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武装神姫のリン
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剣は紅い花の誇り
クラブハンド・フォートブラッグ
ホワイトファング・ハウリングソウル
ハウリングソウル
ウサギのナミダ
アスカ・シンカロン
引きこもりと神姫
キズナのキセキ
魔女っ子神姫☆ドキドキハウリン
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えむえむえす ~My marriage story~

2014年

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デュアル・マインド
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悪魔に憑かれた微駄男
Nagi the combat princess
えむえむえす ~My marriage story~

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深み填りと這上姫
キズナのキセキ
武装食堂
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2012年

美咲さんと先生
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類は神姫を呼ぶ
浸食機械
引きこもりと神姫
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白濁!? 阪高神姫部
白い英雄を喰う黒い女神
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流れ流れて神姫無頼
アスカ・シンカロン
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車輪の姫君
樫坂家の事情!
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おまかせ♪ホーリーベル
戦うことを忘れた武装神姫
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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
PRINCESS BRAVE
神姫☆こみゅにけ~しょん
アルトアイネス奮闘姫
ロンド・ロンド

2009年

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双子神姫
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犬子さんの土下座ライフ。
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2008年

武装神姫のリン
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師匠と弟子
マリナニタSOS!(仮)
橘明人とかしまし神姫たちの日常日記
戦う神姫は好きですか
スロウ・ライフ
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妄想神姫
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剣は紅い花の誇り
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武装神姫~ストライカーズ・ソウル~
神姫長屋の住人達。
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クラブハンド・フォートブラッグ
武装神姫と暮らす日常
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ホワイトファング・ハウリングソウル
ハウリングソウル
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  眼前に神姫達が迫る。始めた作業は継続しつつジェネシスへ説明を始める。


「お前の攻撃データを改竄した。攻撃を当てればそこからウイルスコードが侵入し、
  俺達とリンクする」
「相手のコンピュータからは消えたように見える筈だ。コレで洗脳から解放できる。
  一時凌ぎだけどな」
めまぐるしくキーボードを叩きながら、ジェネシスへ指示を下す。
「了解です。」
「それと、一機一機回収してる時間の余裕がもう無い。リンクを経由して一緒に
  連れ出す。その為には機体を機能停止させる必要が有る」
「人間でいう鳩尾の位置だ。エネルギーラインの集中位置がある。
  バイザーにデータ送るぞ。ここを切断すれば無傷で神姫を止められる。
  いいか、一撃でここだけを刺し貫け」
ジェネシスのバイザーにヒットポイントの位置データを転送。
ジェネシスは位置を確認し頷く。
「安心しました。いつもの貴方で」
「凹むのは後だ。その話はするな」
「頼りにしてます」
僅かに笑んだ気配のある彼女の声が、緊張をほぐしてくれる。サンキュ、相棒。

  数秒置かず、神姫達の只中へ突っ込む。
最初に襲い掛かって来たのは先程のハウリンタイプだ。
「ジェネシス。システムを近接戦闘に移行」
「了解」
可変アーマーが跳ね上がり、ハウリンを弾き飛ばす。
展開したアーマーがフレキシブルアームごと後方へ移動し、折り畳まれて
スラスターウイングを形成する。尾部のアーマーがサイドに持ち上がり展開して
サブウイングとなって…高速格闘形態へ。
ウイング内に仕込まれたサバイバルナイフをクローデバイスで取り外し、
その手に握り込む。
もう片方のクローでハウリンを掴み、こちらへ引き寄せて。
「大丈夫…痛くはしません」
ドッという鈍い音と共に正確にその胸をナイフで刺し貫く。
停止したハウリンを降ろせば、周囲を取り囲む神姫達。流石に数が多い。

クローユニットを180度回転して逆方向に装着したビームユニットからサーベルを展開。
同時にドラグーンを射出して駆け出す。
ジェネシス自身が前方の1機を、後方の6機を至近まで接近したドラグーンが討つ。
一応、ジェネシスのビーム兵器には全てエネルギーキャップを付けてある。
短時間ならどの兵器からでもビーム刃を出せるのだ。
そこへ降り注ぐ攻撃から倒した神姫を突き飛ばして、自らも上空に避ける。
「容赦ねぇな。ま、操られてるんだし当然か」
「だからこそ、これ以上彼女達が傷を負う前に止めねばなりません」
味方を倒されても躊躇無く攻撃を加えてくる神姫達。回避行動を取りつつ、その要領で
次々と撃破していくと例の巨大神姫が接近してくるのが見えた。
神姫達の迎撃をドラグーンに任せ、巨大神姫へと飛び立つ。
アレとの戦いに他の神姫は巻き込めない。




迫る巨大神姫に先制攻撃を掛ける。これでウイルスが効けば儲けモンだが勝算は薄い。
なぜならアレは恐らく…
「よぉ、Gさんよ。初めましてだなぁ?攻撃しても無駄だぜ?
  コイツはオレが直接操ってるからなぁ。サーバーには依存しねぇ」
巨大神姫の蛇の様な頭部。その目の部分が点滅し、音声を再生する。
装甲も今までの比じゃねぇのか傷一つ付いていない。
「やっぱ初めてか。オレが今まで潰した連中と比べて大分ザルいぜアンタ。
  その分卑怯くせぇけどな」
皮肉たっぷりに言い放ち、巨大神姫を調べる。
神姫部分が露出してれば話は早いが…そう簡単には行かせてくれないか。
「何とでも言ってくれや。取引だ、Gさん。オメェこのまま俺達に捕まれ。
  大事な神姫を壊したくないだろ?それに…」
巨大神姫の頭部カバーが開く。その中に組み込まれていたのはストラーフ。
…しかも見覚えのある、だ。
「コラン…」
苦々しく呟く。それは、オレが修理を頼まれたあのストラーフだった。
「何だ知り合いかよ?なら話も早いってモンだ!アンタが抵抗すればこのストラーフ、
  タダじゃすまないぜ?」
「こっちも高い金掛けてこの戦闘用神姫を組んでんだ。ランカー神姫まで用意してなぁ。
  こんなトコで壊したくはねぇのよ」
人質ってワケか。どこまでも腹の立つヤロウだ。
このデカブツを破壊して頭部から彼女を救い、彼女にダメージを与える。
直接接触しない限りは攻撃は無駄。
…手が無いわけじゃねぇが。

(ジカンヲカセゲ)

ジェネシスのバイザーにメッセージを送信する。
「…アンタの目的は?」
男に話しかけながら、キーボードを打ち続ける。デカい入り口を開ける為に。
ジェネシスも無言のままウイングをアーマーに変形させて防御姿勢を取る。
男の神姫がジェネシスをいたぶる様にその巨大な身体をぶつけて攻撃を開始した。
まるでお手玉の様に中空で攻撃を受け通けるジェネシスの顔が悔しさと痛みに歪む。
「目的ぃ?目的なんざ金に決まってんだろ!Gの神姫とソレをヤッた神姫となりゃ、
  とんでもない額で売れるぜ!ハハハッ」
「手間ぁ掛けやがって!頂く前に少し遊ばせてもらうぜ、見敵必殺の神姫サンよぉ!」
「下衆野郎が…」
「口の利き方には気をつけろよ、Gさん。アンタの神姫が痛い目に合うぜ?」
巨大神姫の尾のブレードが、ジェネシスを地面に叩き付ける。
地に伏したジェネシス目掛けてそのブレードが何度も何度も振り下ろされた。
「大した事ねぇなぁ?おっと、手が出せないんだっけか、悪ぃ悪ぃ」
下品な笑い声を上げ、男が楽しげにこちらを挑発する。
そして巨大神姫が、その身体で蛇が獲物を絡め取るようにジェネシスに巻きつき、
締め上て来た。
「ぐっ…」
苦痛に耐え、呻き声を上げるジェネシスを見て、男は満足げに言い放った。
「オラ、Gさんよ。アンタはこの神姫を置いてさっさと消えな。これに懲りたら少しは
  利口な生き方ってモンを覚えるんだな」
…この手の手合いは自分の優位を実感した瞬間、どうしようもなく隙が出来る。
小悪党の不文律か。
目の前にちらついたお宝に目が眩み、オレを無力と思ったのが運のツキだ。
終わったよ、準備。
「なぁに。利口になるのはアンタの方さ、小悪党!」
最後の構文を書き込み、エンターキーへ指を叩き付ける。
サーバー世界の雲に穴が開き、新たな入り口が開く。
「ジェネシス、待たせたな!やっちまえ!」
「アーマーユニット、オールパージ!」
オレの呼びかけに応えたジェネシスが叫ぶ。
アーマーが強制排除され、拘束を吹き飛ばしたその勢いのまま天へと跳んで。
同時、天空より飛来した戦闘機に飛び乗った。
「な、なんだこりゃっ!?」
状況を理解していない男の叫びが空へと木霊していた。


  ジェネシスが乗っているのは、彼女の最強の剣だ。アムドライバーシリーズの
ネオボードバイザー、通称ソードダンサー。
そいつの推進系とコネクタを改造し、銀に塗ったMMS用随伴戦闘装備。
その名は、ソードダンサー改「リボルケイン」

「モードブリガンディ!」
ジェネシスの咆哮に合わせてリボルケインが変形する。ジェネシスをその身に納め、
巨剣を構えるその姿はまさに剣帝。
「必殺!リボルクラッシュ!」
雄叫びと共に全推進系を使い、超高速で相手を貫くリボルケインの必殺技が巨大神姫の
首とその下を切り離す。
吹き飛ぶ頭を掴み、頭部カバーを弾き飛ばして、ジェネシスを分離。
ここまでを一呼吸で行なう。
リボルケインから分離したジェネシスがその内部に眠るコランを引き剥がし
胸を貫いた時、男はようやく現状を認識した。
「なっ!なぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
訂正、展開に追いついてないわ。このオッサンの頭。
「チェックメイト。とでも言えば通じますか。貴方の負けです、犯罪者さん」
コランを抱くジェネシスが、再度飛行形態へ変形したリボルケインの上で勝利宣言する。
「あ、ありえねぇぇぇぇっ!?」
叫ぶ男。負けた事は認識したらしい。ともあれ。
「ジェネシス、アーマーパージはキャストオフだ。基本だぞ?」
台詞について突っ込むオレ。
「ああ、気付きませんでした。失礼」
和やかに返すジェネシス。
「何の話じゃぁ!おまえらぁぁぁぁっ!?」
興奮状態のオッサン。
「何だ!?何をしやがった!?改造ボディのランカー神姫の反応を超える動きだと!?
  どんだけカスタマイズしてんだ!?」
大声で捲くし立てるオッサン。オレが皮肉の一つも言ってやろうと口を開いた時、
先にジェネシスの声が耳に入った。
「武装神姫は一人で戦っているんじゃない」
「信じ、信じてくれるマスターと共に戦うからこそ、スペックだけでは測れない戦いが
  出来る」
「共に支え、胸を叩き、背中を押す。その声と心が共にあるからこそ、戦える」
「神姫をパーツとしか思わず、その心を、誇りを汚す愚か者になど…
  武装神姫は負けない!恥を知りなさい!」
…言う言う。オレの心もすっとした。流石は俺の相棒様だ。
「くそっ!人形風情が何を人間様に説教たれてんだ、コラッ!
  勘違いしてんじゃねーよ、機械の分際でよぉッ!」
男も負けじと吠える。台詞まで小悪党だ。どこまでも救えねぇ。
「そんなんだから負けんだよ。お前が言う機械にも解る事が解んねぇんだから、
  お里が知れるぜオッサン」
嘲笑を込めて言ってやる。そして止めに一言。
「ま、負け犬の遠吠えってヤツぁいつ聞いても滑稽だな。二度と出てくんなよ三下、
  出てくるたびにこうなるぜ?」
「うがぁああああああっ!!!くそっ!こうなりゃデータなんぞ関係ねぇ!死ね!!」
そこで男の通信が唐突に途切れる。いや…通信だけではない。
世界が、崩壊を始めていた。
遥か彼方から、凄いスピードで世界が崩れ、ただの無機質なデジタルデータの流れが
剥き出しになっていく。




「あのオヤジ、ヤケになってサーバーの電源無理矢理抜きやがったな」
この現象も悲しいかな経験済みだった。ヒステリー後の行動なんてそんなに多彩な
パターンは無いらしい。
「UPSじゃ持って数分か。データリンクしといてよかったぜ。ずらかるぞ」
「マスター、リィリィを回収しないと!」
慌てて言ってくるジェネシスに、ニヤリと笑いながら告げてやる。
「最初にリンク張っといたよ。問題ナシ」
「そうですか、良かった…」
胸を撫で下ろすジェネシス。うん、なんか今オレ出来る男っぽくね?はっはっは。
「マスター…この捕縛プログラムはどうなるんでしょう?」
出口へ向けて神姫達を送り出しながら、ジェネシスが聞いて来る。
「電源抜いたくらいで壊れはせんだろ。UPSも動いてるし、後は警察がやってくれるさ」
「そうですか…」
俯くジェネシスが、パージしたアーマーを身に纏う。はて?何で今更アーマー着ますか。
「マスター確か今の私の攻撃データ、ウイルスが仕込んであるんでしたね?」
「…おう。ええと、ジェネシスさん?」
声音が低い。これはなんか怒ってる時の声だ。
「私が攻撃すれば…壊れますかね、この不愉快なプログラム」
にこやかに笑みつつ、屋敷を指差す。うひぃ。
「いや、時間無いよ?神姫達の転送も終わったしさっさと離脱しないと…」
「マスター…Gという名の由来を聞いた時、機械の英雄達の称号とおっしゃいましたね。
  そして、私の装備にはGの遺伝子が受け継がれていると」
オレの呼び掛けを遮り、ジェネシスが語る。
ああ、確かに。
ガンダムもグレート合体もゴジュラスもギャラコンも、ロボットヒーローにはGの名は
付き物だ。
彼らの正義にあやかる為に、オレはこの稼業を始めた時Gを名乗った。
「この状況を打破出来るGを、私は知っています。そして、その力は私にもある」
再びアーマーが変形を始める。近接戦闘形態へ。そして、さらにウイング内に仕込んだ
そのGのキャノンが、両腕のビームユニットが、腰のヴェスバーが。そして周囲には
ドラグーンが。全砲門がプログラムへ向けてその牙を剥こうとしている。
「そのあまりの力から、やりたい放題…フリーダムの名を冠した伝説のG!
  その力を今こそ!!」
「いや、その説明俺の主観だし!証拠のプログラム壊したらたっちゃんに怒られ──」
慌てて止めようとしたオレの言葉をも吹き飛ばすように、ジェネシスの
ハイマットフルバーストが電脳世界に止めを刺す。
白く染まり崩壊するその世界の輝きは、なんだか色々な物を忘れてしまいたくなった。
意味は無いけど南無。




「畜生、畜生畜生ッ!」
見事にGに出し抜かれた主犯格の男は、怒りをコンピューターにぶつけていた。
「あ、アニキ、落ち着いて!マジでデータが壊れちゃいますよ!」
慌てて取り押さえるその部下達。
「どうせGのヤロウに持っていかれた後に決まってるだろが!畜生、あのオタク野郎、
  覚えてやがれっ!!」
力任せに蹴り飛ばされたテーブル。その上に乗っていた目覚まし時計が壊れ、
時を止めて転がった。
午前1:00時。
同時、インターホンが鳴る。
「誰だ、こんな時間に…?」
部下の一人がドアを開ける。其処に立っていたのは、黒手帳を示した男だった。
「…警視庁公安MMS犯罪担当3課、地走 達人。階級は警部だ。お前たちを
  電子取引法違反、違法賭博、器物強奪etc等の容疑で逮捕する。コイツが令状だ」
あまりといえばあまりの事態に、男達が目を白黒させる。そして数秒。
「テ、テメェーッ!」
何がテメェなのか解らないが、パニック状態の男達が襲い掛かる。
手帳を仕舞う余裕すら見せ、地走警部が後ろに下がり一人目に当て身投げを行なう。
身体を半回転させドアを塞ぐように相手を投げれば、それに二人目三人目が
巻きこまれて倒れ。
「手間を掛けさせるな。公務執行妨害まで付くぞ?」
ドスの効いた声で告げる。警部というよりは殺し屋のようなその声に、主犯格の男が
腰を落とし…逮捕劇はあっけなく幕を閉じた。

「警部、証拠品の搬入先なんですが…」
「ああ、データ解析はKMEEの今米さんに頼んである。そっちに運んでくれ」
「はっ」
敬礼して持ち場に戻る若い警官を見送り、地走警部は携帯端末を操作した。




事件から数週間。結局あの事件は新聞の三面記事にすら載る事無く、静かに終息を迎えた。
それだけ、今の世の中神姫犯罪が多いってコトだろう。ブームの暗黒面だ。
だが、事件の当事者には良くも悪くもその記憶は残り続ける。
例えば、あのストラーフ使いの少年の様に。
 ・
 ・
「本当に、有難う御座いました」
少年が深々と頭を下げる。その腕には意識を取り戻した彼のストラーフ、
コランがしっかりと抱かれていた。
「おう。ホント苦労したぜ。修理代はずんで貰わねぇとな」
カウンターに両腕を預け、軽口を零す。
「はい、貯金、全て下ろして来ました…いくらでもお支払いします」
「ほぉ、そいつはいい心がけだ。そんじゃ、コイツの代金を払って貰おうかい」
神妙な面持ちの少年に請求書と紙袋を手渡す。
請求書を読み上げた少年が不思議そうに顔を上げた。
「えっとこれ保守部品ですよね…?ハードの故障だったんですか?」
「いんや。正真正銘ソフトの問題」
一拍置いて言葉を続ける。
「ホント大変だったんだ。二度とゴメンだ。つーわけで二度目は無いぞ少年。
  今度同じ事が起きても修理はしねぇ」
「だから、そのパーツでしっかり整備して頑張んな。強さってのを見つめなおす為にも」
「店長さん…」
一言そう呟く少年に頷いて見せる。
「裏にゃ裏の意味がある。否定はせんよ?でも、あそこは…なんつーかな、
  普通の武装神姫にゃ似合わない場所さ。解るだろ」
「はい…」
「…だから、お前さんの求める強さはあそこには無ぇ。人に頭を下げるぐらい
  大事な神姫なら、日の当たる場所で一緒に歩いてやんな」
少年が、少し俯いて無言になる…
やがて、顔を上げた少年は「色々、お世話になりました」とだけ言って、会計を済ませた。
「きっと、彼女と胸を張ってまた会いに来ます」
「楽しみにしてるよ。有名になったらウチの宣伝もしてくれ」
手を振り見送る俺に何度も頭を下げながら、少年は帰っていった。
 ・
 ・
 ・
「カッコつけすぎたかなぁー」
思わず思い出して背筋が寒くなる。
クセとはいえ、クサ過ぎるだろうあの台詞は。病気だ。
「でも、カッコよかったですよ」
横から声を掛けるジェニーを見る。教室も終わり定位置…レジ横の特製クレードルに
鎮座する大明神様は、レジ兼用のデスクトップ端末からネット中のご様子だった。
「いや、何も言ってないんすケド」
「どうせ自分の勢い任せにいっちゃった台詞でも思い出してたんでしょう?」
恐る恐る聞けば、実に的確な突っ込みが返って来る。
エスパーか君は。
「長い付き合いですから」
「いや、モノローグを予測して答えるな、マジ怖い」
そんな遣り取りの後、ジェニーが端末のモニタを示して見せた。
「頑張ってるみたいですよ?コランさん」
見れば、強敵相手に善戦し、僅かながらポイントを上げたコランの姿が映し出される。
「ま、元々腕はよかったんだろし。頑張って欲しいねぇ」
ニヤケる顔を見られないようにジェニーとは逆の方を向く俺の耳に、
彼女の僅かな笑い声が聞こえた。くそう。


「で、私のボディは何時買って貰えるんですか?
そろそろ今米さんから報酬が届く頃では?」
「そんな予定はありません」
定例の突っ込みに定例の言葉を返す。
「…電話してたのは聞いてます。報酬、私にも権利はあると思いますけど?」
ジェニーの冷静さを維持しようとする声に、誤魔化すのはムリと判断して真相を告げる。
「あのなぁ、いくらなんでも現金なんて貰えるワケないだろ。企業的に」
「というわけで、12月発売の3機種各6カートン。コレで手を打った」
「な…な…なっ?」
「ウチの店の規模じゃ破格の入荷数だぜ。震えるぜハート、燃え尽きるほどヒート…」
「じ、じゃあそこから一体素体を都合して下さいよ!」
「店の商品に手を出すなんて商売モラルがなってないぜ、ジェニーさん」
チッチ、と指を振る俺をジェニーが睨み付ける。心なしか肩が震えて居るような。
「この、金無し!根性無し!甲斐性無し!うああああん!マスターの馬鹿ーっ!」
走り出したいのかクレードルから分離しようと身を捩るジェニーさん。
首しか動いてないよジェニーさん。
「まぁまぁ…大明神様落ち着いて」
「ああっ!もうっ!解りました、それならこっちにも考えがあります!」
こちらをキッと睨むジェニー。やおら表情を作ってもじもじと呟く。

「もう…夏彦さんの意地悪」
グハァッ…!大ダメージを受けた俺は思わず突っ伏した。
「やめろ…っ!オレは小学校中学年以来、女に名前で呼ばれた事が無いんだ!」
早鐘の様に鳴り響く胸を抑えて何とか立ち上がる。くそう、エグい手使いやがる。
「ふふ…女扱いは悪い気しませんけど、許しませんよー。夏彦さ~ん♪」
「ぐぁぁぁっ!黄色い声を出すなぁっ!?」
「純情ですねー、夏彦さんは」
「謝る、謝るからヤメテーッ!?」
そんなコントを聞いてか聞かずか、自動ドアを開いて入ってきたお客さんが遠慮がちに
声を掛ける。その肩には見覚えのあるマオチャオタイプが手を振っていた。
「あの…ここ…武装神姫のお店、ですよね…?」

オレもジェニーも、すぐに切り替えて営業スマイルを浮かべる。
一瞬だけ視線が合って、それがお客さんの方を向き…
『いらっしゃいませ!』
ホビーショップ エルゴは、今日も明るく営業中である。







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