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鋼の心 ~Eisen Herz~


第21話:夜明けの翼




「ほほぅ、VR(バーチャル)は初めてなのだが表とあんまし変わんないのな~」
「僕は起動してからの一週間で、50時間は篭ってました」
 はしゃぐマヤアのすぐ隣、感情の無い声で呟くセタ坊。
 少し目がウツロで、虚空を見詰めている。
「……ますたー、止めて下さい、止めて下さい。……3時間以内に命中率100%にしないと尻尾引っこ抜くとか、マジ外道です」
「んゆ、セタ坊?」
「ぷち達も恐がってます、もう出来ません分りませんゴメンなさい許してください、わふぅ~っ!?」
「……むにに、セタ坊が壊けた」
『ふふ…。懐かしい思い出ね、もうあれから3ヶ月も経ったなんて……』
『いや。普通に神姫虐待でしょ、こういうの』
『雅さんの愛情は祐一君以外にはネジくれてますからねぇ、ははは』
『……ははは。じゃねぇよ』
「ダメです、この的動いてます、なのに外しちゃダメとか無理です、出来ません、嗚呼止めて、一発外すごとに尻尾1ミリ切るとか酷すぎです、そんな、三つ編みとか信じられません、尻尾三つ編みにされたらボクの人生お終いです、一生三つ編みされたミットモナイ尻尾でわふわふ逝ってるだけの駄犬ですか、ゴメンなさい、ヘタレでゴメンなさい、息しててゴメンなさい、存在しててゴメンなさい、ウマレテキテゴメンなさい……」
 しゃがみ込んでぶつぶつ呟くセタに、さすがに浅葱も顔を顰める。
『……雅、アンタ本気で犯罪よ、こういうの……』
『愛の鞭よ』
『死をも厭わない鞭に、愛の名を関するのは如何なものかと……』
『ほ、ほら。獅子は我が子を千尋の谷に叩き落すって言うじゃない、そういうものよ。……多分』
『……多分、ってあんたね……』
『千尋の谷に突き落とした挙句に、上から煮えたぎった油を注ぎこむような厳しさですねぇ……』
「あー、よく分からんが―――」
 人間同士の会話に加わるマヤア。
「―――要するに、セタ坊は雅んにメチャクチャ愛されてると?」
『よし、バカネコ良いこと言った!!』
「何処をどう聞けばそういう結論になるんですか~!?」
 自閉症モードに移行しつつあったセタ坊は、マヤアの一言を機に図らずも復活を遂げた。
「え~っと、皆さんそろそろ宜しいですかぁ~?」
 マヤアとセタの間に、デフォルメされたフォートブラッグが出現する。
「おおー、デルタちん。何時もよりも少しちっこくなったか?」
「……この端末CGは極小サイズだと思うのですが……」
「まぁ、そんな小さな事はどうでも良い―――」
『誰が上手い事言えと……』
「―――そんな事より敵は何処だ?」
「もうじき出現します」
『今、そちらに転送しました。すぐに現れますよ、戦闘準備を!!』
 村上の声と共に、VRフィールドに歪みが生じてゆく。
「……所で。今更なんですが、『敵』って何なんですか? コンピュータウイルスとか?」
『いえ、このパターンは恐らく……』
「多分、武装神姫じゃん? データだけ転送してきたんじゃねーの?」
 マヤアの予測が正解であることは、その次の瞬間に証明された。
『やはり、神姫……。それに、この形状は……』
 VR空間をモニターする画面に映る姿はまぎれも無く武装神姫のそれ。
 そして、機種不明でありながらも、ある意味雅たちにとっては馴染みの深い黒衣。
『……天海の幽霊……。土方真紀の武装神姫ですか……』
 双刀と翼。仮面と黒衣を身に纏い、漆黒の神姫が降り立った。


「……とりあえず、分った事が三つある」
「聞きましょう」
 トドメは何時でも刺せる。
 それ故に焔星はアイゼンの舌戦に付き合うことにした。
「……まずはお前の弱点……」
「……」
 アイゼンが指差すのは、焔星に撫でられている二機のぷち。
「……そのぷち達は、性能の代償に稼働時間が弱点。……どちらも数分程度で活動限界になるでしょう?」
「そうでしょうか。……既にこの子達が参戦して10分は経っていると思いますが?」
 焔星の指摘にアイゼンは頷く。
「……そう、だから補給が必要」
「そんな暇が、何時あったと?」
「……今」
 言い切ったアイゼンの指先に、ぷちを撫でる焔星の手。
「……そうやって触る事で、お前はぷちに補給をしている……」
『どんな神姫だって、クレイドルとの接触で給電を受けるんだ。……その逆に、接触で電力を送るのは造作も無い事』
「なぜ、……そう思ったのですか?」
「……時々戦闘を中断してぷちを撫でてたし、さっきは後ろの砲撃型をわざわざ前線に出してまでボードアタックをしてきた。……そんなに効果的でも無い攻撃だったのに……」
『……つまり、あのボードアタックには攻撃以外の何か別の目的があったと言う事になる。……例えば、補給とか……』
「……ふむ」
『……そう考えればそのぷちの性能にも納得がいく。それだけの装備を運用するのにも拘らず、ジェネレーターを搭載せずにバッテリー駆動だけで稼動させていた。……だから、それだけの性能を詰め込めるわけだ』
「……なるほど、お見事です。……では、二つ目をお聞きしましょう」
「……お前の奥の手。……出し惜しみなんかしないで、さっさと“真鬼王”を出せば良い」
「……………………」
 流石に絶句する焔星。
 装備構成だけで奥の手まで暴かれるとは予測していなかった。
「見抜いたのは流石ですが……、今の貴女を倒すのに、わざわざ切り札を切る必要があると思いますか?」
「……それじゃあ、三つ目。……“真鬼王”を使っても、使わなくても、この勝負は私の勝ち、だ!!」
 言って横跳びに距離を離すアイゼン。
 同時にハンドガンの連射が焔星を襲うが、彼女はそれを難なくシールドで弾く。
「それが最後の武器ですか。……それこそ豆鉄砲と言うもの、私には通用しない!!」
 反撃のプロトン砲は、アイゼンのハンドガンとは比べ物にもならない威力を持つ。
 しかし、アイゼンもそれは承知。打ち合いを早々に切り上げ、回避に徹して距離を取る。
「逃す訳無いでしょう!?」
「……もちろん」
 アイゼンは逃げ込むようにビル街へと移動する。
 目的は焔星のセンサーに死角を作ること。
 追われているアイゼン自身がそこに逃げ込むのは不可能かもしれないが、ノーマークのサポートメカがそこを通って接近する事ならば容易い。
「ちょこまかと逃げるなど、らしくない戦法ですね。……チーグルを失った時に貴女の敗北は決まったのです。大人しく負けを認めなさい!!」
「……そうでもない。……間に合った」
「?」
 訝しむ焔星には、ビルの影から低空飛行でアイゼンに近付くそれが見えていない。
「……フランカー!!」
「ちっ!!」
 猶予がないと気付いた焔星がアイゼンに向けプロトン砲を叩き込む。

 閃光と轟音。
 そして衝撃波。

 この距離ならば、外した所で至近着弾は免れない。
 今のアイゼンの機動性では、爆発範囲からは逃げ切れまい。
(……これで終わりですか。少々呆気無いような気もしますが……)
 そして、吹き込む疾風が爆風吹き散らす。
「―――!? 何!?」
 爆煙が晴れ、プロトン砲の着弾痕が露になるが、その周囲の何処にも倒れたアイゼンの姿は無い。
「撃墜カウントも入っていない!?」
 それはつまり、未だアイゼンが健在である証左。
「しかし、何処へ消えた!? 一番近いビルでも走って逃げ込むには時間が足りない筈なのに!?」
「……上」
「―――!?」
 真上からした声に顔を向ける焔星。
 そこに、吹き込んできた疾風の源。鳥に乗って空を舞うアイゼンが居た。


「……」
 声も無くたたずむセタ。
 マヤアと組んでの2対1の戦闘ではあるが、セタに出来るのはただ見守る事だけだった。
 セタには手が出せぬほどに、マヤアも黒衣の幽霊も速い。
 打ち込んだ吠莱を魔弾で操り、必中を狙った直後。砲弾そのものを両断し、幽霊はマヤアとの高速打撃戦に突入した。
 双方両手に刃を持ち、間断の間も無く打ち付け合う。
 隙を狙って蹴りの応酬が行われ、突きと払いは一動作になって相手を追い詰める。
 しかし、両者の力はほぼ互角。
 目まぐるしく位置を変え、左右と上下を入れ替えながら剣戟の音を響かせた。
「ネコネコネコネコネコッ!!」
 マヤアの振るったブレードを幽霊が刃で受け流し、その動作がそのままマヤアの首を狙う一撃に切り替わる。
 マヤアが蹴りで肘を狙い、その一撃の阻止を試みれば、幽霊はもう一方の刃でマヤアの脚そのものを狙う。
 レールガンがその刃と交錯する軌道に打ち出され、幽霊はマヤアを蹴って距離を僅かに離して仕切りなおし。
 このような刹那の攻防が数秒程度の間に10度以上繰り返され、その位置は数十メートルの単位で瞬時に移動する。
 飛び交う銃弾すらももどかしい高速戦闘において、最早セタの出る幕は何処にも無い。
「……こ、これ程とは……」
「うん、すごいよね幽霊……」
「……むしろ、マヤアさんに驚きなのですよ。……強いとは思っていましたが、これ程までとは……」
 デルタのセリフ、5秒強の間に響いた剣戟は22回。
 これ程の反応速度と、それを実行に移せるスピード。
 手の届く範囲に入ってしまえばセタ如きでは話にもなるまい。
 かと言って、精密砲撃だろうが誘導砲撃だろうが、まともに当たるとも思えない。
 神姫としての実力が、ケタどころか次元単位で違っている。
 そして、そんなマヤアと互角に渡り合う以上、幽霊の実力もそういうレベル、と言う事になる。
「……なるほど、誰も勝てない訳ですよ……」
 デルタの声を、剣戟が上塗りしてゆく。
 もはや、する事も見出せず、セタとデルタはただその戦いを見守るだけだった。


「プレステイル!? ……そういう事か」
 武装を失った筈のアイゼンの自信。
 それが、もう一つ装備を持ち込んでいた事に由来するものだと、ようやく焔星も気付く。
「しかし、大勢は既に決しています!! ここで追加戦力など無意味にも程がある!!」
「……そうでもない。……プロトン砲の特性は、対空射撃に不向き」
「……っ」
 確かに、着弾して爆発するエネルギー弾を撃ち出す以上、敵以外に接触物の無い対空射撃において、プロトン砲は直撃以外完全に無駄弾になる。
(光阴の速度では追いつけないし、闇阳の対空射撃だけでは捉えきれない……。)
 先ほどまでのパワー重視の戦闘スタイルとは一転し、高い回避力での撹乱に入ったアイゼンは、ぷちの性能だけでは追い詰められない。
 元よりぷちとの連携は重量級神姫との戦いに特化した戦法で、このような高機動型の神姫には対応していなかった。
(……その為の“真鬼王”ですが……、さて、それまで読んで居るのかどうか……)
 祐一の読みどおり、焔星は確かに真鬼王モードを温存している。
 だがしかし、それはアイゼンに対して使う必要が無いのではなく、用途の問題として不適切と判断したからに他ならない。
 通常の真鬼王のイメージとは真逆に、焔星の真鬼王モードは高速戦闘に対応する為の形態だったからだ。
(……つまり、今が使い時ですが……)
 何となく、祐一の掌で踊っているような錯覚に捕らわれ、焔星は苦笑する。
(……普通ならまず無い、一人の相手との戦いで全ての要素を使用する状況……。……私は彼にハメられて居るのかもしれませんね……)
 だがそれもよし。
 元より主の望んだ戦いだ。
 焔星は己が元にぷち達を呼び寄せる。
「……お望みどおり、見せてあげましょう。……真鬼王を!!」

 焔星の宣言と共にぷち達がフォーメーションに付く。
 分離、変形を経て焔星に組み付き、巨躯を構成するまで僅かに数瞬。
「三体合并……!! 真鬼王・零(ツェンカイワン・レン)!!」
 二体のぷちとの合体により、焔星は真鬼王をその身に纏った。
 特筆すべきはやや小柄である事のみで、その概要は通常の真鬼王と変わることは無い。
 プロトン砲とデスサイズがシェルエットを崩してはいるが、むしろ違いはその内面にこそある。
「―――加速!!」
 光阴を浮遊させるための揚力場と、闇阳を飛行させるための推進力。
 その双方が焔星の背負ったジェネレーターと直結され、制限を解き放たれる。
 焔星の真鬼王=零は、その名の通り一秒にも満たない時間で彼我の距離を“0”にした。
「斩(ツァン)!!」
「…ん」
 アイゼンがハンドガンのトリガーを引いたのは、その一瞬だけ前の事である。
 結果として焔星は、自ら虚空に放たれた銃弾に当たりに行く形になるが、アイゼンの行動は、焔星の零の性能を正確に予測したからこそ。
 逆に言えば、零が動き出してからではアイゼンに反応する術は無い。
『行くぞ、アイゼン。アサルトフォームだ』
「……ん」
 短く頷き、改造型のプレステイル=フランカー/フライトフォームを上昇させる。
 限界高度に達しこちらも分離、変形を経てアイゼン本体に合体。
 零と比しても小柄な人型を形成する。
 ベースとなったエウクランテに酷似したシェルエットだが、翼は細く長く、腰の後ろには双発式の斥力場エンジンが唸りを上げ、その身体を宙に留めていた。
「……全システム高速戦闘モードに移行」
≪Assault form wake up≫
 フランカーに組み込まれたサポートAIのインフォメーションが響き、戦闘形態であるアサルトフォームへの移行完了を告げた。
 変形に伴い、フライトフォームで中枢を成していたエンジンユニットは背部に回され、アイゼンはそこから小さな基部を一つ分離させ右手に収めると、主である祐一へと問う。
「……マスター、指示を」
『不慣れな高速戦だがやれるね?』
「……ん」
『それじゃあ全力で行くぞ。……斬り捨てろ、アイゼン!!』
「……んっ!! ……アクセラレータ、起動!!」
≪system“Accelerator”starting up≫
 祐一の指示を受けて、弾かれるように突進するアイゼン。
 その速さは、疾風のそれ。
 もはや、ストラーフとは思えない速度を以って焔星に迫る。
「……ッ!?」
 瞬時に眼前まで近付かれ、勢いに任せた蹴りを浴びる焔星。
 間髪居れずに回し蹴りから後ろ回し蹴りへと繋ぎ、零の体躯が大きく吹き飛ぶ。
「速い!?」
 驚愕する間もあればこそ、その一瞬で離れた間合いはアイゼンの突進で即座に詰められる。
「―――なッ!!?」
 そして青い光の奔流が閃き、手にした大鎌が寸断された。
「ば、……馬鹿な……!?」
≪“RayBlade”Disposition≫
 アイゼンが手にしたモノは光の剣。
 他ならぬ、カトレアと同じ超高出力型のレイブレードであった。


「……なんと、愚策」
 彼女は、それを見て詰まらなそうに呟いた。


 投刃と衝撃波、狙撃銃とリニアガンの中距離応酬から一転して、両者肉薄しての高速打撃戦。
 目まぐるしく位置を変えながらの高速戦闘も終わりが近付いてきたようだ。
 マヤアはとっくにライフルを捨ててしまっているし、黒衣の幽霊も新たに投刃を繰り出す気配は無い。
 時折、開いた間合いを惜しむように翼からの衝撃波や背部ユニットのリニアガンを打ち合うが、即座に距離は詰まり打撃の応酬に戻る。
 互いに消耗が進み、飛び道具が心許なくなってきたのだろう。
「……だからと言って、何が出来る訳でもないのですよ……」
「わふわふ」
 戦場の端っこでお茶を啜るデルタと、尻尾のブラッシング(VR空間なので実は無意味)にいそしむセタ坊。
 一応今でもマヤアをシステム的にバックアップしているデルタはともかく、セタに到っては本気で何しに来たのやらと言う有様だが、相手がアレでは仕方もあるまい。
「にゃーーーっ!!」
 マヤア渾身の一撃が、幽霊の刀一つを途中からへし折った。
「……無為」
 折れた刃を投げ捨て、幽霊は残る一刀でマヤアのフォビドゥンブレードを叩き落す。
「ニャ!?」
 武装の喪失に伴う戦術パターン切り替えにより生じた微かな隙。
 本来であればどんな神姫やオーナーでも無視する程極微の間断ではあるが、事ここに到ってマヤアと幽霊にとっては隙と呼ぶべく数少ない瞬間であった。
「……絶!!」
 真横に振るわれた刀。
 それが狙いを違わずマヤアの胴を薙ぎ……。

 すり抜けた。

「―――!?」
 バラバラになって落ちてゆくツガルタイプのアーマー。
 と、それらが弾かれたように集結し、ひとつの形状をなしてゆく。
「……レインディア、バスター……」
 幽霊の呟きも終わらぬうちに、自由落下から明確に意図された加速で機首を起こして上昇を始める。
「……」
 そして、あの一瞬の攻防で上空に逃れていたマヤアを乗せ、突撃を開始した……。


 近接用のメインウェポンであるデスサイズを失い、焔星は大きく後退して距離を取る。
「……っ、これほどまでに高出力のレーザーブレードだとは……」
 恐らくはプレステイルの中枢を成すボレアスユニットから射撃機能をオミットし、ジェネレーターとしての機能に特化させて得た高出力を流用しているのだろうが、分かった所で防ぎ様など無い。
「―――ならば、寄せねば良いだけです!!」
 脚部に固定されたハンドガンと肩部のキャノン砲が展開し、アイゼンとの空間に濃密な弾幕を形成する。
「装甲を捨て機動力を取ったのでしょうが、それならば逆に小口径弾一つが致命傷になります!!」
 先ほど使用したときにはチーグルの装甲に阻まれ、碌なダメージにはならなかったが、この飛行可能なユニットに同様の防御力があるとは考えられない。
 故に、この弾幕を回避してから、レーザーブレードの一撃を狙う為に突進をしてくる筈。
(そこをプロトン砲で打ち落とす)
 そう考える焔星の元へ、アイゼンはしかし、一直線に突っ込んできた。
「……まさか、この弾幕に耐えられるつもりですか!?」
『元々アイゼンに回避主体の戦法が不向きなのは重々承知』
 今までは基本的に、重装甲による防御主体のディフェンスを重視してきたのだ。
 それを今更回避力ですべて置き換えられるとは、祐一もアイゼンも思っていない。
 故に。
「……バリアの一つ位は用意してある!!」
≪Hadronic field≫
 アイゼンの周囲を覆う、薄い光の球体。
 微かに青く発光するそれに阻まれ、弾幕が弾かれてゆく。
「―――ならば、プロトン砲でっ!!」
『怯むな、アイゼン!! シールド集中!!』
「…んっ!!」

 砲口から溢れ出した白い光の奔流は、しかし、アイゼンの掌の先に広がるディスク状のバリアに阻まれ四方八方へと逸れてゆく。

「貫けぇーーーっ!!」
「……負けないっ!!」

 プロトン砲と斥力場シールドの均衡は数秒続き、途絶えた。

「そんな……。チャージ容量の限界? プロトン砲の全力照射に耐え切るなんて……」
「……言った筈。私はカトレアを倒しに来た。……お前如きに負けてなど居られない」
 プロトン砲の閃光が途絶え、幾分濃さを増したシールド越しにアイゼンの姿が見える。
「……これで、終わりだ」
「―――!?」
 背部から切り離したエンジンユニットに追加砲身を直結させた『砲撃モード』。
「―――消し飛べ……。『フェルミオン・ブレイカー』!!」
≪Fermion Breaker≫
 砲口からプロトン砲以上の白光があふれ出すのを、焔星は呆然と眺めていた。
「―――ぁ」
 そして。

 閃光と轟音に全てを押し流され、焔星の意識は途絶えた。


 ガチャン。と音を立てて、破損した砲身が切り離される。
『勝った、か』
 アイゼンのステータスに追加された撃墜数1。
 焔星を下した何よりの証拠だが、その実、二人が対カトレア用に取っておいた切り札をここで使用してしまったことは大きい。
 限定的とは言えブーゲンビリアのレーザーに近い威力を持つ『フェルミオン・ブレイカー』も使用回数2発の内1発を使ってしまったし。
 なによりこちらの切り札が『レイブレード』である事は、最早カトレアには隠しておけないだろう。

 元より対四姉妹戦を前提に開発された【フランカー】は、四姉妹の特化能力に対抗できる事を目的としている。
 カトレアの『レイブレード』と『バリア』。
 アルストロメリアの『機動性』。
 ストレリチアの『移動速度』。
 そしてブーゲンビリアの『高出力レーザー』。
 これらの能力全てに対抗する為に、【フランカー】には変形能力と強力なエンジンから発生する出力を利用したレーザーブレード、バリア、そして陽電子砲が搭載されている。
 しかし、土方京子と祐一の技術力の差は明白で、汎用性を落して尚、純粋な性能で及んでいないのが現状だった。
 故に、勝機は不意打ちによる短期決戦しか無い訳だが、焔星の登場によりその予定は水泡と帰し……。
『で。今までのバトルロイヤルに居なかった以上……』
 祐一が見すえるアイゼンの視点の中央。
≪Warning!! NeXT enemy Engaging≫
 AIの警告が促すその先に……。
『……ここで出てくる訳だな、カトレア……』
 ジュビジーの装備で武装したジルダリア。

 土方京子の四姉妹が長女。
 カトレアが、そこに居た。


「……カトレア」
「お久しぶり、と言った方が良いでしょうか?」
「……」
 残存神姫は残り5。
 未だ脱出した神姫が居ない以上、この五人の中で最初に敗れたものが予選で敗退する事になる。
「貴女は危険だと判断を下し、あのマオチャオ、アーンヴァルと共に最優先の警戒対象としていたのですが―――」
 言葉を切り、アイゼンを見下ろすカトレア。
「―――どうやら見込み違いだったようですね……」
「……っ!!」
 カトレアの右手から伸びる赤い光剣。
「いくら私達のマネをしても、その程度の技術力で神姫の開発に携わったマスターを超えることなど不可能―――」
 最早アイゼンを脅威とは見ないしていないのか、無造作に歩を進めてくる。
「―――ましてや。……その様に無理やり詰め込まれた装備ではバランスなど望むべくも無い」
 互いの間合いギリギリでカトレアは足を止めた。
「それで私に勝つつもりだったとは、笑い話にもなりません」
 対峙するアイゼンは、未だ光剣を発振させては居ない。
 出力で劣るだけでなく、稼働時間に天地の隔たりがあるからだ。
 今から展開しておけるほど、アイゼンのレーザーブレードには稼働時間の余裕が無い。
「……実際、ストラーフの装備の方がまだ勝ち目があったと思いますよ? ……そのような私に対して勝る部分が一つも無い装備で、本気で私に挑むつもりなのですか……?」
 光剣を構え、体勢を落すカトレア。
 同様に、アイゼンもまた迎撃の姿勢を取る。
「……正直、失望しました。……貴女とはここで終わりにしましょう」
 真紅の閃光。
 高速で振り下ろされた光剣を辛うじて受け止めるアイゼン。
 レイブレード同士が干渉し合い、閃光と耳障りなノイズ音を撒き散らす。
「……何も、対策が無いわけじゃない!!」
≪“RayBlade”Re-disposition≫
 膠着状態を打破するべく、アイゼンがもう一本レイブレードを取り出し起動。
 二刀を交差させカトレアを押し返す。
「ふんっ、……それが対策と言うのなら、下らないにも程があります」
 カトレアは何もしない。
 ただ、そのまま力ずくでレイブレードを押し付けてくるだけだ。
「……っ!?」
 しかし、ただそれだけの事でアイゼンのレイブレードは二本とも干渉波で機能不全を起こして途絶えがちになる。
『……大元の出力が違いすぎる……!! やはりこれだけでは無理か……』
「機動性や速度でもアルストロメリアやストレリチアに劣るのでしょう? 先ほどの火力もブーゲンビリアとは比べるべくも無い!!」
「…っ!!」
「ましてや、バリアやレイブレードの性能で私に挑むとは、愚かにも程がある!!」
 膠着状態を維持するのに集中しているアイゼンの無防備な腹部をカトレアが大きく蹴り上げた。
「…かはっ!?」
 蹴り飛ばされ、地面に叩きつけられたアイゼンに、悠然とカトレアが詰め寄ってゆく。
「……貴女なら、或いはマスターを止められるかとも思ったけれど……」
「くっ…、けふっ…!」
「……いえ。……元より望む事では、無いのでしたね……」
 呟き、カトレアは光剣の切っ先をアイゼンに突きつける。
「……終わりです」
 そして。


 VR空間での決着が付いたのは、第四バトルロイヤルが終わるのとほぼ同時だった。
 データ分解を起こし、消え往く幽霊の残滓。
 仮面が消え、本体が消える一瞬のラグの中に、マヤアは幽霊の瞳を見た。
「……?」
 そして、そのまま物言わず消滅する幽霊。
「……なあ、浅葱。あいつ死んだのか?」
『どうなの、雅?』
『どうなの、村上君?』
 浅葱、雅を通じて村上まで上訴された質問に彼は静かに答える。
『いえ、コピーされた分身を倒しただけでしょう。神姫本体を如何にかしなければこの事件は終わりません』
『……そっか、ハッキングしてきたのが土方真紀の神姫だって事は、やっぱ黒幕は土方真紀で確定か……』
 確証を経て、目的ははっきりとした。
「……あとは。土方京子からウイルスのサーバー本体の位置を聞き出すだけですね……」
『ええ、予選を突破していれば控え室で会えるわ』
「素直に教えてくれるでしょうか?」
『教えてくれないのなら、力ずくでも聞き出すまでよ』
 冷徹に言い放ち、雅は視線を移す。
「……あとは、アイゼンさんが勝てるかどうかですか?」
『ま、それが一番の問題かな……』
 雅の表情は硬く、中央制御室にあるモニターの一つ。
 第四バトルロイヤルを映し出しているモニターを見据えていた。


 第四バトルロイヤル終了。
 残機数4。
 これで、本戦に出場する16名の武装神姫が出揃った事になる。

「……マスター、ゴメン……」
「まぁ、いいさ。次は勝とう」
 ポッドから出てきたアイゼンを労う祐一。
 カトレアとの戦闘は完全にアイゼンの敗北だった。
「祐一!!」
「祐一」
 美空とリーナが駆け寄ってくる。
「ああ、二人とも……」
「祐一、その……、―――!?」
「どうしたの、二人とも」
 美空とリーナのみならず、フェータまでもが絶句し祐一を見ていた。
 いや、正確にはその背後に立つ女、を。
「久しいな、少年」
「京子さん?」
 振り返る祐一の背後に、コートを着込んだ眼帯の女。土方京子が立っていた。
「……惨敗だったじゃないか。……私を止めるのだろう? このままでは、叶わぬぞ……」
「…………………はい」
 祐一は静かに頷く。
「……でも、次は必ず勝ちます。……その為の【フランカー】ですから」
「……そうか、ならば何も言わん。……やって見せろ」
 無言で頷き、祐一は意を返す。
「京子さん!!」
「なんだ?」
「本戦で、もしもアイゼンが勝ったら……」
「……勝ったら?」
「その時は、俺の言う事を一つだけ聞いて下さい……」
「……ふむ……」
 興味がありそうでなさそうな、そんな微妙な表情を浮かべ、京子は微笑んだ。
「……よかろう。では私が勝ったらお前は私の言う事を聞いてもらう。……いいな?」
「はい」
 その返事を聞き届け、京子は微笑を浮かべて歩み去る。
 レライナを除く五人は、黙ってそれを見送った。

「で、どうするのよ?」
「……次は勝つさ……」
 不安そうに尋ねる美空に、祐一は静かに答えた。
「……次はもう、負けられない……」
 先のバトルロイヤル。
 アイゼンに止めが刺されるより早く、他所で決着が付き神姫の残存数が4になった。
 その時点で戦闘が終了した為、アイゼンも本戦に進出できたものの、結果としてみればカトレアには歯が立たなかった事になる。
「……もう、負けられないんだ……」
「ん」
 祐一の肩の上で、アイゼンが応えて頷いた。


























 ど、ドラクエ5クリア……。
 20時間位?
 普通のRPGに掛かる時間ってこのぐらいだよね? と思う今日この頃です。
 Aボタンがへこみっぱなしでなければもっとストレス無く遊べたでしょうに……。

 ああ、ヨメはフローラで。
 性能重視の人ですから、私。



 閑話休題。



 焔星の元ネタはファイブスターのマシンメサイア。
 …と見せかけて、実はAC4fAで人から貰ったネクストの設計図(そっちの元ネタが多分FSS)。
 回避最優先の軽量級にコジマキャノンとドラスレという無謀な装備がお気に入りだったり……。
 まぁ、ソブレロに雷電グレ積んだグレ単ネクスト作った私が、無謀とか言えたもんじゃありませんが……。



 残るはP4。
 今回ペルソナに鈴鹿御前と信長が出るらしい……。
 やべぇ、超楽しみ……。



ALCでした~。




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