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 マヤアとデートする事になった。

 ……何故?
 そんなん、僕の方が聞きたいよ。



鋼の心:番外編 ~Eisen Herz~

ネコデート(前編)




「と言う訳で、何故かデートする事になったんだが……」
 そこまで言って、肩の上のマオチャオを横目で見る。
「……嫌だったら別に無理しなくてもいいんだよ? 適当に何処かで時間潰して誤魔化せば良いんだし……」
「んゆ? 嫌じゃねーよ。ネコ、祐一ゃんとの“で~と”めちゃ楽しみ!」
 左肩の上で四つん這いになりながら破顔するネコ。……もとい、マヤア。
「……まぁ、マヤアがいいならいいんだけど……」
 何を考えているのかは定かではないが、少なくとも主以外の人間と二人っきりで居るのは不快ではない様だ。
(アイゼンの場合、凄く嫌がるからなぁ……)
 想像の中で拗ねる自分の神姫を思い出して苦笑い。
「……それじゃあ、マヤア。何かリクエストはある? 折角だから今日は思いっきり楽しもう」
「おう、それじゃあ祐一ゃん。まずは駅前の噴水に行くぞ」
「噴水? アレ?」
 すぐ傍にあるそれを指差す祐一。
 行くも何も既にここは駅前。件の噴水まで距離にして10m程。見慣れている為か、特に見るべき物ではない。
「まずは噴水の淵にネコを置く」
「?」
「そしたら祐一ゃんは駅までダッシュして、すぐ戻ってくるのだ」
「???」
 駅まで―――改札口までだとしても―――凡そ20mといった所か。
 謎な要求だが、逆らう理由も見当たらずその通りに行動する祐一。
(ここで良いのかな?)
 改札口に辿り着き―――。
「…んで、戻る。…と」
 人目を引かぬ程度に小走りで噴水に戻ってきた。
「……何だったんだ?」
「祐一ゃん、5分遅刻だよ」
「……あぁ」
 ようやく意図が理解できた。
「要するに、待ち合わせがやりたかった、と?」
 マヤアの満面の笑みを見ればそれが正解なのだろう。
(なんだ、センセはボロクソに言ってたけど、可愛い所あるじゃないか……)
 本来の主であるが故か?
 斉藤浅葱の評価よりはだいぶ可愛い神姫であると、祐一は確信する。
「……っつー訳で、今日は全部祐一ゃんのオゴリだよ?」
「ははは、仕方ないな……」
 苦笑してマヤアを抱き上げる祐一。
「……んで、今日は如何しようか?」
「ん~。先ずはデートと言ったら喫茶店だ。喫茶店に行こう」
「はい、了解」
 肩の上に飛び乗ってきたマヤアを落さないように気をつけながら、祐一は適当な喫茶店に向けて歩き出した。



「―――いらっしゃいませ。銀嶺にようこそ」
 袴にエプロンと言う給仕姿の女性に出迎えられ、祐一はテーブル席に着く。
「さて、軽くコーヒーでも頼もうか? ココって神姫用のメニューもあるんだよ」
 アイゼンと来た時は不評だったが、その理由が人間サイズのものを分けて、「あ~ん」してもらいたい。と言う理由だったことを考えれば、余り親しくないマヤアにはこちらの方が良いだろう。
「……あのね、祐一ゃん。ネコはコーヒーと、イチゴパフェと、チョコケーキが食べたいです」
「……良いけど……。そのメニューだと、神姫サイズがあるのはコーヒーだけか……」
「大丈夫だよ」
「なら良いけど……」
 あまったら祐一が食べればいいのだ。
 然したる問題でもあるまい。
 そう考えて祐一はオーダーを取った。

「すみません。ホットコーヒーの人間用と神姫用を一つずつに、イチゴパフェと、チョコケーキを下さい」

 かしこまりましたー。と応じる声がして少し時間ができる。
 冷房の効いた店内を見回せば、厨房傍のカウンターにマヤアと同じく猫型マオチャオの姿。
 主である店長―――先ほどの女性だ―――とおそろいの袴姿にエプロンをつけて、何故かくるくる踊ってる。
「……なるほど。ここの店長さんも神姫オーナーなんだ。……だからメニューに神姫サイズがあるんだな……」
 特に何をするでもなく延々踊り続ける神姫を話題にしようとテーブルの上のマヤアに顔を向けて……。
「ぶぼっ」
 一瞬引いた。
「……マヤア。……何してるの?」
「んゆ? 見て分からぬとは、祐一ゃんはお馬鹿だなぁ」
 ケタケタと笑いながら、“それ”を両手で抱え、ラッパ飲みに飲み干すマヤア。
「―――ぷはぁ。砂糖美味めぇ~」
 満面の笑みを浮かべ、マヤアはテーブルに備え付けのスティックシュガーを貪っていた。
「……えっと、良いのか。コレ……」
 困惑する祐一を他所に、マヤアはテーブルの砂糖を全部食べきると、隣のテーブルに……。
「まて!! 流石にダメだろ。それは」
 がしっと尻尾を掴んで引き止めると、テーブルの中央に戻す。
「や~ん。お砂糖が、お砂糖がネコを呼んでるの~」
 ニャーニャー鳴きながら隣のテーブルを目差すマヤア。
 もちろん、祐一は彼女の尻尾を離したりはしなかった。
「ほら、ケーキ来たよ。食べよ」
「おぉう!? ケーキキター!!」
 お待たせしました。と微笑む女性が、ケーキと大小二種類のコーヒーをテーブルに置く。
 その直後にパフェも運ばれてきて、メニューは揃った。
「それじゃあ、頂きます」
「おう」

 と。
 ここで起きた出来事を詳細に語らねばなるまい。

 まず。祐一はコーヒーを飲もうとカップに手を伸ばした。
 ここには何の問題も無い。
 なぜなら、他の3つのメニューである、神姫用コーヒー、イチゴパフェ、チョコケーキは、マヤアの注文だったからだ。
 そう。
 ここに問題は無い。
 残された唯一のメニューである人間サイズのコーヒーに、祐一が手を伸ばすのは至極当然だと言えよう。

 だがしかし。
 先にそのコーヒーカップをマヤアが持ち上げ、グビグビと飲み始めたのは問題だった。

「……ま、マヤアさん?」
 何故か敬語。
「んゆ?」
 コーヒーカップを置いて小首をかしげるマオチャオに祐一はゆっくりと尋ねる。
「なんで人間用のコーヒーを?」
「……ぁ~? コーヒー、ネコ頼んだよ?」
「だから、神姫用のコーヒーが……」
 そう言って、極小サイズのコーヒーカップを指差す祐一。
「ふみゅ~? でも、神姫用のコーヒー頼んだのは祐一ゃんだよ?」
 確かにそうだ。
 マヤアは一言たりとも、『神姫用のコーヒー』とは発言していない。
 最初から人間サイズのコーヒーを飲むつもりだったと言えばそれまでである。
「…………」
 何故か釈然としないものを感じつつも、祐一は追加でもう一つ、今度は自分用のコーヒーを頼む事にした。
「祐一ゃん。祐一ゃん」
「……何?」
「ついでにプリンも頼んで良いですか?」
「……良いよ」
「それとね、祐一ゃん」
「ん?」
「あんな。ベロ火傷した」
 あ~んとお口を広げるマヤア。
「いや、ホットコーヒーを躊躇なく飲み込めばそうなるのも当然だが……」
 ましてやセンサー類が敏感である代わりに繊細なケモテックの神姫だ。
 冷まさずにホットコーヒーを飲めばそうもなる。
「で、如何すればいいのさ? ……多分過剰な温度データに味覚センサーが麻痺しただけだろうから、すぐ治ると思うけど……」
「ん~。怪我はね、舐めると治るんだよ」
 そう言って、ん~。と舌を突き出すマヤア。
「……ど、如何しろと……?」
「舐めて」
 即答。
「……舐める?」
 目を閉じて、顔を上げ、舌を突き出すマヤア。
 どうも舌を舐めて直せと言う事らしい……。
「……って、出来るか!!」
 テーブルに拳。
「むぅ…。仕方ない。それじゃあバンソコ張って」
 応急補修用のパッチスキン。
 要するに神姫用の絆創膏を、マヤアは取り出した。
「はぁ……」
 溜息一つ付きながら、マヤアの小さな舌に絆創膏を張る。

 デート開始後10分で、早くも祐一は疲労を感じ始めた。

「……祐一ゃん。……パフェ食べたらバンソコ剥がれたぁ~」
 当然だった。


「さて、次は如何しよう?」
「映画だ。映画を見よう!!」
 一時はどうなる事かと危惧したが、意見そのものはまともである。
「……それじゃあ、映画館だね」
 その手の施設が駅前に集中しているのが天海市の特徴だ。
 程なく映画館まで辿り着く。
「何観ようか?」
 公開されている作品は5つ。

 ハリウッドSF『臓物を食い破る宇宙人の襲来』
 実録戦争映画『ホロコースト~チョビ髭伍長の愉快な大虐殺~』
 サイコホラー『殺人コックの爽やかな一日』
 特撮ヒーロー『逆転サイバーン ~人間爆弾大作戦~』
 アダルト映画『スナッフムービー特選集(21禁)』

「…………」
「……ん~」
「何でこんなに血生臭そうなのばかり……」
「祐一ゃん。……スナッフムービー観たい」
「アダルト云々以前に、知性体として観てはいけない世界だと思う」
「そうか、なら『サイバーン』」
「サイバーン……」
 ポスターに記された文字は『幼児が、園児が、小学生が、体内に仕掛けられた核爆弾で大爆発。未曾有のテロにサイバーンが挑む。止める為には殺すしかない。……怪しきは抹殺せよ!!』。そのポスターは小学生の頭部を蹴り砕くサイバーンの勇姿が堂々と……。
「いや、ダメだろ。コレも……」
「そうか、それじゃあ『チョビ髭伍長』」
「なんでヤバイ順にリストアップするんだ?」
「ダメ?」
 結局、サイコホラーよりはマシだろうと、ハリウッドSF『臓物を食い破る宇宙人の襲来』を見ることにした。

「祐一ゃん。ポップコーンとソフトクリーム買って~」
「いいよ」
 ついでにコーラを二つ買って二人は席に。
「……ガラ空きなのがすげぇ不安なんだけど……」
「静かでいいよ~」
 いや、お前が居る時点でそれは無い。
 そう言いかけて流石に自重する祐一。
「……さ、もうすぐ始まるよ」
「うん」
 座席に並んで腰掛ける祐一とマヤア。
 早速ポリポリポップコーンを食べ出すマアヤに触発され、祐一も手を伸ばすが、しかし。

 ―――パンッ!!

「痛てっ!?」
 マヤアに手を叩かれた。
「何する祐一ゃん!!」
「いや、ポップコーン食べようかと……」
「ダメだ!! コレはネコのだ!! 全部ネコが食べる!!」
 言い切った。
「……マヤア、凄いな……」
「だろ~」
 貶した筈なのに、何故か胸を張るマオチャオ。
「仕方ねぇ……。愛する祐一ゃんの為だ。一つやろう」
 ポトリ、と申し訳程度に置かれる小粒のポップコーン一粒。
「……………………………………………………ありがとう」
 祐一は大人だった。
「所で祐一ゃん」
「………………何かな?」
「今気付いたんだが、席の上からじゃネコにはスクリーンが見えん。頭の上に載せてくれ」
「………………ホント、凄いよね。マヤア……」
「だろ~」
 だから褒めてないって。

 そして、映画が始まる。
 出だしから、宇宙戦士数人がエイリアンに貪り喰われる衝撃のシーン。
 やたらリアルに飛び散る血飛沫と内蔵がグロかった。

「………ポップコーン、ウマウマ」
「……マヤア。髪に食べカス落さないで……」

 何の説明もなされぬまま、次々と宇宙戦士団のメンバーを喰い散らかすエイリアン。

「さて、次はソフトクリームを……」
「……いや、流石に溶けてるでしょ……」
「あ、祐一ゃんの頭に落ちた」
「うわぁ~!?」

 髪洗って戻ってきたら、子供を解体しながら貪り喰らうエイリアンの衝撃シーンだった。

「祐一ゃん。ポップコーンの御代わり」
「……」

 買って帰ったら、多分ヒロインだと思われる、某有名女優を食い散らかすエイリアンのシーン。

「……祐一ゃん。ついでにコーラも御代わり」
「…………………………………」

 戻ってみれば、恐らく主人公だと思われる、某有名俳優を食い散らかすエイリアンのシーン。
 そして映画はそのまま唐突に終わる。
 120分中110分はエイリアンのお食事シーンだった。


「……観なきゃ良かったな……」
「そう? 美味しかったよ、ポップコーン」
「………………」
 とりあえず、祐一は色々我慢した。
 そっちじゃねぇ、とか。
 結局食ってただけかよ、とか。
 会話になってねぇ、とか。
 口に出さずに我慢した。
「…………さて、これから如何しようか? まだ時間あるけど……」
「お昼にしよう。レストランでハンバーグ食べたい!!」
「アレを見た後で挽肉? ……って言うか、まだ喰うんかい?」
「あ~、誰かがご飯食べているのを見ると、お腹空かない?」
「少なくとも僕は、エイリアンの食事(人肉)を見ても食欲は刺激されないな……」
 それでも一応ファミレスに連れて行く。
 彼の人格の出来は、横暴な姉により鍛えられている。
 姉と比すればマヤアの暴挙はまだ耐えられるレベルだった。

 ドアベルの涼やかな音と、流れ出る温調の冷気。
 全国チェーン店であるファミレスを、今日の昼食の場に選んだのは祐一だった。
 親しくない相手の接待に際し、自らが最高を自負する店を選ぶのは避けた方が良い。
 人には必ずや好みと言うものが存在するからであり。
 そして、好みとは必ずしも他人と同一であるとは限らないからだ。
 好みの合わない美味い店よりどんな味か想像のつくチェーン店の方が、時と場合によっては効果的な事もある、という事だ。
 もちろん、TPOに応じて店のランクは選定するべきだろう。
 最上級の接待を行う為なら、前もって相手の好みを把握しておくのは常識とも言える。
 だがしかし。
 今日、この場合においてはファミレスで充分だった。

「マヤアは何食べる?」
「ハンバーグとミートソースのスパゲッティ」
「……二つも?」
「おうよ」
 と、斯様に遠慮と言う単語を理解していない神姫とのデートにおいて、高級店などに連れてゆけば『死あるのみ』!!
 戦況分析と戦術構築は島田祐一の18番だ。
 ……こんな状況で使うための技能じゃないような気もするが……。
「……それじゃあ、僕は季節の海鮮丼で」
「あ、ネコの分もそれ一つ追加」
「……」
「ご、ご注文は以上で宜しいでしょうか?」
「いや待て姉ぇちゃん。デザートにジャンボ杏仁豆腐とイチゴのババロア、コーヒーゼリーも持って来るのだ」
「……他にご注文は御座いませんか?」
 流石にウエイトレスの少女も笑顔が引きつり始めている。
「んじゃ―――」
「―――ありません」
「およ?」
「あ り ま せ ん」
 首をかしげるマオチャオにキッパリと追加注文の拒否を宣言する。
 流石にそろそろ引けない一線が近付きつつある。
 具体的には、今の注文で諭吉さんが尽きた。
「そうか、仕方ねぇ。祐一ゃんは甲斐性無しだからな」
「甲斐性って何か分かってて言ってる?」
「あ~、知ってるよ……」
「なにさ」
「……それはだな」
「うん」
「…………」
「…………」
 チクタクと、時計の秒針が一周するほどの時間が過ぎる。
 そして。
「ゴメン、ネコ嘘ついた。甲斐性なんて言葉の意味など知らん」
「うん、知ってた」
「そうか、知られていたか……」
「まあ、予想通りと言うか、知らなくて当然と言うか……」
「ならば仕方ない。祐一ゃん」
「うん?」
今日から祐一ゃんがネコのマスターだ
「―――ぶぼっ!?」

 凄い宣言キター!!

「……な、……何言ってるか分かってる?」
「おうよ、実はコレでもネコは色々と考えている。そして、ある種の境地に到ったのがつい昨日のことだ」
「そりゃまた随分近しい過去で……」
「愛する祐一ゃんだからこそ、ネコが極めた極意を教えてやろう」
「……まぁ、聞くけどさ……」
「では聞け!! ネコの到った境地、それは『 ご飯をくれる人は、皆ネコのご主人様です 』だ!!」
 ……。
「……」
「お待たせいたしました~。ハンバーグ定食にスパゲッティミートソースで御座いま~す」
おお、ご主人様?
「待てコラ馬鹿ネコ」
「あ~ん、心配すんなや祐一ゃん。ネコの心のファーストクラスは何時でも祐一ゃんに貸切さ♪」
「さ♪ じゃ無くて……」
 文句を言おうとした祐一は、そこまで言って黙る。
「はむはむもぐもぐ……」
 食べるのに夢中なマヤアは、もう聞いちゃいねぇ。
「はぁ……」
 溜息を一つこぼしながら、美味そうにパスタをすするマオチャオを観察してみる。
 人間サイズの大きなフォークを片手で器用に操り、途切れる事無く皿の上を開けてゆく姿は、動くものに反射的にじゃれ付く仔猫をすら思わせる。
 よほど嬉しいのか尻尾はハートマークを描き、咀嚼にあわせてふりふり揺れる。
 口の周りにミートソースをつけながらも、その表情は満面の笑顔。
 そして、数分で一皿征服し終えてしまった。
「……美味しそうに食べるんだなぁ……」
「んゆ? ホントに美味し~よ?」
 言いつつも続くハンバーグの皿に移動。
 今度はナイフとフォークの二刀流で、巨大な肉塊を解体し始めた。
「……海鮮丼遅いな」
「もぐもぐ」
「……ご飯の上に刺身乗せるだけだよね?」
「むぐむぐ」
「……ハンバーグ美味しそうだよね?」
「むしゃむしゃ」
「……一切れ頂戴―――」
「ダメ!!」
 即答一喝。
 同時に閃いたナイフが、祐一の出した割り箸を両断してのける。
「……」
「コレはネコのだ!! 全部ネコのだ!! 全部ネコが食べるッ!! 全部ネコが食べるんだからぁ!!」
「……何故半泣き?」
「フゥ~ッ!!」
 威嚇してる。……物凄く威嚇してる。
 泣きべそかきながらナイフを構えて臨戦態勢。
 ナイフやフォークも神姫の手に掛かれば立派な武器だと言われているが、マヤアが使うに措いてそれは例え話や冗談の類ではすまない。
 事と次第では素手でフル装備のアイゼンをも圧倒する神姫である。
 その戦闘力の凄まじさ、推して知るべし。
「……一切れもダメか?」
「……むぅ」
 問いかける祐一に表情を崩すマヤア。
「……う~む」
 考え込むこと暫し。
「……仕方ねぇ。愛する祐一ゃんの為だ……。一切れと言わず全部やろう」
「え、いや。一切れで充分なんだが……」
 一転して気前の良くなったマヤアに、祐一の方が戸惑いを隠せない。
「……受け取るが良い」
 マヤアは、食べ終えたスパゲッティの皿を祐一の前に置くと、そこにひょいひょいと皿の中身を移してゆく。
「……えっと、マヤアさん?」
「仕方ねぇのだぞ。祐一ゃんへの愛には代えられんから、仕方なくだ。許せネコの食料たち」
 悲痛な表情に涙さえ滲ませながら、マヤアは全てを皿に移し終えた。

  ニンジンだけ、全部。

「……ニンジンだけかよ」
「うむ、ネコは実はニンジン好かん」
「本気で嫌いなものだけ押し付けたんだな……」
「……うむ。そんな感じだ」 
 何故か胸を張るマヤア。
「……まぁ、祐一ゃんがどうしてもと言うのなら、ほんの少し肉を分けてやらん事も無い」
 そう言って、申し訳程度に小さく切られたハンバーグ片が皿の上に追加された。
「……………………ありがとう」
「うむ、お礼はオヤツで受け取ろう」
「お前の食欲は底なしか?」

 とりあえず。
 頼んだメニューは全部食べ切ったのは事実であった。







 唐突ですが番外編。
 後半に続きます。

 サマーフェスタはしょんぼりな結果だったALCでした。










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