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4.猫侍、見参



大地と若山さんは午後二時ちょうどに僕の家へとやってきた。

「よ。ちゃんと起きたか?」

「こんにちは~。ねえねえ、狩野クンの神姫どこ~?」

大地は白のプリント入りTシャツに年季の入ったジーンズ、それから動きやすそうなスニーカーという体育会系スタイルだった。がっちりした体型の彼には、見慣れたスーツ姿よりもこちらの方が似合っている。
一方の若山さんは、グレーのジャケットにレザーパンツという、普段のほわっとしたイメージとはかけ離れたコーディネートだ。スマートな雰囲気が前面に押し出されているが、首元に見える可憐なデザインのネックレスや、所々にあしらったリボンが女性らしさをアピールしている。さすがは服飾デザイン部勤務といったところか。

「二人ともいらっしゃい。散らかってて悪いんだけど、まあ入ってよ」

自分の部屋がそれほど散らかってるとは思っちゃいないが、決まり文句なのでそう言っておく。二人を部屋に上げてから、僕はキッチンに立った。

「あ、猫だ。かわいい~」

専用座布団でお昼寝中の我が家の猫姫を見て、若山さんが声をあげる。いい角度で陽が当たるその場所は、キャロルのお気に入りポイントだ。

「ね、撫でても平気?」

キャロルに触れるか触れないかというところまで手を伸ばした若山さんが、僕に問いかけてくる。確認を取るのはいいことだと思うが、そこまで準備万端では誰も却下できないだろう、と思うのは僕だけだろうか。

「構わないよ。頭を撫でてあげると喜ぶから」

コーヒー二つとお茶一つ――大地が「俺はお茶がいい」と言い張ったからだ――、それと茶菓子を持って座卓に着く。その大地はといえば、キャロルと戯れる若山さんの姿を眺めながらほけーっとしている。

「はい、お茶」

「お、サンキュー。いやあ、こうしてのんびり過ごすのもいいもんだなあ」

などと年寄りじみたことを言っている。人の家で遠慮なしにくつろぐのもどうかと思うが、別に気にしてないので放っておこう。
大地の言うとおりのんびりと過ごすのも悪くないのだが、このままだと本来の目的を忘れてしまいそうだ。僕は少し離れたところで成り行きを眺めていたノエルを呼んだ。

「ノエル、こっちにきてご挨拶」

「はーい」

ふよふよと飛んできて、僕の掌の上に着陸する。そして大地に向かってぺこりと頭を下げた。

「初めまして、天使型アーンヴァルのノエルといいます。よろしくお願いします」

挨拶の仕方など教えた覚えはなかったが、丁寧な口調できちんと出来ている。こういうところも個性が出てくるのだろうか。

「お、初めまして。へえ、こんな礼儀正しい神姫もいるんだな」

大地が物珍しげにノエルを見る。大地はアウトドア大好き人間だから、あまり神姫を見たことがないのかもしれない。
じっと見つめられて恥ずかしいのか、ノエルはもじもじしている。

「ちょっと~、それじゃうちのコが全然礼儀がなってないみたいじゃないの~」

大地の言葉を聞きつけ、若山さんが詰め寄る。キャロルはどうなったかと見てみれば、変わらずお昼寝中のご様子。

「そんなトコにつっかかってくるなよ……ほれ、お前も挨拶しろって」

大地に宥められ、若山さんは渋々といった様子でノエルの前に座り込む。そして気を取り直したようにノエルに向けてにこーっと微笑んだ。

「初めまして、若山成海です。よろしくね~」

「あ、初めまして。ノエルです、よろしくお願いします」

大地の時と同じように、ぺこりと頭を下げるノエル。その様子に、何故か若山さんはうーんと唸った。

「確かに礼儀正しいわ~……ま、いいか。それじゃ、うちのコも紹介するね~」

言いながら、持ってきた鞄……というよりはキャリングケースのようなものを開ける。それを待ちわびたかのように、中からぴょこんと何かが飛び出してきた。初めてみる他の神姫――ノエルにとっては姉妹のようなものなのだろうか――に、ノエルも興味津々のようだ。

「むう、息苦しい……」

獣の耳のようにとんがった髪の毛をぴこぴこさせながら、すーはーすーはーと深呼吸をするそれは、緑髪の神姫だった。見慣れない場所に緊張しているのだろうか、辺りをきょろきょろと窺っている。

「ご主人、ここはどこであるか?」

「友達の狩野クンの家よ~、ほらご挨拶は?」

む、と唸った後、その神姫は僕のことをじーっと見つめてきた。髪と同じく緑色の瞳が、不審げに細められる……僕、何か悪いことしたっけ?

「……ご主人の愛人か?」

ぶっ!

緑髪の神姫の一言に、僕は思わず飲んでいたコーヒーを噴き出してしまった。なんてことを言い出すんだこのコは!

「流石は我がご主人、大地殿だけでなく他の男まで虜にしてしまうとは……いやはや、美しさは罪であるな」

変わった口調だとは思っていたが、言ってることはもっと変わってる。そんな彼女の様子に、若山さんはあちゃーって感じで顔に手を当ててるし、大地はげらげらと腹を抱えて笑っている……察するに、『いつものこと』なのだろうか?
ノエルも初めてみる先輩神姫の意味不明な発言に、目をぱちくりさせている。

「あー……とりあえず、初めまして。僕は狩野暁人、若山さんとは会社の同期だよ、うん」

なんとか平静を装い、自分に言い聞かせるように言う。そんな僕の様子に、緑髪の神姫は軽く首をかしげた。

「ふむ、違うのか……我がご主人ほどの美しき女子なれば、世の男児どもが寄ってたかるも必然。さればあらかじめ気の置けない男児でご主人の周りを固めておくもまた良策であろう。無論、その一番手が大地殿であることは言うまでもないがな。そなたなれば見てくれも悪くなし、二番手の座を譲ってもよいかと思むがっ!?」

彼女の言葉は若山さんの指によって強制的に中断させられた。あ、若山さんがげんなりしてる……こんな若山さんを見るのは初めてかもしれない。

「私はご挨拶しなさいって言ったつもりなんだけどなあ~……教育が足りなかったかしら~?」

若山さんの、いつもどおりの間延びした口調の裏に、そこはかとない殺気が見え隠れする。
なんだろう、この感覚は……僕が責められてるわけじゃないのに、何故か動けない。それは大地とノエルも同じようで、二人とも何も言い出せずに固まっていた。
そして当事者である緑髪の神姫は僕達以上に酷い状態だった。口を押さえられてばたばたと暴れていた四肢は、若山さんの言葉がスイッチであったかのようにぴたりと止まり、今では微動だにしない。視線は真っ直ぐ若山さんに向けられ、『お許しくださいお代官様』ビームが絶えず放出されている……いや、最後のはイメージだけど。

「もう一回だけ言うわよ~? はい、ご・あ・い・さ・つ」

語尾に「♪」でも付きそうな軽やかな声で言うが、目が笑ってないので非常に怖い。緑髪の神姫も耐えかねたのか、がっくりとうなだれるように頷く。というか、ただの挨拶がそんなに嫌なのだろうか?

「こほん……では改めて。儂(わし)は猫型マオチャオ、ご主人……若山成海殿の神姫じゃ。名前は、め、め……」

「め?」
僕とノエルの声が重なる。どうも名前を言うのにやけに躊躇しているようだが……見れば、何故か顔が真っ赤になっている。若山さんがもう一度声を掛けると、その神姫は開き直ったように口を開いた。

「め……めろんじゃっ!」

言った瞬間、彼女の頭からぼふっと湯気が出た。そしてそれをわかりきっていたかのように、若山さんが頭から水をかける……いつ用意したんだ、それ?
それにしても、この独特の口調で名前が『めろん』とは、どうにも違和感が……そんな考えを見透かしたのか、彼女が赤い顔のまま捲し立ててきた。

「わ、笑ったな!? お主、今笑ったであろう! くっ、いくらこの儂の気概に似合わず、尚且つ武士(もののふ)の誇りとは程遠い、まるでめるひぇんの世界から飛び出してきたかのような甘ったるい、しかしながら我がご主人から付けていただいたこの崇高な名前を笑うとはっ。許せん、決闘じゃ! 時と場所はお主に決めさせてやろう、それがお主の最期となるのだからなっ。逃げても無駄だぞ、どこまで行ってもこの名刀・コテツがお主の首をとむぎゅーっ!?」

彼女の弾丸トークはまたしても若山さんの手によって中断させられた。親指と人差し指で緑髪の神姫……めろんのほっぺたをつまむようにしているため、その口はたこみたいになっている。その上でにこーっと笑う若山さん……その身から迸るは、疑いようのない殺気!?

「あら~、めろんってば、私がつけてあげた名前にご不満でも?」

「滅相もござらぬ」

即答だよ、おい。どうにも彼女達の関係は非常に独特なものらしいが……腹を抱えて笑いながら痙攣してる大地の様子からすれば、これも『いつものこと』なのだろう。

「二人ともごめんね~。見ての通り変わったコだけど、悪いコじゃないから、仲良くしてあげてね~」

めろんを解放して苦笑いの若山さん、とほほーという効果音が聞こえてきそうな表情だ。

「ああ、もちろん。こちらこそよろしくお願いするよ。なあ、ノエル?」

「はいっ。よろしくお願いします、めろんさんっ」

ノエルが元気よくめろんに手を差し出す。めろんはしばし戸惑う様子を見せた後、ノエルの手をおずおずと握り返した。意外と恥ずかしがりやなのかもしれない。

「そこ、余計なことを考えるでないっ」

って君は人の心が読めるんですか!?

「めろんは人の感情とかの微妙な変化に対して敏感だからな。結構考えてること見抜かれるぜ?」

ようやく笑い地獄から復帰した大地がそんなことを言ってくる。いや、それはわかったから、お前まで僕の思考を読まないでくれ。

「それはそうと、めろんってかなり変わった口調だよね。何かきっかけでもあったの?」

僕は気になっていたことを若山さんに尋ねた。CSCによる個性があるといっても、めろんの口調は余りに特徴的だ。そう、例えるなら時代劇に出てくる武士や侍のような……。

「あ~、なんか前にたまたまテレビでやってた時代劇が気に入っちゃったらしくてね。最初は普通だったんだけど、それ以来こんな感じなのよ~」

と、気にした風もなくあっさりと。どうやら僕の予想はまるっきり正解だったようだ。

「へえ……じゃあこういうの見せたら喜ぶかな?」

僕は本棚から一冊の本を取り出し、若山さんに見せた。本のタイトルは『心眼!―柳生十兵衛―』。江戸時代に生きたといわれる伝説の天才剣士の一生を綴ったフィクション小説――彼の半生は史実としては不明な点が多いため、フィクションという扱いになる――だ。何故こんなものが僕の部屋にあるかといえば、つまり僕もこの手の歴史ものが好きだからである。

「へえ~、狩野クンってこういうの読むんだ。ちょっと意外かも……めろん、おいで~」

ノエルと何事か話し込んでいためろんが、若山さんの呼びかけでこちらへ走ってくる。そして本のタイトルを見た瞬間、ぱあっと笑顔になった。

「何でござるか、ご主じ……おおっ、これは!」

僕が持っていた本に飛びつき、あまつさえ頬擦りなんかしている。これは当たりかな?

「これはかの剣豪、柳生十兵衛三厳殿を描いた書物であるな!? 儂の憧れの人物じゃ! 柳生の十兵衛と言えば、間違いなく歴史上に生きたにも関わらず、その生涯は謎に包まれておるという伝説の男。しかしながらその腕前のみは変わることなく語り継がれておるのじゃ。その天賦の才たるや凄まじきことこの上なし! 片目を失いながらも、迫り来る剣を受け、捌き、そして心眼による見切り! 更にその一瞬の隙をついた正確無比な斬撃! どれをとっても一流の剣客じゃ、ああ素晴らしい! 儂もいつかは十兵衛殿のようになりたみぎゃっ!」

三度暴走しかけためろんを、今度は若山さんが頭を鷲掴みにして止める。人間で言うところのアイアンクローじゃないのか、それは。

「はいは~い、わかったから落ち着きなさいってば……というわけで、大分気に入っちゃったみたいね、この本」

若山さんが苦笑する。改めて自分の神姫が特殊な趣味を持っていることに気付かされてしまったような顔だ。
そしてその指の間から、目をきらきらさせてこちらを見ているめろん……アイアンクローされたまま、だが。

「よかったらこれ、読んでみるかい? 貸してあげるからさ」

同じ趣味を持つ人間がいるというのは何とも嬉しいものである。例えそれが人間でなく神姫であっても、喜んでくれるならば同じことだ。

「よいのか、暁人殿!?」

めろんが若山さんのアイアンクローから逃れて僕の指に飛びつく。若山さんはといえば、済まなさそうな顔で僕に両手を合わせていた。

「ああ、もちろん。結構レア物の本だからね、しっかり読んでくれよ?」

「かたじけない! この恩は儂が十兵衛殿に匹敵する剣客となることでお返ししよう!」

僕の手から本を受け取り……というか、頭の上に担いで、満面の笑みを浮かべるめろん。全く、面白いコだ。
そんなことを考えていると、不意に服の裾を引っ張られる感覚がした。見ると、ノエルがつまらなさそうな顔でこちらを見上げている。

「暁人さん、私には何のことだかさっぱりわかりませんよ~」

どうやら除け者にされたように感じていたみたいだ、声に拗ねたような色が混じっている。

「ごめんごめん、今度ノエルにも色々話してあげるからさ。そうだな、ノエルだと……アブラハムの天使の話なんかがいいかな?」

天使という単語に反応したのか、ノエルの目がぱっと輝く。

「はいっ、楽しみにしてます!」

そんな無邪気な笑顔が可愛らしかったから、僕はやっぱり彼女の頭を撫でてあげたのだった。

「生まれたての純真無垢なコを自分色に染め上げる、ってか? あんま変なこと教えるんじゃねえぞー」

横から大地が茶々を入れてくる。変なこととは失敬な。

「あ、そうだ若山さん。もう一つ聞きたいことがあるんだけど」

「ん、なあに~?」

「めろんってさ、何で『めろん』って名前なの?」

昨夜自分が悩んだこともあって、神姫の名前の由来を聞いてみたくなったのだ。若山さんは自分の神姫の名前にどんな思いを込めたのだろうか、と。
しかし、返ってきた答えは、あまりにも無情なものだった。

「髪の毛がメロンみたいだったからだよ~」

いや、いくらなんでもそれは……と思ったが、きっと彼女とめろんの間には、僕には計り知れない、僕とノエルとはまた違った形の絆があるに違いない。というか、そう信じよう。
さっき貸した本の目次を眺めながら、むむー、なんて唸っているめろんを見て、僕はそんなことを思った。







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