外気の暑さと身体の熱さが相まって、どうしても眠りにつけなかった。
「……ふう」
すぐ傍には、梓が寝息を立てていた。やっぱり暑いのか、時々寝苦しそうに寝息が乱れる。一応、行為の後にちゃんと服は着たものの、こっちも乱れていた。
……何を見てるんだろう、僕は。
眠る前の、梓の姿を思い出した。今以上に、どうしようもなく乱れた梓の姿。乱したのは、僕なのか?
梓の心を乱して、そんな行為に走らせたのは、僕なのか?
ネロのことを忘れようとして。
わからない。わからないのに、わからないけど、梓を受け入れて、そういう行為を受け入れたのは、僕自身で。
日が昇るころまで、僕のそんな葛藤は続いた。
「……ふう」
すぐ傍には、梓が寝息を立てていた。やっぱり暑いのか、時々寝苦しそうに寝息が乱れる。一応、行為の後にちゃんと服は着たものの、こっちも乱れていた。
……何を見てるんだろう、僕は。
眠る前の、梓の姿を思い出した。今以上に、どうしようもなく乱れた梓の姿。乱したのは、僕なのか?
梓の心を乱して、そんな行為に走らせたのは、僕なのか?
ネロのことを忘れようとして。
わからない。わからないのに、わからないけど、梓を受け入れて、そういう行為を受け入れたのは、僕自身で。
日が昇るころまで、僕のそんな葛藤は続いた。
薄日が差す頃になって、僕は眠るのを諦めた。
「……ネロ」
思わず、その名前が漏れた。
たった十日ほど、僕と一緒にいた神姫。
幻みたいだった、僕のそばにいた神姫。
「ネロ……っ」
心の隙間が、あの子といる内に埋まっていった。
忘れようとしたのに。
「ネ、ロ……!」
会いたい。
もう一度だけでいいから、会いたい。
「ネロ……!!」
部屋から出た。
「う、ぅう、う……」
抑えられない。
「ぅ、っく、ぅう、っぅうあああ……!!」
抑えられなかった。
扉にもたれたまま、僕は泣き喚いた。
「……ネロ」
思わず、その名前が漏れた。
たった十日ほど、僕と一緒にいた神姫。
幻みたいだった、僕のそばにいた神姫。
「ネロ……っ」
心の隙間が、あの子といる内に埋まっていった。
忘れようとしたのに。
「ネ、ロ……!」
会いたい。
もう一度だけでいいから、会いたい。
「ネロ……!!」
部屋から出た。
「う、ぅう、う……」
抑えられない。
「ぅ、っく、ぅう、っぅうあああ……!!」
抑えられなかった。
扉にもたれたまま、僕は泣き喚いた。
ひとしきり泣いた後。
「起きてるか?」
「……修也、さん?」
声をかけられた。
「ネロが助かるかもしれない」
「え……?」
一瞬、何のことだかわからなかった。
「研究所、来れるか?」
ネロに、また会える。
……でも。
会いに行っていいのか?
ネロを忘れようとして、梓を抱いたのに?
この期に及んで、そんな考えが浮かんだ。
「……行ってきなよ」
と、
「慎一君、行って。ネロと会ってきて」
いつの間に起きたのか、梓が扉を開けて、立っていた。
「別に、私のことは気にしなくていいから。ね?」
「起きてるか?」
「……修也、さん?」
声をかけられた。
「ネロが助かるかもしれない」
「え……?」
一瞬、何のことだかわからなかった。
「研究所、来れるか?」
ネロに、また会える。
……でも。
会いに行っていいのか?
ネロを忘れようとして、梓を抱いたのに?
この期に及んで、そんな考えが浮かんだ。
「……行ってきなよ」
と、
「慎一君、行って。ネロと会ってきて」
いつの間に起きたのか、梓が扉を開けて、立っていた。
「別に、私のことは気にしなくていいから。ね?」
大嘘だった。本当は、行かせたくなんてない。
けど、
「……わかったんだ。私は、ネロと一緒にいる慎一君が好きなんだって」
これは、本当のこと。
「だから、ネロと一緒に帰ってきて」
だいぶ、気持ちの整理もついた気がする。
私は、「ネロのことが好きな慎一君」を好きになったんだから。
多分、二人が一緒じゃないとダメなんだ。
だから、私は慎一君を送り出す。
けど、
「……わかったんだ。私は、ネロと一緒にいる慎一君が好きなんだって」
これは、本当のこと。
「だから、ネロと一緒に帰ってきて」
だいぶ、気持ちの整理もついた気がする。
私は、「ネロのことが好きな慎一君」を好きになったんだから。
多分、二人が一緒じゃないとダメなんだ。
だから、私は慎一君を送り出す。
研究所の、かすみさんの部屋。
メンテベッドの上で、ネロは静かに、眼を閉じていた。
かすみさんから聞いた、ネロを助けるための「呼びかけ」。
「ネロ」
静かに。
「ネロ」
けれど、思いをこめて。
「起きて、ネロ」
何度でも、呼びかける。
メンテベッドの上で、ネロは静かに、眼を閉じていた。
かすみさんから聞いた、ネロを助けるための「呼びかけ」。
「ネロ」
静かに。
「ネロ」
けれど、思いをこめて。
「起きて、ネロ」
何度でも、呼びかける。
白。
どこを見ても、白一色。
その中で、声を聞いた。
懐かしくて、暖かくて、初めて、私の名前を呼んでくれた声。
「……慎一?」
聞こえた方へ、意識を向ける。
急速に、忘れていた感覚が蘇る。
初めてのはずなのに懐かしい、CSCをセットされ、起動するあの感覚。
自分が自分として初めて存在できる、確かな感覚。
「……あなたも、こうして目覚めたんですね」
今は私の記憶の中にのみ在る、生みの親に向けて、呟く。
そして。
「……ただいま、戻りました」
もう、はっきり見える。
かけがえのない、とっても愛しい、私のマスターの顔。
「お帰り……、ネロ!」
思いをこめて、その人の名前を。
「……はい、慎一!」
どこを見ても、白一色。
その中で、声を聞いた。
懐かしくて、暖かくて、初めて、私の名前を呼んでくれた声。
「……慎一?」
聞こえた方へ、意識を向ける。
急速に、忘れていた感覚が蘇る。
初めてのはずなのに懐かしい、CSCをセットされ、起動するあの感覚。
自分が自分として初めて存在できる、確かな感覚。
「……あなたも、こうして目覚めたんですね」
今は私の記憶の中にのみ在る、生みの親に向けて、呟く。
そして。
「……ただいま、戻りました」
もう、はっきり見える。
かけがえのない、とっても愛しい、私のマスターの顔。
「お帰り……、ネロ!」
思いをこめて、その人の名前を。
「……はい、慎一!」
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