鋼の心 ~Eisen Herz~
インターミッション01:プロローグ
それは…。
もはや知る者も居ない、過去。
もはや知る者も居ない、過去。
◆
「お姉ちゃん、はやくはやく」
「走るな真紀、転ぶわよ?」
京子は妹を追って甲板に出た。
「うわぁ、凄いよ。お姉ちゃん!!」
視界を埋め尽くすのは、一面に広がる蒼。
海と、空とで覆われた世界に京子は立っていた。
「走るな真紀、転ぶわよ?」
京子は妹を追って甲板に出た。
「うわぁ、凄いよ。お姉ちゃん!!」
視界を埋め尽くすのは、一面に広がる蒼。
海と、空とで覆われた世界に京子は立っていた。
妹、土方真紀は9歳。
多少病弱だが、入退院を繰り返すほどではないし、然したる特徴も無い。
京子自身も同じ事。
その日常は極一般的で『平均』の中に埋没してしまうような、強い個性の無い人生だと思う。
(ま、そういうのが一番幸せだって言うし、これはこれで良いか……)
双眸を閉じて軽く苦笑。
はしゃぎまわる妹の下へ小走りに駆け寄った。
「見て見て、鳥!! 何て言うの?」
妹の指した先に居るのは……。
「ああ、アレはAnimalia Chordata Vertebrata Aves Charadriiformes Laridae Larus Larus.crassirostris、って言う鳥よ」
「???」
混乱してる、混乱してる。
クスクスと微笑んで京子は日本語でその名を言い換える。
「要するに、カモメね」
「……カモメ」
先程のあにまりあ、とか言うのは何だったんだろう? と、疑問に首を傾げる真紀に、京子は追い討ちをかけた。
「うみねこ、とも言うのだけど……?」
「ねこさん?」
「そう、ねこさん」
ネコ好きの妹にウインクして、京子は隠していた菓子袋を取り出す。
「エサ、上げてみる?」
「うん!」
全部渡すと風で飛ばされたり、こぼしたりするので、京子は数個だけ真紀の掌に落とす。
「鬼は外~」
「違うから、それ」
妹は何処かずれていた。
多少病弱だが、入退院を繰り返すほどではないし、然したる特徴も無い。
京子自身も同じ事。
その日常は極一般的で『平均』の中に埋没してしまうような、強い個性の無い人生だと思う。
(ま、そういうのが一番幸せだって言うし、これはこれで良いか……)
双眸を閉じて軽く苦笑。
はしゃぎまわる妹の下へ小走りに駆け寄った。
「見て見て、鳥!! 何て言うの?」
妹の指した先に居るのは……。
「ああ、アレはAnimalia Chordata Vertebrata Aves Charadriiformes Laridae Larus Larus.crassirostris、って言う鳥よ」
「???」
混乱してる、混乱してる。
クスクスと微笑んで京子は日本語でその名を言い換える。
「要するに、カモメね」
「……カモメ」
先程のあにまりあ、とか言うのは何だったんだろう? と、疑問に首を傾げる真紀に、京子は追い討ちをかけた。
「うみねこ、とも言うのだけど……?」
「ねこさん?」
「そう、ねこさん」
ネコ好きの妹にウインクして、京子は隠していた菓子袋を取り出す。
「エサ、上げてみる?」
「うん!」
全部渡すと風で飛ばされたり、こぼしたりするので、京子は数個だけ真紀の掌に落とす。
「鬼は外~」
「違うから、それ」
妹は何処かずれていた。
「おかわり」
あっという間に一袋使いきり、京子は次の袋を取り出す。
「空ける~」
「……う~ん」
ろくな結果になりそうも無いが、嬉しそうな様子を見ていると水を差すのも躊躇われる。
(……近くに居ればフォローできるわよね?)
そう考えて、京子は袋ごと渡すことにした。
あっという間に一袋使いきり、京子は次の袋を取り出す。
「空ける~」
「……う~ん」
ろくな結果になりそうも無いが、嬉しそうな様子を見ていると水を差すのも躊躇われる。
(……近くに居ればフォローできるわよね?)
そう考えて、京子は袋ごと渡すことにした。
せめて空けてから渡せばよかった。
そう思ったのは、袋を開けようとした真紀が盛大に中身をぶちまけた直後だった。
そう思ったのは、袋を開けようとした真紀が盛大に中身をぶちまけた直後だった。
「あ゛~っ、ネコさんが、ネコさんがぁ~(泣)」
真紀がカモメの大群にたかられていた。
因みにネコはネコでもウミネコである。
凶暴性と制圧力は地上生物に過ぎないネコの比ではない。
「あ痛っ!? 指ぃ~、指噛んでる、指噛んでる!?」
「真紀!?」
エサに夢中のカモメは非常に凶暴で、京子も簡単には近づけない。
「あ~ん、髪引っ張らないで~!?」
カモメ空間(凄い表現だ)の中身はとんでもない事になっているらしい。
「真紀、真紀~」
とりあえず、力ずくででもカモメの排除を試みたが、カモメは意外と強い。
身体能力には自信のある京子でも、数羽掛かりで突かれたり蹴られたりしていては、中々真紀までたどり着けなかった。
「それ痛い、痛いからぁ!?」
「真紀~~~~~っ!!」
真紀がカモメの大群にたかられていた。
因みにネコはネコでもウミネコである。
凶暴性と制圧力は地上生物に過ぎないネコの比ではない。
「あ痛っ!? 指ぃ~、指噛んでる、指噛んでる!?」
「真紀!?」
エサに夢中のカモメは非常に凶暴で、京子も簡単には近づけない。
「あ~ん、髪引っ張らないで~!?」
カモメ空間(凄い表現だ)の中身はとんでもない事になっているらしい。
「真紀、真紀~」
とりあえず、力ずくででもカモメの排除を試みたが、カモメは意外と強い。
身体能力には自信のある京子でも、数羽掛かりで突かれたり蹴られたりしていては、中々真紀までたどり着けなかった。
「それ痛い、痛いからぁ!?」
「真紀~~~~~っ!!」
――――――パァン!!
破裂音。
それが全てのカモメを追い払った。
「………」
「………」
音に驚いたのは二人も同じ。
しばしの間硬直し。
そして、その源となった者に視線が移った。
「……え~と、大丈夫。……だった?」
それは、少年とも少女とも付かない中性的な子供。
年齢は真紀と同じか少し上。といった所だろう。
それが全てのカモメを追い払った。
「………」
「………」
音に驚いたのは二人も同じ。
しばしの間硬直し。
そして、その源となった者に視線が移った。
「……え~と、大丈夫。……だった?」
それは、少年とも少女とも付かない中性的な子供。
年齢は真紀と同じか少し上。といった所だろう。
「あ、ありがと」
「どういたしまして。僕も丁度カモメにエサをあげようと思ってたから……」
見れば、少年が手にするのはエサとして持ってきた菓子袋の残骸。
これを破裂させてカモメを追い払ったのだろう。
「手間が、省けた……。のかな?」
少年が破裂させた袋から甲板こぼれた菓子を、早くも戻ってきたカモメたちがついばみ始めていた。
カモメと言う生き物は、懲りる事を知らないらしい。
「どういたしまして。僕も丁度カモメにエサをあげようと思ってたから……」
見れば、少年が手にするのはエサとして持ってきた菓子袋の残骸。
これを破裂させてカモメを追い払ったのだろう。
「手間が、省けた……。のかな?」
少年が破裂させた袋から甲板こぼれた菓子を、早くも戻ってきたカモメたちがついばみ始めていた。
カモメと言う生き物は、懲りる事を知らないらしい。
この日、姉妹は一人の少年と出合った。
◆
それは珍しく豪華な旅行だった。
比較的裕福な京子たちの両親は、毎年のように海外へと旅行に連れて行ってくれる。
だが、今年のそれは例年よりも一層華美な物であった。
比較的裕福な京子たちの両親は、毎年のように海外へと旅行に連れて行ってくれる。
だが、今年のそれは例年よりも一層華美な物であった。
クルージングホテル『ティターン』。
全長380m。排水量9万tを誇る、世界最大の豪華客船である。
一泊凡そ一万円。
家族全員の値段ではない。一人一人の値段である。
全長380m。排水量9万tを誇る、世界最大の豪華客船である。
一泊凡そ一万円。
家族全員の値段ではない。一人一人の値段である。
◆
「……そうなんだ。それじゃあ、僕の方が一つ年上だね?」
「うん」
歳と趣味が合えば、性別の違いなどまだ些細である年頃だ。
真紀は少年とすぐさま仲良くなり、ほんの数時間で打ち解けていた。
「だから、大学出るまで一年あるでしょ? その間にお金を貯めて、わたしが大学出たら結婚するの~」
「いいよ~」
「ちょっと待てぇ!! いくらなんでも早すぎだろう!?」
出会ってから数時間で、将来を誓い合っていた。
「真紀、出会ってから数時間しかたっていない人と、結婚の約束なんかするんじゃありません」
「……だから、結婚するのは大学卒業したらだよ?」
「あと十年以上あるよね?」
「うん♪」
「……え(困惑)? ……いや(思索)。……ん~と(懐疑)。……あれ(混乱)?」
結婚するのは十年後ならば問題は無いのだろうか?
「……いや、やっぱりおかしいよ、それ!?」
「じゃあ、指切りげんまん」
「いいよ~」
二人の婚約が成立しつつあった。
「ちょ、ちょっと待って。やっぱ変でしょ、考え直しなさい、真紀!?」
「……ん~、それじゃあ、お姉ちゃんは愛人さんで」
「姉妹丼だね」
何気に爆弾発言。
「そういう問題じゃないっ!!」
京子絶叫。
「挙式は教会がいいな~」
「和風のも似合いそうだよ?」
「ウエディングドレスは女の子のロマンなの~」
「じゃあ、両方着てみる?」
「お~ぅ、ないすあいであ」
「えへへ」
そして二人は当然のように聞いていない。
「人の話を聞け~ッ!!」
京子は半べそかきながら思いっきり叫んだ。
「うん」
歳と趣味が合えば、性別の違いなどまだ些細である年頃だ。
真紀は少年とすぐさま仲良くなり、ほんの数時間で打ち解けていた。
「だから、大学出るまで一年あるでしょ? その間にお金を貯めて、わたしが大学出たら結婚するの~」
「いいよ~」
「ちょっと待てぇ!! いくらなんでも早すぎだろう!?」
出会ってから数時間で、将来を誓い合っていた。
「真紀、出会ってから数時間しかたっていない人と、結婚の約束なんかするんじゃありません」
「……だから、結婚するのは大学卒業したらだよ?」
「あと十年以上あるよね?」
「うん♪」
「……え(困惑)? ……いや(思索)。……ん~と(懐疑)。……あれ(混乱)?」
結婚するのは十年後ならば問題は無いのだろうか?
「……いや、やっぱりおかしいよ、それ!?」
「じゃあ、指切りげんまん」
「いいよ~」
二人の婚約が成立しつつあった。
「ちょ、ちょっと待って。やっぱ変でしょ、考え直しなさい、真紀!?」
「……ん~、それじゃあ、お姉ちゃんは愛人さんで」
「姉妹丼だね」
何気に爆弾発言。
「そういう問題じゃないっ!!」
京子絶叫。
「挙式は教会がいいな~」
「和風のも似合いそうだよ?」
「ウエディングドレスは女の子のロマンなの~」
「じゃあ、両方着てみる?」
「お~ぅ、ないすあいであ」
「えへへ」
そして二人は当然のように聞いていない。
「人の話を聞け~ッ!!」
京子は半べそかきながら思いっきり叫んだ。
船員さんに注意された。
◆
6年後。
立場が完全に逆転するとは、当の本人達ですら思って居なかったという。
立場が完全に逆転するとは、当の本人達ですら思って居なかったという。
◆
「じゃあ、また明日」
「うん」
真紀にとっては至福の。
京子にとっては悪夢のような数時間が過ぎ、姉妹は少年と別れた。
明日の約束を交わし、期待に胸を膨らませる真紀にとっては、今夜は長い夜になるかもしれない。
(多分寝付けず夜更かしして、明日遅刻するんだわ……)
そう考えつつ、京子は妹の手を引き、両親の待つ船室へと戻る。
今の内に、真紀の起こし方を考えておく必要があるだろう。
何だかんだ言って京子自身、あの少年との会話は不快ではないのだ。
(でも結婚の約束は早すぎるわ……)
そこは譲らないでおこう。
そう心に決めながらも、結局はこういうカップルが結婚しちゃうんだろうな~、とも考えていた。
「うん」
真紀にとっては至福の。
京子にとっては悪夢のような数時間が過ぎ、姉妹は少年と別れた。
明日の約束を交わし、期待に胸を膨らませる真紀にとっては、今夜は長い夜になるかもしれない。
(多分寝付けず夜更かしして、明日遅刻するんだわ……)
そう考えつつ、京子は妹の手を引き、両親の待つ船室へと戻る。
今の内に、真紀の起こし方を考えておく必要があるだろう。
何だかんだ言って京子自身、あの少年との会話は不快ではないのだ。
(でも結婚の約束は早すぎるわ……)
そこは譲らないでおこう。
そう心に決めながらも、結局はこういうカップルが結婚しちゃうんだろうな~、とも考えていた。
「……あれ?」
「どうしたの、真紀?」
「……ん~。……今、揺れたような気がしたんだけど……」
「いや。船の中だし、揺れるのはむしろ当然のような気が……」
「……そっか。そうだね……」
「どうしたの、真紀?」
「……ん~。……今、揺れたような気がしたんだけど……」
「いや。船の中だし、揺れるのはむしろ当然のような気が……」
「……そっか。そうだね……」
真紀はそう納得し、気にしない事にした。
◆
後悔すると言うのなら。
その全てがその対象だろう?
その全てがその対象だろう?
◆
その4時間後、『ティターン』は沈没した。
京子さんの過去編に当たるインターミッションシリーズ第一話です。
『鋼の心』の最重要人物である土方真紀の初登場でもあったり。
因みに、名前はMMSデザイナーの浅井真紀さんで、かつ、『まき=真紀=しんき=神姫』という言葉遊びでもあったり……。
因みに、名前はMMSデザイナーの浅井真紀さんで、かつ、『まき=真紀=しんき=神姫』という言葉遊びでもあったり……。
閑話休題
ガンダムが終わったので、感想ブログを巡回してたら00キャラでウマウマという動画を見つけて視聴。
……不機嫌そうに、(それでも真面目に)踊るティエリアが異常に可愛かったです。 (あとソーマさんとグラハム)
……不機嫌そうに、(それでも真面目に)踊るティエリアが異常に可愛かったです。 (あとソーマさんとグラハム)
と言うわけでAC4fAは全ミッションクリア完了。
あとはオールS目差して邁進するのみです。
あとはオールS目差して邁進するのみです。
さて、次は『12RiVEn』やらないと(笑)。
ALCでした♪
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