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クラブハンド・フォートブラッグ
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ハウリングソウル
ウサギのナミダ
アスカ・シンカロン
引きこもりと神姫
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浸食機械
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2014年

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デュアル・マインド
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悪魔に憑かれた微駄男
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えむえむえす ~My marriage story~

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深み填りと這上姫
キズナのキセキ
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浸食機械
引きこもりと神姫
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車輪の姫君
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おまかせ♪ホーリーベル
戦うことを忘れた武装神姫
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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
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神姫☆こみゅにけ~しょん
アルトアイネス奮闘姫
ロンド・ロンド

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双子神姫
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犬子さんの土下座ライフ。
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Memories of Not Forgetting
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武装神姫のリン
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戦う神姫は好きですか
スロウ・ライフ
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妄想神姫
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武装神姫~ストライカーズ・ソウル~
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ホワイトファング・ハウリングソウル
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  武装神姫…今現在爆発的なブームを誇り、その老若男女を問わない人気は旧世紀の
ヒット商品、ポケモンや遊戯王カードもかくや。いや、それ以上であろう。
かく言うオレ──日暮 夏彦も、もはや社会現象とさえ言えるそのヒット商品の恩恵に
与ってる一人だ。

「おし、掃き掃除終了…っとぉ」
ゆっくりと伸びをして、目の前の看板を見上げる。
「ホビーショップ エルゴ」三年前に親父の模型屋を改装して始めたオレの城だ。
玩具オタが高じて工学部に通った身の上としては、そのスキルを存分に活用出来る天職。
特に神姫関係には力を入れてて、販売、登録、修理、カスタマイズやオリジナルパーツ
の製作まで何でも御座れだ。
そんなに大きな設備じゃないがバトルサービス用の筐体も借金して導入済み、
公式ショップにも登録してある。
そんな努力の甲斐もあってか商売としてはそこそこ快調。
近所の神姫ユーザーには結構支持されてるし、健全経営とは言えないが俺一人
生きていくには問題ない収入がある。
それに…ウチには他の店には無いウリがもう一つあるのだ。


「みなさん、家に帰るまでが学校とはよく言った物。無事にお家に帰る事は当たり前に
  見えて大切な事です」
「特に、小さなマスターを持つ神姫はまだまだ充分な注意力を持たないマスターに
  代わり、その安全を守る事も大切なお仕事です」
「ですから、マスターと逸れない様にして、しっかりお家に帰りましょうね」
『はーい!うさ大明神様ー!!』
自動ドアを開けて店内に戻る俺の耳に、凛とした女性の声と大勢の少女の声が響いた。
そして、大小さまざまなご主人様に連れられて神姫達が帰っていく。
「毎度ありがとう御座いましたー!」
愛想よくすれ違いに店外へ出て行く客に声を掛け、店内へ戻る。
「よ、御疲れ。大明神様」
声を掛けるのは店内に設えた1/12の教室、その教壇に設えられたハコ馬にのる胸像へ
向けてだ。
「マスター…貴方までその名で呼ぶのは止めて下さい」
非難がましく返事を返すその胸像こそがオレの神姫ジェニー。
所謂ヴァッフェバニータイプってヤツだ。

元々強化パーツとして販売されたこのタイプには素体が付いていない。
その代わりにディスプレイ目的の胸像パーツが付いてたのだが、
ある理由から素体の都合がつかなかったオレが間に合わせにその胸像パーツを
チョチョイと改造してボディ代わりに使ってるのがコイツってワケだ。

その姿は旧世紀のバラエティで定番だった銅像コントのあのお方の如し。
その威容をして生徒達からは「ウサ大明神様」の名で親しまれている。
いや、子供の発想力ってのは素晴らしい。ソレが人間でも神姫でも。
っと、説明が前後した。ウチの他に無いウリってのはつまり…この神姫の学校だ。


事の起こりはオレがまだ学生の頃、バイトで塾講師をしていた頃に遡る。
当時塾では生徒の神姫持ち込みを禁止してたのだが、子供がそんな事守るワケもなく
それなりに問題になっていた。
で、何をトチ狂ったか塾の方針として勉強中は神姫を預かり、
神姫にも人間社会について勉強を教える。なんて事になってしまったのだ。

そんでもって、白羽の矢が立ったのが既に塾講師内にも玩具オタが知れ渡っていた俺。
…ヨド○シに開店ダッシュは未だに若気の至りだったと思う。
あれさえ目撃されなければ。
とりあえず俺を呼び出した時の塾長の台詞「どうせ持ってるんでしょ?神姫」はかなり
トサカに来た事を覚えている。
しかも確かあの時、あの親父は半笑いだった。畜生。
って、それは置いといて。
結局、俺と俺の神姫…ヴァッフェバニーのジェニーは神姫担当教師としてバイトを
辞めるまでの間、しこたま働かされたワケだ。

店を継いだ頃、まだ客足の少ない店への呼び水としてジェニーがもう一度教室を
やったらどうかと提案して来た時は少し渋ったが、やってみれば事のほか評判も良く、
実際ウチの店を知って貰ういい切っ掛けになった。


多分オレ一人ではこうはいかなかったろう。
いや、実際腕さえ良ければなんとかなると思ってた俺としては、ジェニーへの感謝は
してもしきれない。
「なら、新しい素体買って下さいよ」
「いや、大明神様が居なくなったら純真な子供達の夢が壊れるだろ?」
心を読んだかのようなジェニーの呟きに、即座に返す。なんかブツブツ言ってるけど
メンドいので脳内スルー。
「さ、仕事仕事ー」
今日中にカスタマイズせにゃならん神姫が3体。いつまでも遊んでは居られんワケで。
大人は大変なのよ。




「今日も一日、良く働いたねー」
大きく伸びをして時計を見れば時間は午後8:56分。そろそろ閉店時間だ。
そんな平穏を破り、ドタバタと足音を響かせて客が店に転がり込んで来た。
文字通り、転がるように慌てて。
「すいません、まだやってますかっ!?」
…うん、もうしばらくは閉められそうにねぇや。

  やって来た客は高校生ぐらいか?
話を聞けば彼のストラーフ「コラン」があるバトルを境にまったく動かなく
なったという。
どのショップ、果てはメーカーに問い合わせてもどこにもハードの故障は無く、
プログラムだけがごっそりと無くなっているのだそうだ。
故障として新しいプログラムのインストールを推奨されたが、それはもはや彼の神姫
とは別の物になるという事。
彼はなんとか自分の神姫を救うべく、藁にもすがる思いでウチの評判を頼みに
尋ねて来たのだそうだ。

「少年、キミが最後にやったバトルってのはどんなバトルだったんだ?多分、原因は
  ソレだぜ」
さっきから、何度もした問い掛けを繰り返す。
この話になると歯切れが悪くなるのは…何だかな、察しは着くが。
「別にオレはメーカーの人間でも警察でもない。例えば…キミが非合法のバトルを
やっててもソレで修理を断ったりはしない」
カマを掛けてみる。見る見る青ざめていく少年の顔が、複雑に表情を変えた。
「…ごめんなさいっ!」
開口一番大声で謝り、俯く少年。その肩を叩いて宥める。
ま、バトル派の神姫ユーザーにゃ意外とあるケースだ。

「僕…結構リーグでいいとこまで行ってて…自分の実力を確かめたくて…
アンダーグラウンドのバトルに参加したんです」
「…その、最近パーツとかの遣り繰りに困ってて、賞金が欲しかったていうのは
あるんですけど…」
申し訳無さそうに少しづつ言葉を絞る少年。頷き、黙って話しを聞く。
「…でも、こんな事を望んでたワケじゃない…バトルは勝ちました、賞金も出ました。
  でも、僕のストラーフ…コランが帰って来ない…それじゃ意味が無いんです!
  彼女が居ないと…何で…どうしてこんな事に…」
少年の肩が小刻みに震えている。…経緯はどうあれ、自分の神姫の為に泣ける…か。

「少年、そのバトルの参加方法とか解るか?」
「ネットワークのバーチャルバトルです。不具合を調べる時に、関係有るかと思って
  ログはとってます…」
「でも、そのサイト何時の間にか消えてて…裏バトルだから当たり前なんですけど…」
ログがあるなら話は早い。
「…そのログ貸してくれ。オレが必ず君のストラーフ──コランを直してやるから」
少年が目を見開いてこちらを見る。慌てて鞄からメモリーカードを取り出し。
「このカードに入ってます。あの…お願いしますっ!」
土下座せんばかりの勢いで頭を下げる少年に頷き、もう遅いからという理由で
今日のところは帰した。さて…


  PCのモニター上をとんでもない速さで流れていく文字の羅列を見ながら、嘆息する。
オレもそこそこやれるつもりなんだが…やっぱコンピュータ自身にゃ勝てんな。
…オレはオレの仕事しよう。携帯電話を取り出し、コールする。
「はい。KMEE神姫バトルサービスサポートセンターで御座います」
受付嬢の柔らかくも清潔感溢れる声が電話の向こうから響く。
いや、何を緊張してるのかオレ。
「あ、私日暮と申しますが。今米主幹いらっしゃいますか?」
「今米で御座いますね?少々お待ち下さい」
おお、良かった。不審がられたらどうしようかと思ったよ。
「もしもし?今米だ。お前か日暮?」
受話器から聞こえるゴツくてかつ加齢臭溢れる声に現実の無常さを感じる。
「うす、今米さん。今なんかトラブってる?神姫強奪事件とか」
「神姫狩りの事か?そりゃ困ってるが…今に始まった事じゃないだろ。
こっち側が噛んでるケースもあるしなぁ」
「いやいや、そういう必要悪じゃなくて。もっとどうしようもねーの」
歯切れの悪い答えを返す今米さんにさらに突っ込む。本気だかはぐらかしてんのか
読みにくいんだよなぁ、この人。
「まぁ、神姫絡みの犯罪やトラブルってのは悲しいかな右肩上がりだからな。しぼれんよ」
「ええと、一見故障じゃないんだけどデータだけごっそり無くなるってヤツなんだけど?」

受話器の向こうからキーボードを叩く音がする。
調べ始めて十数秒ほどか、返事が返って来た。
「ちょっと待て…それならカスタマーやウチを含めて18件来てる。何か掴んだのか?」
お、ビンゴ。
「ああ。ウチの客が被害にあった。今夜辺りなんとかするつもり」
「そうかそうか。そりゃいい、宜しく」
「で、いくら出す?」
「おい待て!?どうせウチとは関係なくやるんだろ?何で身銭切らなきゃならんのだ」
ちぃ、やっぱそう来るか。進歩ねぇな、オレも今米さんも。
「データ、そっちでサルベージした事にしたら評判上がるんじゃねーの?
  企業イメージって大事よ、このご時勢」
「む…そりゃそうだが…しかしなぁ」
「どうせこれからたっちゃんに頼むし。嫌なら別にいいけど」
たっちゃんてのは古馴染みの警部さんだ。神姫関連犯罪の担当で色々と世話したり
されたりのまぁ、腐れ縁である。
「あー、わかったわかった!そのかわりデータは大丈夫だろうな?」
「任せとけよ。んじゃ、報酬ヨロ」
電話を切る。おっしゃ。これで年末商戦向けの仕入れ費用は何とかなりそうだ。




「ジェニー、どうだ?」
アクセスログから例の違法バトルのサーバを探しているジェニーに声を掛ける。
「見つけてます。ウラも取れそうですよ」
「さっすが。しかし、人の神姫…しかもパーツじゃなくてデータだけなんてな」
「強力なランカー神姫だけ狙うってんならともかく、ランダムだろ?どうすんだか」
溜息混じりにジェニーが答える。
「他人の持ち物を所有したいなんて有り触れた願望だと思いますよ?
  肥大した支配欲…とでも言えば的確ですかね」
「そういう向きに高額で販売する…愛玩用のボディにでも入れて。そんなトコでしょう」
冷静に説明してみせるその姿は一見クールだが…解る。
怒ってる、怒ってるよジェニーさん。
「ヘドが出るな」
ま…気分悪いのはオレも同じなんだが。
「準備、出来ているならそろそろ行きませんか?」
「まー待て、連中の潜伏先をたっちゃんに流す」
「猶予は…今23時か。2時間でいいな?」
「充分です」
力強く頷くジェニーに頷き返し、準備を始める。さぁ、久しぶりの副業だ。


 >頭部パーツを複合レーダーユニットに換装。マルチバイザー装着。
 >コアユニットパージ。メインボディに接続...
 >ヴァッフェバニーtypeE.S 「Genesis」起動..._

モニターに映し出される文字が彼女の目覚めを告げる。
オレの武装神姫。
Encount Strikerの名を持つカスタムヴァッフェバニー、ジェネシスが。
E.S…遭遇戦域対応を目的とした銀の可変アーマー「シャドウムーン」と背中の複合兵装
「ブラックサン」大型装備は背部ブースターから伸びるフレキシブルアームで全て接続。
移動は全てフライトユニットで行い、状況によって装備位置の変更、可変によりあらゆる
戦況に対応する特別仕様機。
全身フルカスタマイズ、武装も全てオレが玩具コレクションから厳選して改造した
ワンオフ品。
本来のレギュレーションを逸脱したその姿はもはや公式戦に参加する事も適わない、
戦う為の神姫。
だが、俺達には必要な力だ。

そうオレとコイツ…「正義の味方」には。

ジェネシスをPCと接続し、ネットワークにダイブ。彼女の眼を介して広がる電脳世界を
駆け抜けていく。
意識を集中し、一心不乱にキーボードを叩くこと数分。例のサーバーに到着した。
情報を偽装しセキュリティホールを開けて侵入を開始。違法バトルのシステムに侵入。
公開ユーザー名には「G」とだけ入れる。コイツがオレの通り名だ。
「ジェニー…いや、ジェネシス。もうすぐ入り口が開く。今回のミッションはサーバーに
  侵入後、軟禁状態の神姫を解放。オレの開けたセキュリティホールを経由して転送される
  彼女達の護衛だ。行けるな?」
「了解」
「よし。ミッションカウントスタート!状況開始だぜ、相棒」




  電脳世界とはいえ…その住人から見れば、往往にして実体を備える世界を形成して
見える。
サーバー内に広がる風景は鬱蒼と茂る森と光を遮る曇天。そして、その中心に聳える
重苦しい、監獄の様な屋敷のみ。
「雰囲気出してんなぁー…」
感心半分呆れ半分、呟く俺。
「マスター、索敵範囲に神姫一体。斥候でしょうか?」
「ちっ…調べられるか?」
「向こうにも気付かれました。近い…マシーンズ反応有り。波形からマオチャオタイプと
推察します。迎撃許可を」
「許可。マシーンズ撃退後本体は捕縛だ」「了解」
ブラックサンに積んだストフリ流用のドラグーンシステムが分離し、マシーンズを正確に
捉える。
相手の反応はまだ無い。レーダー反応精度はこちらが上か。
一度きりの発射音の後、ばたばたと倒れて目を回す、ぷちマスィーンズ。
「にゃにゃっ!?」
茂みから聞こえるその声に、指示を出すより早くジェネシスが反応した。
「其処ですか!」
腕部に装備したアムドラネオダークさん流用のワイヤークローデバイスがマオチャオを
掴み上げ、天高く引き上げる。
おー…猫の一本釣り。
「ひぃやぁーっ!?た、助けて欲しいのにゃー!リィリィお家に帰りたいのにゃー!」
ん?コイツ攫われた神姫か?
ワイヤーを巻き取ったジェネシスが衝撃で跳ね上がるマオチャオ…リィリィだっけか。
…を抱き止めた。
「大丈夫。恐くないから…良く頑張ったわね?」
一瞬で柔らかい雰囲気を作り、リィリィの頭を撫でて優しく接する。慣れてるな大明神。
「ふえ?おねーさん…ダレにゃ?」
きょとんとした顔のまま尋ねるリィリィに、オレとジェネシスはここぞとばかりに
不敵に答えた。
『正義の味方…って事で』


「では、あの屋敷に皆捕らわれて居るんですね?」
「そうにゃ、バトル終わったのにリィリィ達ばとるふぃーるどから出られないのにゃ。
  そしたらカタクてゴツイのがいっぱい出てきてみんなを捕まえて連れてったにゃ」
リィリィが俺達を案内しながら経緯を説明する。思い出してしまったのか元気がなく、
その声も悲しげだ。
「大丈夫…絶対に助けます」
決意のこもったジェネシスの声。固いヤツだと普段は思うが、こういう実直さは
誇らしくもある。
「はいにゃ…」
嬉しそうに微笑むリィリィの声が、オレの決意も新たにする。
その時だった。前方の地面が唐突に盛り上がる。いや、捕縛者…そいつらが現れたのだ。
「で、出たにゃ!アイツらにゃ!」
慌てふためくリィリィ。とりあえす置いといてそのプログラムを解析する。
神姫と思しき特長は無い。
「捕縛プログラムだな…改造してあるみたいだが、ベースはブロックウェアだ。
  多分、特徴も見た目通り」
「つまり…硬い代わりに動きは遅いと」
ブラックサンを前方に構え、トリガーロックを解放する。
前方が展開しメガキャノンモードへ。
「シュート!」
ジェネシスの掛け声と共に放たれたビームの一撃が、一挙に二体を薙ぎ払う。
しかし、安心した瞬間今度はサイドから捕縛者が現れた。
潜行して距離を詰めたか、近い。
「おねーさん、遠距離攻撃型にゃ!?早く逃げるにゃ!」
リィリィが逃げる隙を作ろうとその爪を構える。
「心配後無用」
手品師の様な口調で呟くと、ジェネシスがモードを切り替える。
ブラックサンのサイドのビーム発振機から伸びるビームが重なり、繋がり…
巨大なビーム刃を形成する。
機構はフルスクラッチだが原理はムラマサブラスターと同じだ。
読んでて良かった、クロボン。
体ごと振り回すその巨大な刃に切り裂かれ、さらに周囲を囲んだ4体が破壊される。
「す…すごいにゃぁ…」
リィリィも呆気に取られるばかりだ。いや、ムリもないけど。厨装備でゴメン。




その後も散発的に敵は現れたが、特に問題になる様な事も無く屋敷まであと一歩と
いうところまで辿り着いた。
ふと、暫く黙り込んでいたリィリィが口を開く。
「おねーさんのその装備は、どこで買ったのにゃ?」
「いえ、これは全てマスターのお手製なんですよ」
一瞬きょとんとした表情を浮かべるも、微笑みながら答える。
「そうなのにゃ…残念にゃ。リィリィも強力な装備さえあれば皆を助けて…
  あんなヤツらに負けないにゃ…」
「あ、そうだ!マスターさん、リィリィにも装備を作って下さいにゃ!
  装備があれば負けないのにゃ!」
一瞬しょんぼりしつつも、すぐに持ち直したリィリィがなんとこちらに話しを
振ってくる。
ううむ…なんと答えたモンか。

「リィリィさん…それは違います」
オレが悩んで居るうちに、ジェネシスが会話に割って入る。
「装備は、神姫を助けてくれます。でも、神姫を強くしてはくれません。決して」
「そんな事ないにゃ!強いパーツを持ってる神姫は強いにゃ!」
「おねーさんは強いパーツを持ってるから解らないんだにゃ!」
「リィリィさん…」
諭すようなジェネシスの言葉に強く反論するリィリィ。
ジェネシスは悲しそうな瞳でリィリィを見詰めるのみ。
…やれやれ。

「リィリィちゃん、例えばマシーンズが今の3倍の数使えるとしたらどうかな?
  それは強い?」
「3倍!?それはきっと強いにゃ!でもひぃ、ふぅ、みぃ、はにゃ…混乱するにゃ~」
マシーンズの様な、遠隔操作を要する自律兵器を統率する事は簡単そうに見えて
実は非常に複雑なのだ。
一説にはその制御にリソースを食われてマオチャオシリーズはAI的に幼いなんて説も…
いや、それは置いといて。
「ジェネシスはドラグーン6基、クローデバイス2基、フレキシブルアームが5本…
  コレらすべてを常時コントロールしなきゃいけない。腕が15本あるようなモンかな」
「じっ…じゅうごほん~…こんがらがるにゃあ~」
目を回すリィリィに多少は場の空気が和んだのを感じ、続ける。
「ジェネシスだって最初からこの装備を扱えたワケじゃない」
「というか、この装備自体が改良に改良を重ねて作り上げていった物だから、その過程
  で身につけていったって所かな」
一拍置いて言葉を続ける。

「いいかい、リィリィちゃん。強力な武器を持つ神姫が強いんじゃない。
  武器を使いこなしその性能を引き出せる神姫が強いんだ」
「今までだって、そんな神姫をリィリィちゃんも見てきた筈だ」
しばらく考えたリィリィが、おずおずと口を開く。
「じゃあ…リィリィも強くなれるかにゃ?おねーさんみたいに…」
「なれるさ。先ずは、一つの武器を極める。誰にも負けないぞってぐらい、その武器の
  使い方を身につけるんだ」
リィリィが頷くのをモニタ越しに確認して、続ける。
「そしたら、次はその武器を生かせるような他の武器を選ぶんだ。組み合わせは
  いっぱいある。そうやって、武器を、戦い方をどんどん身につければ、どんどん
  出来る事が増えていく。昨日は出来なかった事が出来るようになる」
「昨日より今日より明日。装備なんか無くたって、そんなリィリィちゃんはずっと
  強いんじゃないかな?」
「昨日より…強いアタシ…」
ぱぁ、とリィリィに明るい笑顔が広がる。
「頑張るのにゃ!リィリィ頑張るのにゃ!」
「強い武器がなくたってリィリィは強くなれるのにゃ、皆を守れるにゃー!」
元気に飛び跳ねるリィリィ。自分の可能性に気付いたその表情は明るい。やれやれ。
「マスター…良い話しますね、偶に」
黙って聞いていたジェネシスが、誇らしげに微笑んでいる。
うわ。またやっちまった。オレ、凄い恥ずかしい事言ったよな今?
「いや、アレだ!好きなヒーロー物の受け売りだよ!?
  ほらヒーロー物はやっぱ人生のバイブルだろ!?」
やけっぱちで弁解する。あー、すっげぇ恥ずかしくなってきた。
「はいはい…」
ジェネシスのこちらを見て笑うその瞳が優しい。やめろ、オレをそんな暖かい目で見るな。
誰かオレを埋めろ。
「では…明日へ希望を繋ぐ為に、行きましょう!」
ジェネシスの呼びかけに屋敷の方を見る。屋敷は既にその威容を目の前に現していた。




  薄暗い雑居ビルの一室、サーバー一台とPCが三台並ぶだけの殺風景な室内。
PCにはそれぞれ男達が張り付いてなにやら作業を行なっている。
その表情を一言で言えば…焦燥感。
「どうだ、神姫共は全員捕まえたか?」
ドアを開け、やさぐれた風貌の男が入ってくる。作業していた一人が慌てて腰を上げ。
「ア、アニキッ!それどころじゃねぇんですよ。見覚えの無い神姫が何時の間にか居て、
  捕縛プログラムをどんどんブッ壊してるんですよ!」
「ああ?そういうのは登録の時に入れない設定になってるって、ブローカーが言ってた
  だろうが!テメェ、掴まされやがったな!?」
「ひっ!?いや、そんな事ねぇですよ!コイツ、昨日はいませんでしたって!」
「外から入ったってのか!?アレか、ハッカーってヤツか?どんなヤロウだ」

画面内を駆け回るのは銀色の神姫。アニキと呼ばれる男はユーザー情報を閲覧する。
 >Type:WAFFEBUNNY
 >Name:Genesis
 >User:G
「…Gだと!?こいつ…あのGか!?って事はコレがウワサのE.Sか!?畜生!!」
「アニキ、コイツ何なんです?」
モニターとアニキと呼ばれるおそらく主犯の男とを交互に見詰める男。
「神姫犯罪が流行りだした頃、どっからともかく現れた自警団気取りのイカレ野郎だよ。
  ブローカーから聞いた事がある」
唸るように低く呟く男は、続ける。
「コイツに目をつけられたヤツは必ずヒドイ目に合ったそうだ。神姫にしても
  コンピュータにしても、とんでもねぇ腕をしてていくつもの連中が被害にあってるって
  話でな。神姫犯罪を嗅ぎ付けちゃ、幽霊みたいに現れるって話だ」
男達が話している間にも、銀のヴァッフェバニーは次々とプログラムを破壊していく。
「場合によっちゃタイプ名の後にE.Sって名前がついててな。なんちゃらストライクだか
  そんな名前だとよ」
「どういう意味か聞いたらよ、その中国人ブローカー漢字で見敵必殺と書きやがった。
  笑えねぇ」
舌打ちし、憎々しげにモニターを見詰めて叫ぶ。
「おい、サーバー操作してとっととコイツを弾き出せ!」
「それが、さっきからやってんですけどサーバーをコントロール出来ねぇんですよ!」
「ああっ、畜生!」
部下の男の悲鳴に近い報告を聞き、主犯の男は近くの椅子を力任せに蹴り飛ばす。
追い出せないなら…後は潰すしかない。このままじゃ折角の儲け話がパーだ。
「くそ、こうなったらオレがあのGをブッ殺してやらぁ!例の神姫、使えるな!?」
「あ、へい!言われたとおりにやっときました!」
「よっしゃ…裏稼業でも音に聞こえた神姫のデータだ。強い神姫に目が無い金持ち連中に
なら100万…いや、1000万単位でも売れるかもしれねぇ」
男が思考を切り替える。そう、こいつはチャンスだ。こないだも鶴畑とかいう金持ちが
大金積んだとかを自慢してるヤロウを苦々しく見てたが、今度は俺の番ってワケだ。
大金に目を輝かせる男達は、反撃の準備を始める。
「さぁ、儲けさせてくれよ…見敵必殺の武装神姫さんよぉ…」
下卑た男の笑いが、埃っぽいワンルームに低く響いていた。




  屋敷内に無数に仕込まれたファイヤーウォールを破壊しつつ、先を急ぐ。
「皆の気配を感じるにゃ!こっちにゃっ!」
興奮気味にしっぽを揺らしながら走り抜けるリィリィに誘導される形で、
ジェネシスが続く。
「ここにゃ!」
叫ぶリィリィが大きな扉を開け放つ。中には不安そうな顔の武装神姫…
おいおい、30ぐらいいないかコレ。
「皆、助けに来たにゃ!早く逃げるにゃ!」
わっと歓声を上げる神姫達。リィリィに先導される様に駆け出して行くその殿を
ジェネシスが務める。
「マスター…抵抗が少な過ぎませんか?敵方の神姫が一体も出てこないというのは
  このテの犯罪としてはどうも…」
周囲を警戒しつつ、不安を煽らないように小声で問うジェネシス。
確かに、色々嫌な予感はしていた。
予想は色々出来るが…出来れば外れて欲しい。杞憂であって欲しい。
そういうのに限って当たるんだが。
「リィリィの方を警戒だ。門を開けたら、なんて事にならないように」
「了解」
大きな正門はもうそこまでという所まで来ている。ジェネシスがトリガーロックを外し、
そちらを注視した。
こちらの不安を知ってか知らずか、大きな声でリィリィが叫ぶ。
「開けるにゃ!」
ゆっくりと音を立てて開くその扉の向こうには…曇天が広がるばかりだった。
取り越し苦労か?いや…突如始まる地鳴りが不安を肯定する。地を割って現れたのは
今までとは明らかに異質な敵…神姫だった。
ストラーフの腕を無数に繋げていったようなその姿は、龍のようでもあり、
百足の様でもある。尾部には巨大なブレード、頭部は…その巨大さから良く見えないが
大きな目と爬虫類のような顎から覗く牙が伺える。
「私がやります!リィリィさんは皆を守って!」
ジェネシスが前に出る。確かに、とても普通の武装神姫が戦える相手じゃない。
「解ったにゃ!」
ジェネシスと入れ違いに下がるリィリィが、神姫達とジェネシスの間に入り、
神姫達を守るように立つ。


どうにも嫌な予感がして一声掛けようとしたその時。一瞬、ジェネシスの視界から見た
リィリィの背後の神姫達。

─その表情が消えていた。


「リィリィ!危ない!」
反射的に叫ぶ。だが…オレの叫びと、リィリィが背後のハウリンタイプにその身体を
貫かれるのはほぼ同時だった。
「リィリィさん!」
ジェネシスがハウリンにぶちかましをかけ、リィリィを抱いて上昇する。
地上には操られた神姫達、そして空にはこちらを睨みつける巨大な異形の神姫の頭。
それらと距離を取り、リィリィを安全な場所へ降ろすべく飛ぶ。
「にゃ…どうしたにゃ…痛いにゃ…体が、動かない…にゃぁ…」
「喋らないで…!」
苦痛に歪むリィリィの声を、心配そうなジェネシスの声が遮る。
「みんなは…どうしたのにゃ…?」
「操られています…おそらくウイルスによって」
逃走中の様子に不自然な点は無かった…
とすれば、任意で起動する洗脳プログラムだろう。
…その可能性は充分考えられたのだ、罠を感じた時から。
過去にそんな経験が無かったわけでもない。
だが、リィリィにそれを告げる事がどうしても出来ずに、頭のどこかで可能性を
否定していた。
彼女が必死に守る、そんな仲間に気をつけろとは言えなかった。
「すまん、リィリィちゃん…オレが気をつけていれば」
「マスターさんの…せいじゃないにゃ…」
リィリィの微笑みに首を振り、言葉を続ける。
「いや、こんな事もあるかもってさ…心のどこかじゃ考えてたんだ」
「…言えなかったけどな」
不甲斐なさを噛み締め、彼女に謝罪する。
「解ってるにゃ…リィリィが、悲しい思いをしないようにって…言えなかったにゃ…?
  ありがとにゃ。悪くなんて…無いにゃ…」

何もいえない…言葉に詰まるオレを、ジェネシスが叱責する。
「マスター、私達は何ですか?ここで折れてはならない、負けてはならない。
  正義は勝たなければならない」
「勝利する者が正義じゃない。だが、正義を語る者に負けは許されない。
  諦めないから、正義は死なない。でしょう?」
…ジェネシスの言葉が、胸の奥を燃やす。そうだ、オレは…やらなきゃならない。
凹むのは、店長稼業だけで充分だ。
「…助けるぞ、全員だ」
「勿論です」
「にゃ。ファイトにゃ…おねーさんはつっよいにゃ…信じてるのにゃあ…」
力なく微笑むリィリィに頷き返す。
「しばらく眠っていて。目覚めた時には貴女は…貴女のマスターのお家に帰ってる。
  約束します」
「うん、楽しみ…にゃ」
データ破損状態のまま活動するのは危険な事だ。セーフティが働きスリープモードに
移行したリィリィを丘に降ろし、こちらへ迫る神姫達を見る。
「ここが正念場だな」「はい」
気合を入れたジェネシスが、曇天の空へ飛翔した。







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