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 それは一瞬の事だった。
 機械翼のスラスターを全開にし、一瞬で踏み込んできたジャンヌはそのままライフルブレードを振りかぶり彩女に襲い掛かる。
 すんでの所で鞘ごとブレードを受け止めるが衝撃は殺しきれず彩女はそのまま弾き飛ばされた。
 ハウは飛ばされた彩女には目もくれずに両手のイングラムを連射する。しかしジャンヌの機械翼に阻まれ彼女には届かない。
「狗め」
 ジャンヌはそう呟くと翼で長椅子をハウに向かって飛ばす。
 重いはずの長椅子は軽々と宙を舞いハウに迫るが、弾き飛ばされた衝撃から立ち直った彩女が長椅子を両断する。そのまま身を低くし長椅子の下を潜りジャンヌに迫る。
 しかしジャンヌは翼をはためかせ急上昇するとライフルブレードのセレクターを切り替え、レーザーを連射してきた。
「―――――――!」
 彩女はなすすべも無くそれを回避し続ける。
 と、爆音と共にジャンヌの体が僅かに傾いだ。
 その隙に彩女は支柱の一つに身を隠す。見るとハウがカンプピストルを構えていた。
「成る程。大した威力だ」
 だが、だがしかしジャンヌは愚か翼にも傷一つ無い。
 ゆっくりと、地上へと降り立ちながらジャンヌは不適に笑う。
「だが ――――――狗では我を倒せない」










ホワイトファング・ハウリングソウル

第二十七話

『月下~7th moon~』















「―――――この!」
 カンプピストルをホルスターに戻しハウは左手のイングラムを連射する。
 しかし何発撃とうともジャンヌには届かず、全て翼に阻まれる。
 ジャンヌは翼で銃弾を防ぎながらゆっくりと近寄ってくる。急ぐ様子は無く、むしろ余裕すら感じられる。
「―――――――――破ッ!」
 彩女は一足でジャンヌの背後に踏み込み抜刀する。が、それは即座に背後に回されたライフルブレードで防がれる。
 ジャンヌは器用にそのまま力を込め彩女を弾き飛ばし、腰にマウントされたサーベルで斬りかかって来た。
「くっ!」
 咄嗟に鞘を使い左手でサーベルを受け止める。
 右手はそのままライフルブレードを押さえていた。
「やるではないか・・・それでこそ我が宿敵よッ!!」
 機械翼のスラスターを使い更に強く刃を押しやるジャンヌ。既に彩女は押され始め、ジャンヌが右手に持ったサーベルの切先が喉元に触れている。
「・・・この位・・・やれなくては駄目でしょう・・・ッ!」
 そういうと彩女は両腕を渾身の力を込めて上へと押し上げ、自分は足を開き地に伏せる。彩女の突然の行動にバランスを崩し、ジャンヌはそのまま前へと転び支柱の一つにぶち当たった。
 と、ジャンヌの足元に手榴弾が転がり煙を撒き散らす。すぐに彼女の姿は煙に阻まれ見えなくなった。
「こっちだ!!」
 見ると礼拝堂の奥の扉の前にハウがいた。一旦退こうと言う事らしい。
 彩女は一目散にハウの元へと駆け寄る。
「ハウ様、助かりました」
「ハウでいいよ。それよりも急ごう! ここなら狭くて追ってこれないはずだ」
 ハウは彩女の手を掴むとそのまま教会の奥へと走る。
「・・・噂には聞いてたけど本当に化物だね。まさかグレネードで傷一つつかないとは思って無かったよ」
「ご存知かと思いますが、彼女爆発の中でも大してダメージ受けませんよ。以前の時も結構な大爆発だったのに煤けただけでしたし」
 ハウに手を引かれながら彩女は走る。
 彼女は一体どこまで行くつもりなのだろう。
「まいったなぁ・・・マスターとも連絡取れないし。ここは僕たちだけでどうにかするしか・・・」
 走りながら、同時に考えながらハウは呟く。
 撃てば弾かれる。斬れば防がれる。そんな相手に一体どうやってダメージを負わせられるのか。
「・・・以前、斬り合った時は刃が通りました。ようするに厄介なのはあの翼でしょう」
 流石に疲れたのか、少し息切れしながら彩女が言う。
「となると・・・僕が撃ちまくってその隙に彩女さんが斬る・・・とか。撃たれ続ければ翼を防御に回すだろうし、そうすれば彩女さんの刀が届く・・・」
 ここなら大丈夫と思ったのか、ハウは走るのを止めようやく彩女の手を離した。
「呼び捨てで結構です。・・・しかし一番問題なのは彼女が剣の名手であるという事でしょう。例え翼を封じてもあの重量の剣を受け続ける自信は無い・・・彼女の剣は、受けねば両断されますが受け続けることが出来ない。衝撃の強さで弾き飛ばされますし、手がしびれてしまいます」
 彩女は壁に身を預けながら自身の右手を見やる。彩女とジャンヌでは、そもそもの素体の出力がまるで違う。
 万物を技で斬り通すのが彩女の体ならば、万物を力で斬り開くのがジャンヌの体である。
 これは別に素体のデフォルトの性能差ではない。ただ単に“そういう風”に二人の体が鍛え上げられたというだけだ。
「・・・ハウ様・・・いやハウ。あの翼、撃ち抜くための何か妙案は御座いますか」
 彩女の言葉にハウは自らの体を見やる。
 今の彼女の装備はイングラム二挺、カンプピストル一挺にグレネードが三つにハンドガン二挺。どう考えてもジャンヌの翼を抜くだけの装備は無い。
「・・・無いね。せめて50口径のライフルがあればいいんだけど」
 そういって帽子を直すハウ。
 何も、策は無い。
「そうですか。・・・・・・・あれ、ちょっと待って下さい。攻撃が効かないのは向こうが防御をしているからでしたね」
「え、うん。そうだけど・・・どうかしたの?」
「・・・・・・あの、頭を疑われるかもしれませんが・・・奇策を一つ、思いついてしまいました・・・」




































「・・・・・・・・・・・・・正気?」
「・・・やっぱりそう思いますよね」
 彩女が始めて考えた奇策は・・・お世辞にも策とすら呼べないような、それこそ行き当りばったりな代物だった。
 記四季ならもっと頭のいい策を立てるだろう。彩女は自分の学のなさを痛感していた。
「・・・でも、それしかないなら・・・賭けて見る価値はあるか・・・」
「でしたら下は私が引き受けます。ハウはとりあえず上を」
「・・・いや、僕が下だよ。切り札の彩女さ・・・彩女の手が痺れてたらそれこそ負けちゃう」
「・・・承知しました」
 ハウの言葉に彩女は肯くと、刀に手をかける。そのまま礼拝堂の階段の方へと走り去った。
「・・・彩女、か」
 その姿が角を曲がり消えるまで、見送るとハウはイングラムの残弾と予備マグの数を確認する。
「カスタムメーカー製とはいえ、一応同じハウリンなんだよね。・・・でも同じハウリンでも剣と銃・・・なんか面白いな」
 ハウはそういうと、礼拝堂に向かってゆっくりと歩き出した。
 途中、壁にかけられていた赤いコートを拝借し着る。
 サブウェポンのハンドガンの位置を調整し、クイックドロウに最適な位置にする。手榴弾やイングラムのマガジンも同様に。
 そうして彼女は礼拝堂へと続く扉の前に立った。
「・・・それじゃ、天使と踊ろうか」
 そうして扉を蹴り開く。
「―――――何じゃ、狗か。大神はどうした?」
 薄暗く荒れ果てた礼拝堂の長椅子に、詰まらなさそうにジャンヌが座っていた。
「彩女は逃げたよ。・・・悪いけど僕と踊ってくれないかな、お嬢さん」
 帽子のつばを人差し指で直しながら、なるべく気取ってハウは言う。
 その仕草がおかしかったのか、ジャンヌはまるで少女のように吹き出した。
「ふふ・・・ダンスの誘いが下手だな、狗よ。四つ足の獣に人の踊りが踊れるかな?」
 ジャンヌは笑いながらも椅子から立ち上がり、その大きな翼を一度だけ強くはためかせる。
 これで・・・ジャンヌはハウを敵と認識した。
「―――――!」
 ハウは両手のイングラムをフルオートで連射しながら走る。
 しかしジャンヌには傷一つつかず、全て彼女の白い機械翼に弾かれる。
「こそばゆいぞ」
 ジャンヌは器用に羽の隙間からライフルブレードを構え、ハウに向かって連射するが、ハウはほんの少し身を捻ることでその全てを回避する。
 彼女が、殆ど素体に近い武装をしている理由がここにある。
 通常のハウリンの武装や拡張スペーサーを使用した武装、装甲の類ではどうしても体の動きに干渉する。普通は干渉しないような動きを覚えるが、それでは有事の際にすばやく動くことが出来ない。
 故にハウは何も装備しない。
 トレードマークの帽子とブーツ、そしてホルスター以外は一切身につけないことで俊敏性をあげているのだ。
「ふん。ちょこまかと・・・・ん?」
 と、ジャンヌの足元からスモークグレネードによる煙が一斉に撒き散らされた。
 それはすぐにジャンヌの視界を覆い、ハウの姿を見失わせる。
「―――――――――はっ・・・は・・・ふぅ・・・」
 ハウは柱の一つに身を潜め、息を整えつつマガジンを交換する。
 先ほど少し休んでしまったからだろうか。蓄積された疲労とダメージが、一気に来ていた。
「あは・・・参ったな。こんなに辛いのは久しぶりだ」
 そういいながら柱の影から煙のむこうを見る。もちろん見えるわけは無いが・・・ジャンヌの翼の大きさなら煙から出ればすぐに判別がつくだろう。
 右手でイングラムを構えつつ、ゆっくりとハウは柱から身を乗り出す。何か動きがあれば、すぐにでも飛び出せるように警戒していた。
 警戒、していたのだ。
「――――――――――――え?」
 何かが飛んできた。
 それを知覚することも無く、ハウの右手は後方へと強く引っ張られ壁に叩きつけられた。
「は――――――が ―――!」
 何が起きたのか理解できずに右手を動かす。しかしその瞬間激痛がハウを襲った。
「・・・嘘、でしょ・・・っ!」
 ハウの右手が、サーベルで壁に串刺しにされていた。
 刀身の半ばまで食い込んだそれはもはや引き抜くことすら出来そうにもない。
「・・・・汝は侮りすぎていた。天使型のヘッドセンサーの感度をな」
 煙の中からブレードライフルを肩に担いだジャンヌが姿を現す。
 急ぐことなく、ゆっくりと。
「・・・・まさか・・・サーベル投げてくるとは・・・ね」
 ハウは力尽きたように項垂れる。
 左手は動くが、もし動かせば一撃で倒されるだろう。これ以上の抵抗は無意味だし、そもそも出来ない。
 完全な積みだった。
「よくぞここまで戦った。狗にしては上出来だ」
 気がつくと、ジャンヌがすぐ目の前にいた。
 既にハウの喉元にはブレードライフルの切先が突きつけられている。そのまま突き刺そうが引き金を引こうがハウには対抗する術は無い。
 ・・・と、ハウの耳が礼拝堂の上の方で小さな音を捉える。
 それは本当に小さな音だが、確かにハウの耳には届いていた。
「最後に聞いておこう。墓にはなんと書けば良い?」
 目の前のハウに集中しているためか、ジャンヌは気づかない。
 その様を見てハウは少し笑う。
「・・・何が可笑しい?」
 不機嫌そうでも無く。本当に不思議そうな顔でジャンヌは小首をかしげる。
「真打は・・・」
「む?」
「・・・遅れてくるのが、メキシコ式らしいよ?」
 ハウのその言葉を理解できずにジャンヌはますます首をかしげる。その瞬間
「―――――――――な!?」
 突如として天井から瓦礫と共に落下してきた彩女に、右翼を切断されていた。
 銀の髪をなびかせ、地に舞い降りた紅の狼はその勢いのまま天使の左翼も喰い千切る。
 ジャンヌが回避行動をとったのはスラスターを内蔵した翼以外を切断されたあとだった。
「・・・もう、遅いよ」
「・・・申し訳ありません。楽しそうに舞っておられましたので、なかなか入りづらく」
 彩女はそういいながらハウの右手を磔にしているサーベルを斬る。ハウはそのままついでとばかりに、左のイングラムをジャンヌに向けてフルオートで連射した。
「―――――クッ!?」
 翼で防ぐことが出来ず、ライフルブレードで防ぎながらジャンヌは礼拝堂の外に扉を破って飛び出した。二発くらいは当たったかもしれない。
「大丈夫・・・ではないようですね」
「うん。・・・おとり役も大変だ。・・・これなら初めから僕が天井に上ればよかったよ」
 彩女は肩を貸しハウを立ち上がらせる。
 そのまま長椅子の一つにハウを寝かせると
「・・・では、少々お待ちを。彼女を倒してまいりますので」
 優しく微笑んで、そういった。








































 彩女は腰の刀に手をかけながら、外へと続く礼拝堂の扉を潜る。
 そこには大草原が広がり、少し先には森の入り口も見える。・・・そして
「来たか。・・・ふふ・・・まさか翼を捥がれるとは、思わなんだ」
 翼を捥がれた天使がいた。
「いえ、私もまさか、最後に貴方が出てくるとは思っていませんでしたよ」
 油断無く隙を見ながら彩女はジャンヌに近づく。
 月明かりに浮かび上がるジャンヌの白い身体は、ダメージを負っているにも拘らず気高さを失っていない。
 互いに浅くない傷を負い、片や彩女の体力は消耗している。
 翼による防御がなくなったとはいえジャンヌのブレードライフルはまだ生きている。
 誰がどう見ても分が悪い。にも拘らず彩女は一足で踏み込みジャンヌに向けて抜刀した。
 その神速の刃は呆気なくジャンヌのブレードライフルに防がれる。
「・・・何じゃ、この程度か?」
「・・・いいえ?」
 彩女はそういうと刃を戻し、わざと隙だらけの姿勢で後ろに跳ぶ。
 踏み込んで斬ろうと思えば素人にも斬れる動き、にも拘らずジャンヌは追わない。
 二人の距離が、開いた。
「やはり、翼を捥がれては間合いを詰めることすら難儀ですか」
 下段の構えを崩さずに彩女は言う。
 そう、ハウと彩女がまずジャンヌの羽を捥いだ理由がこれだ。
 ジャンヌの翼は何も防御用の盾ではない。姿勢制御や気流の制御、そして加速時のブレーキにも用いられる。それを奪われた彼女は、間合いを詰めるために加速でもしようものなら止まることができない。
 つまり彼女は今、最大の武器である加速を利用した斬撃を奪われたのだ
「猪突猛進では汝に斬られるであろう?」
 にも拘らず彼女は笑っている。
 余裕の表れなどではなく、今の状況が心底楽しくて仕方ないという無垢な笑顔。
「・・・まぁ、羽ばたくための翼を失った今では、こんなものは重りにしかならぬか」
 そういうとジャンヌはバックパックを切り離す。
 天使は今、その翼を捨てた。
「さて大神よ。そんな遠くでは踊れぬ。もっと近くに来てはくれぬかや?」
「承知。・・・終わりにしましょう。この宴の夜を」
 彩女はジャンヌに向けて歩き出す。
 そのまま互いの得物の間合いにまで無言で歩き、止まる。
 空には蒼い月が昇り、二人の様子を眺めていた。
「・・・嗚呼良い月じゃ。大神よ、遠吠えなどはしないのかや?」
「主の命無しにはしません。この身は爪の先から銀の耳まで、余すところ無く我が主のものなれば」
 迷うこと無くそういいきる。
 彩女の目には一片の曇りも無かった。
「・・・そうか。では、始めるとしよう。大神よ、倒して見せよ。この身に貴様の刃を突き立てて見せよ。あの時のように、この我を倒して見せよ」
「語るに、及ばず」
 その言葉を最後に二人の間を静かな殺気が奔る。
 既に二人は得物を構え、睨み合ったまま動かない。
 と、一陣の風が吹き木の葉が舞う。
 その葉はゆっくりと宙を舞い、二人の間に落ちた。
「―――――ッ!」
「――――――!」
 彩女とジャンヌは互いに抜刀し示し合わせたかのようにお互いの刃が重なり合う。
 即座に引き戻しまた刃を振るうも結果は同じ。
 彩女は相打ち覚悟で防御など一切せずに刀を振るう。その刃は僅かにジャンヌの胸部装甲を抉ったに過ぎず、その一瞬で彩女は肩の鎧を破壊されていた。今度は袈裟切りにしようとするもジャンヌはそれを防ごうともせず逆に攻撃してくる。結果、彩女は腹部を深く切り裂かれジャンヌは肩から胸にかけて深く切られた。しかしまだ死ぬような傷ではない。そこからの速度はもう目では終えなくなった。
 ただひたすらに白銀の光が踊るようにも見えるその幻想的な光景は、実のところ命を賭した舞踏である。

 ――――――紅の大神が銀の髪をなびかせ白銀の刃を振るえば、純白の天使が金の髪をなびかせ断罪の刃を振るう。

 二人の間にもはや彼我の距離などは無く、また二人以外の存在など無いかのように剣舞は加速していく。
 互いに互いを傷つけあい、互いに致命傷など無く、ただひたすらに剣を振るう。
 互いの身体は既に満身創痍。何時倒れようともおかしくはない。
 にも拘らず二人は笑っていた。
 それはもはや彼女達の本能。
 戦いに焦がれ、戦いを求め、戦いに歓喜する咆哮する魂。

 ――――――彼女達の剣舞は、ひたすらに加速していく。

 一体どこに辿り着くつもりなのか。まるで千の彼方、万の彼方、億の彼方兆の彼方京の彼方の楽園に辿り着かんとするほどの加速。否、それが例え那由他の彼方であろうとも彼女らには近すぎる。
 ただひたすらに前へ。ただ我武者羅に前へ。ただ無茶苦茶に前へ。ただ無理矢理に前へ。ただただ戦い続けるためだけに前へ。無限に続くその道をひたすら走り続けていく。
 知らず知らずのうちに彼女達は咆哮していた。
 その咆哮は力強く、それでいてたおやかな美しさを備えた戦乙女だけが持つ可憐なそれ。
 もはや誰にも止めることは出来ない。どちらかが力尽き果てるまで、この舞踏は続くだろう。
 しかし、終わりは唐突にやってくる。
「なっ ――――――――!?」
 度重なる酷使のせいか、彩女の膝が音を立てて折れ曲がりバランスを崩す。
 その隙を逃さずジャンヌはブレードライフルを大きく振りかぶる。その目はとても名残惜しそうで、この月夜の宴を終わらせるのが忍びないと語っていた。
 彩女の目には、ブレードライフルが振り下ろされるのが酷く緩慢に映っていた。
 自分はもはや、前には進めないのだろうか。

 ――――――否、断じて否。

 いつだってこの足で進んできた。今も昔もこれからも。







 ――――――ならば、進めぬ通りはない。







 彩女は折れた足でジャンヌの懐に踏み込む。仮想現実とはいえ痛みがあることに変わりはないが、今の彼女はそんなものでは止まらない。
 踏み込んだ足は音を立てて壊れていく。激痛が走るが今はそれすらも前へと進む推進力にし、彩女は右腕に全身系を集中させる。






「――――――奥義」






 一瞬よりも尚速い。零の瞬きをその刃に乗せて






「零閃 ――――――――!!」






 彩女は、刃を振りぬいた。


























































































「・・・まさか、二度も地に足をつこうとはな」
 草原に、ジャンヌが寝転がっていた。その腹部には亀裂が走り紫電が奔っている。
 その横には彩女がうつ伏せで倒れている。
 こちらは赤い鎧もボロボロでそこいら中に傷があるが、右足以外に特に目立った外傷は無い。
「・・・私は・・・二度もこんなに苦戦するとは思ってませんでしたけどね。・・・なんでサラ様との対戦で貴女と戦うのですか」
「それは・・・あの女に言え。都とかいったか・・・あの女、ただネイキッド共がいるだけではつまらないだろうと、我等をここに来させたのだ。・・・いやまぁ・・・報酬は出ているから不満は無いが」
 ジャンヌはそういって笑う。
 笑うたびに残された時間が早まるが彼女は気にしない。
「・・・なぁ、大神よ。汝の名はなんという?」
「・・・彩女と申します。そちらは?」
「ジャンヌだ。百年戦争の際にオルレアンを開放し、シャルル七世をフランスで戴冠させたオルレアンの聖女、ジャンヌダルクと同じ名だ。・・・考えてみれば、互いの名も知らなかったのだな」
「・・・そうですね。何だかもう知り合いというか・・・友達みたいな感覚でした」
 そういって彩女は苦労しながら仰向けになる。
 雲ひとつない満天の星空に、蒼い月が美しく浮かんでいた。
「友か。それも悪くない。・・・さて、偽りの夜はこれにて閉幕。仮想の現実は真実へと還らせて貰おう」
 彩女が横を見ると、ジャンヌの身体がデータの塵になって消えようとしていた。
 敗北した神姫はこうやって戦場から去っていく。
「なに、我を倒したその時点でこの遊戯は終わりだ。じきに汝らも帰れるだろうよ。・・・・・・では、な」
 ジャンヌは、そう少女のように微笑んで光となって消えた。
 あとに残された彩女は天上に浮かぶ月を眺める。
「・・・そういえばハウは大丈夫でしょうか。・・・あぁなんかもう疲れてそれどころじゃない・・・」
 彩女は月を眺めながら、少しづつ眠くなっていくのを感じていた。
 単に疲れのせいかバッテリーが足りないのかは判らない。
「・・・主・・・聞こえていますか・・・・」
 天壌の月に右手を伸ばし、掴み取る。
「・・・彩女は、勝ちましたよ・・・・・・・・」
 彩女のその言葉を最後に、この偽りの夜の宴は閉幕した。




















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