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……風が、吹きすさぶ。


いや、本来ならそんな物存在しないはずなのだ。
電子の海、その中のある場所。

ここは地獄の目の前。
某サーバー内....

吹雪と永久凍土で覆われた、ある館の所在地。

……



第十四回「零下の館」





……


ここに女が一人。

蒼い髪に凛とした目つき、細く、それでいて女の魅力を十分に惹き出す体。


しかし、その髪はすでに赤黒く汚れ、紫を思わせる色に変色していた。

自らの血で。
それも本来、"存在するはずのない"現象。
しかし、この世界の創造主は、凝り性であった。


目は虚ろ。
すでに瞳孔は開き、鈍く明かりを照り返していた。


体は血色。
所々から潤滑液(血)が滴り、その肉体を紅く染めていた。


「駄目だな…。あんたはどんだけ頑丈なんだ?」
屈強な担当官は、やり過ぎた自分と、相手に呆れた。

彼は電子世界にのみにその存在を置く、"調教プログラム"であった。

…『商品』
本来、"現実"から誘拐してきた彼女らを、別の顧客に引き渡すためにプログラム改変(調教)するのが彼の仕事であった。
というより、それだけのために創られた存在。

この"調教"は、対象の"魂"を直接改変する。
彼の場合、見せしめを兼ねて従来型の"拷問"という形でそれを行う。
そのほうが、効率は悪いが『恐怖』というカタチを最もわかりやすく対象に伝え、恐怖によって"魂"の抵抗を鈍らせる。

…故に彼の生みの親にすら、"悪魔と同じ"と言われていた。


彼女は耐えた。いや、耐えすぎた。
彼のサポートプログラムは、彼女の精神が崩壊し生きる屍状態になる寸前である事を指していた。
時々、こういう特殊な事例が発生するのである。

強い。強い意志が、自らを"死"に追い込む。


「すまない」
「…自分でやっといて、何故今更謝る?」

女―零牙―は、答えた。
男はまだしっかりとした回答が出来る彼女に、驚きの表情を浮かべる。


「ふん。…あんたの事、気に入ったぜ、消去(死んだ)事にしといてやる」
答えは、返ってこない。
「もし、動けるようになったら、その痛みを恨みと力に変えてかかって来い」
目を開けない零牙には、男の表情は見えなかった。
「……随分と優しいのだな?」


「俺は、待っているぞ」
「…ふっ」

口が微笑みのかたちに変わった。
彼も、その答えに顔を緩ませた。

「強いやつと戦うのが、俺の夢だからな」





「キャプテンへ。こちらラスター」
吹雪の空を、きれいなV字編隊で駆ける影が二つ。

"鳥"が、やって来た。

「現在戦闘エリアに突入、目標は発見できず」
「こちらジュラ。高度を下げないと何も見えそうにないわよ」
報告に茶々を入れるジュラーヴリク。

『こちら主、今ステージのトレース中だ。しばし待て』
「はいはい。ちょっと聞いただけよ」
冷静に指示を出す長瀬の声に、ジュラーヴリクは眉を潜ませた。

「急ぎましょう、すでに気付かれいてるはずだから」
「わーってるって…ミサイル接近」

二人は推進器を全停止し、身体をそのままひっくり返した。急降下の態勢である。
一気に高度を下げる二人の横を、今し方捉えたミサイルが通過していった。
『型は…鶴畑ンとこのファイヤーウォールか、安っぽいモン使ってるな』
「とは言っても数の配置が尋常じゃないです…」
「ほらほら! 直撃コース三発!!」

二人の持つ火器はVRバトル用ではない。
犯罪者のネットワークへクラッキングする為に作成された攻撃プログラムである。
ジェネシスの様に"必殺技"を持たない二人は、その分通常攻撃に特化している。だからこそ今ここにいると言える。

ジュラの自動小銃が、ラスターのPDWが的確にミサイルを撃墜してゆく。
「こんな事やってないで低空飛行した方が早そうね」
「全くですね」

二人は針葉樹が生い茂る森へと突入、その隙間を通って先を急ぐ。


……





……


零牙ならなんとかしてくれる。
少しでもそう思った自分を、今は呪っている。

自分たちの下に連れてこられた零牙は、死んだも同然だった。
全身が包帯(修復用プログラムなのだとか)に包まれ、目は完全に死んでいた。

「お前らが、俺の担当でない事を祈る」
風貌とまるで一致しない言葉をいって、ガタイの大きい男は去って行った。

「零牙…、起きているの…?」
目は死んだまま、だけど
「起きているさ。…今現状では盲(めくら)なんだがな。」


ここの監禁部屋に居るのは4人。
にゃー…私と、零牙。にゃーと同じマオチャオが一人、ヴァッフェバニーが一人。

「マオさん…。この人は、本当に大丈夫なんですか…?」
怯えた表情で私に聞くひとり。
この間、…二週間くらい前に起動したばかりの新米神姫"シャム"だ。

「わからないのにゃ、でも零牙は強いからすぐ治るよ」
そういって、自分も励ます。
そうでもしないと、自分が泣いてしまうだろう。


「どーすっかな。ご自慢のツールじゃ能力不足、万事休すかな」
ノーテンキな声でひとり呟くもうひとり。
にゃーよりも前に起動し、センターの上位ランカーに名を連ねるヴァッフェバニー"シーク"だ。

さっき、首輪(シーク用のツールらしい)を使って扉を開けようとしたけど、結果は失敗だった。
首輪では対処できないプロテクトが掛けられていて、そもそもアクセスができなかったらしかった。

「この先はどうなるかな。死ぬか自分でなくなるか、……あるいは零牙のようになるか」
「そんな事言わないでよ! 冗談でもそれは暗すぎるの!」
「あいよ。シャムが怖がってるしな」
シャムは頭を抱えて怯えている。
しきりに"マスター、助けて"と呟く。

泣きたいのはこっちだって同じだ。
私だって光一に会いたいし、何よりも零牙がこの状態だ。自分でも泣かないのが不思議だった。



「………っ…、そろそろ見える頃かな。」
ふと、今まで呼びかけに反応しなかった零牙が、びくりと体を動かした。
「零牙!? 見えるの零牙!?」
「…………ぁぁ。」
力強く答える零牙。

「…死にかけて、初めて自分の強い所と弱い所がわかる。」
目を、開いた。
「少し、授業料が高いような気がするがな。」
ゆっくりと、包帯だらけの体を起こす。

目はいつも通り、煌々とした輝きを湛えていた。

「思ってたよりは早く戻りましたね」
ストレートに感想をつげるシーク。こういうところは遠慮なしなのがシークであった。
「まあな。武器はないがが、何とかなるだろう。」
そういって、頭に巻かれた包帯から何かを取り出す。

「これは、我への挑戦状だ。」
受け取ったシークが見ると、それはプロテクト解除キーだった。

「此処から脱出出来るかは判らない。だが、我はこれに受けて立つ必要がある。」
頭の包帯を外しつつ、零牙は力強く答えた。

「それが戦士としてのプライドだ。」






……
………


コツコツと、電話を指で叩く音。

"館"の某所、そこに一人いた。
その整った顔立ちは、どこか無機物を思わせる雰囲気を漂わせている。
一般的に騎士型サイフォスと呼ばれる彼女は、黙りあぐねていた。


"狩人"の鳥の群れの侵入、"調教"前のデータどもの大反乱。
そしてその背後に居るであろう警察…―最悪"G"の関係者かもしれない―に対する警戒。

懸案事項が多すぎる。

ふと、着信音をかき鳴らす電話機。
受話器を手に取り、そこから聞こえるであろう指令に耳を傾ける。
『"鳥の主"の関係者が、場所を突き止めたのは確実のようだ。このサーバーを放棄する』
「"商品"はどうなされますか?」
『自分は潔い性格だと言う事を忘れずにな』
「そのまま持ち主に返却してやれ、でありますか。了解」
低い、男の声。
『ああ。…ただし、サーバーの自己崩壊まで"鳥の主"に情報を収集させるな。あれを使え』
「yes ser」





「よく来たな」
晩餐会場を模したモノであろう広い一室に、"彼"は待ち構えていた。
「我は武士でも騎士でもない、だが約束を破るほど臆病ではないのでな。」
「約束、か」

"彼"は腰に引きずる形で携えていたグレートソードを構えた。
対して。零牙は近くにあったサーベルを手に取る。

「貴様、名は?」

「"蒼穹の猟犬"。…参るぞ。」


~・~・~・~・~・~・~


「祁音!! まだなの!?」
『俺ァそんなにタイプ速度速くねーんだよ! 少しぐらい黙ってろ!!』
「ジュラ、次が来ますよ!!」

"館"に辿り着いた二人を待っていたのは、大量の自立型ウイルスバスター。
これも安物を大量に買い付けたのだろう、何故多重起動しているのかと考えてる暇はない。

個々は弱いが、数が多い。
必要あれば自己をコピーし、すぐに新しいものが出来るプログラムだからだ。

「零牙はどうしたの!?」
「…零牙は"決着をつけてくるから遅れる"の」
「なによそれ!?「ジュラ、彼女なりの理由があるのですよ」…そりゃそうだろうけどさ」

『アクセスゲート開放、急げ』
脱出できた神姫達がゲートになだれ込む、転送先は神姫センターに保管されている各々の体。

「シーク、シャム!! 急いで!」
攻撃が激しく、二人は近くの岩陰に隠れていた。
シャムが動こうとしていない。
「死にたいの!? このままじゃ…」
シークが無理やり引っ張り、こちらに走り始めた。


直後、強烈な閃光があたりを覆った。



~・~・~・~・~・~・~


零牙と"彼"の決闘は、佳境を迎えつつあった。


「やっぱり、目をつけた価値がある。いい腕だ」
「たまには自分を褒めたらどうだ? でかいの。」

刃と刃のぶつかり合い。その光景が繰り返された回数は、すでに二百回を越えようとしていた。

零牙の体を包んでいた包帯のうち、腕と頭を覆っていたものは戦闘前にはずしている。
その裏側はまだ完全に修復されておらず、ノイズが混じっていた。


「ぶるぅぁぁぁぁっ!!」
力任せの縦一文字斬り。先端が音速に達した。
「!!」
その刃を瞬時に受け止め、そのまま迫る大剣を弾き、斬り込む。
しかし、それは柄で弾かれる。

これと、これの似たパターンの繰り返しであった。

「猟犬とやら、言い忘れていたが間もなくこの館は消えてなくなる」
「何?」

唐突な一言に、零牙は動きを止める。
だか、"彼"はそれを狙わず、そのまま言葉を繋ぐ。
「"G"や"鳥の主"を警戒し、ここを放棄すると決めたのだ。"司令"は、すでにオーナーと合流している」

「…誰だと聞いても、おそらく何も知らないのだな?」
「ああ。…俺はこのサーバーから移動する事が出来ない、だからこのまま消える運命だ」
「…で、消える前に腕を見込んだ者と決着をつけたい。そういう訳だな?」

床に投げ捨てられるグレートソード。
そして、どこからか新しい刀剣が取り出される。

零牙は、取り出されたそれを一目見て言う。
「ふぅむ、日本刀とはまた洒落た趣味だな。西洋調の身なりの割には」
「オーナーが俺の為に作成してくださった名刀だ。…もっとも、普段は使わないがな」
「いい心構えだ、我もお主が気に入ったぞ。」
零牙は、ニヤッとした表情を浮かべた。


~・~・~・~・~・~・~


光が止んだ後には、何も残っていなかった。
ステージデータ自体が破損し、斑色の空間が顔をのぞかせていた。




"死んだ"
目の前で顔なじみが。


「あ…」
生まれてからまだ二週間しか過ごしていない生命。
そしていいライバルであった後輩も。

「う…ぅ…あ…!?」
マオは、初めて『死』を目の当たりにした。

以前、こんな事があった。
光一が飼っていた猫が突然居なくなった時、光一は「自分探しの旅に出たのだ」と言った。
純粋な彼女はそれを鵜呑みにし、猫が帰ってくる日を楽しみにしていた。

でも、今思うとそれは嘘だったのだと痛感する。
それを語った時、光一の顔が柄にもなくシリアスだったのを思い出した。

「何よあのデカブツは!?」『対ジェネシス用…か?』「あんなデカブツ、ジェニー以外に使う相手居ないわよ!!」

巨大な影。
西洋の甲冑を模したそれは、巨体を震わせ"鳥"たちに迫る。
「あれが…、シャムを…」
マオの心の中にあった何かが、音をたてて砕けた。

それは、今まで知らなかった"現実"によって"夢"が壊れた音であり。


"夢"という鍵によって封印されていた、殺意が目覚めた音でもあった。
「うぁぁぁっ!!」



~・~・~・~・~・~・~


勝負は、一瞬で決まった。

柄で叩き落とされた刀が、音をたてて床に転がった。
そして、"彼"もまた地面に伏す。


「やはり、俺の負けだったか…」
「お主には、何かの迷いがあった。それが原因だ。」
サーベルを投げ捨て、零牙は"彼"に歩み寄る。
「そうか…、迷い…か」
「ああ。しかし、その迷いまでは、我には判らぬ。」

"彼"は、フッと笑みを浮かべると
「初めてだ。"俺がMMSのデータだったら"と、思うのは」
「……我に恋…か? あれだけ痛めつけた相手に恋、か。」

「…ああ。お前は最後まで弱さを見せず、己を通した。……それだけでは不満か?」
「いや。不満じゃないが、…こう言う事を言われるのは初めてなのでな。」
頬を朱染める零牙。

「俺の刀を持って行け、あれは別のサーバーに持っていっても大丈夫だ」
「…致命傷は与えていない筈だが…。まさか、もう時間が!?」
「その通りだ。……刀の名は "榮佐久間(サカエサクマ)"、… そいつをよろしくな」

「ああ。さらばだ、醜い仕事を押し付けられながらも、騎士道と武士道の両方に生きた者よ」
そう言って零牙は、"彼"の唇に自らの唇を重ねる。


"彼"が、光と共に消え去った。
「……いつか、また会おう。」

ファーストキスは、少し苦い感覚が残った。



~・~・~・~・~・~・~



鎧騎士の巨体が迫る。

零牙が居ない以上、ここから逃げる訳にはいかない。
「遅い!何やってんのよあの犬ころは!?」
「ジュラ、あわてたら負けですよ」
がなりたてるジュラを抑えるラスター、既に生存者全員がゲートに消えている。

LC3レーザーライフルを速射するが、鎧騎士に大した打撃を与える事が出来なかった。
おそらく対ウイルスプログラムの集合体なのだろう、ちょっとやそっとで消去する事は不可能なのであろう。

「…こちらの戦力は3ですね」「2じゃなくて?」


「遅れてすまない、助太刀するぞ。」


消えゆく館の屋根に姿を現す影。
零牙が来たのだ。

「遅い! さっさとゲートに「言ったであろう、助太刀すると」…はぁっ!?」
零牙の手に握られているのは"榮佐久間"。
刀身が青白い閃光を発し始めた。

「何!? あいつに立ち向かう気!?」
「…ジュラ、ここは黙って見るべきですわ」

鎧騎士が零牙に向く。
巨剣を振りかぶる。


「………零牙流剣技、蒼閃光唐竹割…!!」
"榮佐久間"を頭上に振り上げ、高く跳び上がる。

「チェストォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」


刃先が鎧兜に触れる。
すると、触れた個所から垂直に閃光が走った。
刃は深くめり込み、驚くべき速度で相手を斬り裂いてゆく。


零牙の足が地面に着く。
刀身に帯びた光は、ストロボを焚いたように弾けて消えた。

同時に、鎧騎士の体も縦一文字に裂けた。
唸りを立てて、その巨体は消えてゆく。


「嘘でしょ…ッ!?」
「"潜在能力の開花"と見るべきですか」

「……いや、唯の唐竹割だ。それ以外の何物でもないのさ。」
歩み寄りながら、零牙は答えた。


………
……





あれから、2・3日が経過した。
被害者は多少のトラウマを植え付けられつつ、日常に戻りつつある。


だが、還らない者が二人。それを引きずる者が一人。


~・~・~・~・~・~・~


「零牙…、少しいい…?」
「どうした、ようやくオーナーの下に帰りたくなったのか?」
ぶっきらぼうに、零牙が答えた。
彼女だって、あれから少し表情が暗い時がある。

私は光一と会っていない。
今の状態では、光一を心配させるだけだから。

零牙は、私のためにセンターに残っている。
それは零牙のマスターも承知の上でだった。

「ううん…。…零牙、教えてほしいの」
「何をだ?」

「…私はどうやったら強くなれるの?
 もう…、誰にも死んでほしくない。だから、守るための力がほしいの…!」

「マオ…?」
「あのとき、私がもっと早く気付けてたらシャムもシークも死んでなかった!!私の…私の力不足が…」


感情が抑えきれない。
私は大粒の涙を零しながら、零牙に聞いた。
「零牙…教えて…、私はどうすればいいのぉ…? …ぅぅ……ぐしゅっ……」


ここで、私は零牙に抱き寄せられた。
「マオ、強さは単純な力だけではない。人を思う心と、それを実現するための努力。」

零牙の心の鼓動が、胸を通じて伝わってくる。
「ある人は言った、「力イコール強いではない、かと言って優しさイコール強さでもない」。
そのどちらも併せ持つ者が、真に強い者だ。」

あたたかく、やさしい心が。

「…我には優しさが足りない。」
「……そんなことないよ…。…零牙はとっても優しい」

しばらくの間、私は零牙の胸に抱かれて泣いた。



…零牙…、"おかあさん"みたい…。







騒動は終わった。

しかしその後の話によれば、犯人は依然捕まっていないそうである。
「現にそうなったからには、可能と言うしかありません。…それより、事後についてですが
 三時間前に、ようやく最後の一人が日常に戻っていきました。それでは明後日、表ルートで寄らせてもらいます」
『そうか、何か進展があったら伝えてくれ。それじゃ、今後ともエルゴを宜しく』


通話を切り、長瀬は深いため息を吐いた。
「やっかいな相手に立ち向かう事になったなぁ…」

いつの間にか長瀬が座っているソファの背もたれに、ラスターがちょこんと座っていた。
「マスター、安心して下さいよ。私達以外にだって狩人はいますし、そのうち相手から首を突っ込んできますよ」
「…ラスター。無理に楽天的な事を言うな、バレバレだぞ」
「…すみません」

「まあいいさ。今度の土曜は小旅行にでも行ってくるか?」
「3人で、ですね?」
「…展開上、そうなるだろうなぁ…」


長瀬とラスターは、お互いに苦笑した。
二人っきりの時間は、なかなかこないものである。







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