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鋼の心 ~Eisen Herz~


第19話:メタルジャケット



「~I'm thinker. I could break it down ♪」
『ちょっと、ちゃんと索敵しているんでしょうね?』
 筐体を通じて彼女だけに聞こえるマスターの声に、フォートブラッグは得意気に鼻を鳴らす。
「ふふん、こう見えても私の索敵能力は並みの神姫を凌ぐのです。その上、立地も良いとあっては敵を見逃すほうが難しいというもの」
『私が気にしてるのは、能力じゃなくて気構えと言うか、油断の有無と言うか……』
 狙撃銃を構えつつ、遺棄されたビルの屋上に陣取っているフォートブラッグに、彼女のオーナーは溜息を漏らす。
「いつもながら心配性ですね。そんなに気を張らなくても、敵が近付いてくれば一目瞭然です。―――ほら」
『!!』
 フォートブラッグの指した先に、複数の爆炎とマズルフラッシュ。
「どうやら既に始まっているようですね……」
『まだ撃っちゃダメよ?』
「何故です? 戦わなければ生き残れない、……のでしょう?」
『途中でやられたら無意味でしょう? まだ残敵はたくさん残ってるし、ここは慎重に行きましょう』
「……ふむ……。まぁ、マスターがそう言うのならそうしましょう」
 慇懃に承ると、彼女は銃のセーフティを手馴れた動作で外す。
「……では、始めます、指示を……」
 そう言ってフォートブラッグは初めて狙撃銃のスコープを覗き込んだ。
 狭まる視界の中に、4機のハウリン達による乱戦が飛び込んでくる。
『それじゃあ、慎重にね。サラ』
「わかっていますよ、ハルナ」
 砂漠の悪魔が、今。
 その牙を剥く!!

「ま、砂漠じゃないんですけどね……」
 色々台無しだった。


「ふはははははは、行くぞβ(ベータ)、γ(ガンマ)!!」
「応!!」
「我等が三位一体の必殺技、ジェットストリームアターック!!」
 三機のハウリンが一直線に並ぶ。
「ふははははは、運が無かったな!!」
「くははははは、全くだ!!」
「わははははは、我らサーべラスの相手になった不幸を呪うがいい!!」
 そして、標的となった神姫、こちらもハウリンだが、彼女に向けて一直線に突進してゆく。
「…………」
「ふははははは、恐怖の余り声も出ないか!?」
「くははははは、哀れなものだな!?」
「わははははは、これが実力の差と言うものだ!!」
「…………」
 この三機、天海神姫センターではかなり有名な神姫である。
 ランクこそ低いものの、三位一体の必殺技を駆使するこの神姫たちは、対戦相手に痛烈な印象を残す事で知られていた。
「ふははははは、もうすぐ射程距離だぞ」
「くははははは、それが貴様の命運の尽きる時」
「わははははは、我等が必殺の一撃に―――」
「―――えい。」
 ハウリンの発射した吠莱の一撃で、サーべラス達が纏めて吹っ飛んだ。
「ぐはぁ!?」
「なんと!?」
「馬鹿な!?」
「おお、当たりました」
 自らの攻撃の成功を、さも意外と言わんばかりの声でハウリンが呟く。
「……………。ところでマスターさん」
『なんでしょう犬子さん』
「なんだか当たりそうだなーと思ったのでつい撃ったら本当に当たってしまいましたが、どうしましょうか?」
『どうしましょうかと言われましても、戦闘中なんですから問題ない……はずですよねぇ?』
「そのはずですよねぇ? ですがなんと申しますか、当たりそうだと撃ったら、華麗に回避されるとか何か反撃受けるとか、そういう展開を想像していたものですから」
『ああ、それは僕も正直同感でした』
 ある意味では絶大な信頼だと言える。
「同感でしたか。ですがそれが予想に反して直撃してしまったものですから、どうしたものかと」
『どうしたものでしょうねぇ』
 一直線に並んで、距離を離さないように突進せねばならない為、彼女達の行進速度は極めて遅い。
 技の開始から、初撃までおおよそ30秒。
 その間、もの凄く狙いやすく、密集して一直線に移動するだけである。
 なんと言うかその、このハウリンに限らず、対戦相手は攻撃したくなる衝動に抗えないというもっぱらの噂だった。
『まあ、これで良かった事にしてしまいましょう……』
「そうですか、でも―――」
「―――お、おのれ、卑怯な……」
「必殺技の最中は攻撃をしないという不文律も知らんのか?」
「オマケに避けられないのを良い事に吠莱なんかぶっ放しやがって……」
「あ、生きていましたか。えっと……」
『さて、困りましたねぇ……。勝てない事は何度もありましたが……。どうしたものでしょうね、犬子さん……』
「はい、この様なケースは初めてです……」
 三機一組の黒いハウリン。サーべラス。
 三人揃って半人前以下、と言う天海最弱の神姫たちを相手に、犬子さんと呼ばれた神姫とそのオーナーは戸惑いを隠せなかった。
 後に彼女はこう語る。
(なんと言いますか、その……。生まれて初めて弱い者いじめをしている気分になってしまいました……)
 と。
「ぅう……、苦節3年。初めて必殺技が決まると思ったのに……」
「泣くな、α(アルファ)。まだやれる、我々はまだ、敗北したわけではない筈だ」
「そうとも。まだ負けた訳じゃない。負けを認めたわけじゃないんだ」
「お、お前ら……」
「負けを認めない限り、敗北ではない。そして我等は一度だって負けを認めた事など無い筈だ」
「つまり、我等は無敗だという事。つまり、この3年間一度たりとも負けていない!!」
「おおぅ!! つまり、我等は無敵と言うことか!?」
「その通りだ、我々サーべラスは無敵の神姫なのだ!!」
「さすが我ら、何時の間にやら無敵なっていたとh―――」
「―――えい。」

 ちゅど~ん。
 三機揃って再度吹き飛ぶサーべラス。

「うぅ……ッ、感動的なシーンに攻撃するとは、貴様、鬼か!?」
「なんと恐ろしい、この様な強敵は初めてだ……!!」
「貴様、さては只者ではないな!?」
 ズタボロになりながらも、犬子さんと呼ばれたハウリンを指差すサーべラス達。
 如何でも良いが、存外頑丈な連中である。
「……マスターさん、どうしましょう? 私、なんだか悪い事をしているような気になってきました……」
『……では、彼女達の必殺技を一度受けてみるというのはどうでしょう?』
「……そ、そうですね……。そうしましょうか……」
「なんと!? 我らの必殺技に耐えるつもりか!?」
「大した自信だが、後悔するなよ!?」
「そうとも、未だかつて、この技に耐えた神姫など一人も居ないのだからな!!」
 そもそも成功したことが一度もありません。
「では往くぞ!!」
「三位一体!!」
「ジェットストリームアターック!!」
 武器を構え、一直線に並んで突進してくるサーべラス。
「ふははははは、貴様が栄えある犠牲者第一号だ、光栄に思うがいい!!」
「くははははは、我らの最初の獲物として後世に名を残すのだ!!」
「わははははは、我等が有名になって自伝とか書くとき、隅っこのほうにちょっとだけ名前とか書いてやらんでも―――、ぐハッ!?」
 サーべラスの一人(犬子さんと呼ばれたハウリンには見分けがつかなかった)が突如真横に吹っ飛ぶ。
「なんと!?」
「貴様っ!! 不意打ちとは卑きょ―――、ぐハッ!?」
「え、いえ。私は何も……」
「ああ、二人ともしっかりしろ。ただ頭を撃たれただけじゃないか、傷は浅いz―――、ぐハッ!?」
「ええと、マスターさん?」
『あ、もしかして狙撃なんでしょうか?』
「ああ、なるほど―――」
 頷いた所で、犬子さんの脳天に銃弾が突き刺さり、彼女はそのまま意識を失った。


『…………………』
「……いえ、言いたい事は分るのですよ、ハルナ」
『………そうね、うん。あれは、仕方ないわよね……』
「ええ、流石にあそこまで隙だらけだと、引き金を引く指を押さえ切れませんでした……」
『………なんだか色々問題があるような気もするけど、深く考えるのは止めましょう……』
「賢明です」
 色々な問題を棚上げし、サラは狙撃姿勢を解く。
「まぁ、何はともあれこれで撃墜数は…………、おや?」
『サラ?』
「変ですね、何でスコアに変動が無いのでしょう?」
『……まさか、4人ともまだ生きてるとか?』
「ははは、何を馬鹿なことを。全員眉間と蟀谷(こめかみ)にヘッドショットですよ? これで生きている訳が…………」
 あった。


「うう、目の前がチカチカする……」
「大丈夫か、二人とも?」
「ふっ、おまえこそ。……眉間から何か出てるぞ?」
「あぁっ!? しっかりしろ、気を強く持て!! 大丈夫、私達はやれば出来る子だ!!」
「ふふふ、二人とも心配ないさ。ちょっぴりオデコに穴が空いた位じゃないか」
「流石だな、その程度ではびくともせんか。それでこそ我らと言うもの」
「「「ははははははははははははははは―――」」」
 高笑いをするサーべラス達の眼前で、同じく気絶から復帰した犬子さんが起き上がる。
「ぬ、貴様、やはり生きていたか!?」
「それでこそ我等が認めた強敵!!」
「因みに、強敵と書いて『トモ』と呼ぶ!!」
「やや、これはどうもご丁寧に」
『よかったですねぇ、お友達が増えて』
「ええ、まったくで―――」
 その時、ふと何かの影に入ったことに犬子さんだけが気が付いた。
「………………ぁ、わわわ……」
『……おや? どうしました、犬子さん?』
「ん、なんだ? こいつ震えてやがる」
「まぁ、我らの恐ろしさを前にすれば無理も無かろう」
「ようやくコヤツも我々の恐怖を理解したという事か」
 ちょんちょん。
「今取り込み中だ、後にしろ」
「そうだそうだ。これからこのハウリンに我らの恐怖を更に刻み付けてやるのだ」
「トラウマで不眠症になるがいい」
「「「ははははははははははははははは―――」」」
 ちょんちょん。
「ええぃ、後にしろと言うのが分らんか!?」
「無粋な奴め、三対一の決闘に水を差すとは何事か!?」
「全く、一体何処の馬鹿者……、だ。……ぁ?」
 振り返ったサーべラス達の背後には、山のように巨大(おお)きな威容。
 真ん中あたりに埋め込まれるように組み込まれている神姫素体に気付けば、それもまた武装神姫なのだと知れる。
 そして、巨躯に違わぬ大砲の砲口が既に彼女達をその射線に捕らえており……。

 三度、サーべラス(+犬子さん)は天高く吹き飛んだ。


「………………なっ、……なんですか、アレ?」
『神姫……、よね?』
 サラのスコープに映りこむ巨躯。
 通常の神姫の優に倍はある全高と、推定で10倍以上の質量。
 四本足の巨大な鉄塊が、砂煙を上げて荒野を疾走してくる。
 放った砲弾の一撃でハウリン四人を纏めて吹き飛ばし、迷う事無くただ一直線に、ただ一点を目差して。
 即ち。
『サラ!?』
 突如として陣取っていたビルの屋上から飛び降りた自らの神姫に、ハルナが困惑の声を上げる。
「どうやら見つかったようです。一直線にこちらに来ますよ!!」
 背負ったバックパックから一対のアームを展開し、ビルとビルの間の壁に爪を立てるサラ。
 アームで落下速度を殺しながら、屋上から直接地面に飛び降りる。
『迎撃なら、屋上の方が……!!』
「ハルナも見たでしょう。アレだけの武装があるのなら、私ならビルの屋上に陣取る狙撃手は“ビルごと”吹き飛ばします!!」
 その言に違わず、次の瞬間、サラが陣取っていたビルが砲弾の直撃を受けて爆散した。


 天海には、要塞さんの異名で知られる神姫が居る。
 無数の重砲にガトリング、ミサイル、Sマインなどを満載し、それらを分厚い装甲で鎧う超重量級神姫。
 比喩など抜きに、文字通り一騎当千の火力と装甲を誇るその神姫に『要塞さん』と言う渾名がついたのは、ある種の必然だろう。
 彼女は正しく移動要塞の如き威容を持ち、敵対する神姫の攻撃をその装甲で受け止め、尽くをその砲火で討ち取ってきたのだから。

 要塞さん。
 その真名を、蛇神が一柱に因み『清姫』と言う。


「……全く、マラソンは得意ではないのですがね……」
 ある程度想定していた事態とは言え、ビル街に陣取ったのが功を奏し、無数の遮蔽物を利用してサラはその暴威から距離を保つ事に成功していた。
『こんな事ならストライクイーグルも持って来れば良かったわね?』
「無い物ねだりをしても仕方ないでしょう。ハルナ、指示を下さい」
『……とりあえず、距離を取るわよ。あんな化け物に近付くなんてただの自殺行為だわ』
「同感です」
 手持ちの火器は狙撃銃とグレネードランチャー。
 それから手榴弾が数発。
 通り名の由来ともなったクラブハンドも持ってはいるが、あの装甲を相手にしては流石に通用するとも思えない。
「まぁ、狙撃銃も効かないかもしれませんが、流石にランチャーの間合いでアレと相対するのは嫌ですし……」
 言いながら、手榴弾のピンにワイヤーを結び、廃ビルの割れた窓の中に放り込んでおく。
 これで、敵がそのビルの傍を通った時にワイヤーを引っ張れば、窓枠で引っかかった手榴弾からピンが抜け爆発するという寸法だ。
 簡単なトラップとしても使えるし、敵がこちらを見失った時に使えば位置を誤認させる事もできるだろう。
「上手く行けば良いのですが……」
 そう呟いた瞬間、要塞さんが“ビルを突き破って”サラの居る通りに出てきた。
「なッ!?」
 そんな要塞さんの足元で小爆発。
 先ほど仕掛けた手榴弾などまるで通用していない。
 更には崩れてきたビルが要塞さんの上に雪崩落ちるが、彼女はその瓦礫を振り払って大通りまで歩み出る。
『サラ、逃げなさい!!』
「―――!?」
 主の声に我に返ったサラが、手近な路地に逃げ込むと同時に、先ほどまで居た場所を砲弾とミサイルが爆砕し尽くした。
「痛っ…!!」
 爆圧で跳ばされ、路地の反対側に押し出されるサラ。
 幸い距離は稼げたが、その被害はある意味では甚大だった。
『大丈夫、サラ!?』
「私は問題ありません。ですが……」
 言いよどんで、サラは背負っていたランチャーを取り出した。
「……最大火力が死にました」
『………………っ』
 瓦礫の破片が深々と突き刺さったランチャーを背負い直し、サラは再び走り出す。
『最悪、爆薬か何かでビルを崩して下敷きにするとかも考えていたけれど……』
「どうやら効かないようですね」
 ハルナには認めがたい事実を飄々と肯定するサラ。
「さて、どうしますか。ハルナ?」
『待ってて、今考えるわ』
 とは言え、サラの武器で最も威力があるのはランチャーのパイルバンカー。
 それが失われた現状、狙撃銃以上に貫通力がある武器は無い。
『でも、狙撃銃でも通用するとは思えないし……』
「それを言うなら、あの火力を掻い潜って肉薄すると言うのも絵空事ですが……?」
 パイルバンカーを使用するには至近距離まで近付かねばならないが、さして機動力が高い訳でもないサラに、あの弾幕を抜けられるとも思えなかった。
 そもそも、本当にパイルバンカーならばあの装甲を貫けるという確証も、それで倒せるという保障も無い。
『……どうしたらいいのよ、あんな化け物!!』
「落ち着いてください、ハルナ。そんなサカリの付いたメス犬ように吠えても、今はハチヤも居ないのですよ?」
『そうね―――、って、メス犬って何よ!?』
「ああ、失礼」
『あのね―――』
「―――ハルナはどちらかと言えば、いぢめられて悦ぶドMの乳牛でしたね」
『ね、じゃない!! どうしてアンタはそうやって人の事をマゾだのなんだのにしたがるのよ!?』
「もちろん面白いからですが」
『断言した!? キッパリと断言した!?』
「それはさて置き対抗策ですが……」
『その上さて置かれる訳!? その前にちゃんと訂正しなさいよ!!』
「やれやれ、状況を正しく理解しているのですかハルナは?」
『それはアンタだぁ!!』
「全く、これ以上ごねる様ならハチヤとの初体験の記録をレポートにしてネットにばら撒きますよ?」
『はっ、初体験!? ……って、まだだもん!!』
「……おや、キスの初体験の事ですが……。何の初体験と誤解したのですか、ハルナ?」
『ああ、ハメられた!?』
「いえ、ハメるのはハチヤの役目です。ハルナもその方がイイのでしょう?」
『あーもう、黙りなさい!! この馬鹿鉄砲!!』
「hahahahahaha、愉快ですね。ハルナは」
 笑いながら、サラはハルナの指示通りに逃げ惑う。
 その後ろを、要塞さんが追いかけていた。
 途上のビルを尽く粉砕しながら……。


 交戦開始から既に15分。
 サラが遮蔽物となるビルの影に隠れては、要塞さんがそれを粉砕するという鬼ごっこも終焉に近付きつつあった。
 最早ビル群と呼べるほどの数も無く、周囲はかつてビルであった瓦礫で埋め尽くされている。
「…………………」
 発砲。
 要塞さんの放った砲弾が残された数少ないビルの一つを破砕。
「…………………」
 センサーを凝らして周囲を確認するも、動くものなど何も無い。
 敵の姿を見失わないようにビルを破壊してきたはずなのに。
 遮蔽物が尽く倒壊した廃墟の中で、要塞さんは敵の姿を見失っていた。
「…………、―――!!」
 踏み締めた足元で爆発。
 手榴弾の1つや2つでは、被る被害など毛ほども無いが、それが七度も続けば流石に辟易してくる。
 苛立ちまぎれに大き目の瓦礫、即ち、遮蔽物として使えそうな塊を主砲で打ち抜き粉砕するが、敵の姿は見当たらない。
 弾薬の余剰はあと4割。
 普通の神姫ならばバトルロイヤルの2,3回もこなせる程の量が残っているが、それを打ち込むべき敵の姿は何処にも無い。
 ならば、取る手段は一つ。
 この瓦礫の海の何処かに敵が居るのは判っているのだ。
「…………………」
 清姫は、ありったけの弾薬を周囲にばら撒き始めた。


『さて、そろそろ、かしらね?』
「そうですね。それでは、反撃と行きましょう」
 ハルナの言に口火を切られた狙撃銃が火を噴き、要塞さんの装甲を徹甲弾が引っ掻く。
「―――!!」
 回頭し、狙撃の来た方向に無数のミサイルをばら撒くが手応えは無い。
 不意打ちに備え、狙撃方向の警戒を密にするその足元で八度目の爆発。
「!!」
 集中が削がれた瞬間に、再度銃弾が装甲を叩く。
「―――!!」
 マズルフラッシュを見逃せば、隠れた狙撃手の位置を正確に知る術はない。
 爆弾も銃弾もまるで通用してはいないが、それでも清姫は追い詰められていた。
 そして、位置を変えようとした彼女の足元で九度目の爆発。
 しかし、清姫もまた、その瞬間を待っていた。
「!!」
 足元に気を取られる事無く、広く保った視界の隅でマズルフラッシュ。
 小さな瓦礫の隙間に除く銃口を発見するや否、清姫はありったけの砲弾を叩き込む。
 フォートブラッグなど数十回倒してもお釣りの来る程の威力を叩き込み、警戒を解かぬままに硝煙の晴れるのを待つ。
 薄れてゆく煙の中に、捻じ切れ、天を向いた銃身を確認。
 そこに居た狙撃手が生き延びた筈も無いが、撃墜カウントもまた、入っては居ない。
 真偽を確めるべく一歩踏み出した清姫の足元で爆音。
「……!」
 半ば予測していた為に動揺もせず、清姫は視界を上げて視野を保つ。
 罠だと言う予想は当たっていた。

 ただし。

 罠そのものには既に嵌まっていた。
 数個目のビルを砕いた、その瞬間から……。


 周囲は一面に瓦礫の海。
 まるで、それが“砂漠”のように見える事になど、要塞さんは気付きもしない。

 そして、今相対しているフォートブラッグの異名も。
 その実績も……。


 瓦礫の隙間に挟み、トリガーにワイヤーを挟んだ狙撃銃では射撃方向は制限される。
 と言うかむしろ固定だ。
 だがしかし、敵は巨大(おお)きく的はこの上なく広かった。
 更に、同様の仕掛けで遠隔操作できる手榴弾を使って位置を誘導すれば、狙いを違わず穿つ事も不可能ではない。
 サラは、ワイヤーで遠隔操作した狙撃銃と爆弾を駆使し、要塞さんを誘導……。
 今、正に、その間合いへと踏み込ませることに成功した。
『今よ、サラッ!!』
「オーケィ、ハルナ!!」
 要塞さんの真下から、瓦礫を弾き飛ばして起き上がるサラ。
 間髪居れずに、副腕で抱えたグレネードを真上、要塞さんの無防備な腹部に叩き込む。
 弾頭は既に鉄鋼杭弾に交換済み。
 副腕の腕力で先端部を強引に突き刺し、反対側の手で適当に要塞さんの身体を掴んでホールド。
 間接部をロックして固定するや否、バックユニットをパージ。
「―――!!」
 状況を察した要塞さんが足元にSマインをばら撒き、炸裂した弾頭が四方からサラを打ち据えるが、彼女はその一撃には辛うじて耐える。
 そして、その右腕には通り名の由来となったクラブハンド。
 それを今しがた打ち込んだグレネードに向けると……。
「Shake it up baby!!」
 その引き金を目一杯に引き絞った。

 壊れたと言っても『筒』と『炸薬』と『弾頭』が残っているのならば、その威力には何の変わりも無い。
 グレネードの底部を無数の銃弾が叩き、そして。
 誘爆した炸薬が、パイルバンカーをゼロ距離で打ち込んだ。


「あははは、やりましたよ。ハルナ」
『……ふぅ、生きた心地がしないわね……。と言うか、よく勝てたわね、あんな化け物に……』
「何を言うのです。私とハルナならば当然の結果でしょう?」
『そう言われるとなんか恥ずかしいわね……』
 言葉を飾る事無く栄誉を分け合う神姫の言に、彼女は少しだけ頬を赤らめる。
「それはさて置き、とり急いで報告したい事があるのですが……?」
『……? 何よ?」
「実は……、先ほどのSマインで少々手傷を負いまして……」
『だ、大丈夫なの!?』
「ええ、単に歩けなくなっただけです」
『な、なんだ……、その位すぐに治るんでしょう?』
「それはもう、30分もあれば簡単に治るようなものですが……」
『……どうしたの?』
「ハルナ、大会の開始前に配布されたパンフレットを見てください……」
『……? ええと、予選バトルロイヤルを勝ち抜くには、基本的に、規定数の敵を倒して“ゲートから外に出る事で”達成されます……』
「ちなみに、私は、今、歩けません。全く、一歩も……」
『あ』
 ハルナもようやくサラが言外に言わんとする事に気が付いた。


 ハルナ&サラ組。
 第三予選バトルロイヤル。

 ……突破ならず。


「まぁ、考えてみたら撃墜数も1しかないのに、残った武器がクラブハンドだけでは、如何にもならなかったかもしれませんが」
『ああ゛!? しゅ、修理費!? ライフルに、グレネード、バックユニットまで!?』
「合計で金額は―――」
『―――嫌ぁ!! 聞きたくないぃ……!!』
「しかし、何時かは直面しなければならない問題です」
『何で嬉々としているのよ、アンタ!?』
「別に、懊悩するハルナを見ていると心が晴れ晴れするとか。苦悶するハルナを見ていると優越感に浸れて気持ちいいとか。打ちひしがれるハルナを見ていると生きている喜びを実感するとか、そんな事は一切ありませんですよ?」
『あるんじゃないっ!!』
 戦闘終了までの時間、二人はこうして過ごしたと言う。

 なお、戦闘中の消耗、破損は、神姫センターが5~9割を負担する制度があるが、ハルナがそれを知ったのはもうしばらく先となる。


 因みに、サーべラスと犬子さんの合計4名のハウリンは、その後も気絶し続け、戦闘終了間際にやってきた一人の神姫にキッチリ止めを刺されたと言う。
「えへへ、やったのです。漁夫の利なのです。兎転げる樹の根っこなのですよ~。るんるん」
『丸儲けですね、デルタ』
「えへへ……」
 撃墜数4にて、デルタ1。本戦進出。

 以上、予選第三バトルロイヤル終了!!







本作はコラボレーションでお送りしております。
色々と忙しい中、ご協力くださったミヤコンさま、土下座さまにはいくら感謝してもしきれません。
ALCにできる事など、SSを書くだけなので、そちらでご恩返しが出来れば、と思いますが…。

などと、言いつつ今回もネタ満載。


協賛はミヤコンさま、土下座さま。
出演は(50音順、敬称略)
 犬子さん
 サラ
 ハルナ
 マスターさん
コラボも仕上げたので、ようやく安心してディスガイアにハマれるALCの提供でお送りしました。

ミヤコンさま、土下座さまの作品へのリンクはコチラ。
  クラブハンド・フォートブラッグ 
  犬子さんの土下座ライフ。












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