「……3Sが斬る、なし崩しに始まり」
「今回は某企画に便乗して、ブレザーバージョンでお送りします」
「さすがにこのような服装は、気恥ずかしいですねワン」
「こういう時に言うべき台詞は二つに一つ」
「ほう?」
「と言いますとワン?」
「『七五三みたい』か、『どこのふーぞく?』」
「……どちらに該当すると言いたいのでしょうか?」
「言わぬが花」
「テッコさん、あとでじっくり話し合いましょうかワン」
「ええ、私も同席させていただきます。
それはそれとしまして、ですね。
それでせっかくの学校シチュエーションです、なにか学校っぽい事をやってみましょう」
「それはよいお考えですワン」
「(ぱちぱち)」
「それで、学校らしい事といいますとワン? 恥ずかしながら私は、既に社会人であるマスターの元に迎えられたため、学校と言う環境にはとんと馴染みがありませんでしてワン」
「そこはそれ、現役学生マスターをもつ私たちにお任せあれ」
「(えっへん)」
「おおー、頼もしい限りですワン。それで、具体的にはワン?」
「学校らしい事……不良のいじめ?」
「ああ、そうですね。そしてその不良も、教師側から煙たがれて事あるごとに退学させようと目論まれているという悪意の連鎖など定番ですね」
「そこから学級崩壊」
「そのまえに、登校拒否も忘れてはいけません」
「……うっかり」
「いえあの、学校と言う環境はもう少し穏便な場所ではないかと思いますがワン……」
「むむ?」
「ですが、マスターが学校に行ってる間に、私が暇潰しで見る学園ドラマなどは、多かれ少なかれこのような筋のものばかりですが?」
「(うんうん)」
「つまりあなた方も、学校の実情にはそれほど詳しくないとワン」
「なんでバレたのですか!」
「びっくり」
「……いえ、まぁ、その件は置いておくとしましてワン……
そうですね、無難なところで授業のマネなどをやってみましょうかワン」
「無難ですね、無難すぎます。なにかこう、ぐっと来るものがないと取り残されますよ」
「若者には無茶が必要」
「そこは素直に頷いておいてください、話が進みませんからワン……」
「ち、仕方ありませんね」
「一つ貸し」
「恩を押し付けられましたワン?!
気を取り直して……そうですね、国語でもしてみてはいかがでしょうワン」
「国語、ですか?」
「ええ、以前『秋物に凝ってナマズの服』などという、ひどい慣用表現を使った方もいますことですしワン」
「ナニソレ犬丸? 『羹に懲りて膾を吹く』の積もり? ありえない。ひどすぎ。ひょっとしてギャグ?」
「……今私は、非常に理不尽な気持ちを味わっていますワン」
「まぁまぁ。それじゃあ一つテキトーに、研究発表チックに慣用句についてでも語って見ましょうか」
「(こっくり)」
「ではそういうことでワン」
「言いだしっぺと言うことで、まずは私からいきましょう。そうですね……
『情けは人のためならず』について」
「「(ぱちぱち)」」
「この慣用表現は、『安易に情けをかけると、その人のためにならない』と言う意味……
と、勘違いされることが多いですね」
「(うんうん)」
「おおー、お見事ですワン。まさにそのとおりですワン」
「ポイントは、『自分に返って来る』ということ。この要素を加味すれば、答えはおのずと見えてきます」
「隙の無い論理展開ですワン」
「やる……!」
「すなわち! この慣用表現の真の意味は、『反撃を受けないために、止めは刺せる時に容赦なく刺せ、それこそが慈悲』だと!」
「我々武装神姫には、必要な心構えですねワン」
「(うんうん)」
「スナイパーである私にとっては、特に重要な事です」
「お見事ですサラ(仮)さん」
「お疲れ」
「さて、では次は誰が行きますか?」
「(挙手)」
「おお、テッコさんが積極的ですワン」
「これは期待できそうですね」
「……『船頭多くして船山に登る』……」
「ほほう、それで来ましたかワン」
「それで、その心は?」
「『皆で力を合わせれば、一見不可能な事だって実現できる!』(握り拳)」
「うんうん、よい言葉です」
「もとより我ら武装神姫、マスターとの二人三脚が大前提ですワン」
「協力、とても大事」
「まさか、この殺伐が持ち味のこのコーナーで、こんな感慨深い言葉を聞けるとは」
「やりますねテッコさん」
「(えっへん)……最後、犬丸」
「承りましたワン。見事取りを務めてご覧に入れましょうワン。
では、私は……『死中に活を求める』について語らせていただきますワン」
「期待していますよ」
「がんばれ」
「ありがとうございますワン。
それで『死中に活を求める』はですね……かつてとあるスポーツ選手が試合前にトンカツとシチューを食べるのが定番だったのですが、ある日時間がなかった時に、店主に頼んでカツをシチューに入れてもって来て貰ったのですワン。
それを見た店主は、煮込み料理と揚げ物を組み合わせる着想を得て、そこから大ヒット商品……いえ今では定番と言うべきカツカレーを生み出したという故事に基づく、窮地においても最後まで諦めない事でそこから逆にチャンスを得ることを言います」
「最後まで諦めない事、これもまた我々には重要な事ですね」
「昔の偉い人は言った……『諦めたら、そこで試合終了だよ』」
「ご清聴ありがとうございましたワン、お粗末さまでしたワン」
「お疲れ」
「なんだか今回の3Sは、きれいにまとまりましたね」
「たまにはこういうことがあってもよろしいかとワン」
「(うんうん)」
(和やかな笑い声が満ち、それが徐々にフェードアウトしていく)
「今回は某企画に便乗して、ブレザーバージョンでお送りします」
「さすがにこのような服装は、気恥ずかしいですねワン」
「こういう時に言うべき台詞は二つに一つ」
「ほう?」
「と言いますとワン?」
「『七五三みたい』か、『どこのふーぞく?』」
「……どちらに該当すると言いたいのでしょうか?」
「言わぬが花」
「テッコさん、あとでじっくり話し合いましょうかワン」
「ええ、私も同席させていただきます。
それはそれとしまして、ですね。
それでせっかくの学校シチュエーションです、なにか学校っぽい事をやってみましょう」
「それはよいお考えですワン」
「(ぱちぱち)」
「それで、学校らしい事といいますとワン? 恥ずかしながら私は、既に社会人であるマスターの元に迎えられたため、学校と言う環境にはとんと馴染みがありませんでしてワン」
「そこはそれ、現役学生マスターをもつ私たちにお任せあれ」
「(えっへん)」
「おおー、頼もしい限りですワン。それで、具体的にはワン?」
「学校らしい事……不良のいじめ?」
「ああ、そうですね。そしてその不良も、教師側から煙たがれて事あるごとに退学させようと目論まれているという悪意の連鎖など定番ですね」
「そこから学級崩壊」
「そのまえに、登校拒否も忘れてはいけません」
「……うっかり」
「いえあの、学校と言う環境はもう少し穏便な場所ではないかと思いますがワン……」
「むむ?」
「ですが、マスターが学校に行ってる間に、私が暇潰しで見る学園ドラマなどは、多かれ少なかれこのような筋のものばかりですが?」
「(うんうん)」
「つまりあなた方も、学校の実情にはそれほど詳しくないとワン」
「なんでバレたのですか!」
「びっくり」
「……いえ、まぁ、その件は置いておくとしましてワン……
そうですね、無難なところで授業のマネなどをやってみましょうかワン」
「無難ですね、無難すぎます。なにかこう、ぐっと来るものがないと取り残されますよ」
「若者には無茶が必要」
「そこは素直に頷いておいてください、話が進みませんからワン……」
「ち、仕方ありませんね」
「一つ貸し」
「恩を押し付けられましたワン?!
気を取り直して……そうですね、国語でもしてみてはいかがでしょうワン」
「国語、ですか?」
「ええ、以前『秋物に凝ってナマズの服』などという、ひどい慣用表現を使った方もいますことですしワン」
「ナニソレ犬丸? 『羹に懲りて膾を吹く』の積もり? ありえない。ひどすぎ。ひょっとしてギャグ?」
「……今私は、非常に理不尽な気持ちを味わっていますワン」
「まぁまぁ。それじゃあ一つテキトーに、研究発表チックに慣用句についてでも語って見ましょうか」
「(こっくり)」
「ではそういうことでワン」
「言いだしっぺと言うことで、まずは私からいきましょう。そうですね……
『情けは人のためならず』について」
「「(ぱちぱち)」」
「この慣用表現は、『安易に情けをかけると、その人のためにならない』と言う意味……
と、勘違いされることが多いですね」
「(うんうん)」
「おおー、お見事ですワン。まさにそのとおりですワン」
「ポイントは、『自分に返って来る』ということ。この要素を加味すれば、答えはおのずと見えてきます」
「隙の無い論理展開ですワン」
「やる……!」
「すなわち! この慣用表現の真の意味は、『反撃を受けないために、止めは刺せる時に容赦なく刺せ、それこそが慈悲』だと!」
「我々武装神姫には、必要な心構えですねワン」
「(うんうん)」
「スナイパーである私にとっては、特に重要な事です」
「お見事ですサラ(仮)さん」
「お疲れ」
「さて、では次は誰が行きますか?」
「(挙手)」
「おお、テッコさんが積極的ですワン」
「これは期待できそうですね」
「……『船頭多くして船山に登る』……」
「ほほう、それで来ましたかワン」
「それで、その心は?」
「『皆で力を合わせれば、一見不可能な事だって実現できる!』(握り拳)」
「うんうん、よい言葉です」
「もとより我ら武装神姫、マスターとの二人三脚が大前提ですワン」
「協力、とても大事」
「まさか、この殺伐が持ち味のこのコーナーで、こんな感慨深い言葉を聞けるとは」
「やりますねテッコさん」
「(えっへん)……最後、犬丸」
「承りましたワン。見事取りを務めてご覧に入れましょうワン。
では、私は……『死中に活を求める』について語らせていただきますワン」
「期待していますよ」
「がんばれ」
「ありがとうございますワン。
それで『死中に活を求める』はですね……かつてとあるスポーツ選手が試合前にトンカツとシチューを食べるのが定番だったのですが、ある日時間がなかった時に、店主に頼んでカツをシチューに入れてもって来て貰ったのですワン。
それを見た店主は、煮込み料理と揚げ物を組み合わせる着想を得て、そこから大ヒット商品……いえ今では定番と言うべきカツカレーを生み出したという故事に基づく、窮地においても最後まで諦めない事でそこから逆にチャンスを得ることを言います」
「最後まで諦めない事、これもまた我々には重要な事ですね」
「昔の偉い人は言った……『諦めたら、そこで試合終了だよ』」
「ご清聴ありがとうございましたワン、お粗末さまでしたワン」
「お疲れ」
「なんだか今回の3Sは、きれいにまとまりましたね」
「たまにはこういうことがあってもよろしいかとワン」
「(うんうん)」
(和やかな笑い声が満ち、それが徐々にフェードアウトしていく)
「……えーと」
「……うーん」
「ええと……これ、ツッコんだら負けとか、そういうゲーム?」
「そう、なのかもしれませんねぇ、もしかしたら……?」
「『情けは人のためならず』は、『誰かに優しくした事は、巡り巡って自分に返ってくる』という意味だね。
『船頭多くして船山に登る』は、『皆があれこれ口出しして、事態がとんでもない方向に行ってしまう』こと。
『死中に活を求める』は意味としては合ってるけど、説明されてる成立エピソードは、普通にカツカレーの起源として有力視されてる説だね。もっともそれでは、シチューじゃなくて普通にカレーとカツの注文だけど」
「ツッコミいったー!」
「しかも詳細に!」
「え? なに? 何かまずかったかな?」
「いえ、その、まずいというわけでもないんですが……」
「朴念仁て、時としてものすごく強いわねぇ……」
「ええ……」
「?」
「……うーん」
「ええと……これ、ツッコんだら負けとか、そういうゲーム?」
「そう、なのかもしれませんねぇ、もしかしたら……?」
「『情けは人のためならず』は、『誰かに優しくした事は、巡り巡って自分に返ってくる』という意味だね。
『船頭多くして船山に登る』は、『皆があれこれ口出しして、事態がとんでもない方向に行ってしまう』こと。
『死中に活を求める』は意味としては合ってるけど、説明されてる成立エピソードは、普通にカツカレーの起源として有力視されてる説だね。もっともそれでは、シチューじゃなくて普通にカレーとカツの注文だけど」
「ツッコミいったー!」
「しかも詳細に!」
「え? なに? 何かまずかったかな?」
「いえ、その、まずいというわけでもないんですが……」
「朴念仁て、時としてものすごく強いわねぇ……」
「ええ……」
「?」