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鋼の心 ~Eisen Herz~


第12話:夜の戦場(その5)





 大気をも焼き尽くす閃光が奔り、周辺の下草が熱に焦げてゆく。
 光条はレライナが盾にした岩を数秒間焙り、ようやく途絶えた。
「……冗談見たいな威力じゃな……」
 軽口を叩きはするが、その実レライナにはいつもの余裕は無い。
 流石にあのレーザーはマズイ。
「ふむ。威力はLC3の……。かるく倍と言った所か……?」
 小さく呟くのは、神姫にとっては代表的な大型レーザー砲であるLC3レーザー。
 アーンヴァルの標準装備の一つだが、神姫の武装としてはかなりの威力を誇る。
 軽装の神姫ならば、一撃で戦闘不能になりかねないその威力は、如何なる神姫にも無視できるものではなく、そしてもちろんレライナがその例外と言うことも無い。
 だが、その倍の威力と言うことは、倍のダメージを受けると言う事ではないのだ。

 単純な計算だ。
 仮にLC3の威力を100、神姫の防御力を50とする。
 その場合、ダメージは50。
 ならば、威力が倍ならば……?
 ダメージも倍の100……。では済まない。
 200の威力に対しても防御力は50のまま。
 即ち、ダメージは150という結果になる。

「流石に直撃を受ければ終い(しまい)じゃな……」
 そう呟きながら、レライナは神速のダッシュで手近な岩影に飛び込んだ。

 ……追撃は無い。

「……連射は利くが無制限では無いと言う事か……」
 もしそうなら、レライナに勝ち目など無い。
 ……いや、この威力だ。もしも無制限に連射できるのなら、神姫は愚か戦車を持ってきても無理だろう。
 だが、撃ち続けない所を見ると、どうやら敵のレーザーにも何らかの制限はあるようだ。
「……まあ、無ければ困るが、な……」
 少なくとも、このレーザーがLC3を遥かに凌ぐ驚異であるのは間違いない。

 まずは威力。
 先程デルタを庇った際に使用した小盾は、左腕ごと完全に溶解。
 破損はフレーム内部にも及んでいるらしく、今や彼女の左腕は肘から先が殆ど動かない。
(バトルロイヤルなら、これだけで終わりであったな……)
 一瞬で溶解したとは言え、レーザー蒸散幕も備わっていた盾だ。
 通常のLC3なら3発は余裕で耐える。
 だが、一撃すら満足には持たなかった。
 直撃を受ければ間違いなく“それで終わり”だ。
 神姫の致死部である頭部と胸部は頑丈なシェルで覆われている為、一撃で死ぬような事は無いだろうが、四肢はそうも行かない。
 手足が動かなくなれば文字通り、“それで終わり”である。

 更に厄介な事に、敵はその威力のレーザーを“連射”してくる。
 再充填が早いというレベルでは無い。
 殆ど間を置かずに撃てる何らかの仕掛けがあると見るべきだ。
 唯一の救いは、それが無制限ではないということ。

 エネルギーか、砲身冷却か、何かの理由で連射数に制限があるのだろう。
 それだけが唯一残されたレライナの勝機だった。



「……化物」
 レライナと一キロ近い距離を隔てて相対する神姫、ブーゲンビリアもまた焦燥に駆られていた。
 敵の動きが速過ぎる。
 使用中の“class1”には、岩塊を一撃で融解させるほどの威力は無い。
 そして敵の神姫は、そんな岩の影から影へ、信じられない速度で移動しながら接近してくるのだ。
 姿を晒しているのは1秒にも満たない短い時間。
 だが、距離は少しずつ、…そして確実に縮まっている。
「……近接戦闘、不可」
 ブーゲンビリアには接近戦は愚か、中距離以下でも戦闘が出来ない。

 ―――否。

 ブーゲンビリアには、“攻撃”は出来ても“戦闘”は出来ない。

 彼女の動作プログラムには、CSCとメインシステムに根ざす重大な欠陥がある。
 ありていに言ってしまえば、ブーゲンビリアは素早く動けない。
 故に彼女には、格闘戦や射撃戦といった“戦闘”で勝つ事は不可能だった。
 攻撃が当たらないのはもちろん、敵の攻撃に対し、回避することはおろか、防御する事も“間に合わない”のであれば、勝てると言う道理がない。
 ならば残された方法は只一つ。
 攻撃されない事。

 敵の射程外から、一撃必殺の威力を必中の精度であてる事。
 それだけがブーゲンビリアに残された最後の手段だった。

 だから、近づかれてはならない。
 10メートル以内に近寄られればレーザーの狙いをつける事も困難になる。
 故に、仕留めるならばそれ以遠の距離で……。
 距離さえ取れれば、敵の移動がどれほど早くても砲身を僅かに振るだけでその速度に追いつける。
 そして、京子の造った『ユピテルレーザーシステム』は、武器としては現行最強と言ってよい。
 当たりさえすれば一撃なのだ。
 残り80メートル。
 その間に一撃当てれば良い。
 ……だが。
「困難、至極……」
 それが結論。
 冗談みたいな速度で岩の間を飛び交う神姫に、直撃を出すのはかなり難しい。
「……帰結」
 ならば、前提を崩せばよい。
 “岩”の間を飛び交う故に狙いが定まらない。
 だったら、簡単な解決方法がある。
「岩、諸共……」
 そう。
 岩ごと打ち抜けばいい。
 ただそれだけだ。
 ブーゲンビリアには、それが出来る。

「……薬莢、再装填」
 鈍い音と共に、バックパックからユピテルへ“給弾”される。
 ブーゲンビリアの武装、『ユピテルレーザーシステム』はLC3のような従来型のレーザーとは一線を画する機構を備えている。
 そもそも、レーザー砲としてのシステムが別物だった。
 レーザーの原理上、そのシステムには光を発する機構が必要となる。
 通常それを行うのは放電管による発光だ。
 それを触媒を通しながらの鏡面反射により増幅し、特定の波長に揃えて放出するのがレーザーである。
 だが、“ユピテル”は、根源となる発光元そのものが放電管では無い。
 その源とするのは、薬品による化学反応である。
 俗に言う化学レーザーと呼ばれる機構こそが、『ユピテル』を最強の武器とする由縁であった。
「薬莢、装填完了。第一、第二薬槽励起開始……」
 そして、ブーゲンビリアは、その化学反応を起こす薬品と、レーザーを取り出す反応室を一纏めにした『弾薬』を有している。
 化学反応であるために励起は一瞬。
 そして、撃ったら反応室ごと棄てて、別の反応室を薬品ごと装填する。
 即ち、即射であり、連射が利くと言う事になる。

 だが、更に恐るべき事にブーゲンビリアの持つ『ユピテル』は、その『弾薬』を3つまで装填できる。
 一発のレーザーが凡そ持続時間5秒。
 装填には10秒もかから無い為、他の2発を撃っている間に再装填は終わる。
 つまり。
 共用している砲身の加熱と、弾薬の保持数を考慮しなければ、永遠に打ち続けることも可能と言うことだ。
 そして、砲身を共用するレーザーを連続して撃てるならば。
 “同時に撃つ”ことが不可能な訳は無い。
「“class2”発射…!!」
 弾薬二発分の“超”高出力レーザーが、音も無く発射された。



 結果として、それは偶然だったと言えるだろう。
 ブーゲンビリアの放った“class2”が照射された瞬間、偶然にもレライナは目標となった岩から飛び出していた。
 結果として、それがレライナの命を救うことになる。
「…………………な…」
 その光景が一瞬信じられず、さしものレライナも言葉を失った。
「……ば、馬鹿な……」
 直径にして1メートルを優に超える岩塊が、光に貫かれている。
 敵の放ったレーザーは、1メートル以上の岩を貫通し、その背後の地面。
 ほんの一瞬前までレライナが居た場所を、完全に焼き尽くしていた。
 のみならず、貫かれた岩塊が赤熱し、細部では融解すら始まっている。
「……これは……、……こんな……。……こんなもの……」
 レライナの見立てが正しければ……。
「……こんなもの、最早神姫の装備では、ない、ぞ……」
 その威力は、軍事用の迎撃レーザーと比しても遜色の無い威力。
 最早、神姫同士の戦いに持ち出すような規模の武装では、無い。
 武装どころかそれは、最早“兵器”と呼ぶ他は無いモノであった。
「……っ!!」
 その事実は、敵の砲撃が直撃のみならず、至近弾ですらレライナにとっての致死傷となるモノだという事に他ならず。
 接近に際しては、非常に大きなリスクを背負わねばならない事を意味していた。

 そして、敵までの距離は、まだ60メートル。
 60メートルも残っているのだった……。






「……困った……」
 マヤアは困っていた。
「コノ、コノ、コノッ!!」
 弾幕と変則的な機動で距離を保ち続ける敵神姫に、未だマヤアは一回も攻撃できていない。
 敵の攻撃は中々に激しく、回避に専念するならともかく、攻撃の片手間にかわすには少々きつい。
 普段なら適当に牽制して隙を作る所だが、今は……。
「武器が無ぇ……」
 ライフルもレールガンも壊れていた。
「浅葱、如何しよう。武器が無ぇっ!!」
「自らの窮状を大声で敵にばらすなぁ!!」
 主である浅葱からの絶叫。
 これで敵は遠慮無くアウトレンジからの攻撃に集中してくる……。
 と思いきや。
「フフン。ソウ言ッテ油断サセテ、隠シ武器デモ出スツモリナンデショウ? ……ソノ手ニハ乗ラナイワ!!」
 あくまで警戒を崩さず、マヤアの動きに注意を払い続けるアルストロメリア。
「……隠し武器……?」
「(マヤア、マヤアっ!!)」
 視界の隅で、浅葱が手足をばたつかせて踊っているのを認識しつつ、マヤアはポンッと手を叩いた。
「ああ、そうだ。ネコにはまだ武器がある。ハンドガン、ハンドガン」
「だーっ!! だから、敵に手の内曝すなって言ってるだろうがぁー!!」
「言ってねぇ!!」
「人が散々ジェスチャーで『拳銃の事は黙っていろ』って言っただろうが!?」
「ああ、踊ってたんじゃないんだ」
「ここで踊る必然性を感じるのはお前ぐらいだぁー!!」
 浅葱の絶叫。
「しかしなぁ、浅葱。……今、ネコは凄いことに気が付いた」
「……何ですの?」
 どうせろくな事じゃないと確信しつつも、浅葱は律儀に聞き返す。
「あのね。ハンドガン無くした」
「アホんだらぁ~っ!!」
 予想以上にろくでもない内容だった。
 しかし、これでマヤアに残された武器はブレードだけ。
 そして、機動性自体はアルストロメリアのほうが上なので、用意には近接戦に持ち込めない。
 つまり……。
「これで八方手詰まりですわね……」
「浅葱、実はネコの胸部装甲の下にビーム砲が内蔵されているとか、無いか?」
「無いわよ」
 マヤアにメガスマッシャーは装備されていません。
「それじゃあ、目からビームとか?」
「無い!!」
 眼球同軸光線砲も装備されていません。
「仕方無ぇ。浅葱、ドリームノートに何か強そうな武器を書き込むんだ!!」
「あたしはむしろデスノートが欲しい」
「おお、それであいつの名前を書き込むんだな!?」
「…むしろアンタの名前を書き込みたいですわ」
「な、何だと!? 浅葱、ネコを裏切る気か!?」
「嫌だったら真面目に戦え!!」
 そんなやり取りの間にもマヤアは数百発もの銃弾を捌き、交わし、弾いている。
 回避に専念するとなれば、微妙に余裕が残るらしい。
「……ナ、何ナノヨ、コイツ等」
 アルストロメリアの嘆きもむべなるかな。
 冗談みたいな会話の最中もマヤアの回避行動には一切の隙が生じなかったのだ。
「そうだ、浅葱!! 今度こそ良いアイデア!!」
「聞くだけ聞くわ」
「もう、いっその事。浅葱が直接倒しちゃうというのは如何だろう!?」
「……………………」
 まあ、倒せる。
 だってこの人、冗談みたいに強いから。
「……でもね、マヤア」
「んに?」
「それって、神姫SS的には如何なのかしら?」
 もちろんダメである。





 アイゼンとカトレアの戦いは、少しずつ場所を移しながら崖の近くまで移動していた。
 既に交戦開始から10分近く。
 彼我の性能差とは裏腹に、戦闘はアイゼンの猛攻をカトレアが回避し続けると言う一方的なものになっていた。

「―――くっ!!」
 大きく振りかぶったパワーアームの一撃に、カトレアは大きく跳んで距離を取る。
「……まだ」
 追撃は、パワーアームの勢いで一回転して繰り出される踵落し。
 ザバーカの長い脚が鉈のように振り下ろされ、辛うじて交わしたカトレアの眼前で地面を穿つ。
「…っ!!」
 手足の長いストラーフの打撃は、ギリギリの間合いでかわすのが難しい。
 優れたパワーに裏打ちされた破壊力も確かに驚異なのだが、カトレアの装甲にとっては致命打とは言いがたい。
 むしろ、体重の格差ゆえに姿勢を大きく崩され、組み合いに持ち込まれる危険性がある事の方が問題だった。
 ストラーフとの戦いで組み合いに持ち込まれれば、まず勝ち目は無い。
 素体とは比較にもならない圧倒的なパワーと、腕の本数がそのまま勝敗に帰結してしまうからだ。
 腕力だけで勝負が決まる組み合いにおいて、圧倒的な腕力を誇るストラーフが強いのはある意味当然だとも言える。
「……マズイわね。このまま勝負が長引くのは……」
 彼女達の流儀は奇襲、強襲であって戦闘ではない。
 理想を言えば、彼女達の存在を察知された瞬間に、目的が達成されているのが望ましいのだ。
 万一を想定して汎用性を高く設計されたカトレアはともかく、アルストロメリアもブーゲンビリアも長時間の戦闘には不向きな能力だ。
 ストレリチアにおいては、初撃がすべてと言っても過言ではない戦術を取る。
 それが、姉妹を分断された上に戦闘そのものも長引かせられれば……。
 最悪の結果すらも、……起こりうる。
「……なんとか目の前のコイツを片付けて、他の姉妹の援護に向かいたい所ですが……」
 焦ってカトレア自身が撃墜されては話しにならない。
 それどころか、傷つく事すら避けねばならぬ状況なのだ。



 実の所、カトレアにとってアイゼンはそれ程の難敵ではない。
 倒す気になれば一瞬で斬り伏せる事も可能だろう。

 ……自らの損害を覚悟した上で、ならば。

 試合では無いのだ。
 カトレアの目的は“アイゼンを倒す”ことではない。
 その後、フェータとも戦い、倒し、その残骸を回収し、主共々この場から離脱する所までが目的なのだ。

 その為には、ここで余計な損傷を負う事は、絶対に出来ない事だった。



 飛び道具が効かないのは、数発の砲撃で理解できた。
 原理や突破法を考えるのはアイゼンの役目では無い。
 そちらは主である祐一に任せ、彼女は“対処”としての格闘戦を遂行すれば良い。
(でも、動きは流石に速い……)
 実の事を言えば、カトレアの動きにアイゼンはほとんど着いて行けていない。
 敵の動きは速く、目で追えはするが、正面からの致命打を出せるかどうかは正直怪しい。
 だが…。
(前提条件が違う以上、勝負になった時点でこちらが有利……!!)
 試合ではない。
 実戦と称して然るべき戦いだ。
 相手側は、目立つのも、長引くのも避けねばならぬ上、アイゼンとは違って引き分けではダメなのだ。

 雅の話では、敵の目的はフェータの確保。
 即ち。確保した後、“逃げねばならない”のだ。
 この点において、勝利しさえすれば、擱坐しても問題の無いアイゼンとは前提が違う。
 アイゼンは、自分の“戦闘力”と“移動力”の両方を奪われる前に、敵からどちらかでも奪えばそれで良い。
 たとえ腕4本切り落とされても、その隙に攻撃力か移動力を奪えばそれで勝ち。
 さらに、次善ではあるが、相手の指を数本破壊するだけでも、勝利といえる結果が出せる。
 そうなってしまえば、最早カトレアはフェータ確保の役には立たないからだ。
 もっと極論を言えば、後のフェータの戦いが有利になるよう、疲れさせるだけでも構わない。
 そしてそれは、こうして戦っている以上少しずつ達成されてさえ居るのだ。

 言うなれば、既にアイゼンは勝っているという見方すら出来る状況だった。

 要するに。
 試合でないが故に、互いの勝利条件は必ずしも一致せず。
 そこに有利不利が生じる余地がある。
 そしてその格差は、アイゼンとカトレアの戦力差よりも遥かに大きな影響力を持つのだ。



(……でも、勝てるのならそれに越したことはないし、なにより……)
「……マスターに、いい所、見せたい……」
 大振りの一撃。
 もちろんカトレアは余裕を持ってそれをかわす。
 そして、その回避が先程よりも紙一重に近付きつつあるのを、アイゼンは確かに認識していた。



(パワーアームの動きは単調なのが欠点だよね?)
 祐一が過去にアイゼンに説いた戦術。
(それはそういった操作が器用なアイゼンにだって当てはまる事だよ)
(だから、比較的簡単に見切られてしまう……)
 どれ程の威力があろうとも、当たらねば無意味なのは当然だ。
 そして、大振りの一撃は、威力の増加に相応の隙の大きさを生み出す。
(見切られれば、紙一重で交わされて、生じた隙に致命的な反撃を喰らう事になる……)
(そう、つまりは反撃を受けないようにするには、“紙一重で交わされなければ”大丈夫なんだ)
(逆に言えば、紙一重で交わすという選択そのものが、敵に生じる“隙”なんだね……)
 見切られた上で尚、紙一枚分の切り札を切れれば、それはそのまま勝敗を決める決定打となる。
 勝利が、まさにその“紙一重”の向こう側にあるからだ。



「……っ!!」
 神姫の質量をそのまま叩き付け合う格闘戦においては、カトレアのバリアは役に立たない。
 だが、カトレアの攻撃力もまた、格闘戦でしか活かせない物だった。
 チーグルを空振りさせるほどの大きな隙を前にすれば、いかに重装甲のストラーフといえども一瞬で斬り倒せるだけの攻撃力が、彼女のレイブレードには確かにあるのだ……。
(……敵の間合いはほぼ見切った、次で勝負をかける!!)
(……敵に間合いは見切らせた……、次で、勝負をかける!!)

 カトレアと、アイゼンとが同時に前に踏み込み、互いに必殺を期した一撃を放ちあう。
「これでぇっ!!」
「……っ!!」

 アイゼンの繰り出したチーグルの貫き手は、カトレアの予測どおりの軌道と速度。
(かわせる、そして……。これで倒せるっ……!!)
 その軌道から身をずらし、生じた隙にレイブレードによる刺突を合わせる。
 狙いをつけるのは腹部。
 バッテリーの詰まったそこを貫けば、神姫はシャットダウンから記憶などのデータを守るため、その機構上強制的にスリープモードに移行する。
 つまり、相手の命を危険に曝さず、確実に意識を奪える部位なのだ。
(コイツを倒して、アルストロメリアかブーゲンビリアと合流し、試作機を破壊するっ…!!)
 だが、それは倒せれば、の話。

「―――ぇ!?」

 カトレアを真横からの衝撃が襲ったのは、その瞬間だった。

(何!?)
(ダメージ?)
(何処から?)
(誰からっ!?)
 瞬間的に思い浮かんだのは参戦していない試作型アーンヴァル本人と、先程まで交戦していたフォートブラッグ。
 だが、警戒範囲内に居たのは眼前のストラーフのみ。
 その範囲外の敵からどんな攻撃を受けようとも、彼女の周囲を覆う電磁防壁が完璧に彼女を守りきる。
(つまり。この攻撃は……)
(目の前の、ストラーフ!?)
 視界の隅。
 かわした筈のチーグルが、【イージスの盾】の右側のシールドに深々と突き刺さっていた。
「……ばっ、馬鹿なっ……!?」
 ありえるはずの無い軌道を画かねば、ここにこのような打撃を受ける筈が無い。
 それを可能にしたのは……。
「砲撃!? 格納状態で砲を撃って、その反動でチーグルを加速させたとでも!?」
 理論的に不可能では無い。
 だがそれは……。
(外したら、その威力が全てチーグルの肘や肩に掛かると言うのに!?)
 故に。
 必中を期す為にアイゼンは何度も副腕を振るい、その速さと軌道をカトレアに覚えこませたのだ。
 彼女が、確実にかわせると思いこませるように。

 無論、この戦法にはクリアしなければならぬ大きな問題がある。
 それはタイミング。
 後一手早ければ、カトレアの警戒が解けていない為、クリーンヒットは望めない。
 後一手遅ければ、この攻防でアイゼンは破壊され、次などありはしない。
 まさに“今”、“この瞬間”、“このタイミング”でなければならない一撃だったのだ。
 そして、その期と、相手の思考を読む事こそ。祐一とアイゼンが長年鍛え上げた力。
 彼女達が天海で名を馳せている、最大の理由であった。


「……っ!! バリアの出力が持たない!!」
 ジェネレータの半分が機能を喪失した所為で、カトレアのバリアは今や消滅しようとしていた。
「……これは、この状況は……!!」



 それは、ある意味において決着の付いた瞬間。



 これほどのダメージを受けて尚、カトレアの性能的な優位は未だ保たれている。
 レイブレードが健在である以上、反撃によるダメージを覚悟した攻撃を行えばアイゼンは倒せるのだ。
 だが、既にフェータとの連戦が出来るような余力は奪われていた。






 ここに来て、彼女達四姉妹の計画は失敗したと言って良い。

 アルストロメリアはマヤアを振り切れず活動限界が間近。
 ブーゲンビリアも負荷の大きい“class2”レーザーを使用し始めた為、レライナを倒せたとしても、その後の支援砲撃にはもはや期待できない。
 そして、カトレア自身。アーンヴァルであるフェータに対抗する為の機動性と防御力をアイゼンに奪われてしまっていた。

 只一人。
 ストレリチアだけが完全な形で戦力を残していた。
 目標である試作型アーンヴァル、フェータを除き。
 敵、味方のあらゆる神姫の中で只一人、無傷で、完全な状態で。
 未だ、その存在そのものを気付かれず……。

 彼女達の本来のスタイルである“奇襲”に必要な条件を全て整えた状態で……。



 だから。
 ストレリチアが介入する最初で最後の機会だったと言える。
「―――ぁああああああああああっ!!」
 狙いは、未だ美空の肩の上で戦局を見守っているフェータ。
(アレを倒せば全て終わる)
 もう姉妹が傷つくことも、主が苦しむ必要も無い。
(全て、終わる……!!)
 姉妹はもう必要ない。
 殺した神姫を黄泉帰らせ、自らの傍に置くような自虐を、彼女達の主に行わせる必要は無い。
 カトレアだけでなく。
 ストレリチアも、アルストロメリアもブーゲンビリアも…、全て彼女に殺された試作アーンヴァルの果てだから。
 これ以上、増やす必要など無い。

 このアーンヴァルで、最期だから。

(終わらせる……!!)

 この戦いも。
 主の悲しみも、苦しみも。



 神姫という全ての存在も……。






 火花。
 激突音。
 衝撃。

 それが、その瞬間に美空が知覚した全てであった。

  視界の隅をゆっくりと、フェータが墜ちてゆく。

   胸部を穿つ槍と、それを携えた有翼の神姫。

    素顔を隠す仮面には、刹那の瞬間に迎え撃ったのか、フェータがつけた刃の一条。

     断ち割られ、あらわになったその双眸を、どこかで見た様な間断の錯覚。

「――――――――――――!!」

 ダレカの悲鳴。

「■■■!!」
「■■■■■!!」 

 フェータを追う、ダレカと、ダレカ。



「祐一っ!!」




 雅の声だけが認識できた。

 そして、美空が周囲を見渡しても……。

 彼の姿は何処にも無かった。

 ただ、雅の見る方向に、深く、暗い崖の底が有るだけ。

 底を流れる川は山向こうの悪天候に添って、増水を始めていた。



 伊東美空はまだ知らない。

 島田祐一の、水に対する恐怖を……。



 そして、土方京子の、水に対する恐怖を……。 








ようやく一番大変な部分が終わったので、次はもう少し早めに更新したいと考えるALCです。

所でこの雑談は意味があるのか、無いのか。
読んでいる人が居るのか、居ないのか。
需要があるのか、無いのか。

色々気になる17歳(謎)。



ではここで一曲。

「第八弾が発売しないよ」をお聞きください。

気がついたらライスも、もう少ししかない。
そしていつもそこでサバ缶使う。
諦めずにエアパスタに挑戦するけど、すぐにお腹がすくよ。
武装神姫があれば、楽に空腹にも耐えれるけど、
何日待っても、何日待っても、第八弾が発売しないよ~、
戦車の帽子はもう猫耳にしか見えない。
後ろに回って飛鳥を見ればランドセルを背負っている。
武器子のジオスタフェイスは異常なぐらいに可愛い。
だから出たら速攻買うために、ボクは万札だけは最期まで取っておく~。

……自分でも何やっているんだか相当に謎。
 大丈夫か、私の頭?


 WEB拍手試験中。
 暇を作って画像を増やしたひ……。
 ALCでした。




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