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第二話 融合


  夜も更け。夜食を買いにクエンティンと夢卯理音は外へ出た。
  道中、足を止めて耳を澄ませば、本当にかすかに、はすはす、はす、と、ぼたん雪が降り立つ音が聞こえてくる。いや、音であると認識しなければ、それが音だとは絶対に気がつかない、それくらいの小さな音だ。
  その音は音であるはずが、街の静寂をよりいっそう深めているような気がして、クエンティンは不思議がった。

「だから冬は好きなの。世界が自分を最大限に落ち着かせてくれる感じ」

  夢卯理音は白い息をはいた。

「うるさくする音もあるなら、静かにする音があったっていいじゃない?」

  もっともだ、とクエンティンは思う。
  何事にも両極性はある。ベクトルが相手へ向かう「話す」という行為も、実は自己確認の手段もかねているのと一緒だ。
  考えてみれば、静かにする音は身近にあふれている。レストランなどで流れている環境音楽がその良い例だが、あれもこの、雪の音には叶わない。
  雪は静かに街を支配していた。家から一歩外に出たならそこは間違いなく雪の世界だ。でも、人は雪が支配しているなどとは微塵も気がつかない。そんな考えにすら至らない。
  確実に雪はいま、まさに、街の静かな支配者だった。支配していると気付かせない、支配者の鑑。
  雪のようになるのだ、とクエンティンは思った。
  雪のようにフィールドを支配し、相手に支配していることを気付かせない。
  静かに君臨する、帝王。それは何らやましいことなど無いから、糾弾されることも無い。そもそも気付かないのだ。相手は。いつの間にか支配されていて、それに知らないうちに負かされる。
  究極の戦い方だと思う。そしてアタシと、お姉さまはそういうスタンスを目指しているのだ。
  手段を選ばないのではなく、あくまでルールとマナーとエチケットを遵守する。
  その上で、ルールの穴を抜け、プログラムの隙間を縫い、システムに勝利する。
  それで何が面白いのか? と言われたことがある。その問いは不毛だ。自分たちがそれで面白いのだから、他人に何が面白いのかと問われたところで答えようが無いのだ。
  しいて言うなら、アタシたちはきっと、そこに快楽を見出している。
まったく唐突に、クエンティンはあのマイティとかいう腹の立つ神姫に、なぜ腹が立つのか分かったような気がした。
  相容れないのだ。彼女の戦い方と。
  彼女はシステムに楯突こうなどという考えは微塵も無い。あくまでゲーム内で出来ることでバトルをめいっぱい楽しんでいる。少しでも本家から外れるパーツはたとえ公認されていようと、ルールに引っかからなかろうと、絶対に使わない。
  それで何が楽しいのだろう。クエンティンは思い、そしてそれは私達が受けた問い、それに対する答えと同義なのだと知った。
  彼女らもそれで楽しいのだ。話し合いの余地の無い、折り合いのつけようが無い、対立。
  もしかして、それで? と、クエンティンは理音に訊いた。
  理音は途端に笑い出した。

「さっきから黙ってると思ったら、そんなことを考えてたの?」
「そんなことって何よ。アタシだって真剣に考えたんだから」
「可愛いわね。……うーん、それは一つの派生ね。」
「派生?」
「ゲームのスタンスが決定的に違うくらいでサヨナラしてたら、この国のカップルの半分は破局だわ。違うの。もっともっと重要で、そして人から見たらたぶん些細なこと」
「そこが我慢ならなくて?」
「そうね。だからあいつとの結婚は考えなくなった。私とあいつは確かに多くの面で似たもの同士だったけれど、根っこの信念というか、処世術というか。そこが真逆だったのよね」
「結局あいつが悪いの?」
「違う。どちらも悪くないのよ。それが各々の生きかたなんだから。悪者を挙げるならそういう風に育てた親ということになるけど、それはこちらから見た相手の親がそうというだけで、逆も然り。だって、お互いの家はそれぞれそういう風に生きて今まで続いてきたのよ。続くものが悪いわけないじゃない。
  最終的には、二人は合わなかった、としか言えないのよ」
「うーん……。よく分かんない」
「あなたも失恋すれば、わかるかもね」
「なにそれ、恋愛じゃだめなの?」
「恋愛中はお互いに盲目だから気付かないもの。失って初めて気付くのよ」
「人間って何でもかんでもそうよね。無くなってから初めて分かるって」
「生意気言ってら」
「ぷー」

  外灯が無い裏路地に入る。コンビニへの一番の近道である。

「またこんなところ通って。お姉さまは女の子なのよ?」
「もう、子、じゃないような気がするけど。頼りにしてるわ」
「しょうがないわね……。あれ?」
「どうしたの?」

  クエンティンのセンサーが、近くに神姫がいる、という反応をとらえる。

「救難信号だわ」

  神姫は何らかの理由で迷子になったりオーナーの元へ帰れなくなった場合、緊急の救難信号を出すことが出来る。それは本来は無線でネットワークを経由し管理センターに通報され、すぐに回収チームが向かわれることになっている。このネットワークを用いる信号は第一種救難信号と呼ばれる。
  だがクエンティンが受信した信号は、ネットに接続できない場合、付近を偶然通った神姫にだけ放たれる第二種救難信号であった。

「なんか聞いたことないタイプだけど、間違いない。神姫だわ」
「どこ?」
「真下」

  理音は足元を見る。暗くてよく見えない。コートのポケットから懐中電灯、と呼ぶにはいささか強力な光を発するシュアファイアを取り出し、点灯。光のあたった部分は真昼のように明るくなる。

「凍っちゃってるじゃない」

  道路は厚いアイスバーンと化していた。理音はスパイクつきの登山靴を履いていたから滑らず気付かなかった。

「信号はこの下から出てる。お姉さま」
「これしか持ってきてないわ」

  理音はポケットからシースに納められたフロストゥ・クレインをクエンティンに渡した。

「じゅうぶん」

  クレインを逆手に持って、アイスバーンに突き立てる。氷の破片が飛び散る。

ガッ、ガッ、ガッ

  クエンティンは無心に掘り続けた。三センチほど掘り進むと、人型のシルエットが見えてくる。

「もうちょい……」

  上半身が掘り出される。ここまで七分もかかってしまった。
  二人は目を見張った。
  見たことも無い神姫だった。
  銀色のボブヘアーに真っ白な顔。素体はサファイアともエメラルドともつかない不思議な青色で、部分部分は半透明になっており骨格が見えている。
  クエンティンは得体の知れない神々しさを感じた。

「これって、もしかして新製品?」
「違う」クエンティンは即答する。「発売情報にこんなのない」
「まだ発表されてない第五弾以降の試作品かもしれないわ」
「だとしても、なんでこんなアイスバーンの下になんか埋まってるのよ。とにかく出さなきゃ……」

キルキルキルキルキル

  生糸を引っかくような音が周りから聞こえた。

「!?」

  理音はビクッとしてシュアファイアを周囲にかざす。何もいない。
  アイスバーンに埋もれた神姫は、明かりのないところでも淡い光を放っていた。クエンティンは音に気付かず見とれていた。

「クエンティン、周囲を索敵」
「えっ」
「いいから早く」

  言われるままに三次元感覚アンテナをフル稼働。周囲三十メートルを探索する。
  何かいるのはすぐに分かった。神姫サイズのものが十体ほど。しかし、

「なにこれ、動きが速すぎる」

キルリリリッ

  唐突に眼前にその一体が出現した。
  それは神姫と呼ぶにはあまりに異形だった。骨格だけの四肢、胴体。先細りした手足。先には指は無い。
  ぎょろり、と、一つ目の機械的な大型カメラセンサーが、クエンティンを凝視した。

「な、なに、こいつ」
「クエンティン、戦闘態勢!」

  理音の怒声でクエンティンはわれに返った。
  ばねのように飛び出し、フロストゥ・クレインをその一つ目に振り下ろす。

ガキンッ!

  刃はか細い胴体をしっかりと捉えたにもかかわらず、一ミリも切り込んでいなかった。
  硬すぎる。

「うっそ!?」

 バゴッ

  とてつもない力で殴られ、吹っ飛ばされる。
  理音はとっさにクエンティンを受け止める。

「大丈夫?」
「ぐぐ……神姫のパワーじゃない」
「あっ」

  一つ目は銀髪の神姫に近づく。狙いはそれか。二人はすぐに分かった。

「やめろーっ!」
  もう一度クレインを突き出す。
  やはり防がれる。つばぜり合いの態勢。

キルルルルルルル

  耳障りな駆動音を立てて、一つ目はぐいぐいとクエンティンを押し返す。
  すぐにクエンティンの体が後ろへ反らされる。
  このままではせり負けてしまう。
  クエンティンの間接がきしみ始めた。

「も、もうダメ……」

シュパンッ

  鋭利な音。
  クエンティンは目を開ける。
  彼女のすぐ横から、見たことも無い鋭さを持った剣が伸び、一つ目の胴体を切り裂いていた。
  一つ目はその場にくずおれた。
  振り返ると、銀髪の神姫が上半身を起こし、右手首からその鋭い剣を伸ばしていた。

「起きた……!?」

  ふぅっ、とその神姫は再び力を抜いて横たわろうとする。クエンティンは彼女の上体を支えた。

キリキリキリキリキリキリキリ
キルキルキル……

  周囲からいくつもの生糸を引っかく駆動音が聞こえて、三人を取り囲むように一つ目らが現れた。
  理音は神姫二人を守るように寄り添う。

「絶体絶命……?」

  クエンティンは冷や汗をたらす。
  その時。
  冷たい両手が、クエンティンの頬を包んだ。
  銀髪の神姫だった。

「あ、あなた、大丈夫?」

  銀髪の神姫の表情は、今にも死にそうなほど衰弱していた。小刻みにプルプルと振るえ、こうやって手を伸ばすのもやっとなのだ。
  やがて神姫は小さな口を懸命に動かして、こう言った。

「ごめんなさい、お身体をお借りします」
「へっ?」

  その瞬間、神姫二人をまばゆい閃光が包み込んだ。

「ああっ!?」

  理音は閃光によって飛ばされ、一つ目らの包囲を抜けて道路に尻餅をついた。
  閃光が収まる。
  直方体の棺のようなものが、空中に浮かんでいた。青白いスパークがひっきりなしに発生している。
  一つ目らは棺を取り囲み、凝視している。
  スパークがひときわ激しくなり、直後。
  棺が真っ二つに割れた。
  スパークは光に変わり、周囲を青白く照らす。

「クエンティン!」

  理音は点灯したままのシュアファイアをその場に取り落として、立ち尽くした。

◆      ◆      ◆

「んぅ……」

  クエンティンは目を開けた。
  一体なにが起こったんだっけ。何か言われて、光に包まれて……。
  下を見る。
  はるか彼方に地面があった。

「……あれれ? アタシ浮いてる?」

  そのことに考えをめぐらす間もなく、今度は自分の足に目がゆき、そこから自らの身体に視線を移す。
  そこにあったのは、先ほどまでのストラーフのボディではなかった。
  漆黒だったはずの色は不思議な濃い青色になり、手足や身体のラインに沿って細いすじが通っている。細い筋は胸元にある小さな球体に集中しており、球体からは一定のリズムで、エメラルド色の光が発生、すじに沿って末端へ流れていっている。
頭や肩、胸、大腿部には不思議なアーマーが取り付けられ、耳にはとんがったアンテナ状のパーツがあるのが触って分かった。足元もアーマーに覆われ、それには足首の関節は無く、そのまま下へとがっていた。
  肩には小さな羽根が現れ、そこからエメラルド色のエネルギーが放出されている。これで浮いているのだ。
  しかし何よりも彼女が驚いたもの。
股間部にくっついた、とっても立派な突起物の形をしたアーマーである。

「な、な、な、なんだこりゃー!?」

  急な自らの身体の変化に、クエンティンは絶叫した。
  だが驚愕が収まる暇も、彼女には与えられなかった。
  突然、クエンティンは自分の内側から声が聞こえるのを感じた。

『おはようございます。戦闘行動を開始します』

  冷徹で、流れる水のような声だった。


つづく





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