出撃準備を急ぐヤクトとリオーネは、以前話したことを思い出していた。
「…リオーネ、さっきは言い過ぎたな。ごめん」
「いいんだ、むしろ感謝している。お前が殴ってくれなかったら自分はこんなに早く立ち直ることはなかっただろう」
どうやらリオーネは、さっきの事は水に流したようだ。
「そういえば、どうしてこの任務に志願したんだ?」
ヤクトの問いに、リオーネは静かに答えた。
「マスターの意思と自分の希望が一致した、ただそれだけだ」
「へえ、自信だけはあるんだな。でも、さっきのようにはならないでくれよ」
「ああ」
ヤクトはリオーネの身体に装着されている重装備に目を向けた。どうやらこの装備は厚い装甲と銃火器の組み合わせた、砲撃戦タイプのようだ。
「お前の装備、結構ゴツイな」
「ああ、これか。この装備はマスターが決戦のために改造してくれたものだ。自分は主に遠方射撃を担当してたからな。しかし今回は接近戦も考慮した武器も装備している。…今はアルティがいないからな」
リオーネの言葉から、ヤクトは今もまだ、リオーネの心に蟠りがあるのでは、と思っていた。
「大丈夫か…、無理だったら今回は行かなくてもいいんだぞ」
しかしリオーネの答えは、それを否定するものだった。
「今の自分には使命がある。それをやり遂げる事が今の自分がやるべきことだ」
リオーネはスッと立ち上がり、そのままアクセスルームに向って歩き始めた。そして、一瞬ヤクトの方を振り向いた。
「ヤクト」
「ン?どうした」
「…ありがとう…」
少し恥ずかしげな顔を前に向きなおし、リオーネはそそくさとルームに入った。
『あいつ、結構いいところあるじゃないか。よし、おいらもあいつに負けないようにしなくちゃ』
ヤクトは感心し、リオーネの後を追ってルームに入って行った。
「…リオーネ、さっきは言い過ぎたな。ごめん」
「いいんだ、むしろ感謝している。お前が殴ってくれなかったら自分はこんなに早く立ち直ることはなかっただろう」
どうやらリオーネは、さっきの事は水に流したようだ。
「そういえば、どうしてこの任務に志願したんだ?」
ヤクトの問いに、リオーネは静かに答えた。
「マスターの意思と自分の希望が一致した、ただそれだけだ」
「へえ、自信だけはあるんだな。でも、さっきのようにはならないでくれよ」
「ああ」
ヤクトはリオーネの身体に装着されている重装備に目を向けた。どうやらこの装備は厚い装甲と銃火器の組み合わせた、砲撃戦タイプのようだ。
「お前の装備、結構ゴツイな」
「ああ、これか。この装備はマスターが決戦のために改造してくれたものだ。自分は主に遠方射撃を担当してたからな。しかし今回は接近戦も考慮した武器も装備している。…今はアルティがいないからな」
リオーネの言葉から、ヤクトは今もまだ、リオーネの心に蟠りがあるのでは、と思っていた。
「大丈夫か…、無理だったら今回は行かなくてもいいんだぞ」
しかしリオーネの答えは、それを否定するものだった。
「今の自分には使命がある。それをやり遂げる事が今の自分がやるべきことだ」
リオーネはスッと立ち上がり、そのままアクセスルームに向って歩き始めた。そして、一瞬ヤクトの方を振り向いた。
「ヤクト」
「ン?どうした」
「…ありがとう…」
少し恥ずかしげな顔を前に向きなおし、リオーネはそそくさとルームに入った。
『あいつ、結構いいところあるじゃないか。よし、おいらもあいつに負けないようにしなくちゃ』
ヤクトは感心し、リオーネの後を追ってルームに入って行った。
逆襲の獅子虎コンビ その2
ネットラインに入ったヤクトたちを待ちうけていたのは、多数の素体イリーガルの軍団だった。
「待ち伏せかよ」
「それだけ相手も必死だということだな。占拠されたエリアも少しずつだが奪還しているから、一転集中に徹したのだろう」
襲い掛かる大勢のイリーガルを破壊しながら、リオーネは前へ進んで行った。
「だが、こちらも時間が無い。このまま目的地まで突っ込むぞ」
「そうだな。このまま時間を喰ってもしょうがないからな」
しかしイリーガルの数は尋常ではなく、いくら倒しても次々とその数を増やしていった。
「…やばいな、こんなに来るとこっちがばてちまう」
「くっ、これまでか」
そのとき、ヤクトたちがいる反対方向でイリーガルたちが飛ばされていく様が見えた。
「何だ…?一体どうなっているんだ?」
その様子を不思議がるリオーネ。しかしヤクトにはこれを誰がやったのか分かっていた。
「…あいつ、こんな所にいたのか…!」
そしてその場所から気合のような掛け声がこだました。
「降竜爆震!!」
同時に大地から衝撃が起こり、イリーガルの群れは瞬く間に消し飛んだ。
「危ねえ、リオーネ、掴まれ!」
とっさにリオーネの手を掴んで飛び上がるヤクト。その直後、衝撃が地を伝わった。
「ったく、相変わらずムチャな事しやがる」
「一体何なんだ、あの神姫は…」
イリーガルがいなくなった所から現れたのは、ジルダリアタイプの神姫、凛花だった。目の前に降りた二人は、彼女の目を見た。
「凛花、どうしてここに…」
「あなた方が窮地に陥ってましたので助けにきましたわ。この調子なら大丈夫のようですわね」
「ま、まあな。それより、他のチームはどうした?」
「皆さんは中枢エリアに集合してます」
二人の話をリオーネはただ聞いているしかなかった。もちろん、凛花とヤクトの関係をリオーネは知る由もない。
「それで、他のイリーガルはどうしたんだ?おそらく、ここだけではないはずだが」
リオーネの質問に、凛花は答えた。
「イリーガルの集団はこの場所から移動してメインホストコンピュータエリアに向ってます。來華たちがその場所に向ってますから急ぎましょう」
その瞬間、翅を広げた凛花は自分が来た方向へ飛び去っていった。それを見たリオーネは、凛花が誰なのかを知った。
「あの神姫は、有名アーティストの…」
「感心しないで早く行こうぜ。このままじゃ置いてきぼりくらっちまう」
二人は凛花の後を追ってホストエリアへ向った。
「待ち伏せかよ」
「それだけ相手も必死だということだな。占拠されたエリアも少しずつだが奪還しているから、一転集中に徹したのだろう」
襲い掛かる大勢のイリーガルを破壊しながら、リオーネは前へ進んで行った。
「だが、こちらも時間が無い。このまま目的地まで突っ込むぞ」
「そうだな。このまま時間を喰ってもしょうがないからな」
しかしイリーガルの数は尋常ではなく、いくら倒しても次々とその数を増やしていった。
「…やばいな、こんなに来るとこっちがばてちまう」
「くっ、これまでか」
そのとき、ヤクトたちがいる反対方向でイリーガルたちが飛ばされていく様が見えた。
「何だ…?一体どうなっているんだ?」
その様子を不思議がるリオーネ。しかしヤクトにはこれを誰がやったのか分かっていた。
「…あいつ、こんな所にいたのか…!」
そしてその場所から気合のような掛け声がこだました。
「降竜爆震!!」
同時に大地から衝撃が起こり、イリーガルの群れは瞬く間に消し飛んだ。
「危ねえ、リオーネ、掴まれ!」
とっさにリオーネの手を掴んで飛び上がるヤクト。その直後、衝撃が地を伝わった。
「ったく、相変わらずムチャな事しやがる」
「一体何なんだ、あの神姫は…」
イリーガルがいなくなった所から現れたのは、ジルダリアタイプの神姫、凛花だった。目の前に降りた二人は、彼女の目を見た。
「凛花、どうしてここに…」
「あなた方が窮地に陥ってましたので助けにきましたわ。この調子なら大丈夫のようですわね」
「ま、まあな。それより、他のチームはどうした?」
「皆さんは中枢エリアに集合してます」
二人の話をリオーネはただ聞いているしかなかった。もちろん、凛花とヤクトの関係をリオーネは知る由もない。
「それで、他のイリーガルはどうしたんだ?おそらく、ここだけではないはずだが」
リオーネの質問に、凛花は答えた。
「イリーガルの集団はこの場所から移動してメインホストコンピュータエリアに向ってます。來華たちがその場所に向ってますから急ぎましょう」
その瞬間、翅を広げた凛花は自分が来た方向へ飛び去っていった。それを見たリオーネは、凛花が誰なのかを知った。
「あの神姫は、有名アーティストの…」
「感心しないで早く行こうぜ。このままじゃ置いてきぼりくらっちまう」
二人は凛花の後を追ってホストエリアへ向った。
「くっ、ここまで追いつめられるなんて…」
中枢エリア付近、二つの影が戦っていた。一人はヴァッフェドルフィン型のメルクリウス、もう一人は黒い人魚型・イーアネイアだった。
「仲間のイリーガルは全員倒れたようだな、残りはお前だけだ!!」
追いつめられているのは黒い人魚型のほうだった。彼女は顔色ひとつ変えずに空中を泳ぎながら攻撃を避けていった。
「でも、あなただって他の仲間がいなくなっているじゃありませんの。それとも、あなたお一人でお相手するおつもり?」
メルクリウスはそれを承知でただ一人残り、今ここで戦っている。そして只では倒せる相手ではないという事も…。
「もちろん、そのつもりだ。なぜなら、今ここで倒さなければこのシステムは破壊されてしまうから」
しかし黒イーアはその言葉を聞いて、おもわず噴出してしまった。
「ふっ、そんなこと思ってましたの?素人が考える事ですわね」
「なにがおかしい!お前達の目的はネット中枢を占拠して世界を混乱に導くことではないというのか?」
「そこが素人というのですわよ。私たちのやっていることはそんなことではありませんのよ」
黒イーアの意外な答に、メルクリウスは驚きの色を隠せなかった。なぜなら、本来イリーガルが目的としている事とは違うことを言い出したからである。
「それなら、なぜこんなことをしている?お前達がしたことは、多くの人々を混乱に陥れたのだぞ?」
「確かに、私達がしたことは、結果的にはこうなってしまいましたわ。でも、これはあくまで貴方たちが大騒ぎしたことが発端なのですのよ。だからここまで広がってしまいましたのね」
反省の色を見せない黒イーアは、そのままネット空間を泳いで逃げようとした。
「待て、どこへ行く?!」
「ここにいてもしょうがないですから、このまま退散する事にしますわ」
これ以上の戦闘に意味を持たないと思ったのか、黒イーアはメルクリウスを倒すのを諦め、自分は安全な場所へ逃げることにしたのだろう。しかし、そんな彼女の態度をメルクリウスは許すわけがなかった。
「ここまで騒ぎを起こして逃げるつもりか、卑怯者!!」
メルクリウスは黒イーアを追いかけようとしたが、何者かが立ちはだかった。
「…黒いエウクランテ」
「あらシェイド、こんなことしなくてよろしいのに」
シェイドと呼ばれた黒いエウクランテは、ライフルでメルクリウスを攻撃した。
「お前もこいつの仲間か?!」
しかしシェイドは無言のまま攻撃を続けた。激しい攻撃の末、メルクリウスは被弾し、バランスを崩してしまった。
「待て…、このまま逃がすわけには…」
墜落していくメルクリウスを尻目に、シェイドは黒イーアに向ってつぶやいた。
「…引くぞ、ソフィ」
「相変わらずですわね、その素っ気無さは」
その場を立ち去る二人を、メルクリウスは意識が薄れる中、ただ見ているしかなかった。
中枢エリア付近、二つの影が戦っていた。一人はヴァッフェドルフィン型のメルクリウス、もう一人は黒い人魚型・イーアネイアだった。
「仲間のイリーガルは全員倒れたようだな、残りはお前だけだ!!」
追いつめられているのは黒い人魚型のほうだった。彼女は顔色ひとつ変えずに空中を泳ぎながら攻撃を避けていった。
「でも、あなただって他の仲間がいなくなっているじゃありませんの。それとも、あなたお一人でお相手するおつもり?」
メルクリウスはそれを承知でただ一人残り、今ここで戦っている。そして只では倒せる相手ではないという事も…。
「もちろん、そのつもりだ。なぜなら、今ここで倒さなければこのシステムは破壊されてしまうから」
しかし黒イーアはその言葉を聞いて、おもわず噴出してしまった。
「ふっ、そんなこと思ってましたの?素人が考える事ですわね」
「なにがおかしい!お前達の目的はネット中枢を占拠して世界を混乱に導くことではないというのか?」
「そこが素人というのですわよ。私たちのやっていることはそんなことではありませんのよ」
黒イーアの意外な答に、メルクリウスは驚きの色を隠せなかった。なぜなら、本来イリーガルが目的としている事とは違うことを言い出したからである。
「それなら、なぜこんなことをしている?お前達がしたことは、多くの人々を混乱に陥れたのだぞ?」
「確かに、私達がしたことは、結果的にはこうなってしまいましたわ。でも、これはあくまで貴方たちが大騒ぎしたことが発端なのですのよ。だからここまで広がってしまいましたのね」
反省の色を見せない黒イーアは、そのままネット空間を泳いで逃げようとした。
「待て、どこへ行く?!」
「ここにいてもしょうがないですから、このまま退散する事にしますわ」
これ以上の戦闘に意味を持たないと思ったのか、黒イーアはメルクリウスを倒すのを諦め、自分は安全な場所へ逃げることにしたのだろう。しかし、そんな彼女の態度をメルクリウスは許すわけがなかった。
「ここまで騒ぎを起こして逃げるつもりか、卑怯者!!」
メルクリウスは黒イーアを追いかけようとしたが、何者かが立ちはだかった。
「…黒いエウクランテ」
「あらシェイド、こんなことしなくてよろしいのに」
シェイドと呼ばれた黒いエウクランテは、ライフルでメルクリウスを攻撃した。
「お前もこいつの仲間か?!」
しかしシェイドは無言のまま攻撃を続けた。激しい攻撃の末、メルクリウスは被弾し、バランスを崩してしまった。
「待て…、このまま逃がすわけには…」
墜落していくメルクリウスを尻目に、シェイドは黒イーアに向ってつぶやいた。
「…引くぞ、ソフィ」
「相変わらずですわね、その素っ気無さは」
その場を立ち去る二人を、メルクリウスは意識が薄れる中、ただ見ているしかなかった。