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鋼の心 ~Eisen Herz~


第20話:CHROMEHOUNDS



 漆黒の巨躯が疾走し、瞬く間に眼前に迫ったヴァッフェバニーをチーグルで叩き潰す。
『……一つ』
 祐一のカウントも終わらぬうちに、ヴァッフェバニーと戦っていたツガルへ近接。
 握り合わせた両拳で殴りつけ、そのままザバーカの回し蹴りで止めを刺す。
 戦場に展開していた残存3機の神姫たちは、ストラーフに対抗するべく、にわか仕込みのチームを組んで陣形を展開するが、しかし。
『……無駄だな』
 その証明は即座と言って良い展開で行われた。
 前衛は左右から襲い掛かるマオチャオとサイフォス。
 後方に砲撃支援を遂行するフォートブラッグ。
 並みの神姫であれば手詰まりとも言える布陣だが、彼女が並ではない事を祐一はよく知っていた。
「―――Ryyyyyyyyyyyyye!!」
 漆黒の悪魔は奇声と共に、切りかかって来たサイフォスの頭を鷲掴みにし、それを武器にマオチャオを殴打。
 続いて飛来したフォートブラッグの砲弾数発を、サイフォスを盾にして防ぐとそのまま“それ”を砲弾代わりに投げ飛ばす。
 重甲冑を着込んだサイフォスの直撃を受け、フォートブラッグが共々敢え無く沈む。
「―――Syeeeeeeeeeee!!」
 最後に、逃げようとしていたマオチャオの脚をつかんで振り上げ、勢い良く地面に叩きつけこれを撃破。

 漆黒の悪魔は、僅か30秒程の時間でもって、5機の神姫を撃破してのけた。


『相変わらずバケモノだな、アイツ……』
「……ん」
 一方的な蹂躙劇を廃ビルの屋上から観察していたアイゼンは、祐一の声に短く頷く。
『……けどまあ、勝てない訳じゃない。……行くぞ、アイゼン』
「……わかった」
 膠着姿勢のまま、左右のチーグルにセットされた滑空砲を展開。
 照準を連動させたアサルトライフルのスコープで狙いを定め、超長距離からの精密砲撃を二発。
『着弾まで、3、2、1―――』
 直撃が一発。
 至近弾となった榴弾の爆風で更にダメージ。
 しかし。
「Syaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
『やっぱこの程度じゃ足りないか……。仕方ない、ビルの中で迎撃しよう』
「……ん」 
 彼方から疾走してくるストラーフ。
 ランク6、“蜘蛛”と俗称されるストラーフ、アーシュラがこの大会最初の相手だった。

『蜘蛛の能力は近接格闘に集約されている。……高出力化のカスタムを施されたチーグル六つとザバーカを主兵装にし、頭部にマウントされたアンクルブレードと併用しての高威力かつ多角的な近接打撃戦は、サイフォスの装甲すら一瞬で粉微塵に粉砕する、……が』
「……狭い所ではいっぱいある腕が邪魔。……あと、頭悪い」
 アイゼンの言葉に違わず、蜘蛛は不利と承知している筈のビルの中に躊躇わずに突入してくる。
 チーグルに換装された左右の腕部と、更に背中から展開するチーグル2対。
 脚部も合わせ、8本の肢をもつストラーフである蜘蛛には、屋内は障害物だらけの鬼門だが、そこを避けるという概念は無いらしい。
『……多分、戦闘用のルーチンだけで自律的に行動しているんだろうな……、マスター側の指示も殆ど受け付けないって言うのはデメリットだが、それを補って尚余りある反応速度が武器。……差し詰めバーサーカーって所かな?』

 5F。最上階まで駆け上がってきた蜘蛛に対し、アイゼンは通路の端から銃撃。
 アサルトライフルの銃弾では大部分が装甲で弾かれるが、狭い通路内では滑空砲の使用は困難なのでやむを得ない。
 爪の先で通路の床や壁、天井すらも削りながら突進してくる蜘蛛を置き去りに、アイゼンは背後の階段から階下へ移動。
 階段の踊り場を抜けてすぐの室内に飛び込んで滑空砲展開。
 無人の踊り場に砲弾を二発。
 着弾した榴弾の爆炎に、飛び込んできた蜘蛛が巻き込まれる。
 しかし、アイゼン自身は即座に閉ざした扉で爆炎を防ぎ、無傷。
 そのままチーグルで床をぶち抜き階下へ落下。
「……3階」
 真上、今しがた落ちてきた穴の上に榴弾を一発。
 4階の扉を突き破ってきた蜘蛛がそれに巻き込まれるのを待たずに隣室へ移動。
 更に床をぶち抜き2階へ。
『……動きは速いけど読み易い。……地下で仕掛けるぞ』
「……わかった」
 先ほどと全く同じに、上階への榴弾の砲撃から扉を閉ざして隣室へ移動。床板をぶち破り階下へ。
『……一階』
 そして三度。
 アイゼンは榴弾を叩き込んでから、隣室の床をぶち破った。
「―――Wryyyyyyyyyyyyeeeeeeeeeeeee!!!!」
『……さすがに怒るよな』
 祐一の苦笑も終わらぬうちに、扉をぶち破った蜘蛛が階下へ落下。
 そして……。

『……罠に落ちる、と』

 地下室へ落下した蜘蛛は、薄暗い室内を索敵。
 しかし、彼女の目には次に突き破るべき扉は見えず、標的の姿も無い。
「Shieeeeeeee……?」 
 狭い室内には隠れる場所など無く。
 彼女自身が避ける場所も無かった。
「……上」
 呟くような標的の声に真上を見れば、見失った筈のストラーフが滑空砲の照準を付け終えた所であった。
「―――Syaaaa!!」
「……!!」
 発砲。
 着弾と同時に爆発する榴弾は回避は困難だが威力の方は致命的とまではいかない。
 現に、数発の至近弾を受けながら、蜘蛛の装甲には然したるダメージは無い。
 当然、蜘蛛は回避よりも攻撃を優先した。
『……勝ったな』
 跳び上がろうとする蜘蛛が、“徹甲弾”の直撃を受け床に叩きつけられる。
「―――!?」
 叫ぶ間も無く、左右の滑空砲を交互に連射。
 重金属の徹甲弾頭が頑強な蜘蛛の外殻を打ち砕いて行く。
 狭い地下室で身動きも取れぬまま、蜘蛛の巨体が見る見る打ち砕かれ、そして……。
「……トドメ―――」
『―――避けろアイゼン!!』
 祐一の声に反応し、アイゼンは即座に後方へ跳躍。
 同時に赤熱化している前方の壁に気付く。
「―――!?」
 一階の外壁に灼熱が浴びせ掛けられ、瞬く間に貫通。
 そのまま地下まで貫き爆発、瀕死の蜘蛛にトドメを指した。
『プロトンビーム(陽子砲)!?』
 驚愕する暇も無く、振動がアイゼンを襲う。
 落下する天井と、ひび割れ、崩壊する壁。
 アイゼン自身がぶち抜いた床と外部からのプロトン砲の直撃で、廃ビルは崩落を始めていた。
『脱出しろ、急げ!!』
「―――ッ!!」
 手近な脱出口は前方の大穴。
 プロトンビームで出来た穿穴だけだった。
 連射は無い。
 そう信じて、アイゼンはビル外へと飛び出す。

 そう、信じるしかなかった。


「―――ふむ、避けましたか。……さすがは祐一様の神姫、手練ですね」
「…………。……誰?」
 脱出したアイゼンをプロトン砲の神姫、赤いハウリンが待っていた。
 祐一の名を出したと言う事は、彼女のマスターを知っていると言う事になるが、アイゼン自身にはそのハウリンに見覚えは無い。
「―――申し遅れました。……初見となります、我が名は“焔星(エンシー)”。アイゼン様と手合わせするべく参上いたしました」
『……焔星?』
 その名は祐一にも聞き覚えが無い。
 しかし……。
『(……中国語で炎の星。……まさか)』
 心当たりだけはあった。
 そして同時に確信する。
『(……もしも万が一、あの人の神姫だとするならば……)』
 それが、尋常ならざるバケモノだとしても驚きはしない。
『アイゼン!! 距離を取って榴弾で弾幕。近寄らせるな!!』
「―――!?」
 即座に反応するも、アイゼンの予想していた指示とは違っていた。
「……マスター?」
 敵は真紅の素体を持つハウリン。
 武器は大型のビーム砲とシールドと思しき装備。
 背面にビーム砲と直結したエネルギーユニットらしきものを背負ってはいるが、装甲類の乏しい軽装タイプ。
 見るからに高機動型の砲戦タイプで、距離を取って警戒するより一気に懐に飛び込んで格闘戦で制圧する方が良い相手だ。
 それを相手に防御を優先した砲戦を指示すると言う事は、只ならぬ相手と言う事。
 アイゼンの経験上、祐一がこの手の指示を出す相手は……。
(ランカー級の相手……?)
 息を呑むアイゼンに焔星が砲口を向ける。
「我が主の命により、その力計らせて貰います……!!」
 ―――白光。
 唐突に放たれたプロトン砲の一撃をアイゼンは跳びのいて回避する。
 ハドロン砲とも呼ばれる強粒子の一撃は、莫大な数の重粒子を加速してぶつけるだけの兵器である。
 ベースとなっているウィトゥルースの粒子ビーム砲を重粒子化し、威力と射程を向上させた強化兵器だ。
 レーザーとは違い余分な輻射熱が無いため至近弾には害は無く、直撃でなければ意味が無いと言う兵器ではあるが、直撃時の威力は高出力のレーザーと比しても遜色の無いものである。
 更には、着弾時に跳ね返る一部の粒子同士が干渉し合い、爆発的な熱量の増加、即ち本物の爆発を発生させると言う、言わば榴弾砲のエネルギー兵器版とも言える性質をも有している。
『直撃ならほぼ即死、至近着弾も被害が大きすぎる……。……けどっ!!』
 先ほどの砲撃を見ても明らかに、リロードの時間は少なくない。
 現に、今も一撃撃った後、焔星は追撃をせずに、回避行動に移っている。
 つまり。
「……戦車のように戦場で直接砲火を交えるタイプじゃなく、一撃射ったら移動して反撃を避わす、言わば自走砲タイプの敵」
『なら、リロード時間が隙だろう? ……行け、アイゼン!!』
「ん」
 チーグルの爪を地面に突き立て、自身を前方へと投げ飛ばす強引な手法で加速し、急速接近。
 如何に疾走力に長けるハウリンとは言え、あれほどの威力のプロトン砲が重くない訳が無い。
 カウンターウェイトとして大型シールドを反対側の腕に装備しているのだろうが、重量バランスは取れても過重そのものが減る訳ではない。
 ましてや焔星は後退、アイゼンは前進だ。
 鈍重なストラーフと高い走破性を持つハウリンとの差異は極限まで薄くなり、そして……。

 逆転した。

「……捕まえた」
「甜(甘いッ)!!」
 移動中でもアサルトライフルが必中する距離に入り、尚も加速。
 完全にアイゼンの間合いだが、焔星も牽制の為に脚部のハンドガンを連射してくる。
 未使用の火器を脚部のハードポイントに保持しているだけだ、と思っていたのなら、格納状態から自動で展開して射撃してくるそれは奇襲ともなったであろうが、しかし。
『アイゼンの装甲にそんな豆鉄砲が効くか!!』
 その尽くが装甲で弾かれ、飛散。
 そしてアイゼンは至近にまで接近し、左右の手でアングルブレードを振り上げる!!
「那么马(ならば)―――」
 背部ユニットと直結したプロトン砲を格納し、その手を背後に回す焔星。
「―――这(これで)っ!!」
 振り下ろす手には光り輝くレーザーブレード。
 小さく軽く、場所を取らないそれは予備兵装には最適の武器ではあるが、しかし。
『それも無駄』
 帯磁処理されているアングルブレードがレーザーブレードに干渉。
 そして、そのまま過負荷でその基部を破壊した。
「不寻常没有(馬鹿な)!?」
 ただの一合で破壊されたレーザーブレードの基部を見て、焔星が驚愕に目を見開く。
「……こっちは最初から光剣使いを倒す気で居る。……砲戦機如きの予備兵装に、手間など喰わない」
「堕再(だとしても)!!」
 使い物にならなくなった光剣を投げ捨て、今度は左腕の盾で殴りかかって来る。
 と、盾が根元から大きく開き、獣の顎のごとく噛み付いてくるが。
「……それも」
『無駄だ』
 防いだチーグルに噛み付くも、それを砕くほどの噛力は無い。
「苦ッ!?」
「……吹き飛べ―――」
 噛み付かれたままのチーグルを、焔星ごと振りかぶり……。
「―――【ブーストアーム】!!」
 格納された滑空砲の反動で、地面に叩き付けた。
 初速650m/sを超える砲弾の反動と、神姫用の格闘兵装でも屈指の重量を持つチーグルの質量。
 その双方が乗算として叩き出す威力は足元の岩塊など粉微塵に砕き、余剰した運動エネルギーを轟音と衝撃波に変換しその周囲に撒き散らす。
 滑空砲など、比するのもおこがましい程の破壊がそこに顕現した。


「…………」
『…………』
 粉塵が収まり、地面に穿たれた大穴が見え出す頃、ようやくアイゼンが立ち上がる。
 少し離れた場所には焔星。
 咄嗟に離れて難を逃れたのだろう。損傷は殆ど無い。
『さすがに、今ので終わるほど甘くは無いか……』
「……でも、プロトン砲以外は大した事無い。……このまま押し勝つ?」
『いや、油断しないで確実に機能を奪うほうが良い。……先ずはプロトン砲を潰すぞ」
「……わかった」
 簡素な作戦会議が終わるタイミングを計ったかのように、焔星が立ち上がる。
「的确(なるほど)、……好强(お強い)」
「……もう、手は無い。……それでもまだやる?」
「哂(ふふ)……。確かに我が主の仰るとおり……。刹那の間に全ての手の内を暴かれましたか……」
「……?」
「しかし、手が無くなったのは“私”だけです……」
『……なに?』
「此処からは、本気で行かせて頂きます。……力を計る為ではなく、……倒す為に……!!」
 その場に立ったまま、右手の人差し指をアイゼンに向け……。
「出马(出でよ)、式神弐式(シーセンアーシ)『光阴(コウイン)』!!」
「……!?」
 遥か上空より飛来する物体。
 自らにかかる影で、それに気付いたアイゼンがその場を跳び退いた直後、それは着弾した。
「……砲弾?」
『違う、中に何かいるぞ!!』
 巻き上がった粉塵に目を凝らすアイゼンに祐一が警告を飛ばす。
 そして、粉塵を吹き散らしそれがその姿を現した。

 初見の印象は、“高速回転する球体”。
 斥力か何かで浮かび上がる“それ”が、変形を始めてようやく先ほどの一撃が『着弾』では無く、『着地』であったと理解できた。
 真っ二つに分れ、両端からはパワーアームが展開し、間からは頭部が。
 顎部に『弐』の刻印の刻まれた狗頭。
 即ち。
『ぷちマスィーンズ!?』
 ハウリンの補助兵装。自立支援を行うサポートメカの姿がそこに顕現した。
「……でも、大きい。……神姫級の大きさのぷちマスィーンズ……?」
 頭部と腕部を格納していた球体と、両のパワーアームで保持する神姫用の大鎌。
 双方を合わせたボリュームは神姫素体と比しても決して小さくは無い。

 そもそも神姫にとって、自律稼動する随伴砲台を複数運用するのは容易ではない。
 故にぷちマスィーンズは個々の性能を犠牲にしてまで小型、簡易化を推し進め。4,5機を同時運用する事で単機による連携を可能としたのだが……。
『あの大きさと煩雑さでは複数運用は難しい筈。……つまり、単機での運用を前提とした前衛専用機。……要するに、本体がプロトン砲を撃つ為の壁役って所か?』
「错(否)、これだけだと思わないで頂きたい」
「……まさか」
「出马(出でよ)、式神参式(シーセンカンシ)『闇阳(アンヤン)』!!」
 直後、視界の隅でマズルフラッシュ。
 打ち出された砲弾が着弾するまでに僅か2秒。
『もう一体!? こっちは砲撃用のぷちマスィーンズか!?』
「……3対1……」
「そう、三位一体の戦陣。……如何にして打ち破りますか、アイゼン様?」
「……知恵と、……勇気と、……愛?」
『なんで愛だけ疑問系?』
「……マスター、大好き」
『……あ、ありがとう』
「……ん、愛あった」
『え? あれ確認だったの!?』
「……と言う訳で。……勝つ」
「良いでしょう、見せて頂きます!!」
 戸惑う祐一を置き去りに、神姫同士の高速戦闘が再開された。

「……っ」
 勝つ、とは言ったものの、状況は極めて不利だった。
 球体の前衛機の装甲は下手な神姫よりも頑丈で、片手間に破壊できるような強度ではない。
 かと言って前衛機に掛かりっきりになれば、後衛の四足型からの砲撃と本体のプロトン砲が飛んで来る。
 逆に後衛機を先に狙えば、高機動モードへ変形し瞬時に射程外へと離脱してしまう。
『……こっちも変形するのか!?』
 前衛機の光阴は、浮遊する上半身のような格闘形態と、腕と頭部を格納した防御形態への変形。
 後衛機の闇阳は、四足の砲撃形態と、双胴の飛行形態を使い分け、アイゼンを翻弄する。
 その上で本体からのプロトン砲と多彩な近接武装の二択を迫る攻撃。
 アイゼンが防戦に回るのは、至極当然とも言える展開だった。
『完全に向こうのペースだね……』
「……的が絞れない。……絞ると他から集中攻撃される」
『うん、その上で命中率よりも威力を重視した攻撃が複数。砲撃もサイズ(鎌)もプロトン砲も、どれも無視できない威力……』
「……どうする、マスター?」
 問いながらも、プロトン砲の爆発範囲から離脱し、強襲を掛けてくる球体の攻撃を捌くアイゼン。 
 防御に徹する限りそう簡単に敗れはしないだろうが、だからと言って勝てる訳でもない。
『(……時間は稼げる。……けど、これでは埒が明かない。……それに……)』
 相手の装備の装備の構成を見れば、祐一は嫌でも“それ”に気付いてしまう。
『……さて、如何したものか……』
 稼げる時間にも、限度があるようだった。


「なんて事!! ……まだ、こんな神姫が居るなんて……」
 リーナの焦燥も無理は無い。
 事前に警戒するべき敵の情報はある程度入手してある。
 だがしかし、焔星と名乗るハウリンはその範疇には居なかった。
「厄介な相手ですね。……充分に戦力となる子機との連携で、一撃必殺を数撃ってくるタイプですか……」
「つまり、数撃ってくるから避わし辛いって事よね?」
 肩の上に腰掛けながら、モニターを見上げるフェータに、主である美空が問う。
「でも、確か祐一は万能の神姫なんか作れないって言ってたけど?」
「正確には、万能の神姫では役に立たない、と言うことだけれどもね……」
「……? どういう事?」
 首を傾げる美空に、リーナはモニターから目を逸らさぬままに続ける。
「装甲による防御力と、機動性による回避能力は、どちらも敵の攻撃で倒されない為のものよ」
「うん」
「でも、重たい装甲と、機動性による回避力は相反する。……両立するより、どちらかに特化する方が有意義なの」
「……フェータが装甲を捨てて、回避力を取ったみたいに?」
「そう、正にその通り。……レライナやマヤアみたいに、機動性に重きを置きつつもある程度の装甲を残すタイプや、アイゼンみたいに装甲を重視しつつも致命的な大技を回避する手段を残している神姫も居る。……けどね。それでも殆どの神姫はどちらかに傾倒し、得意分野を持つものなのよ」
 例外的に、セタのように装甲も機動性も平均値程度と言う神姫も居る。
 しかしその場合でも、セタは姿を見せずに曲射砲で攻撃する事により、攻撃対象にならない事自体を防御手段としている。
「防御以外の手段だって同じ。経験による動作の最適化である程度の修正が付くとは言え、神姫の総合性能自体はどんな神姫でも大して変わらないわ」
「つまり、アイゼンもフェータもレライナも……、あとセタとかも大体強さは同じって事?」
「……極論だけどね。総合的な性能は皆同じで、得意分野が違うって言えば分り易いかしら?」
「……まぁ、分る、と思う……」
 眉を寄せながらも何とか納得する美空。
「あ、でも。そういう事なら、あの赤いハウリンだって得意分野以外はダメって事にならない?」
「……」
 美空の結論に、リーナは応えなかった。
「……あの神姫、機動性と火力を両立しつつプロトン砲の為のジェネレーターと、子機制御の為のコントロールユニットを有しています。……その分装甲や腕力に劣るのですが……」
「……?」
 リーナの変わりに口を開いたフェータすらもそこまで言って言いよどむ。
「強すぎるのよ、あのぷちマスィーンズ達が、ね……」
 致命的な威力の大鎌に滑空砲の直撃すら凌ぐ頑強な装甲、そして浮遊による機動力の高さ。
 砲戦型神姫並の長距離から正確な砲撃を行える砲を備えつつも、高速飛行することで得られる高い移動力。
「……どちらも、下手な神姫より強いじゃない……!! そんなぷちマスィーンズが居る訳無い!!」
 無視できず、減らす事もできない頭数。
 それが、焔星の脅威でもあった。


「そろそろ降伏した方が宜しくないでしょうか? 正直、貴女に勝ち目があるとは思えません」
 傍に寄ってきた“球体”を撫でつつ、焔星が問う。
「……勝つって言った。……だから、勝つ……」
「本気で、愛で勝てると思って居るのですか?」
「……思ってない。……でもまだマスターは諦めてない。……そのマスターを、信じる力なら愛で充分」
「なるほど、我ら神姫とはそうあるべきですね……」
 嬉しそうに微笑みつつ、焔星は光阴から手を離す。
「では、私も我が主への忠義をもって挑みましょう!! ……来なさい、闇阳!!」
 飛行形態で突進してきた闇阳に飛び乗り、サーフボードの要領でアイゼンを轢きに来る焔星。
「…っ!!」
 両のチーグルを交差させてガード。
 頑強な副腕はアイゼンを致命傷から守るが、しかし。
「後ろががら空きです!!」
 残ったぷち、光阴がアイゼンの背後から体当り、防ぐ術の無いアイゼンを突き飛ばす。
「……まだっ!!」
 体勢を立て直すより早く、宙返りして向きを変えた焔星のボードアタック。
 チーグルの肩アーマーを破壊されつつも、致命傷だけは防いだアイゼンに、今度は球体化し、高速で回転する光阴の体当り。
 二体の連携によるヒット&アウェイに、アイゼンは成す術も無く追い込まれてゆく。
『(技が豊富すぎて対策を立て辛い上に、強すぎるぷちマスィーンズ……。このままじゃ勝てない。…………アレを使うしかないか?)』
「……マスター、ダメ」
『アイゼン?』
「……“アレ”は、カトレアと戦うときまで取っておかなくちゃ……」
 このバトルフィールドに持ち込んだ“もう一つの装備”。
 それは祐一とアイゼンにとっては文字通りの切り札だった。
 基本的に装備の変更が出来ない大会において、装備を入れ替える裏技と言っても良い奥の手。
 カトレアに対抗する為の装備を、カトレアと戦う時まで隠しておく。
 それこそがカトレアに勝つために考えついた数少ない手段。
 アイゼンの装備を、チーグルのみしか脅威と捕らえないカトレアに対する最高の奇襲であった。
 しかし。


「ハッキング!?」
 天海神姫センターの中央制御室と言う意外な場所に招かれた浅葱は、その危機に声を漏らした。
「はい、現在7層ある電脳防壁の内、5層までが突破されています。村上先輩のお陰で進行速度は大きく遅れましたが、ハッキング自体は現在も継続中で……」
 見ればなるほど、制御室の中央でコンソロールについているのは、見慣れた男の後姿だった。
「これまでも不可解な現象はありましたが、神姫センターにハッキングをしてくるような例は数えるほどです」
 そのして、その何れもが失敗に終わっている。と、天海神姫センターの店長である女、松原美樹(まつばらみき)がそう呟いた。
 高校時代、浅葱、村上、そして雅の三人の一つ下の後輩であった彼女は、いまだ浅葱達に全幅の信頼を寄せている。
(……まぁ、元々手下気質でしたけど……)
 そのツテで便宜を図ってもらう事もある以上、彼女からの頼み事と言う珍しい事態も、決して無下には出来ない。
「……もう少し、詳しく教えて頂戴」
「ハッキングは外部から。村上君が言うには、かなり大規模なプログラムを送り込むつもりらしいわ……」
 応えたのは雅。
 村上と共に、浅葱より先に招かれ対策を講じていたのだろう。
「……目標はおそらく、バトルロイヤルの制御CPU。要するに、ゲームマスターの乗っ取りが目的よ……」
 複数の神姫が入り乱れるバトルロイヤルは、敗退した神姫を保護する為のシステムが設けられている。
 その際たる物がマスターコンピュータ。
 即ち、参加する全ての神姫にリンクし、敗れた者をシャットダウンさせ、生き残った者に敗者への攻撃を禁じるプログラムだ。
「……で、私は何をすれば良いの? 言っておくけど、コンピューター関連は村上君はもちろん、雅の足元にだって及ばないわよ?」
「浅葱に頭脳労働は期待してないわ。……アンタは実力行使担当でしょ?」
「あたし、一応教師と言う頭脳労働職に就いているんだけどね……」
 小さく呟かれた浅葱の反論は華麗にスルーされた。
 室内の全員が、職業選択を間違えていると考えているが故である。
 余談だが、もしも浅葱が格闘家にでもなっていれば、格闘技の歴史に名前を残すのは間違いない。
 だがしかし、今の浅葱は割りと平凡な一教師に過ぎなかった。
「……これから、今村上君が抑えているプログラムに攻撃を仕掛けるわ。……バイパスを作ってVRフィールドに落としてから、マヤアとセタで攻撃。デルタがバックアップを行うから、普通の神姫バトルと同じ要領で出来る。……なら、アンタとマヤアは最大戦力よ、期待するからね?」
「任せろ、雅ん!! 敵も味方もネコがギッタギタにしてくれよー!!」
「いや、味方はダメだから」
「あん? じゃあボコボコ位ならOK?」
「……まぁ、それぐらいなら良いけど」
「良いんですか!?」
 主の返答に半ベソ状態でうろたえる雅の神姫、セタ。
 天海最強の神姫、マヤアが相手ではセタに抵抗の余地は無い。
「まぁ、死ななければいいかな~、って……」
「再起不能は許容範囲!?」
 尻尾を丸めて本気で嫌がるセタ。
「帰って来たら、特選ワサビを買ってあげるわ」
「はい、ボク頑張ります!!」
 ワサビ一つで落せるお手軽な神姫であった。
(……まぁ、この状況でハッキング……。正直、土方京子と無関係とは思えないけど……)
「……たしか、アイツは予選第四バトルロイヤルに参加している筈だし……」
 土方京子。
 武装神姫はカトレア。
 現在、予選第四バトルロイヤルに参加中。
 即ち、アイゼンと同じ戦場に、カトレアは存在していた。


 “四足”からの重砲、至近。
 衝撃に耐えるよりも、吹き飛ばされてしまう方が直接的なダメージは少なくてすむ。
 着地をミスれば元も子もないが、元々重量級神姫での運用を前提としたザバーカの二重関節は、この手の衝撃吸収にもってこいだった。
「……ん!」
 しかし、焔星とぷちマスィーンズの連携はその上を行く。
 いつだって個の性能よりも、集団による連携こそが勝るのだ。
 そういう意味では焔星はある種の最強と言ってしまっても差し支えない。
「その隙、もらいました―――」
 着地の衝撃を受け止め切らぬうちに、アイゼンの眼前に踊り出る焔星。
 ほんの僅かにでも生じた隙を見逃さずに、一撃必殺を誇るプロトン砲を打ち込んでくるのも、プチとの連携に長ける焔星だからこそ。
 砲から漏れる白光は、最早回避の叶う距離ではない。
「―――お覚悟」
「……ッ!!」
『―――アイゼン!!』

 ―――。

 間断は一瞬だった。
 意識があるという事は、まだ負けてはいないと言う事。
 即時に戦闘続行を決意し、ホワイトアウトした視界が戻るより早く、アイゼンは前方の空間に掴みかかる。
(……掴まえてしまいさえすれば、あとは力押しで勝てる……)
 辛うじて動く右のチーグルが何かを掴む。
「なっ!?」
 焔星のものだろう驚愕が聞こえたのは、殆ど同時だった。
 プロトン砲の直撃を、交差させた左右のチーグルで受け止め辛うじて耐え切った代償に、チーグルの左腕部は肘から先が完全に融解し消失。
 左腕の下に位置していた右腕も、外装の滑空砲が完全に融解しチーグル自体も装甲剥離、握力低下と言う大損害だった。
 だが、アイゼン自身の腕部には然したる損傷も無い。
「……捕まえた!!」
 アングルブレードはチーグルと共に半壊し使用不能ではあるが、武器の豊富さもアイゼンの特徴の一つだ。
 背面からスゥイングしてきた翼部分のフルストゥ・クレインをもぎ取るように分解し、そのまま前方に突き出す。
 プロトン砲の直撃からここまで3秒。
 アイゼンの視界が機能を取り戻したのはその直後だった。

「……!!」

 半ばで断ち切られたフルストゥ・クレインの刃先は焔星には届いていない。
 同時に断ち切られたチーグルを振り払うように後退した焔星と、入れ替わりに肉薄してくる大鎌を構えた“球体”。
 プロトン砲の余波で装甲部分が融解していたとは言え、頑強さでは群を抜くチーグルを容易く両断した大鎌と、それを振り回す腕力は、すでにサポートメカなどと言うカテゴリに括って良いモノではない。
 如何足掻いても、一瞬後には両断されるしかない体勢で、アイゼンに出切る事は一つだけだった。
「……兵装、パージ」
 最早基部だけになってしまった背中のチーグルを爆破ボルトで強制排除し、その反動で地面に這い蹲る。
 同時に排除されたザバーカを真横に両断した死神の大鎌のすぐ下を、長いツインテールが潜り抜けていった。

「…………素晴らしい反応、……いえ、光阴がカバーに入ることまで『予測』されて居ましたか……」
 でも。と呟き、焔星は一歩間合いを詰めた。
「それもここまでです。……最早武器も無く、抗う術も無いでしょう……?」
 彼女の声に呼応するかの如く、二機のぷちマスィーンズが集まってくる。
「……」
『……』
 祐一とアイゼンの間に流れる沈黙は一瞬。
「……マスター、ゴメン」
『……仕方ない……、と言うか俺のミスだな―――』
「……?」
 アイゼンが顔を起こす。
 降伏などで無いことは、その目を見れば疑うべくも無い。
「…………、今更、何を……」
 擦り寄ってくるぷち達を撫でつつも、焔星は警戒を崩さなかった。
『―――元より、俺達の実力で出し惜しみなんて考えた方が愚策だったんだ……』
「……でも、カトレアはどうする? マスターか他の三人が外で見てると思う。……ここで使ったら、奇襲は出来ない」
『何とかするさ。……今までだってそうして来たし……。……作戦は俺の担当だ、まかせとけ……』
「…………。……………うん、分った……」
 アイゼンは応えてゆっくりと、……立ち上がった。









 やべぇ。
 ディスガイア、やべぇ……。

 わかってはいたんだけど、やべぇ。
 気付いたら一月経ってやがんのな。

 DS壊れるまでやった。
 ゲーム機壊すまでやったのはエスコン5以来だった。

 っつー訳で結論。

 ディスガイアは正に悪魔のゲーム。
 マジでオススメしない。
 満足するまで 数百時間 かかるゲームなんて……。

 ペルソナ4も、ドラクエ5もまだ手をつけてないのに……。












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