メニュー

トップページ
作品ページ
サイト内検索

作品別直リンク

(最終更新年度順)

完結作品

武装神姫のリン
戦う神姫は好きですか
妄想神姫
ツガル戦術論
2036の風
剣は紅い花の誇り
クラブハンド・フォートブラッグ
ホワイトファング・ハウリングソウル
ハウリングソウル
ウサギのナミダ
アスカ・シンカロン
引きこもりと神姫
キズナのキセキ
魔女っ子神姫☆ドキドキハウリン
浸食機械
ゆりりね!

2015年

えむえむえす ~My marriage story~

2014年

ぶそしき! これから!?
デュアル・マインド
15cm程度の死闘
悪魔に憑かれた微駄男
Nagi the combat princess
えむえむえす ~My marriage story~

2013年

ねここの飼い方
白の女神と黒の英雄
深み填りと這上姫
キズナのキセキ
武装食堂
二アー・トゥ・ユー

2012年

美咲さんと先生
二人のマスター
類は神姫を呼ぶ
浸食機械
引きこもりと神姫
ライドオン204X
フツノミタマ
白濁!? 阪高神姫部
白い英雄を喰う黒い女神
マイナスから始める初めての武装神姫

2011年

流れ流れて神姫無頼
アスカ・シンカロン
MMS戦記
天海市神姫黙示録
UGV(仮)
Forbidden Fruit
すとれい・しーぷ
車輪の姫君
樫坂家の事情!
Slaughter Queen Esmeralda.

2010年

おまかせ♪ホーリーベル
戦うことを忘れた武装神姫
Gene Less
The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
PRINCESS BRAVE
神姫☆こみゅにけ~しょん
アルトアイネス奮闘姫
ロンド・ロンド

2009年

せつなの武装神姫
双子神姫
鋼の心 ~Eisen Herz~
犬子さんの土下座ライフ。
狛犬はうりん劇場
Memories of Not Forgetting
Knuckle princess

2008年

武装神姫のリン
『不良品』
師匠と弟子
マリナニタSOS!(仮)
橘明人とかしまし神姫たちの日常日記
戦う神姫は好きですか
スロウ・ライフ
徒然続く、そんな話。
妄想神姫
幻の物語
神姫ちゃんは何歳ですか?
剣は紅い花の誇り
EXECUTION
武装神姫~ストライカーズ・ソウル~
神姫長屋の住人達。
三毛猫観察日記
クラブハンド・フォートブラッグ
武装神姫と暮らす日常
ネコのマスターの奮闘日記
ホワイトファング・ハウリングソウル
ハウリングソウル
Heart Locate
トバナイトリ>トベナイトリ
3Sが斬る!
天使のたまご
Raven and Cat~紅き瞳と猫の爪~
神姫大作戦
蒼空~アオゾラ~

2007年

Mighty Magic
神姫狩人
凪さん家シリーズ
HOBBY LIFE,HOBBY SHOP
いつか光り輝く
幸せな神姫を戦場に立たせる会
春夏秋冬
アールとエルと
Twin Sword's
俺とティアナの場合
ツガル戦術論
2036の風
きしぶし!
流れ星シィル-銀河流星伝説-
神姫ガーダーシリーズ
sister G princess
Les lunes
Second Place -Howling-
Elysion
Report "vanish archetype"

鳳凰杯・まとめページ

単発作品用トップページ

武装神姫SS総合掲示板

2036年 武装神姫の世界 (公式設定)


50音順キャラクター図鑑
標準武装一覧
標準装備一覧
企業一覧
アマチュア・個人製作パーツ一覧
wiki相関図
キャラ相関図(2chまとめ版)
小道具関連設定
〈2つ名〉辞典



※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



 フィールドに響く斬撃と悲鳴。
恐怖に歪んだ相手、揺れるその目は体同様に震えてこちらを見上げる。拘束服と大きなナイフの生えたブーツ、ずり落ちた太いベルト状の眼帯とその下の半壊した左半分の顔を。
「ぁ・・ぁぁ・・」
悲鳴すら出なくなった喉を爪先の刃で掻き切れば相手はボロボロと崩れて情報の破片と化した。

『Win 観夜』

フィールドを出ると周りの連中がこちらに視線を向けた。
軽蔑、侮蔑、蔑み、批判の目。腹立たしい限りの自分勝手か、何とも似非な一般常識と正義を掲げる事を笑う。
曰く「虐待している」、曰く「非常識」、曰く「鬼畜な」。
己(オレ)がこの姿をしているのは己の趣味でしかないのに。真相を知らずに何を考えているのやら。世界全てが自身に味方しているとでも思っているのだろうか?傲慢なことだ。
「お疲れ」
「ん」
己を手に近くのテーブルに移る。口のバーギャグと腕の拘束を外すマスター、自由になった手でナイフ付のブーツを取る。
「今日はちょいと荒かったかな」
「んー、新しい連撃を試したから。まだまだ練習しないとダメか」
「やな。ま、気長にいこーや」
「うん」
普通のブーツに替える。次に頭を両側から挟み・・・
「待った。それ鞄の中でな」
「おっと」
ヤバイ、ヤバイ。
マスターが背負っていたバクパックの中に入って続きを。今首の上に乗っている頭を取って首の後ろ、リアユットの上にある逆さまの頭を掴んで曲げて首の上に固定する。外した頭は指令を送ってスリープさせておく。ベルトの背面に装備していた犬の頭骨をしまって武装解除完了。最後に顔の左半分を覆う眼帯をしてバクパックから出る。
「終った」
「じゃ、行くで。って着替えんの?」
「んー、今日はこのまま」
「面倒なだけやろ?」
「正解」
ニヤリと互いに笑う。

 観夜を上着のポケットに入れてバトルスペースを出る。
入り口の近くで数人の婦女子共が何やらこちらを伺っている。どうせ言う事は判っているがこう毎回では鬱陶しくもなる。
「ちょっと、自分の神姫になんて・・・」
「こいつの趣味に文句言うな。お前らが勝手に何考えようと知らんがお門違いもええとこや」
出鼻を挫いてやれば敢無く沈黙。
唖然としている間に入り口を潜りセンターを後にした。
しかしここの連中は何で他人に干渉したがるのだろうか。面倒な事に頭突っ込んでも仕方なかろうに。
「関係ねーか」
「だね」
それこそ俺の知ったこっちゃないわな。
 秋葉原の駅から繁華街を抜け裏路地へと。
とある雑居ビルの1階に俺の家がある。一応このビルの持ち主だしな。
自宅に戻り地下へと降りる。そこは工房になっていて神姫のパーツからバイクの装飾にアクセサリー、果は家具まで造れる程の機材が揃えてある。この部屋で日がな一日趣味に勤しんでいるわけだ。
仕事してないのかって?
以前は普通に働いていたが今は無職。海外旅行で当てた宝くじで一生遊んで暮らせる大金を手にしたんだ。おかげでこのビルを買い取ってからは遊んで暮らしている。古風な言い方をするなら高等遊民ってやつだな。自分で言うのもなんだがワリとダメ人間している。天涯孤独だしな。
「孤独ってこたーねーか」
同居人として神姫がいるし。
凶悪なビジュアルで名前は観夜(みや)。格闘戦に優れたハウリンタイプだ。彼女には俺お手製の武装を施している。以前働いていた会社で覚えた杵柄ってやつだな。因みにビジュアルは彼女自身が決めている。どうせ使うなら本人の趣味に合っている方がいいだろうし。俺の楽しみに付き合わせているんだ、それくらいはしてやるさ。本人は楽しんでいるが如何せん周りの評判は悪いけど・・・
「今日は何するの?」
「連撃の練習と新装備の試験」
 PCモニター上に現れる彼女、装備はいつもの物と新しい物。
『先ずは機能を使わんと拳闘のみな』
『判った』

「思ったより使えそうやな」
先程の様子を検証する。今までより戦術の幅が出てはいるがその分単調な節がある。ま、これは以降の訓練次第でどうとでもなるレベルだし及第点だろう。問題はその機能の方なんだが・・・
「零距離で使うかあれを・・・」
「ん~、射撃殆ど使ってなかったからなぁ」
「確かにな。で、感触はどないで?」
「いい感じ。キレもそこそこだし。ただ機能の方はあれか?威力を上げる一撃で使うだけになりそう」
「なるなぁ。牽制に考えてたけどそういう使い方もあるか」
意図していた使い方とはかけ離れているが彼女の底上げになるなら良い。うむ結果オーライって事で。
「んじゃ次いってみよか」
「はいな」
 夜半まで新装備の運用と具合を確かめ空腹を知らせる腹の音に終了した。
バッテリーを使い切った彼女をクレイドルに寝かせ自室のPCを立ち上げる。幾つかのHPを回り最後に神姫センターへと。
「来月頭か・・・・」
告知覧で近々行われるイベントに目を留める。規模としてもそこそこになりそうなそれ、久しぶりに参加してみるかな。偶には派手な舞台で暴れさせてやるもの良いだろう。普段は草バトルしかしてないし神姫関係の掲示板でも結構名前出てたしな。尤も殆どが悪名なのが俺達らしいとこだ。その内二つ名でも付くだろう。否寧ろこのイベントで付くようにしてやるのも面白いか。
ニヤリと笑い傍らの相棒を見る。容姿は幼く見えるハウリンタイプの顔、ノーマル状態よりも大きな胸部パーツで重心を高く、腕脚も少し長い彼女は童顔のでいて中々のプロポーションだ。そんなのが暴悪に暴れる様は鮮明に映る筈。それにセンターでのイベントでは録画があるしその凶暴さは知れ渡るだろう。
どうせ二つ名が付くなら派手な方が面白い。凶暴に暴悪な修羅が如く、最高の悪名を目指すとしようじゃないか!
「決定やな」
メールフォームに参加登録し来る日の為に訓練メニューを組むとしよう。

 2週間の訓練を経ての草バトルは今まで以上の快勝だ。
一部を除いて新装備を試してみたが予想を上回る戦果をあげ10連勝を達成した。
「センサー系の強化は流石に効果的やな」
スモークディスチャージャーで視界を奪い同時に散布された帯電物質でのセンサー麻痺、そこを強化聴覚で狙い打っている。相手が聴覚センサーを装備していなければ一方的だった。射撃系にしてもその音からある程度相手の動きを察知出来る彼女の前では有効ではなかった。装備の完熟訓練を徹底した彼女に死角は少ない。対熱センサーは厄介だがこれには手投げ弾(焼夷弾)を使う事で対策できた。問題は音響兵器だけだがこれはセンサーにリミッターを設けて対策した。
「ステルスでも音はするから逃がしはしないよ。その分うるさくて銃は使えなくなったけど」
一点だけ残ったこの問題、元より射撃戦を想定していない彼女なので割り切って捨てた。それにこのセンサーを使うにはどうしてもAIに負担が掛かる。対策としてディスチャージャー使用時以外はその感知レベルを落として使うようにしているが・・・完璧には程遠い。んー、技術屋としてはまだまだ開発段階としか言えないな。
「でもまぁ及第点か」
「そそ。世の中に完璧なんてない」
判っていてもそれに挑戦するのが技術屋の性ってやつなのだ。
 更に5日後の昼、草バトルを終え今日の戦果を振り返る。
今日は聴覚センサーを使わずの従来通りの格闘戦を徹底した。
結果は10戦8勝2分け。ディスチャージャー使用時よりは劣るもののかなりいい線をいっている。
「強化リアユニットも慣れたもんやな」
「まね。あれだけ訓練したんだもんそれこそ死ぬ気でね」
以前使っていたリアブースターJRv21を元に見た目はほぼ変わらずに出力を大幅に増強した。更にスラスターをリアユニット一体型にボールジョイントでの可動式を採用し小型化に成功した。反面スキル用のエネルギー供給が減り使用回数が減少している。
「正に必殺になってきたな」
「だね。己としてはそんなにスキル使わないしどうせ決める時はトドメだから問題ないけど」
連続攻撃を主としている彼女でなければ使い勝手は悪い装備か。開発は継続だなこれも。
「ってバトルの方を考察しない?」
「おぉ、忘れてた」
本題そっちのけになってた。

 そして来る当日。
思いの外の多さに驚く。参加人数の大幅オーバーの為に急遽会場を大きな場所に移したとの連絡だったが最早これ程とは・・・観客も相当いるようだ。参加人数も50名は下らないし観客は200は居るな。
「しかし何でまたこんな増えたんやろ?」
「賞品が特殊だからじゃない?」
「そうなん?」
「メールにあったよ。賞金30万と三位までには賞品として新しい神姫を先行配布なんだってさ」
成る程、話題のライトアーマーの連中か。そんな賞品が出るなら敵のレベルも相当だろう。ふむ、様子見する気でいたが初めから気合を入れていかねばならんようであるな。
 会場は既に熱気に包まれ今からのバトルを待ち遠しそうな観客で溢れていた。
俺達はネットでの手続きをしていたのでそれ程手が掛からなかったが当日参加組は大変のようだ。
邪魔にならないようにさっさと選手控え室に向かうと・・・おー、おー、センターでよく見掛ける奴等が沢山居る。

『さぁ皆さんいよいよ開催となりました!
         待望の新神姫を狙う方も、バトル目的の方も目指すは表彰台!
                                  一位の栄光を掴むのは何方か!』

テンプレな台詞で会場を沸かせるリングアナのマイクパフォーマンス、アリーナに集まった強者の中で俺は、
(んー、前口上なげーなおい)
なんて思っていた。

『では早速予選Ⅰブロック第一試合を始めたいと思います!!』

予選が始まると控え室では全員臨戦態勢に。
「珈琲甘っ」
「試合みようよ」
俺達だけ何時も通りだらけている。
室内に設けられた無駄にデカイモニターで試合を観戦する。回りは手に汗握らんばかりに熱く見ているようだが今からヒートアップしてどうするんだ?
 最初の試合はルーキーらしい天使とそこそこな侍、試合は胸を借りると言うような展開だった。勿論勝ったのは侍。終了後に倒れた天使に手を貸している様に会場が沸いていた。絵になる状況だが俺としては、

侍「大丈夫かい?」
天「は、はい!」
立ち上がらせる。
侍「今回は勝たせて貰ったが次は判らない。君、中々いい筋をしているよ」 
天「あ、ありがとう御座います」
侍「ふふ。又どこかで会おうじゃないか」
天「はい!」
背を向けて去っていく侍。
天(なんて凛々しい・・・嗚呼、お姉様・・)
ぽっ

ってな展開だったり。
「うん。百合やね」
「まてまて、幾らなんでも突飛だろう」
思わず口に出たらしい。ツッコミを入れる観夜を見れば半開きのジト目で見られた。脳内小劇場の展開を見破るとは流石だと思う。
 次の試合は素晴らしくルーキーズな試合だった。双方猫のもう見事なまでのステゴロのタイマン、俺好みなものだ。研爪同士の殴り合いは妙に燃えた。防御も回避もあったもんじゃないその様はガチのシバき合い、子供の喧嘩じみた展開で面白かった。勝った方の猫がヨロヨロでも笑顔なのに対して負けた猫が泣きながらオーナーに駆け寄るその様も萌えた。うむ、猫も中々だと思った。
「己もあんなのしようか?」
「似合わんやん」
拗ねる相方を撫でつつ画面に向う。
 Ⅰブロックの試合が終わり次のブロックへ。
 Ⅱブロックは何とも格闘戦が主体になっていた。
一試合目は騎士VS種の剣戟、二試合目は花VSセイレーンの槍襖、三試合目は悪魔VS犬の大剣戦、で今行われている四試合目は猫VS寅の殴り合いである。うむ燃える。ナックル系は格闘戦の花形だと思う。
「しかしあれやな寅の方のあの笑顔は中々俺好みや」
「己もあんなのだしな」
何気にアピる相方、愛い奴だ。
 で、Ⅲブロック。
ブロック出場者用の部屋に移った俺達、部屋の中にはセンターで見る奴がちらほらと見受けられる。そいつ等は俺達を見るなりヒソヒソと話し出した。何話してるかは知らんがどうせ宜しくない事なのは確かだ。無論無視である。
部屋の隅にあるメーカーから珈琲を注ぎ近くの椅子で相棒に装備を施す。
テーブルの上に鞄を置きその中で装備させる。隠し武装の多いコイツの武装を見せるなんて下手は踏まない。センターに行く時でも装備をしてから鞄に入れて行くしコイツの装備している様を見た事ある奴なんて殆ど居ないだろう。案の定さっきヒソヒソやってた連中が移動してこちらを伺っていたんで満面の笑みで向かえてやれば気まずそうに目を逸らした。阿呆が。
「できた。拘束お願い」
鞄から何時もの拘束服で現れた彼女の両手を服に固定し最後にバーギャグを嵌める。他の連中はその姿に顰め面を、数人は赤面しているが何想像してんだか。ヒソヒソやってた連中はその姿を一瞬睨んでいたようだが何も恨まれる覚えなんて無いししてもいない。全く外面だけで悪役意識を決めて掛かっているもんだ。ダーティーさを好む俺とコイツからすればその眼差しはタダの涼風でしかないし。「好き勝手想像してなお子様」と思うだけだ。自分のやりたいような自分になるだけの話。ルールは侵してないし他人にとやかく言われる筋合いはない。そんなのだからアウトローなんて思われるんだろう。無法者じゃないんだけどねぇ。
肩に乗せた彼女、刃が刺さらないのか?と言うとちゃんと対策してある。刃の当たる部分の裏側にパッドを仕込んであるのだ。昔は良く刺さったものでその度に流血しながらも我慢していたのが懐かしい。ってそんな話はどうでもいいな。
 進む試合、俺達の出番は次だ。
入場ゲートのモニターで今の試合を見ているがなんとも派手で良い。もうレーザーの撃ち合いとか派手だねぇ、実体弾の方が好きだが派手さではこれには及ばない。その分渋さはないけど。
決着の付いたフィールドから神姫達が戻り選手が帰っていく。
 アリーナに入ると観夜の姿を見た観客からの変な声が響く。
主に聞こえるのはいつものブーイング、聞きなれているだけに逆にリラックスできるってものだ。少数の肯定派にも周りからブーイングされている。そいつら関係ねぇやろ?
「なんだかねぇ」
 フィールドの前に座ると相手が見える。ふむヒソヒソやってた連中の一人だな。
「俺が勝ったらその格好止めてやれ!」
リングアナが話すより先にそいつが吼える。俺唖然。馬鹿じゃねぇの?
「他者の趣味に意見しても意味ないぞー」
生暖かい目で返してやる。フィールドインのポッドの前では観夜が眼帯越しにそいつを向く。多分睨み付けているんだろうなぁ。
「もっと自分の神姫大事にしてやれよ!」
はっ!外見だけしか見てない奴の言葉に怒りではなく笑いが込み上げてくる。素晴らしいまでの自意識だ!
『え~、試合初めますよ~』
困っているリングアナが可哀相なんでさっさと観夜をフィールドに入らせた。


 少し埃っぽいゴーストタウンにブーツの爪痕を残して己は立つ。
相手の悪魔は手にした大鎌を掲げ黒い翼をはためかせる。
「悪いオーナーに当たったね。ま、ボクが倒してあげるから、そうしたら普通にできるよ」
バーギャグに牙が喰い込む。
(ムカツク!過剰な自意識でマスターを侮辱するな!)
開始の号令と共に己は地を蹴った。
_________

 低空を滑空する彼女の姿はボロボロで黒い翼もズタズタ、飛ぶのもやっとと言ったところだ。
焦る悪魔の顔に胸が透く。さっきの言葉の代償はその身で払って貰う。
「ちっ!」
後ろを走る俺にフルストゥ・クレインを投げてくるが無理な体勢からの投擲なぞ当たるものじゃない、ましてや己は怒っているんだから。
「くそっ!!」
突き当たりの壁を蹴って反転鎌を振り被る。
(愚か!!)
自分から死地に踏み込むようなものだ。首筋を狙うその一撃、上半身を逸らしオーバーヘッドの一本蹴り上げで迎え撃つ!
「きゃぁぁぁぁ!!!!!!!」
懇親の一撃がその鳩尾を直撃し深々と刃が突き刺さる。更にバク転の勢いで体を捻り胸に向かって斬裂く。アーマーの裾から進入した刃は確実にCSC基部を貫いただろう。片足が地面を蹴った時には一撃を加えた脚に抵抗は無くなっていた。
眼帯の中央にある小さなカメラアイに映る視界に情報の屑と化す悪魔の引き攣った顔が見えた。


 先ずは一勝。
相手のオーナーはパネルを叩いて吐き捨てる。
「絶対にその神姫を開放してやるからな!」
「さよか」
態とイヤらしい笑みで返してやった。うん俺は悪役に向いていると思う。
 予選はなんの問題もなく勝ち進み決勝リーグの切符が入る。
決勝リーグは各ブロックの上位三名ずつ9人と敗者復活の計10で行われる。その対戦カードの抽選はなんと阿弥陀クジだった。クジなのは良いとして何でまたこれになったんだろうか?とても気になるところだ。今回の大会主催者は中々面白い御仁のようだ。
対戦カードが決まると一旦休憩。別にどこかのサングラスのおっさんが言ったわけじゃない。
控え室では持参した昼食を取る奴や大会スタッフから渡されたサンドイッチを貰う奴がひと時の休息を取る。
 30分の休憩を終えた会場は熱気を更に上げアリーナを眺める。
決勝に残った選手の紹介が始まりそこでのインタビューって何なんだろうか?実に面倒だ。序に言うなら妙なセンスの二つ名を勝手に付けて神姫を紹介するのは如何なものか?一番左端の奴から始まり俺は最後、一番のは「白い龍」と紹介された侍、次は「灼熱の騎士」で騎士、「雄雄しい爪」の寅、「白金の薔薇」で花、「粉砕砲撃」で砲台、「太陽をも貫く槍使い」でセイレーン、「銃撃の奇術師」で兎、「スキルメーカー」で忍者、「風読む弓矢」で人魚。そして観夜はと言うと
「THE拘束服」
(センスねーなーコイツ!!)
俺と観夜が完全にシンクロしたと思った。否、せざるおえない!
こんなんが二つ名になったら大いに落ち込むだろう。
そんな紹介の中でもブーイングがあった。その声を聞くと段々笑えてくるもんで必死に表情を固定した。必死に。
 そして始まる決勝リーグ、一回戦は5試合、二回戦は2試合、準決勝で決勝になる。内2人だけ試合数が少ないがそこはクジの運である。
 第一試合の侍VS寅がスクリーンに表示され俺達は控え室に戻る。
部屋では誰もがモニターを前に真剣な表情を見せる中俺は甘い珈琲片手に隅っこの喫煙席に付く。
さてここから難しい所、特に一回戦では相手の出方を読みきれないからな。と普通ならそうなるが観夜の場合それが無い。と言うよりも装備が一種類しかない。新装備も基本の物の単純発展型、つまり高度や威力を上げただけに過ぎないのだ。一部には追加でスキルを搭載したくらいで完全に別物なのは追加センサーとして造った犬耳と見た目と重さを変えたドックテイル、出力を上げたリアユニットの3つだけ。故に悩む必要がないのだ。現在の装備以外は素人同然だが完熟訓練の行き届いた現装備は達人級、更にはその独自性の強さに相手は動きを読み難いだろう。キックエッジアーツなんて使う奴はいないからなぁ。例えこの先対策を練られたとしてもそこは新しい対抗策を考えればいい。それに現時点では考え付く限りの対抗策は作り上げているしその策は既に訓練済みだしな。
 そして俺達の試合が始まる。


 波が打ち寄せる砂浜が今回のフィールド。
忍者は軽くステップを踏み忍者刀を構える。 
________

トリッキーな動きでこちらを翻弄する相手は実にやり難い。
(ちっ、面倒な!)
マスターの合図を待って格闘を続ける。相手の攻撃は一撃一撃は然程強くはない。でもその手数が多いのだ。更には連撃の途中で急に後退したりと掴み難い。既に己は至る所を斬られている。
『仕掛けるぞ!』
マスターの声にタイミングを見計らう。相手はトリッキーな動きだけど攻撃の際若干速度が落ちる。そこを狙う。
(今!)
己の下段蹴りを避けての斬撃、それを前にディスチャージャーを展開する。
「なにっ!?」
声を上げて後退する忍者。その「音」を聞いて腰の両サイド、両肩に付いていた犬の頭蓋骨を模したプチマスィーンズを飛ばす。
「見える!」
タイミングをズラして飛ばしたマスィーンズより先に横蹴りで牽制、態とそこに反撃させる。
(かかった)
右脚の痛みを耐えている間にマスィーンズが飛び出す!
「なっ!?」
その顎が限界まで開き忍者の脚に喰らい付く。同時に右脚を更に突き出し左脚を跳ね上げる。更にリアのスラスターを全て頭の方に向け全力で噴かす!
ドカッとした手応えが伝わる。
徐々に流れて晴れていく煙幕の向こうで喉を斬り裂かれた忍者が横たわっていた。


 一回戦を勝つと観客からのブーイングが又上がる。やれやれ毎回これやるのかねぇ、元気なこった。
「お疲れ」
「ん」
コクリと頷く彼女を肩に席を立つとゲートで待っていた勝者連中がアリーナに集まる。
また始まったマイクパフォーマンスを経て二回戦シード枠のクジ引きが行われる。因みに紐クジだった。やるな大会本部。
見事引き当てた俺は控え室でまーた甘い珈琲を飲む。
「飲み過ぎ」
「何言うか。ガソリン代わりなんや」
 モニターで観戦しながらバトルでの指示を考える。
今の所使ったのは何時もの通りの戦法とディスチャージャー戦術だけ。新装備の訓練のお陰で全体的な戦力アップに成功しているし残りの二人、騎士と侍は共に格闘型、観夜の格闘能力には自信があるしディスチャージャーは無しで行く。これが決勝での基本戦術として次に装備の限定解除。今回は早い段階で手の拘束を外すとしよう。そうすれば相手が射撃型であったとしてもディスチャージャー無しで対向できる。更には訓練を重ねた連撃が使える。どうせなら派手に暴れないとな。それに普段は使わない必殺を使うにはどうしても手を使う必要もある
 二回戦1試合目は騎士の勝利だった。
次いで2試合目、あっさりとした結果で侍が勝利する。
「要注意やな」
「うん」
あの侍はかなり強い。実力だけでなくオーナーの指示が的確なんだろう。
 二回戦が終わり準決勝のシード枠がコイントスで行われる。シードは侍だ。
観夜を乗せてアリーナに向かう。

 相手はレインディアシリーズで身を固めた騎士、俺を睨み付ける相手オーナーに不適な笑顔で反してやる。多分何時ぞや対戦した奴なのだろう。


 乾いた風の荒野で騎士と向かい合う。
もし双方が拳銃を装備していれば絵になったかも、生憎己は銃を使えないので勘弁。
 バックラータイプの小さな盾を左手にコルヌを構える。対して右脚を浮かせ爪先を向ければ開始の号令が掛かる!
先に動いたのは相手。剣での斬撃ではなくバックラーでの打撃、ステップと上半身のバネを生かしたスウェーでやり過ごし縫うような刺突を引き付ける。意識が攻撃に集中しているだろう今に膝を曲げ背中が地面付くくらい体を反らし蹴り上げる。
「くっ!」
バックラーに大きく傷が入る。
威力を殺そうとスップしたその後を伸び上がりからの踵落としで牽制、上半身が沈んだ所を狙う刃を音から斬撃と判断し左脚を軸に体を倒し下段からの回しでの蹴り上げで迎え撃つ。これは回避されたがカメラアイに映るその顔は焦りが見え始めた。そりゃそうか、今までのバトルでは全て己が攻めていた。でも今は後の先じみた切り替えしばかり。ふふん、格闘戦においては死角など少ないのだよ己は!
距離を取ろうとした相手に組み付き逃がさない。軽い前蹴りがバックラーに当たればリアを噴かす。浮いた体を蹴り付けた足を軸に回転膝を曲げて首を狙うもコルヌで弾かれる。その反動のまま弾かれた脚で着地、もう一方で四股を踏む様な形で蹴り落とす。
(思ったよりも機動が良いな)
避けられるのが判ると落とし切るまでにリアを、不恰好な膝蹴りを見舞う。
「くぅぅぅぅっ!!」
予想外だったのか直撃。腰、人間で言う腎臓部分を打ち据えそのまま膝の力で蹴り上げる。爪の様な三枚の刃がそのリストアーマーに突き刺さる。貫通まではいかなかったが焦らせるには十分だろう。そのままのしせいでリア噴射、体を捻って後ろ蹴りで伸びた方の肩を脇の下から強撃する。
「くそっ!」
有効打に右腕は素早い動きが出来なくなっている。でもまだ相手は諦めていないらしい。こういった手合いは何か隠していると思え。マスターの言葉を思い出し対向できる様に距離を取る。
「せっ!!」
唐突な突撃、でも相手は己が対向できる状態なのは気付いてないようだ。眼帯で両目を覆っているから表情が読めないのだろう。この格好はインパクトだけじゃなくちゃんとバトルでも役立つのだ。
投げ付けるコルヌを「横」に避ける・・・ワケないじゃん!w
避けると踏んでその方向に伸ばされたバックラーから細身の刃、レイピアの刃を使ったパイルバンカーが空を切った。
「!そんな・・・」
真下に避けていた体、上半身を反らして蹴り上げ、胸腺を直撃した右脚を相手に押し付けてリアを使ってその体より上にまで登る。頂点に達するまでに左脚で蹴り付けそのまま振り上げる。
「!」
見開かれる目と驚きの表情を見据えたまま踵の刃を頭に振り落とした。

 準決勝は己の技術勝ちで終わった。


 ブーイングの中観夜を肩に乗せたところで相手のオーナーが喚きだした。
「なんでそんな奴の為に戦うんだ!正気に戻れ!君はそんな姿にならなくてもいいんだ!」
おー、おー、ご高説なこって。
そいつの言葉にブーイングを上げていた連中が賛同するもリングアナの進行で試合は終わり相手は警備員に退場させられた。
観夜は拘束された腕を震わせていた。

さていよいよ決勝戦。盛大な歓声を受ける侍と見事なまでのブーイングの観夜。

 最後の相手と向かい合う。
甲冑にターボファンウィングと手に為虎添翼、ウィングの中央には気炎万丈が見える。
拘束服の相棒は何時もの装備。ディスチャージャーユニットは外した。
相手オーナーの少女は俺を静に見据える。俺も然り。
『それでは決勝戦始めます!!!』
リングアナの言葉に開始体勢に。向かい合い目が合った瞬間互いに笑う。彼女は実に楽しそうに、俺はニヤリと。


 最後のフィールドはギリシャを思わせる神殿。
相手は刀を抜き身に歩いてくる。
「君は強い。でも私は負ける気はない」
当然の事を言う。でもそれが様になっているせいか彼女が口にするに相応しいと思えた。
(良いね。実に似合う)
ゆっくりと上段に構える彼女、己いつも通りの構えで対峙する。
『それでは決勝戦開始!!!』
号に二人共に跳ぶ!
 交差する影と閃く刃。火花を散らして打ち合わされる。
(強い)
率直な感想だ。コイツは今日戦った中でレベルがダンチ、攻守共高レベルで機動も良いし技術も高い。だが付け入る隙なんざ必ず有るもんだ。
「はっ!」
(ふっ!)
『攻法を弐式に!』
マスターの指示に腕の拘束をパージ、蹴りでの牽制をかけつつ手は尻尾の上でクロスする鞘に突っ込めば歪なフィストブレードが装着される。その切っ先近くに着いた鍵爪状の刃を相手に振り被る。
「っ!」
息を飲む侍、その刀を鍵爪と刃で絡めて押さえ込み右の刃を凪ぐ!
「ちぃ!!」
上半身をスウェーするも甲冑の一部を削る。この体制なら攻撃はできまいと左脚を振るう!
ガキッ!!!
痺れる様な痛みと脛に感じる硬い感触、左側から背面を通して突き出した鞘だ。
体勢的に相手が有利になると押さえ込んでいた刃を抜かれ距離が開く。
「流石に簡単にはいかないか」
(お互い様だ)
呟きにギャグの向こうで答える。
 互いに動かず出方を伺う。下手に動けないと言った方が正しいか。
短期決着を得意とするのは同じらしく相手の目は急所を見据えている。にも拘らずこちらの攻撃に反応できるのはその技術量の差か。
「だが勝たせて貰う!!」
言葉と地面を突き下す。相手の意図が読めない!?
瞬間に空へと飛んだ侍はターボファンを唸らせ停止、気炎万丈を構える。
(馬鹿な!あんなの当たりはしないのに!?)
風切り音を轟かせ撃ち出される弾丸をステップで避ける。そう避けれる・・・
ゾクッ・・・
妙な感覚がし反射的に上半身を捻る!
眼帯のカメラアイに映ったのは小柄の切っ先だった。直撃は免れるも眼帯を掠めベルトが裂ける。
ずり落ちる眼帯を引き千切って投げ捨て射程を離れる。離せない!
(よもや射撃から投擲とは・・な)
気付かねば額を貫かれていた事だろう。地上を不規則に蛇行しながら射撃をさせない。否しないのか。しかし気炎万丈はその威力は高いものの連射性は無い筈なのに既に体勢は整っている。改造品と考えて間違いないだろう。
拙い。実に拙い。
格闘は互角か相手の方が僅かに上射撃の腕も高いと来たか。更には飛行速度も申し分なし。
『全使用を許可。骨顎発射から仕掛けるぞ!』
指示に立ち止まらず4機のマスィーンズを切り離す。内2機をその翼目掛け飛ばす!
「甘い!」
侍は迷わずそれに向かって飛び気炎万丈を発射。一つを撃ち落し銃架でもう一つを殴り飛ばした。
(やる!)
落とされたにも拘らず己のAIは喜びを感じる。最高だ。化け物な己に相応しい相手だと!
残りを囮に己も飛ぶ。容易く残りを撃ち落した侍もこちらを捕らえて飛ぶ。
「(はぁぁぁっ!!!!!)」
裂帛の気合を込めて撃ち出される弾丸を右目に直撃させつつ腕を伸ばす!
固い感触と頭を貫く感触は同時に訪れた。地面に叩き付けられ己の「頭」が「外れる」。
「ここまでの手合いとは・・・君とはまた戦いたいものだ」
脇腹を斬られその先のエンジン部分まで貫かれた状態、でも雄雄しく降り立つ侍が「ほざく」。
突き刺さった刀を回収し背を向けるその体を「見据える」。同時に観客の悲鳴が上がる。
「?何!!!!!!!!?」
振り返り驚愕の声。そりゃそうだろう。転がった自身の頭を手に「首無し」が立ち上がったのだから!


 悲鳴とリングアナの驚きの声。
自分でも判るくらいに邪悪な笑みを浮かべて相手を見る。その表情は驚きから怒りへと。大方俺がチートでも使用していると思っているんだろう。先んじて声を上げる。
「「本物の頭」が首の上に乗ってるなんて誰が決めたんよ?ルールにも乗ってないで?それにアイツの「頭」はちゃんと体に付いてるしな」
ブーイングを上げようとした観客も静まる。相手は怒りからまた驚きへと。
「・・・!椿まだ終わってないわ!」
そうまだ終わってない。
「存分に暴れて魅せろ!観夜!」


 驚愕の表情の中に少しばかり恐怖が見える。
貫かれた頭は停止寸前ながらも自力で宙に浮かぶ。時折火花が見えるのが余計に不気味な事だろう。己は「見えなくなった眼」からもう一つの眼にシフトする。胸と首の間、大きな目の模様が入った拘束服の前面装甲に設けられたもう一つの「眼」に。
ユラリと両手を広げ手首を下へ。貼り付けの罪人の様な構えを取った後初めて声を放つ。
「驚いたようで何よりだ。己はまだ終わっちゃいない!」
走る。慌てて抜刀し対抗したのは流石と言えよう。そのまま打ち合い距離が開く。
己の中で待ち望んだ全力での「大喧嘩」に高揚する。拘束は外れ「頭」は飛び強い敵を相手にする。バトルでこんなに楽しい事はないだろう?
「さぁ、死合う侍!この己を殺して魅せろ!!」
混乱から少しは落ち着いたのか侍は構え己を見る。その表情にいかばかりかの楽しさを見せて。
 ガンッ、ガンッ、と打ち合い互いに傷が増える。
奮える感情と一撃毎の衝撃が楽しい。相手もそうなのか少しずつ表情がニヤけている。
「はっ!」
「殺ぁ!(しゃぁ)」
幾度目かの打ち合いで左手の刃がヘシ折れる。構わず右手の刃を振るい相手の刀を弾き飛ばす。
「まだまだぁ!!」
「はっはぁ!!!!」
ウィングの基部から抜き出した仕込みの刃を笑い声と共に迎え撃てば右手の刃も砕けた。
「ぅらぁぁぁ!!!」
「せっっ!!」
振り上げる左脚と刃が火花を散らす。三枚の内外柄から二枚飛ばされる。が、相手も体制が崩れたところを刃の無い腕でので殴る。連打に翻弄される侍、その鳩尾に両手での掌底を決め放つ!
「狼牙!!!」
「がっ!!」
零距離での狼牙掌。腕の拘束服に内臓されたスキルを発動し相手を吹っ飛ばす。でもまだ相手の「眼」はこちらを見据えている。
「くっ・・・まだ・・・」
「・・・・はぁ、はぁ、はぁ」
互いに余力は少ない。「極める」のは次だ!
「往くぞ・・・狂牙!(きょうが)」
「来い武士!(もののふ)」
納刀から居合いの構えで走る侍。残された右脚に力を込め迎える!
「覇覇ぁぁぁぁぁ!!!!!」
「嗚嗚嗚嗚ぉぉぉぉん!!!」
その刃と刃が重なると爆発した。

 衝撃に耐え切れず砕かれた地面が煙幕の様に土煙を巻き上げ二人を隠す。
「聞いて良いか?」
「・・・何?」
「技の名を」
「獣牙爆熱脚。言わずもがな拳を蹴りにしただけのものさ」
「そうか・・・蒼天残月。私のはこれだ」
「成る程。流石だ」
場違いな雰囲気だった。バトル、しかもあんな美しさも何もない只々「熱い」だけの。その最後には似合わない友人との会話のような空気だった。
崩れ落ちる事なく彼女は情報の塊と化していく。
「楽しかったぞ・・・狂牙」
「己もだ・・武士」
最後は笑顔で称えあった。また相対(あいたい)ものだと。

『WIN 観夜』


 息を飲む声が妙味大きく聞こえた。
土煙で様子が見えなくなったフィールドに立つのは二つの影。次第に晴れると侍の姿は霞と消え勝利判定の音声が流れた。
実況のリングアナも言葉が見付からないのか呆然としていた。ってかこの人「頭」が取れた時のまま固まってないか?
ポッドが開いて戻ってきた侍をオーナーの少女が称える。「頑張ったね」と。

『はっ!Σ 勝利「観夜選手」!優勝は彼女です!!!!』

思い出したように宣言するとこれ又思い出したようにブーイングが起こる。今までで一番大きく。
彼女が可哀想だと、そんな姿にしてやるなだと、労わってやれだと。もう自分勝手に喚き散らす。俺は涼しい顔でそれを流す。何とでも言えば良い。俺がそれを笑ってやるから。見てくれだけで判断するなんて何て似非な正義面なんだと。でも相棒はそれが許せなかったらしい。ギャグを外すと大声で吼えた。
「貴様等の正義感を押し付けるな!己がこの姿をしているのは己の趣味だ!それを許し誂えてくれたマスターを馬鹿にするな!外見だけしか見ずに中を知らずに批判する貴様等が何正義面してんだ!!」
静まり返る会場。ブーイングの声を上げていた連中は面食らったらしい。まさか自分達が否定されるなんて思っていなかったんだろう。
「行くぞ」
「マスター!・・」
肩に乗せる。
「言わせときゃええねん。俺等は俺等で楽しみゃな」
「・・・うん」
少々納得いかないようだがこのまま吼えさせても意味はないだろう。それに聞く耳持たんと思うし。
ゲートを潜るとまた会場が騒がしくなったが知った事じゃない。
 数分して表彰式となる。
が、俺等はそれを辞退した。会場に戻ったとしても白けるだけだし。
「ごめん。己があんな事言ったから」
「気にすな。それにしても吼えたな」
「ムカついたから。己が言われるのなら判るけど何々だってんだ。マスターが無理やりやってるみたいな事ばかり言いやがって・・・」
未だ怒り収まらない、いや思い出したからか。しかしまぁ何とも俺は思う。
「愛されてんなぁ俺」
「!」
音でも立てそうに赤面する相棒を肩に煙草に火を付け帰宅する。


 翌日センターのHPでバトルが公開された。
そのムービーの掲示板は凄まじい量の書き込みがされていた。話の中心は言うまでも無いな。
「よっしゃ、計画通り二つ名が付いたな」
「だね。しかもそれを広めたのって彼女だし」
表彰台でのインタビューで準優勝の侍が言った言葉。そこから観夜の二つ名が付いた。
『狂牙』
狂った牙とは何とも相応しい。本人も気に入っている。でも俺達の中ではそれ以上に安堵があった。
「「THE拘束服にならんでよかった」」
良かった。本当に良かった。
 そしてインタビューの最後、侍とオーナーの言葉。
『彼女は本当に大事にされていると思います。そして私はあのオーナーを批判しません。全力で楽しんでいるだけなんだと思います』
初めての擁護だったその言葉に観夜が微笑む。
今までずっと批判されていた俺等を理解しようとしてくれた二人に喜んでいるのだ。無論俺自身も。
「また相対(あいたい)な」
本当に柔らかく笑う彼女。自然と俺も笑みを浮かべる。
「せやな。また大会とかで会うんちゃうか」
「うん。その時はまた・・・」
「「全力で屠るのみ!」」
次を待ち遠しく望む二人だった。

 そうそう、三位の騎士とそのオーナーは表彰式で何んか居心地悪そうだった。
 もう一個。
大会までにセンターで件の侍とオーナーに出会いよく会うようになった。頑張って口説くとしよう!
「マスター?・・・」
「フル装備で睨むなや・・・・」
口説き作戦は前途多難のようだが、
「ヤキモチとは愛い奴」
「真顔で言うなよ・・・(赤面)」
それもまた一興。




| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー