、アイゼンを中心に直径5mほどの半球状の空間に無差別に弾幕を展開している。
 アイゼン自身に直撃する弾丸は一割にも満たないが、バリアを解いて脱出するのは完全に不可能。
 加えて、その一割にも満たない攻撃だけで、急速にバリアの負荷が強まってゆく。
『(……このままじゃ、あと十数秒しか持たない……。かと言って脱出する手立ても無いし……)』
『……マスター、ゴメン。……フランカー壊れるかも……』
『?』
 アイゼンからのメッセージは口頭ではなく、ディスプレイに文字として送られてきた。
「……」
『……アイ、……ゼン?』
 戦場にいる祐一の神姫は、いつも通りの無表情でただ攻撃を防ぎ続けている。
 そして。
「……ぷちの攻撃は効かない。……他に手が無いのなら、私の勝ち……。…………私は、そう言った筈……」
 そんな大嘘を平気で吐いた。

『……あ、アイゼン?』
 効いていない所ではない。
 フランカーのバリアなど、持って後数秒。
 だがしかし、アイゼンははっきりとそう言い放った。
 真っ赤な嘘を、いつもの無表情で……。
「………………」
 だがしかし。
「……確かに、このままでは埒が開きませんね……」
 その嘘は、デルタ自身で自覚していた圧倒的な優位性に、微かな揺らぎをもたらす。
 このまま続けていれば勝てるという事実を、デルタ自身に疑わせる事に成功していた。
「……では……」
 アイゼンの周囲に弾幕を張っていたぷち達が、アイゼン本人に目標を変える。
「……埒を開けましょう!!」
 その瞬間。
 1000体のぷちマスィ~ンズの射線が一点に集中した。


 対戦台すら直接揺るがすような轟音と振動。
 そして、それに見合うだけの破壊が再びこの場に顕現する。
 先の一撃に加え、二個目のクレーターすら産みだし、圧倒的な破壊力と熱量が一点で炸裂した。
「総数1000体のぷち達の一点集中砲火、『デストライク・ステア』。……本来、飛び道具では破れない筈の、カトレアさんのバリアを破る為に、マスター自らが考案なされた攻撃です……。如何に祐一さんの作った装備とは言え、耐えられるような物ではありませんよ?」
 奇しくも、これこそがデルタの、……いや、村上衛の出した回答。
 飛び道具を無効化するカトレアのバリアを破る方法として、飛び道具を使わないことを選択した祐一とアイゼンとは真逆に、力技でそれをねじ伏せることを選択した結果であった。
 その破壊力の絶大さは穿たれたクレーターを見れば一目瞭然。
 フィールドの地面そのものを抉り、基部である建材にまで到達するほどの圧倒的な破壊力。
 確かに、直撃を受ければ如何にカトレアといえども無傷では済むまい。


「……直撃を受ければ、ね……」


「……一点集中と言うことは―――」
「―――っ!?」
 聞こえるはずの無いアイゼンの声に一瞬デルタが硬化する。
「……避わしてしまえば、無害と言うこと……!!」
 爆煙から飛び出してきたのは、満身創痍のストラーフ、アイゼン。
 デストライク・ステアを回避する際に、避わし切れなかった数発を被弾したものの、致命傷には程遠い。
 ステージ設計の想定にすらない超攻撃力を生み出すデストライク・ステアも、たった数発であるのならば、それは高々ぷちマスィ~ンズによる非力な攻撃でしかない。
 一切の機能を損なわないまま、アイゼンは一直線にデルタへと突撃した。
「甘いのです!! 例えデストライク・ステアを避わしたからと言って、1000対1の戦力差が埋まった訳ではないのですよ!?」
 デルタの指示を受けて、たちまち数百体のぷちが進路に割り込みアイゼンに攻撃を集中する。
『アイゼン!! シールドを前面に集中!! 強行突破だ!!』
「……んっ!!」
 既に限界間近の斥力場シールドが前方に集中。
 そこに集中した数百の火線を―――。
 ―――尽く弾き返した!!
「―――そ、そんな!?」
 ああ見えて、デストライク・ステア前にアイゼンに与えていた攻撃の数倍の威力を持っていた筈だ。
 あの攻撃が実際には有効であったと言う事はデルタも既に気付いている。
 故に、その数倍の攻撃をもってすれば、デストライク・ステアでなくとも充分にトドメになると判断しての一手。
 しかし。
「そうですか、全周囲を覆っていたバリアを前方だけに集中して展開したのですね―――」
 それに気付いたデルタが再びぷちの群れに指示を出す。
「―――ならば、後ろががら空きだと言う事なのですっ!!」
「……百も承知」
『ならば!!』
「『―――狙わせなければ良いっ!!』」

≪Rider form wake up≫

 アイゼンの全身を鎧っていたアーマー。フランカーが分離し、小型のバイクを形成。
 そして、アイゼンを乗せたまま、加速!!
 急激に距離をつめる。
「……更に」

≪system“Accelerator / Un Limited Mode”starting up≫

 起動したシステムが世界を止める。

 否。
 そう感じるほどに速く、速く、ただひたすらに速く。
 アイゼンの思考を加速させ、背後から迫る銃弾の全てをコマ送りにまで減速させた。
「―――っぐ!!」
 代償として過負荷をかけられたAIが、アイゼンにとって耐え難いほどの頭痛となって襲い来る。
「……っ、く…ぅ」
 しかし、そのリターンとして背後からの全ての攻撃を紙一重で避わしきった。
 実時間にして2秒。
 その時間でフランカーは速度を上げ、その“ボーダーライン”を突破した。

≪system“Accelerator ”Closing Down≫

「……っくはぁっ!!」
 頭痛から解放され、息を吐こうとしたアイゼンの視界が急激に狭まる。

 主である祐一から指示された速度。
 それを突破したのだ。
 二度のデストライク・ステアを回避するために離してしまった距離を数秒で詰められる速度。
 それは同時にぷちマスィ~ンズを無力化する速度でもあった。


「え!? まさか!?」
 デルタが気付く。
 気付かざるを得ない。
「……攻撃、……出来ない!?」
 背後からの攻撃を命じた全てのオーダーが、達成不能、或いは試行失敗としてキャンセルされてゆく。
「……そんな、こんな事って……!?」

 単純な話だ。
 今のアイゼン、フランカーはただただ速い。
 故に、ぷちの速度では追いつけない。
 それどころか、目標を認識したぷちが狙いを定め、攻撃を開始するよりも早く、その射程距離から離脱してしまう程に。
 そう、ターゲットとして捕捉されても、攻撃されるよりも早く射程外に離脱してしまえる速度。
 ただその一点だけでぷちの攻撃の大半が無力化した。
 原因はただ一つ。
 デルタの使う1000体ものぷちが、ただ単純に数を揃えただけの純正品であったからこそ。
 無改造のぷちマスィ~ンズでは、攻撃力は勿論の事、旋回速度も、移動速度も、火器管制能力さえも低すぎたのだ。
 火力を集中させることで攻撃力は補えても、移動速度や旋回性能は補えない。
 そして、それが不足しているが為に、この時点でアイゼンより後方にいる全てのぷちが、事実上無力化されたのだ。
 更に。

「ならば、軌道を先読みして迎撃するまでなのです!!」
 だがしかし、それは……。
『要するに、進路に弾丸を“置いておく”って事だろう?』
「……そんなもの……」
『弾き飛ばすだけだと証明して見せただろう!!』
 前方に集中展開した斥力場シールドがそれらを尽く跳ね返し、アイゼンをデルタの元へと運ぶ。
 この時点で、1000体のぷちの全てが無力化し。
 1000対1の構図は書き直された。
 即ち。
 0対1に。
『行けぇ、アイゼン!!』
「しぃぃぃぃるどぉぉぉ、突撃いぃぃぃっ!!」

 戦力の全てをぷちに集約していたデルタには最早反撃の手立ては無い。
 斥力場シールドを穂先に、アイゼンとフランカーは自身を長大な槍と化し、デルタ1を轢き跳ばした。


「くくくくくっ………」
 心底楽しそうに、土方京子は笑う。
「まるで馬鹿と馬鹿の意地の張り合いだな。……嫌いじゃないよそういうのは、ね……」
 隻眼に滲む涙を拭いつつ、もう一度くくくと笑う。
「ああ、本当に惚れてしまいそうだよ、少年。……まったく、どうしてくれようか……」
 そしてまた、苦しそうに涙を滲ませ笑うのだった。

「……うぅ、マスター……」
「ま、マスターが壊れたです、バグってるです、一大事です……」
「ナンカつぼニデモ入ッチャッタンダロウナ……」
「無様」
 少し距離を置きながら、遠巻きにそれを眺める京子の神姫たち。
 完全にドン引きだった。


 勝者、祐一&アイゼン。

 そう表記された場内モニターの下で、祐一と村上は互いの神姫を連れて向かい合っていた。
「なるほど、敗因はやはり……」
「……ええ、カトレアを倒す為にはどうしても千体分の火力が必要だったのでしょうけれども、数を揃える為に個々の性能を犠牲にしてしまってはそもそも攻撃を当てられないって事です」
 祐一の指摘に神妙に頷く村上。
 そして彼は言った。
「やはり、デルタにメイド服を着せるべきでした」
「違うってば!!」
 流石に祐一も怒鳴った。



「……マスター」
「?」
 肩の上のアイゼンに髪を引かれ、祐一が振り返る。
「……何かあったみたい……」
「え?」
 確かに、会場の一角がざわついている。
「……なんだ? あっちは確か……」
「……マヤアの対戦台」
 相手はフルカスタムのツガルタイプ。
 決して弱くはないがマヤアの敵ではない筈だった。
「……まさか、な……」
 手近なディスプレイの一角に試合の様子が映っている。
 ―――が。
「……煙幕?」
 祐一は首を捻る。
 件のツガルは高機動の狙撃型。
 煙幕を駆使するようなタイプではない。
「……マヤアの装備な訳もないし……」
 言い知れぬ不安が過る中、視界の隅に此方に駆けて来る美空とリーナの姿。
「―――祐一!! マヤアが!!」
「何があったんだ?」
 息を切らせるリーナに変わって美空がディスプレイに目を向けながら呟く。
「……黒い神姫が乱入して来て……。それで……」
 視界の先で、ディスプレイを埋め尽くしていた黒い霧が吹き散らされてゆく。
「……あれは? あの神姫は……!?」
 それは、祐一にも見覚えの無い神姫。
 既存機種に当てはまらないアーリーワン。
 その名も―――。


「むむむ、ライフルもレールガンも壊さ(とら)れたか……」
 珍しく深刻そうな顔で呟くマヤア。
「……幽霊ちゃん。VRより、リアルの方が強ええのな……」
 対峙する神姫は黒衣の幽霊。
 仮面と黒翼。
 黒衣に双刀。
 一時間ほど前に、マヤアがVR空間で倒したモノと全く同一の外観を持つそれは、今度はマヤアを容易に圧倒して見せた。
「…………」
「相変わらず無口なのな。……でも、コレで勝ったと思ったら大間違いなのだぞ」
 言って片手を空に掲げるマヤア。
「浅葱!! 今こそ17話辺りで使おうと思ったのに出番の無かった秘密兵器の出番だ!!」
「何メタな事口走ってるのよアンタは!?」
「そう怒るな浅葱。ネコのカッコいい所見せてやっからよぉ?」
 にへらへら、と笑いながらくねくね踊るマヤア。
「……緊張感の欠片も無い奴ね……」
「それがネコだからな」
「……いいわよ、やんなさいマヤア!! ……負けるんじゃないわよ!!」
「……うむ、約束できんがな!!」
 出来ないのかよ、と浅葱が突っ込むより速く、マヤアは宙へ跳ぶ。
「―――疾!!」
 一瞬後れてマヤアの残像を凪ぐように閃く刃。
「喰らえぇ、ロケットキーック!!」
 空中から、マヤアは赤い脚部アーマーをパージ。
 同時に脚を振ってそれを打ち出した。
「閃」
 僅かな動きでそれを切り払った幽霊が飛び上がり、マヤアに迫る。
「―――いいタイミングだぜ、浅葱ぃ!!」
「!?」
 マヤアの背後から、蒼い閃光が飛び込んでくる。
「アーマーパージ!!」
「―――ッ」
 全身の残ったアーマーを強制解除し、剥離するパーツで幽霊を阻むと、マヤアは“ソレ”に飛び乗った。
「見たか!! これぞネコの新兵器!!」
 言いながら、パージされ空中を舞う赤いブレードを両手に掴み、マヤアは幽霊に向かって飛び込んで行く。
「二個目のレインディアバスター!!」
 絶叫と共に、蒼いレインディアバスターで突撃をかけるマヤア。
 普段使っているアーマーと同性能のレインディアバスターを、“もう一組”用意する事こそマヤアの切り札。
 自身がジョーカーとも言える彼女にとって、それは言うなれば“2枚目”のジョーカー!!
 それはつまり。
 ただでさえ無敵のマヤアを、2度倒さねばならないという事だ。
 そんな事が出来る神姫が果たして存在するのかどうか……。
 その答えが、今、証明された。

「―――闇、虚空断」

 少なくとも、ここに一人。
 それを可能とする神姫が、居た。


「おい、どうなってるんだ?」
「あれって、リストに無い神姫だよな?」
「すげぇ、俺あのバケネコが負ける所始めて見た」
 ざわつく会場に、更なる異変が起きる。
「おい、何だ? 対戦台の電源切れちゃったぞ?」
「見ろよ、バトロイのフィールドが……」
 誰か言葉に目を向けてみれば、決勝戦に向けてメンテナンス中の筈のバトルロイヤルステージがライトアップされている。
「……あそこ、さっきの黒い奴」
 何時の間に移動したのか、先ほどマヤアを下した黒い神姫がステージの中央に居た。
「……」
 無言で、一瞬静まる観客達の前に佇みながら、幽霊はその仮面を外す。
 そして、その背後に一人の少女の立体映像が浮かび上がった。


『―――皆様、始めまして……。私の名は土方真紀。CSCを製作し、全てのMMSの心を作った存在です―――』

「始まった、か……。……真紀……」
 土方京子がそれを見ていた。


『―――ですが、私が作ったのは人のパートナーとしての存在。……決して、戦う為の神姫ではありません―――』

「先輩!! どうなってるんですかコレ!?」
「私にも分からないわよ」
 島田雅がそれを見ていた。


『―――ゆえに、私は全ての神姫を否定し、これを破壊します―――』

「始めてしまったか、お嬢ちゃん」
 芹沢九十九がそれを見ていた。


『―――その為に、全ての神姫の中枢たるCSCに、私はウイルスを仕込みました。このウイルスは“とある場所”にあるメインコンピューターからの指示で一斉に活性化し、全ての神姫を死に至らしめるでしょう―――』

「……なんて事を……」
「これが、幽霊のマスター?」
 リーナ・ベルウッドが。
 伊東美空が、それを見ていた。


『―――あなた方の中には、闘いを通じて神姫との絆を主張する者も居るでしょう――――』

「……始まりましたか、土方……。真紀……」
 村上衛がそれを見ていた。


『―――もしも。……もしもそれが正しいと思うのなら。……その絆を証明して見せなさい、この私の神姫―――』
「……マスター」
 アイゼンが。
『―――フブキを倒す事で!!』
「……なるほど、そういうつもり、か……」
 島田祐一が、それを見ていた。


 こうしてこの瞬間より、この大会はその様相を大きく変える事となる。









本編もいよいよ佳境ですがそんな事は関係なくALCです。

ヴァローナ、ウェルクストラ共に物凄く良い出来で幸せ。
11月にはストラーフ、アーンヴァルのリメイクもでるらしく凄く幸せ。
更には間垣パパンの新型も出るので物凄く幸せ。
お財布の中身が凄い事になっていますが……。

でも多分後悔はしないALCでした。


















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