鋼の心 ~Eisen Herz~
第18話:きすみみ
「ネコミミ、ネコミミ、ネコミミモード。ネコミミモードで~す♪」
戦場の空、レインディアバスターの上で陽気にはしゃぐマオチャオが居た。
『……いきなり何を口走ってんのよ、アンタ』
ぶっちゃけ、マヤアだった。
「うむ、今日のネコは少しワクワク全壊モードなのだよ浅葱クン」
『全壊?』
「ああ、間違い間違い。全開な、全開」
『口語で漢字を間違えられるのも、ある意味凄い事ですわね……』
会話でそれに突っ込める貴女ほどじゃありません。
『んで、そんなにご機嫌なのはどうしてですの?』
顔を顰めながら問う浅葱。
このバカネコがはしゃぐとロクナコトが無いのは経験則で熟知していた。
「うむ、今日のネコは新兵器と新奥儀の二本立て、そう。最早今までのネコとは違う生まれ変わった新・ネコ!! って言うかここはやはり英語でカッコヨク『ニューネコ』とか名乗ってみるのは如何だろう浅葱」
『英語なのに、ネコ?』
「応!!」
『……………………はぁっ』
「なんだそのため息は!? ため息付くと幸せが逃げてくんだぞ、不幸になるんだ!! 浅葱が不幸になるのは楽しいが、ネコがそれに巻き込まれるのはゴメンなので、浅葱には幸せになって欲しいネコが居るっ!!」
『なんだか今、聞き逃せないセリフが混じってませんでした?』
「そんな事は如何でもイイ!! 浅葱、今すぐ呼吸を止めるんだ!! 息をしたら幸せが逃げてしまうので息を止めて幸せも閉じ込めて幸せになってお金とか拾うといい感じにネコ缶をネコの為に買って来るとネコ大喜び浅葱も満足二人で幸せいっぱい夢いっぱい、って事だ!!」
『ええ、分りましたわ』
「おお、分ったか浅葱!! 物分りの悪い浅葱にしては珍しい、明日はきっと飴が降る!? ぅわ~ぃ飴ちゃん、超楽しみ!!」
『とりあえず、お前はもう喋るな』
「なんでぇ!?」
愉快な漫談を繰り広げるこの主従が、ここ天海神姫センターで最強を誇るなど、一体誰が想像しようか……。
戦場の空、レインディアバスターの上で陽気にはしゃぐマオチャオが居た。
『……いきなり何を口走ってんのよ、アンタ』
ぶっちゃけ、マヤアだった。
「うむ、今日のネコは少しワクワク全壊モードなのだよ浅葱クン」
『全壊?』
「ああ、間違い間違い。全開な、全開」
『口語で漢字を間違えられるのも、ある意味凄い事ですわね……』
会話でそれに突っ込める貴女ほどじゃありません。
『んで、そんなにご機嫌なのはどうしてですの?』
顔を顰めながら問う浅葱。
このバカネコがはしゃぐとロクナコトが無いのは経験則で熟知していた。
「うむ、今日のネコは新兵器と新奥儀の二本立て、そう。最早今までのネコとは違う生まれ変わった新・ネコ!! って言うかここはやはり英語でカッコヨク『ニューネコ』とか名乗ってみるのは如何だろう浅葱」
『英語なのに、ネコ?』
「応!!」
『……………………はぁっ』
「なんだそのため息は!? ため息付くと幸せが逃げてくんだぞ、不幸になるんだ!! 浅葱が不幸になるのは楽しいが、ネコがそれに巻き込まれるのはゴメンなので、浅葱には幸せになって欲しいネコが居るっ!!」
『なんだか今、聞き逃せないセリフが混じってませんでした?』
「そんな事は如何でもイイ!! 浅葱、今すぐ呼吸を止めるんだ!! 息をしたら幸せが逃げてしまうので息を止めて幸せも閉じ込めて幸せになってお金とか拾うといい感じにネコ缶をネコの為に買って来るとネコ大喜び浅葱も満足二人で幸せいっぱい夢いっぱい、って事だ!!」
『ええ、分りましたわ』
「おお、分ったか浅葱!! 物分りの悪い浅葱にしては珍しい、明日はきっと飴が降る!? ぅわ~ぃ飴ちゃん、超楽しみ!!」
『とりあえず、お前はもう喋るな』
「なんでぇ!?」
愉快な漫談を繰り広げるこの主従が、ここ天海神姫センターで最強を誇るなど、一体誰が想像しようか……。
天海神姫センター夏季大会。
第三予選バトルロイヤルはこうして幕を上げた。
第三予選バトルロイヤルはこうして幕を上げた。
◆
『さて、そろそろ始めましょう。敵も居る事ですし、下に降りなさい』
「おうよ」
眼下の荒野に二体の神姫。
双刀を操る紅緒が、ヴァッフェドルフィンを圧倒している一方的な試合展開だった。
『紅緒の方はかなり強いわ、油断しないでね』
「任せろ浅葱!! とうっ!!」
掛け声とともに、飛行中のレインディアバスターから飛び降りるマヤア。
(ふふふのふ、二人が闘っている間に颯爽と着地して吃驚させえるのだ!!)
「おうよ」
眼下の荒野に二体の神姫。
双刀を操る紅緒が、ヴァッフェドルフィンを圧倒している一方的な試合展開だった。
『紅緒の方はかなり強いわ、油断しないでね』
「任せろ浅葱!! とうっ!!」
掛け声とともに、飛行中のレインディアバスターから飛び降りるマヤア。
(ふふふのふ、二人が闘っている間に颯爽と着地して吃驚させえるのだ!!)
以下妄想。
ずどーん。
「な、何事でゴザルか!?」
「敵だイルカ」
「にゃはははは、ネコ三畳!!」
ガチャン。ガチャン。ガチャン。
「おおぅ!! 着地した後に飛来したレインディアバスターが合体して、アーマーになったでゴザル!!」
「とてもカッコいいイルカ(←どうやら語尾の模様)」
「ふふふふふ、さあ、二人まとめて掛かって来るネコよ!?」
「うむ、この様な強敵一対一では叶わぬでゴザル!!」
「ここは二人で闘うイルカ!!」
「だがしかし、ネコ超強ぇーーーーーーーっ!!」
どか、ばき、ぐしゃ。
「うわー、やられたでゴザル!!」
「降参だイルカ!!」
「わははは、やったぞ浅葱。優勝だ!!」
『よくやったわ、マヤア。マヤアはとても良い子なのでご褒美を上げたい』
「おおぅ、ご褒美!?」
『三直屋のタイヤキ、100個よ』
「うわーい、タイヤキ大好き!!」
「な、何事でゴザルか!?」
「敵だイルカ」
「にゃはははは、ネコ三畳!!」
ガチャン。ガチャン。ガチャン。
「おおぅ!! 着地した後に飛来したレインディアバスターが合体して、アーマーになったでゴザル!!」
「とてもカッコいいイルカ(←どうやら語尾の模様)」
「ふふふふふ、さあ、二人まとめて掛かって来るネコよ!?」
「うむ、この様な強敵一対一では叶わぬでゴザル!!」
「ここは二人で闘うイルカ!!」
「だがしかし、ネコ超強ぇーーーーーーーっ!!」
どか、ばき、ぐしゃ。
「うわー、やられたでゴザル!!」
「降参だイルカ!!」
「わははは、やったぞ浅葱。優勝だ!!」
『よくやったわ、マヤア。マヤアはとても良い子なのでご褒美を上げたい』
「おおぅ、ご褒美!?」
『三直屋のタイヤキ、100個よ』
「うわーい、タイヤキ大好き!!」
妄想終了。
「ぅはははははは、タイヤキ、タイヤキ、きゃっほぅ!!」
「ぐげっ!?」
狂喜乱舞しながらも本能だけで高々度からの着地を完遂するマヤア。
「な、何事か!?」
「やだなぁもう。タイヤキに決まってるじゃん!!」
『マヤア、マヤア。イルカ踏んでる。イルカ踏んでるッ!!』
「おぅ?」
ふと足元を見るとヴァッフェドルフィンが足の下でピクピク痙攣していた。
「むむ。これでは驚いてくれないんじゃねーのか?」
しゃがみこんで、白目剥いてるイルカの頭をツンツン。
『あ、撃墜1になった』
どうやらヴァッフェドルフィンを倒したと判断されたようだ。
「き、貴様!! まさか『皆殺しの暴猫(ぼうびょう)』『狂気の化け猫』『血塗れキャット』『赤い三倍バカ』等の異名を持つランク1のマオチャオか!?」
『あ、二つ名増えてる。って言うか最後の『赤い三倍バカ』は傑作ですわね……』
関心したような声の浅葱を無視し、マヤアはビシッと紅緒を指差す。
「ぅぬぬ、そこの武士ねーちゃん!!」
「なっ、なんだ……?」
「なんでゴザルって言わないのさ!!」
「そんなの知るかぁ!! ―――ぐげっ!?」
「ありゃ!?」
眼前の紅緒の脳天に突き刺さる、マヤアのレインディアバスター。
「…………………おりょ? 着地地点が少しずれたかな? ネコ的にはネコの上に落ちてきて合体する筈だったんだが……?」
「ぅう……、ひ、ひどぃ……。ガクッ」
紅緒は力尽きた。
「し、死んでいる!?」
『いや、レインディアバスターが超高速で脳天にぶち当たれば、誰でもそうなると思うけど……』
「…………あのさ、浅葱?」
『なんですの?』
「ネコのカッコヨク闘うというシーンは何処行った?」
『アンタが自らぶち壊したんですわ』
「仕方ねぇ、次行こ、次」
「―――その必要は無い」
「んゆ?」
声のする方に振り向けば、岩の上に降り立つ一人のエウクランテが居た。
『……珍しいですわね。天海でエウクランテとは……』
バトルロイヤル主体のこの神姫センターでは、飛行タイプの神姫は不利となるために数が少ない。
故に、その例外となる者達はほとんどが、その不利を跳ね返すほどの強者であると言える。
「こ、この鳥ねーちゃん。ネコよりカッコイイ登場の仕方をしやがった!?」
『えぇ!? 驚く所、そこ!?』
「な、何のことだか分りませんが。先ほどの一戦お見事でした」
倒れている紅緒とヴァッフェドルフィンを指差すエウクランテ。
「着地と同時のキックで一体を倒し、時間差で突撃させたレインディアバスターでもう一体を屠る。……並みの腕で出来る事ではありませぬ。……その方、ランク1のマヤア殿とお見受けしましたが如何に?」
「むむむ、ネコの名前を知っているとは、貴様、何者!?」
「……ふふふ、ご冗談を。貴女の名を知らぬ神姫など、この天海には居りますまい?」
「分ったぞ、さてはプリティなネコの肉体(からだ)を狙うレズっ娘神姫なのだな!?」
「違うわぁーっ!!」
エウクランテ、絶叫。
「残念だが、ネコのカラダは祐一ゃん(ゆういっちゃん)のモノなのだ。貴様にはやれん!!」
「いらんわぁーっ!!」
「ぐげっ!?」
狂喜乱舞しながらも本能だけで高々度からの着地を完遂するマヤア。
「な、何事か!?」
「やだなぁもう。タイヤキに決まってるじゃん!!」
『マヤア、マヤア。イルカ踏んでる。イルカ踏んでるッ!!』
「おぅ?」
ふと足元を見るとヴァッフェドルフィンが足の下でピクピク痙攣していた。
「むむ。これでは驚いてくれないんじゃねーのか?」
しゃがみこんで、白目剥いてるイルカの頭をツンツン。
『あ、撃墜1になった』
どうやらヴァッフェドルフィンを倒したと判断されたようだ。
「き、貴様!! まさか『皆殺しの暴猫(ぼうびょう)』『狂気の化け猫』『血塗れキャット』『赤い三倍バカ』等の異名を持つランク1のマオチャオか!?」
『あ、二つ名増えてる。って言うか最後の『赤い三倍バカ』は傑作ですわね……』
関心したような声の浅葱を無視し、マヤアはビシッと紅緒を指差す。
「ぅぬぬ、そこの武士ねーちゃん!!」
「なっ、なんだ……?」
「なんでゴザルって言わないのさ!!」
「そんなの知るかぁ!! ―――ぐげっ!?」
「ありゃ!?」
眼前の紅緒の脳天に突き刺さる、マヤアのレインディアバスター。
「…………………おりょ? 着地地点が少しずれたかな? ネコ的にはネコの上に落ちてきて合体する筈だったんだが……?」
「ぅう……、ひ、ひどぃ……。ガクッ」
紅緒は力尽きた。
「し、死んでいる!?」
『いや、レインディアバスターが超高速で脳天にぶち当たれば、誰でもそうなると思うけど……』
「…………あのさ、浅葱?」
『なんですの?』
「ネコのカッコヨク闘うというシーンは何処行った?」
『アンタが自らぶち壊したんですわ』
「仕方ねぇ、次行こ、次」
「―――その必要は無い」
「んゆ?」
声のする方に振り向けば、岩の上に降り立つ一人のエウクランテが居た。
『……珍しいですわね。天海でエウクランテとは……』
バトルロイヤル主体のこの神姫センターでは、飛行タイプの神姫は不利となるために数が少ない。
故に、その例外となる者達はほとんどが、その不利を跳ね返すほどの強者であると言える。
「こ、この鳥ねーちゃん。ネコよりカッコイイ登場の仕方をしやがった!?」
『えぇ!? 驚く所、そこ!?』
「な、何のことだか分りませんが。先ほどの一戦お見事でした」
倒れている紅緒とヴァッフェドルフィンを指差すエウクランテ。
「着地と同時のキックで一体を倒し、時間差で突撃させたレインディアバスターでもう一体を屠る。……並みの腕で出来る事ではありませぬ。……その方、ランク1のマヤア殿とお見受けしましたが如何に?」
「むむむ、ネコの名前を知っているとは、貴様、何者!?」
「……ふふふ、ご冗談を。貴女の名を知らぬ神姫など、この天海には居りますまい?」
「分ったぞ、さてはプリティなネコの肉体(からだ)を狙うレズっ娘神姫なのだな!?」
「違うわぁーっ!!」
エウクランテ、絶叫。
「残念だが、ネコのカラダは祐一ゃん(ゆういっちゃん)のモノなのだ。貴様にはやれん!!」
「いらんわぁーっ!!」
◆
「ねぇ、祐一。……どういう事かしら?」
「私も興味あるわね、祐一?」
「え、いや。俺にも何の事だかさっぱり……」
観客席で祐一に詰め寄る美空とリーナ。
「……かじかじ」
「痛い、痛いから無言で耳を噛むな、アイゼン!!」
「祐一さん、不潔……」
「フェータまで!? 本当に身に覚えが無いんだってば!!」
「史上最低の下種野郎じゃな。リーナ、迂闊に近づくと孕まされるぞ?」
「しねぇよ!!」
「ちょっと。それって私には魅力が無いって事!?」
「え、いや。そうじゃないけど」
「へぇ~。祐一って、リーナみたいな幼女が好きなんだぁ」
「美空、痛い、足踏んでる。足踏んでる!!」
「はぷぅ~、わさびのカイカンにボクもうメロメロ~」
「まだやってたんかい、お前は!!」
ぽん。
と、祐一の肩に掛かる手。
「…………ね、姉さん……?」
「ねぇ、祐一………」
「ごっ、誤解だ。本当に何も知らないんだよ!!」
「祐一。少し、お姉ちゃんとお話しましょうか? あっちの、誰も来なそうな、奥のほうで、じぃっくりと……」
「ち、違う。本当に違うんだ。嘘じゃない、嘘じゃない、僕は絶対に絶対に嘘なんか言ってないぃ!!」
「あははは、祐一ったら。そこはアニメじゃないって言わなきゃ」
「誰がZZの話をしているかぁーっ!!」
「……かじかじかじかじ」
「アイゼン、マジ痛い、耳たぶ取れる、取れちゃう。とれちゃうーの!!」
トレチャウーノ。
イタリア語で31を意味する言葉だった。
「私も興味あるわね、祐一?」
「え、いや。俺にも何の事だかさっぱり……」
観客席で祐一に詰め寄る美空とリーナ。
「……かじかじ」
「痛い、痛いから無言で耳を噛むな、アイゼン!!」
「祐一さん、不潔……」
「フェータまで!? 本当に身に覚えが無いんだってば!!」
「史上最低の下種野郎じゃな。リーナ、迂闊に近づくと孕まされるぞ?」
「しねぇよ!!」
「ちょっと。それって私には魅力が無いって事!?」
「え、いや。そうじゃないけど」
「へぇ~。祐一って、リーナみたいな幼女が好きなんだぁ」
「美空、痛い、足踏んでる。足踏んでる!!」
「はぷぅ~、わさびのカイカンにボクもうメロメロ~」
「まだやってたんかい、お前は!!」
ぽん。
と、祐一の肩に掛かる手。
「…………ね、姉さん……?」
「ねぇ、祐一………」
「ごっ、誤解だ。本当に何も知らないんだよ!!」
「祐一。少し、お姉ちゃんとお話しましょうか? あっちの、誰も来なそうな、奥のほうで、じぃっくりと……」
「ち、違う。本当に違うんだ。嘘じゃない、嘘じゃない、僕は絶対に絶対に嘘なんか言ってないぃ!!」
「あははは、祐一ったら。そこはアニメじゃないって言わなきゃ」
「誰がZZの話をしているかぁーっ!!」
「……かじかじかじかじ」
「アイゼン、マジ痛い、耳たぶ取れる、取れちゃう。とれちゃうーの!!」
トレチャウーノ。
イタリア語で31を意味する言葉だった。
いや、特に意味は無いですが……。
◆
「実はネコは律儀な子でな。恩は必ず返すのだよ」
『嘘おっしゃい!!』
浅葱の突っ込みを無視してマヤアは続ける。
「祐一ゃんには必殺技を習いました。故に、ネコのカラダは既に祐一ちゃんの所有物!!」
『いや、アンタ私の所有物ですから』
「何を言う浅葱、見損なったぞ!! 浅葱は神姫をモノ扱いするのか!? 神姫にだって心はあるんだ、そうだろう、そこの鳥アタマ!!」
「え、うん。まぁそう思うけど……」
マヤアに突然指差されうろたえるエウクランテ。
「ほら見ろ浅葱。あの鳥アタマもそう言っている。つまり浅葱は最低だ!!」
『え、いや、ごめんなさい……』
「分れば宜しい!!」
『(あれ、何で私が謝ってるんですの?)』
「と言う訳でそこの鳥アタマ。勝負は少し待て!!」
「え、うん。別にいいけど……。なにがそういう訳?」
「言っておくが、このコマンドを入力すればネコは無敵になる。……それでもよいな、鳥アタマ?」
「強い奴との戦いは望む所だけど、その鳥アタマって言うの止めて……」
「ではまずターイム!!」
「?」
「上上(伸び伸び)、下下(しゃがみしゃがみ)、左右左右(くいくい、ぐいぐい)、B(ばきゅーん)A(ジャーンプ)!!」
「―――ぐげっ!?」
「待たせたな、鳥アタマ。これでネコは無敵!! さぁ勝負してやろう。………………おや?」
眉間から煙を立ち上らせ、ピクピク痙攣するエウクランテ。
「し、死んでいる……」
死んでない、死んでない。
『……少し卑怯じゃない、今の?』
「さすが祐一ゃん!! 入力しただけで敵が死ぬとは凄ぇコマンドだ。惚れ直した!!」
『あー、とりあえず。その技は使用禁止ね』
「なんでだ? 折角祐一ゃんが教えてくれたのに? 浅葱もしかして妬いてる?」
『…………マヤア。三直屋のタイヤキで一番好きなのはどれ?』
「なっ、何を言う浅葱ぃ!! 漉し餡には漉し餡の。つぶ餡にはつぶ餡の魅力がある!! 抹茶やチョコやカスタードクリームだって美味しいと言うのに、どれか一つを選べというのか浅葱は!?」
『いえ、言いませんわ』
「そうか、ならばよし」
『それで、何の話をしてましたっけ?』
「ぁえ? う~んと……。忘れた」
『(マヤアが馬鹿で良かったですわ)……それでは、撃墜数も3になりましたし、そろそろ出ましょうか?』
「え~、まだネコは一回も闘ってないのよ?」
『いや、もう充分ですから』
「それに、次の敵が来たのに……」
『え?』
『嘘おっしゃい!!』
浅葱の突っ込みを無視してマヤアは続ける。
「祐一ゃんには必殺技を習いました。故に、ネコのカラダは既に祐一ちゃんの所有物!!」
『いや、アンタ私の所有物ですから』
「何を言う浅葱、見損なったぞ!! 浅葱は神姫をモノ扱いするのか!? 神姫にだって心はあるんだ、そうだろう、そこの鳥アタマ!!」
「え、うん。まぁそう思うけど……」
マヤアに突然指差されうろたえるエウクランテ。
「ほら見ろ浅葱。あの鳥アタマもそう言っている。つまり浅葱は最低だ!!」
『え、いや、ごめんなさい……』
「分れば宜しい!!」
『(あれ、何で私が謝ってるんですの?)』
「と言う訳でそこの鳥アタマ。勝負は少し待て!!」
「え、うん。別にいいけど……。なにがそういう訳?」
「言っておくが、このコマンドを入力すればネコは無敵になる。……それでもよいな、鳥アタマ?」
「強い奴との戦いは望む所だけど、その鳥アタマって言うの止めて……」
「ではまずターイム!!」
「?」
「上上(伸び伸び)、下下(しゃがみしゃがみ)、左右左右(くいくい、ぐいぐい)、B(ばきゅーん)A(ジャーンプ)!!」
「―――ぐげっ!?」
「待たせたな、鳥アタマ。これでネコは無敵!! さぁ勝負してやろう。………………おや?」
眉間から煙を立ち上らせ、ピクピク痙攣するエウクランテ。
「し、死んでいる……」
死んでない、死んでない。
『……少し卑怯じゃない、今の?』
「さすが祐一ゃん!! 入力しただけで敵が死ぬとは凄ぇコマンドだ。惚れ直した!!」
『あー、とりあえず。その技は使用禁止ね』
「なんでだ? 折角祐一ゃんが教えてくれたのに? 浅葱もしかして妬いてる?」
『…………マヤア。三直屋のタイヤキで一番好きなのはどれ?』
「なっ、何を言う浅葱ぃ!! 漉し餡には漉し餡の。つぶ餡にはつぶ餡の魅力がある!! 抹茶やチョコやカスタードクリームだって美味しいと言うのに、どれか一つを選べというのか浅葱は!?」
『いえ、言いませんわ』
「そうか、ならばよし」
『それで、何の話をしてましたっけ?』
「ぁえ? う~んと……。忘れた」
『(マヤアが馬鹿で良かったですわ)……それでは、撃墜数も3になりましたし、そろそろ出ましょうか?』
「え~、まだネコは一回も闘ってないのよ?」
『いや、もう充分ですから』
「それに、次の敵が来たのに……」
『え?』
◆
「これは、なんと言う幸運……。天海最強の神姫と手合わせする機会に恵まれるとは!!」
『あら、サイフォス?』
長槍を振り回し、重甲冑のサイフォスが身構える。
「名乗らせて頂こう!! 我が名はヘルトヴィーゲ。ランク9、ランサーと名乗ればお分りいただけるか!?」
「知らん」
「酷っ!!」
即答するマヤアに泣き付くヘルト。
「ランク9だぞ、ランク9!? 天海で9番目位に強い神姫なんだ、貴公と互角に戦えそうな数少ない神姫じゃないか!!」
「でも知らんし……」
「そ、そんなぁ……。噂ぐらいなら聞いてるでしょ? ほら、槍を使う凄く強いサイフォスの噂」
「全く知らん」
「ほ、ほら。去年の大会の準々々決勝で要塞さんと戦ったサイフォスだよ。……そりゃ、開幕20秒ぐらいで砲弾山ほど喰らって負けたけど」
「覚えてねーなぁ」
「ぁうぅぅぅぅっ……」
膝を付いて泣き始めるヘルト。
「でもまぁ、ネコもヒマしてたし、戦うのなら早くしよう」
「なんと、戦ってくれるのか!? でも、そこに倒れている3人を倒したのは貴公であろう? 戦果は充分な筈だが、それでも良いのか?」
「うん、ネコはなんだか闘った気がしねぇし」
「……ふふふ。さすがはマヤア殿……。ご安心召されよ。音速と謳われた我が槍は、決して貴公を飽きさせる事など無いであろう」
そしてヘルトは立ち上がり、その銘の所以ともなった槍を構える。
「ランク9、ランサーのヘルト。推して参るッ!!」
「え、何? 参る? ……もう降参?」
「違うっ!! 行くぞ!! って意味だぁ!!」
「そうか、参ったするのは早いと思ったんだ……」
「ええぃ。甘く見ると後悔するぞ、私はそこらの神姫よりも遥かに強いのだ!! 舐めると、敗北するのは貴公の方やもしれんぞ!?」
「ぬ? 甘いのか?」
「甘くない!!」
「でも試してみないと分らないよね?」
「まぁ、それはそうだけど……」
「んじゃ、少しだけ舐めてみよう」
「だから舐めるなと―――!?」
そこまで行ってヘルトは驚愕に目を見開く。
彼女の戦闘スタイルは、剣には遠く、銃には近い微妙な間合いを保ち、槍衾(やりぶすま)で攻撃すると言うものだ。
誰よりも間合いには敏感で、かつ、槍の間合いの最低ラインには立ち入らせない事を自負していた。
しかし、その絶対防衛ラインをマヤアは軽々と潜り抜け、彼女の反応できぬ内にその手を伸ばしてくる。
(ば、馬鹿な!? 我が間合いの内に軽々と潜り込むなど!!)
その手が顔の頬へと伸びて行くのをゆっくりと知覚するヘルト。
(負ける!? 私が? ランク9のこの私が、こんな一瞬で? 何も出来ぬ内に敗れるというのか!?)
指先が頬に触れ、生殺与奪の権利のすべてがマヤアの元に奪われる。
これ程の速度だ。
このまま、ほんの少しの加減で彼女の首を捻じ切ったとしても最早驚くまい。
(これが、ランク1!? これがマヤア!! まるで格が違う!! 私などとは、存在している次元が、強さの次元がまるで、違う……!!)
ヘルトが死を覚悟した瞬間。
「れろんっ」
マヤアが彼女のアゴから鼻の筋までのラインを舐め上げた。
「はい?」
「ぬぬっ!! この味は!?」
「え? えぇ?」
舐められた。
アゴから、唇の上を経由して鼻の脇に抜けていったマヤアの舌で。
「この味は確かに三直屋のタイヤキ!! しかし、この中身は知らない味だ!! ネコの知らない味だというのか!? ネコが、ネコが知らない味があるというのかぁ!?」
絶叫するマヤアとファーストキッスにほおけるヘルト。
「……こ、これって。……キス?」
「そうか、そうだな。もっとよく確めてみよう!! んちゅ~」
「んん゛~ッ!?」
アゴの角度をずらしてマヤアの唇がヘルトのそれに重なる。
「んちゅ、れるっ……」
歯の隙間を抜けて口内に侵入した舌が、天蓋から歯茎をなぞり喉の奥へ。
「んん゛~ッ!? んむぅ~っ!?」
ヘルトの舌の抵抗をやんわりと押し返し、逆にその形を確めるようになぞり、舌の付け根を弄られる。
「ん゛も~っ!? んぶぅ~っ!?」
唾液の味を確めるように、下顎の歯茎と歯茎の間を攫うと、刺激に滲み出した唾液を吸い出される。
「ん゛ん゛~~~っ!?」
ヘルトの断末魔の悲鳴はマヤアの唇に遮られ、響く事無く消えて行った。
『あら、サイフォス?』
長槍を振り回し、重甲冑のサイフォスが身構える。
「名乗らせて頂こう!! 我が名はヘルトヴィーゲ。ランク9、ランサーと名乗ればお分りいただけるか!?」
「知らん」
「酷っ!!」
即答するマヤアに泣き付くヘルト。
「ランク9だぞ、ランク9!? 天海で9番目位に強い神姫なんだ、貴公と互角に戦えそうな数少ない神姫じゃないか!!」
「でも知らんし……」
「そ、そんなぁ……。噂ぐらいなら聞いてるでしょ? ほら、槍を使う凄く強いサイフォスの噂」
「全く知らん」
「ほ、ほら。去年の大会の準々々決勝で要塞さんと戦ったサイフォスだよ。……そりゃ、開幕20秒ぐらいで砲弾山ほど喰らって負けたけど」
「覚えてねーなぁ」
「ぁうぅぅぅぅっ……」
膝を付いて泣き始めるヘルト。
「でもまぁ、ネコもヒマしてたし、戦うのなら早くしよう」
「なんと、戦ってくれるのか!? でも、そこに倒れている3人を倒したのは貴公であろう? 戦果は充分な筈だが、それでも良いのか?」
「うん、ネコはなんだか闘った気がしねぇし」
「……ふふふ。さすがはマヤア殿……。ご安心召されよ。音速と謳われた我が槍は、決して貴公を飽きさせる事など無いであろう」
そしてヘルトは立ち上がり、その銘の所以ともなった槍を構える。
「ランク9、ランサーのヘルト。推して参るッ!!」
「え、何? 参る? ……もう降参?」
「違うっ!! 行くぞ!! って意味だぁ!!」
「そうか、参ったするのは早いと思ったんだ……」
「ええぃ。甘く見ると後悔するぞ、私はそこらの神姫よりも遥かに強いのだ!! 舐めると、敗北するのは貴公の方やもしれんぞ!?」
「ぬ? 甘いのか?」
「甘くない!!」
「でも試してみないと分らないよね?」
「まぁ、それはそうだけど……」
「んじゃ、少しだけ舐めてみよう」
「だから舐めるなと―――!?」
そこまで行ってヘルトは驚愕に目を見開く。
彼女の戦闘スタイルは、剣には遠く、銃には近い微妙な間合いを保ち、槍衾(やりぶすま)で攻撃すると言うものだ。
誰よりも間合いには敏感で、かつ、槍の間合いの最低ラインには立ち入らせない事を自負していた。
しかし、その絶対防衛ラインをマヤアは軽々と潜り抜け、彼女の反応できぬ内にその手を伸ばしてくる。
(ば、馬鹿な!? 我が間合いの内に軽々と潜り込むなど!!)
その手が顔の頬へと伸びて行くのをゆっくりと知覚するヘルト。
(負ける!? 私が? ランク9のこの私が、こんな一瞬で? 何も出来ぬ内に敗れるというのか!?)
指先が頬に触れ、生殺与奪の権利のすべてがマヤアの元に奪われる。
これ程の速度だ。
このまま、ほんの少しの加減で彼女の首を捻じ切ったとしても最早驚くまい。
(これが、ランク1!? これがマヤア!! まるで格が違う!! 私などとは、存在している次元が、強さの次元がまるで、違う……!!)
ヘルトが死を覚悟した瞬間。
「れろんっ」
マヤアが彼女のアゴから鼻の筋までのラインを舐め上げた。
「はい?」
「ぬぬっ!! この味は!?」
「え? えぇ?」
舐められた。
アゴから、唇の上を経由して鼻の脇に抜けていったマヤアの舌で。
「この味は確かに三直屋のタイヤキ!! しかし、この中身は知らない味だ!! ネコの知らない味だというのか!? ネコが、ネコが知らない味があるというのかぁ!?」
絶叫するマヤアとファーストキッスにほおけるヘルト。
「……こ、これって。……キス?」
「そうか、そうだな。もっとよく確めてみよう!! んちゅ~」
「んん゛~ッ!?」
アゴの角度をずらしてマヤアの唇がヘルトのそれに重なる。
「んちゅ、れるっ……」
歯の隙間を抜けて口内に侵入した舌が、天蓋から歯茎をなぞり喉の奥へ。
「んん゛~ッ!? んむぅ~っ!?」
ヘルトの舌の抵抗をやんわりと押し返し、逆にその形を確めるようになぞり、舌の付け根を弄られる。
「ん゛も~っ!? んぶぅ~っ!?」
唾液の味を確めるように、下顎の歯茎と歯茎の間を攫うと、刺激に滲み出した唾液を吸い出される。
「ん゛ん゛~~~っ!?」
ヘルトの断末魔の悲鳴はマヤアの唇に遮られ、響く事無く消えて行った。
◆
撃墜数4。
天海のバトルロイヤルが始まって5年。
史上初めて決まり手が『ディープキス』で勝利した神姫の誕生である。
「うむ、満足!!」
『満足しちゃうの!?』
「それはさて置き浅葱ぃ~、三直屋のタイヤキに新作が出たっぽい。食べに行こうとネコは提案する」
『……………、大会が終わったら、ね……』
「やったぁ!!」
満足そうに微笑んで、ネコは意気揚々と引き上げた。
天海のバトルロイヤルが始まって5年。
史上初めて決まり手が『ディープキス』で勝利した神姫の誕生である。
「うむ、満足!!」
『満足しちゃうの!?』
「それはさて置き浅葱ぃ~、三直屋のタイヤキに新作が出たっぽい。食べに行こうとネコは提案する」
『……………、大会が終わったら、ね……』
「やったぁ!!」
満足そうに微笑んで、ネコは意気揚々と引き上げた。
尚、出撃地点で忘れ去られていたマヤアの新兵器は、大会スタッフの手により回収され、浅葱の元に届けられたという。
◆
しかし、マヤアが離脱した直後、この第三バトルロイヤルにてある大番狂わせが起きることになる。
第19話:メタルジャケットにつづく
息抜きにお馬鹿な話を書こうと思ったらマヤアが最適だということに気が付いた今日この頃、如何お過ごしでしょうか?
ALCです。
ALCです。
アークとイーダのリペイント、皆様ご予約なされたでしょうか?
ALCですか?
片方2個ずつ、合計で4つも頼みましたよ。
ボークスで、先払いで。
3万近く。
片方2個ずつ、合計で4つも頼みましたよ。
ボークスで、先払いで。
3万近く。
…給料日がすぐで良かったですわ。
まあ、さておきソレぐらいに白トライクには期待大と言う事で。
次回作があるとしたら、白アークが主役神姫になるかもしれません。
次回作があるとしたら、白アークが主役神姫になるかもしれません。
まあ、その前にコレ終わらせないとダメですが。
ALCでした。
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