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1.武装神姫、里親募集中


珍しいこともあるものだ、と思う。
その晩僕は、会社の友人と共に行きつけのバーへとやって来ていた。
それ自体は別に珍しいことではない。
人数の関係で普段のカウンターではなくテーブル席にいることは、まあ珍しいことではあるが、ここではさほど重要なことではないので置いておく。
僕が珍しいと言ったのは、その友人の隣に座っている女性の存在だ。
グラスの中身を一口飲み、ちらり、と斜め前に座る彼女を見やる。

「んー? どうしたの、狩野クン~」

僕――狩野暁人というのが僕の名前だ――の視線に気付いたか、彼女が間延びした声で問い掛ける。
酔っているように感じられなくもないが、彼女の場合普段からこんな口調なので、それだけでは判別がつかない。

「いや……若山さんがここにいるなんて珍しいな、と思ってね」

彼女は若山成海といって、僕の同期の一人である。
僕との関係は、顔見知り以上友人未満といったところだ。
まあ、社交性が決して高いとは言えない僕にとって、会社の同期は皆同じような関係ではあるのだけれど……一人の例外を除いて。

「今日は特別に呼んだんだよ、成海がいた方が話も進みやすいだろうからな」

僕の正面に座ったその例外……失礼、山城大地が言う。
同期の中では、唯一かなり仲の良い友人と言える存在だ。
とはいっても、僕と彼の相性が特別良かったわけではない。
それは単に「とりあえず全員と仲良くなっておく」という彼の信条に基づくものであり、彼にとっては僕も含めた同期全員が友人である、というわけである……まあ、ここにも例外があったりするわけで。

大地の言葉に、隣の例外……つまり若山さんが頷く。
要するに彼らは男女の関係なわけで、友人ではない、ということなのだけど。

「話……ねえ。僕と大地だけじゃないって時点で、何かあるんじゃないかとは気付いてたけど」

言いながらまたグラスに口をつける。
カクテルグラスの中でゆらゆらと揺れる透明な液体……ギムレットという名のカクテルだ。
僕のお気に入りのカクテルの一つである。
今から五百年もの昔、西洋の男たちが新たな大陸を夢見て、こぞって帆船を航走(はし)らせた時代があった。
そんな中で生まれた、海の男達の酒……それがギムレットだ。
一人で飲みに来る時なら、この酒を傾けながら、延々とその時代に想いを馳せることもする……無論、今日はそんなことはしないけど。

「一体何の話だい?」

「まあ、そんなに焦るなって」

そう言いながら、大地が鞄の中をごそごそと漁る。
散々ちらつかせておきながら、何を言っているんだか……。

「狩野クンなら、きっと興味ある話だと思うな~」

ニコニコしながら若山さんがそんなことを言う。
それはまるで彼女自身にとって嬉しいことのような笑い方で、僕は余計に訳がわからなくなっていた。

「ほら……よっと」

大地が鞄から取り出したのは、縦三十センチ横二十センチほどの白いボール紙の箱だった。
何も書かれていない真っ白な箱……いや、右上にマジックらしきもので何か書いてある。

「ん……『MMS-ANG』? 何これ?」

「武装神姫だよ」

僕の疑問に即答したのは若山さんだった。
その顔は、やっぱりとても嬉しそうで。

「武装神姫……って、あの武装神姫?」

「他に武装神姫ってのがあるとは知らないが、その武装神姫だよ」

今度は大地に返された……そりゃ、そのくらいわかってるけどさ。
武装神姫の名ならよく知っている。
僕はシステムエンジニアの仕事をしているが、その関係で新しいテクノロジー絡みのニュースなんかは逐一チェックするようにしている。
四年前くらいだったか、その武装神姫が発表されたニュースも、記憶にはあった。
もっともその時僕が興味を持ったのは、前面に押し出されていた感情プログラムの方ではなく――その手のプログラムは僕の専門外であり、よくわからなかったというのも理由だ――駆動系、つまりハードウェアの方だったんだけど。

「まあいいじゃない……で、どうしたのこれ? 大地が買ったとか?」

それにしては梱包がちゃんとしてないけど、なんて続けた僕を、大地はからからと笑い飛ばした。

「違うって。まあ俺も興味がないわけじゃないけど……世話とか大変そうだし、何より成海がうるさいからな」

大地の言葉に、若山さんが何故か胸を張る。

「当然でしょ~。私というものがありながら、神姫の女の子にうつつを抜かすなんて、お天道様が許してもこの私が許さないんだから~」

中身だけとれば強気な発言なんだろうけど、間延びした声のせいで全然そうは聞こえない。
そんな若山さんの言葉に、大地は肩をすくめた。

「だってさ。自分は神姫持ってるくせに、理不尽だと思わねえ?」

「私はいいのよ~、女の子同士だし? それとも何、大地ってば神姫にヤキモチやくのかしら~?」

うりうりと大地の頬を突っつく若山さん。これはこれで、きっと仲がいい証拠なんだろう……僕にはよくわからないけど。

「へえ、若山さんは神姫を持ってるんだ。じゃあ、この神姫は若山さんの二個目ってこと?」

何気なくそう言った僕に、若山さんは真剣な顔で身を乗り出してきた。
普段のほわっとした彼女からは想像もつかない様子に、僕は思わずたじろいでしまった。

「狩野クン……悪気がないのはわかってるけど、その『個』って言い方は取り消してくれるかな? 武装神姫はただのロボットじゃない、それぞれが人格を持って『生きて』いるんだから」

どうやら彼女にとって、武装神姫という存在はとても大切なものらしい。
確かに、武装神姫が心を持っているというのは僕も聞いたことがあるし、ましてや彼女はその武装神姫と共に過ごしているのだ。
それを物呼ばわりされたら怒るのは当然だと気付く。

「ごめん、不用意な発言だったね。さっきの言葉は取り消すし、若山さんに……それから、若山さんの神姫にも謝る。本当にごめん」

そう言って僕が素直に頭を下げると、若山さんは一転してほわっとした表情になった。
よかった、許してくれるみたいだ。

「うん、ありがと~。狩野クンならわかってくれるって思ってたよ。それにうちのコにまで謝ってもらえるなんて、私感激だわ~」

すっかりいつもの調子に戻った若山さん、さっきの面影は微塵もない。
そんな彼女の様子に大地は苦笑いだ。

「それでね、このコのことなんだけど……残念ながらうちにはお迎え出来ないのよ~。神姫って世話するのに結構お金が必要でね。さすがに二人目は……」

若山さんがとっても悲しそうな顔でうなだれる。
どよーんという効果音が聞こえてきそうだ。

そっか、若山さんが買ってきたわけでもないのか……あれ、待てよ?

「……あれ、じゃあこのコは誰が買ってきたの?」

「買ってきたんじゃなくて、うちの会社のものだったんだよ」

大地が僕に言う。うちの会社……って、え、うち?

「うちの会社、そんなこともやってるんだ?」

「まあな。ほら、うちの会社って『何でもお任せください』がウリだろ? ま、武装神姫に関して言えば、やってたってのが正解なんだけどな」

僕達が勤めている会社『PPFコーポレーション』は、今大地が言った通り何でもやってるっていうのがセールスポイントの一つにある。
ゆりかごから墓場まで、って言えばわかりやすいかな。
大地曰く、その一環で武装神姫の流通ルートにも介入しようとしたらしいけど、さすがにその手の専門企業には敵わなかったらしい。
そして現在では事業から撤退、結構な数の武装神姫が在庫として残ってしまったとか。
大多数は関係社員が引き取っていったらしいけど、この神姫だけ最後まで残ってしまい、いよいよ廃棄処分かというところを、若山さんが見かねて引き取ってきたそうだ。

「そんなことがあったんだ、全然知らなかったよ」

「お前なあ、少しは社内の他のことも気にかけろよ? まあ、お前んとこは突出した専門分野だからしょうがねえのかもしれないけどさ」

僕の言葉に大地が苦笑する。
そう言われても、自分に興味のないことには全く関心がいかないのが僕なんだから仕方ない。

「そっか、このコこのままじゃ行く場所がないんだ」

言いながら、白い箱をそっと撫でる。
この中にどんな神姫がいるのか知らないけれど、心を持てる可能性のある者が、その機会すら与えられないままに消えていくしかないのは理不尽だと思う。
それは殺人と同じなんじゃないか……そんな考えが頭をよぎった。

唐突に、がばっと手を握り締められる。
何事かと顔を上げると、目をうるうるさせた若山さんが両手でがっちりと僕の手を掴んでいた。
ちょっとだけ、痛い。

「そうなの~! 可哀想なのよ~! こんなのってないわよね~、理不尽だと思わない~?」

今にも泣きそうな顔で、僕が考えていたことと似たようなことを言う。
もしかして僕の心を読んでたんじゃ……なんて、そんなわけないか。

それはさておき、確かに可哀想だとは思うし、何とかしてあげたいとも思う。でも、僕に出来ることなんて一体何が……あ。

「もしかして……僕にこのコを引き取ってほしいってこと?」

鈍い鈍いと言われる僕だけど、さすがにここまで条件が揃っていれば気付く。
僕の言葉に、大地は大きく一回、若山さんはぶんぶんぶんと三回、それぞれ首を縦に振った。

「そういうこと。いきなりの頼みで悪いとは思っちゃいるが……引き受けてもらえないか? これは成海だけじゃなく、俺からの願いでもあるんだ」

大地の目は真剣だった。
大地が神姫に対してどんな想いを抱いているかはわからないけど、少なくともこの言葉が本気であることは間違いなかった。

「お願いっ! お願いします~っ!」

若山さんが両手で俺を拝んでくる。
何もそこまでしなくても……と思ったけど、彼女もそれだけ本気だってことだろう。
気付けば大地も僕に頭を下げている。

正直言って、僕は武装神姫にさほど興味はない。
そして、興味のないことは、いかに周りがもてはやしてても手を出さないのが僕の信条でもある。
とはいえ、こんな事情を前にして、しかも二人からこんなに必死にお願いされた上で、それを無下に出来るほど、人として腐ってはいないつもりだった。

「二人とも、顔上げてよ。大丈夫、このコは僕が引き取るよ」

僕がそう言った途端、再び若山さんががばーっと僕の手をとり、ぶんぶんと振り回す。
いや、だからちょっと痛いってば。

「ホント!? よかったあ~、このままじゃ私心配で夜も眠れないところだったよ。ありがとう~!」

そこまで感謝されるとは思ってなかったので、僕は少々戸惑ってしまう。
その一方で、彼女がどれだけ神姫のことを大事に想っているかが、僕にも伝わってくるのを感じた。
大地はやれやれといった感じでソファに深く腰掛けているが、その表情には間違いなく安堵の色が見えた。
彼女のこともあるし、やはり大地も心配していたんだろう。



それから僕は、二人――主に喋っていたのは若山さんだけども――に神姫のことについて色々と教えてもらった。
仕事柄、メンテナンスとかそういった類の話は問題なく理解できたけど、やはりそれだけで万事オーケーというわけでもないらしい。
特に神姫とのコミュニケーションは僕にとって大問題だった。

「神姫も心を持っているんだから、細かいこと考えずに、普通に人と接するのと同じように接してあげればいいんだよ~」

なんて、若山さんは言っていたけれど、人付き合いが得意とは言えない僕にとってそれが一番の気がかりであるということに、彼女は気付いてないようだった。
やれやれ、これからどうなることやら……。



こうして僕と神姫との共同生活が始まることになった。
家までの道を歩きながら、僕は漠然とした不安とちょっとした期待を、同時に感じていた。







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