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白花と黒華──あるいは聖者の再来(後半)




第三節:純愛




十二時過ぎ。アタシ達は、秋葉原駅から電車に乗り込んで移動を始めた。
出てくる途中に見た……その、アタシが“罪”を犯した現場。今はもう、
その痕跡も殆ど無くて、看板とかの再建工事がかなり進んでいたわ……。

「……でも、良かったわ。本当に、誰か一人でも“殺す”事が無くてさ」
「そうだな……怪我だけで済んだのは、本当に良かった……なぁ、皆?」
「ええ。だからこそこうして、今のエルナちゃんを抱きしめられます♪」

そう呟いたアタシ・エルナを、アルマお姉ちゃんが抱きしめる。彼女も、
アタシの中に残っていた“悪夢”が原因で、色々酷い目にあったのに……
マイスター同様、彼女もクララお姉ちゃんも……アタシを赦してくれた。

「ん。もう、誰にも咎められずに……こうしていちゃいちゃできるもん」
「いちゃいちゃ……って!?な、何言ってるのよクララお姉ちゃんッ!」
「だって、エルナちゃんだって大好きな“妹”なんだよ?当然、だもん」
「ふふ。クララちゃん、エルナちゃんが来てから積極的になってますの」

クララお姉ちゃんとも肩を寄せ合い、アタシの胸にロッテお姉ちゃんが、
そっと頭を載せる。そして団子状のアタシ達は皆で、マイスターの掌に。
こうして暫くの移動時間を、座ったマイスターと共に過ごす。着いたのは
“Shibuya.st”……渋谷駅の出口。マイスター達が良く来る街らしいわ。

「ふむ、オープンカフェ辺りで軽めの昼食と行こうか?本当に軽めだが」
「はいですの~♪久しぶりにホットサンドとか、食べてみたいですの♪」
「ボクは……コーヒーを楽しみたいかな?まだまだ寒風吹き荒ぶからね」
「あたしは甘い物でも食べましょ……エルナちゃん、どうしましたか?」

皆は早速、お昼の話について盛り上がったけど……アタシの視線は、別の
ある物を捉えていたわ。それは、少し先のオープンカフェに居る二人組。
チェアに座って楽しそうにしてた男と女が、不意に唇を重ねて……五秒。
重病……じゃないわ、十秒。そして十五秒。漸く離れて、はにかむ二人。

「……ねぇ、マイスター?愛する人達って、ああ言う事もするの……?」
「ま゛っ!?な、ななッ!何を言うのだエルナッ!?あ、あれはな!!」
「だ、だってほら。“告白”の時だって……キス、したじゃない……?」

何の事はない、素朴な疑問だったの……だけど、言霊の力は強大なのよ。
自分で声にしてから、ショートしそうな程に顔が熱くなるのを感じたわ!
それは、マイスターも同じ。他のお姉ちゃん達も、とても恥ずかしげね。
でも……ええと。アタシ、何かいけない事を言っちゃったのかしら……?

「そ、そうは言っても……アレは、俗に言う“バカップル”の域だもん」
「ですよね、流石にあんな堂々と……見せつけるのは、えと……あのっ」
「……だけど、アレ位濃密なキスだって。一度でいいからしたいですの」
『──────ッ!!!!?』

そして、ロッテお姉ちゃんからの思わぬ吐露が……更に油を注ぐのよッ。
もう何も言えない。流れるパルスの苦しさに、口を開けるのも辛い位ね。
皆を見られない。嫌いじゃないの、むしろ……愛しくて、見られないッ!
十秒、二十秒……そして三十秒。永遠に似た時間が、過ぎていくわ……。

「あ、あの?お客様、お客様ー?ご注文はお決まりになりましたかー?」
「うわあッ!?あ、ああ……なんだ脅かすな。注文か、少し待ってくれ」
「ぷは、ふぅ……息が詰まりそうでしたの。呼吸は必須じゃないですが」
「だ……だったらあんな爆弾発言しないでよ、ロッテお姉ちゃんッ!?」

静寂は、外部……オーダーを取りに来た人間……の干渉で破られたのよ。
正直助かったわ、あのままだと……どんな流れになるか分からないから。
気を取り直して一通りのオーダーを済ませ、アタシ達は言葉を交わすの。

「さ、流石にアレはストレートすぎますよロッテちゃん~……あうあう」
「まさかロッテお姉ちゃんが、あんな事を言い出すとは思わなかったよ」
「だけど……マイスターも含めて、皆がそんな願望を持ってる筈ですの」

悪戯っぽく微笑みながら謝るロッテお姉ちゃん。軽い調子だけど、彼女は
確かに……全てを見通していたわ。そう、アタシが視線を向けたのだって
今の二人が幸せそうだったから。ロッテお姉ちゃんには、敵わないわね。

「そ、そうか……ふむ、昼食とお茶が済んだら次は街の散策と行くか?」
「この時期なら、色々な物が見られると思うんだよ。春物とか新作とか」
「流石にまだちょっと、夏物や水着は早いでしょうけど……いいですね」
「流行を読みとりつつ皆の感性を、更に磨くには丁度良いですの。ね?」
「え?う、うん……雑誌だけじゃ、分からない事もある……だろうしね」

そうして温かいお茶を飲んで、ケーキとか摘んでから……またアタシ達は
渋谷の街へと歩き出す。若い人間が多いこの街は、日本の先進的な流行を
知るポイントの一つ、なんだって。アタシにはまだ良く分からないけど、
だけど不意に路地へと入った時に……それは“負”の確信へ変わったわ。
即ちそれは荒んだ“心”。確かに先進的なら、エッジな連中も多い物ね?

「この先に、隠れた装飾品の店があるのだが……む?何だ、貴様らは?」
「へっへっへ~、おいテツ。思ったよりロリじゃないかよこの娘はよ~」
「いいだろ、偶にはこういうのもよ~……って訳でお嬢ちゃん、諦めな」

ナイフをちらつかせた男二人が、アタシ達……というよりもマイスターを
威嚇してきたの。薄汚い笑いを浮かべて、物色する様な目線でジロジロ。
普通の追い剥ぎとは違う、ってのは……流石のアタシにも分かったわね。
だからこそ、マイスターの言葉を受けた時に取る行動は、決まってたの!

「こう言う時はな、一気にホールドせんと隙を作る事になる……ぞっ!」
「ごふ、げぶぁああっ!?い、いてぇぇ……ぐぁうううぅ、きゅう……」
「と、トシ!?テメェ……ひっ、痛……な、なんだ!誰かいるのか?!」
「……今、アンタの首にナイフを突きつけてるわ。わかるでしょ?ほら」

マイスターは激しくスカートを翻して、暴漢二人組の背が高い方を強襲。
肘を肝臓の辺りへと叩き込んで、それで折れ曲がった膝を踏み台にしての
膝蹴りを、頬へと叩き込んだのよ。小さい躯を活かした、見事な一撃ね。
で、お姉ちゃん達はマイスターの躯にしがみつき……アタシはと言うと。

「か、勘弁してくれぇ~!俺達が、何したって言うんだよぉぉ……!?」
「マ……お姉ちゃんを襲おうとしたじゃない、正当防衛だと思うけど!」
「わ、分かった!何もしねぇからサツとか勘弁してくれよ、頼むよッ!」
「全くだらしない奴ね……ほら、さっさと相棒連れてずらかりなさいッ」

ちょっとした“トリック”で、背の低い方を脅す。案の定降伏した連中は
獣みたいな悲鳴を揚げて、我先に逃げていったわ。本当、情けないわね。
こんな簡単なハッタリも見抜けないなんて、刃を持つ資格は到底無いわ。
そう思ってアタシは『地に降りる』。ん、不思議ですって?そうかしら?

「た、助かりましたの~……マイスターの隙、どうカバーしましたの?」
「嗚呼、簡単よ。本物のナイフなんかいらないわ、ほら……これをねっ」
「それは……あの時にマイスターがあげた、お揃いのペンダントですね」
「先が尖ってるでしょ?これをこう、ね。キックの衝撃で飛んで、ね♪」
「咄嗟に首の裏へ回り込んで、押し当てれば……成程、いい手なんだよ」

紫色の“階級章”が嵌め込まれたそれは、アタシの“約束の翼”。これを
ナイフ代わりの脅し道具にしたの。犯罪みたいな気もするけど、そもそも
あっちが“脅迫”してきた訳だし、正当防衛は主張出来るはず……よね?

「全く災難だな、折角の勝負服が汚れてしまうぞ……あ、いやそのな?」
「マイスター、今確かに“勝負服”って言ったもん。そう言う事、かな」
「ち、違うぞクララッ!?げふげふ……ほら、皆無事か?乗れ、エルナ」
「勝負って、何を勝負するのよマイスター?今の連中じゃないでしょ?」

『気にせんでいい、いずれわかる』とマイスターはアタシを撫でるだけ。
悪い気はしないんだけど、何を勝負するのかしら……気になるわ、うん。

「兎に角往くぞ!崩れた雰囲気を戻すには美しき物に触れるのが一番ッ」
「はいですの~♪エルナちゃん、お手柄でしたのっ!いいこいいこ……」
「わわっ、ちょ!撫でなくてもいいわよ、ロッテお姉ちゃんってば?!」
「でも即応力は見事です……あたしも見習わなくちゃ、いけませんねっ」

──────無粋な輩は要らない。今は姫の“愛”を語らう時間なのよ?



第四節:黒華




楽しい時間はあっという間に過ぎ、日が西空へと沈み始めていくわ……。
綺麗な夕陽よね……何度見ても、東京の夕焼けって好きなのよ。アタシ?
それに他にも、今日は綺麗な物を一杯見られたし……良い日だったわね♪

「あのアクセサリ、綺麗だったわね。服も、作りとかがよさそうで……」
「あの縫製とバランス感覚は見事だ……にしても、すっかり上機嫌だな」
「エルナちゃんには、初経験の事ばっかりだったからじゃないですか?」
「“告白”時のデート以来、大っぴらに出かけた事はあまり無いもんね」
「だから今日は、エルナちゃんの“社会見学”って意義もありますの♪」

そうなのよ。アタシには、凡そ初めての経験ばかりで……今日は興奮が、
まだまだ収まっていないわ。でも、お腹も空いてきた頃合いね。思えば、
“お腹が空く”なんて感触は……随分不思議なのよね。笑っちゃう位に。
だってそうでしょ?アタシ達は13センチの被造物。でも、楽しみなの。

「そう、ね……でもそろそろ、皆お腹空かないかしら……アタシだけ?」
「実の所、皆とっくに空いていますよ。時間的には、そろそろですしね」
「有無。そこでだ、今日は私が調べた穴場でディナーと行きたいのだが」

勿論、それを嫌な理由なんて皆にはないわ。早速、渋谷に出来たっていう
新しいお店に入ったんだけど……その、アタシの知識ではどんな店なのか
表現しようもないわね。なんというか、日本の家っぽいんだけどさ……?

「というわけで、今日は少々奮発して……ここの安いコースを頼もうか」
「奮発して安いコースって……マイスター、どれだけ凄い店なのかな?」
「高級店という程でもないですけど、これは分かりづらいですの。ほら」
「何々?『創作和食・雅』……ですか?そうさく、わしょく……うぅん」

なんでも、日本の伝統的な料理に世界各国の食材や調理法を組み込んだ、
『ハイブリッドな料理のお店』らしいわ。既存のカテゴリにない料理じゃ
“安めの”コースだって言われても、値段なんか分からないわよね……。
アタシにも、皆が戸惑う理由が分かったわよ。でも、何故マイスターは?

「ね、いいの?幾ら誕生日やバレンタインだって言っても、辛くない?」
「ふふ。そこは此処を選んだ理由という物がある、まずは料理からだな」

その理由を問いただしても、スルーされちゃったわ……そうこうする内、
アタシ達の目の前には白くて丸っこいぷるぷるした物体が出てきたのよ。
何か、チェリカンの中身みたいな半固形物が掛かってるけど……食べ物?

「頂きますですの~♪まずはわたしから……ん、これお豆腐ですの?!」
「ボクも一口……ん、餡が程良い塩加減で美味しいんだよ。出汁も十分」
「でも、見慣れない食材とか入ってて……あ、これ中身もありますよっ」
「ほう?む、本当だな……どうも、中華風の“具”が入っている様だが」
「一緒に、食べてみるわね。んむ……少しクセがあるけど、美味しいわ」

皆が手を付けたので、アタシも箸で食べてみる……随分仕込まれたから、
食事の作法はそれなりに出来るつもりよ?兎も角……割ってみたら中には
美味しそうな野菜に、見慣れない物が一杯。これまた、食感がいいのよ!
そうして何品も運ばれては、絶賛の嵐が続く。本当、ダメになりそうね。

「次は、この……何?ええと、ミルフィーユ仕立て?お菓子なの……?」
「嗚呼。肉類と別の食材を何層にも重ねて、調理した主菜……らしいが」
「食べてみればわかりますの♪はむ、はむ……うわぁ、凄い肉汁ですの」
「ろ、ロッテちゃん……あたし達の分は食べないでくださいね?はむっ」
「……服を汚さない様食べるのは、結構大変そうな料理なんだよ。んむ」

実際に、どんな料理か分からないってのもあったけど……それ以上に全部
美味しすぎて、明確に認識できる程冷静ではいられなかったわ。だから、
気が付けばもうシメのデザート……そこで、マイスターは微笑んだのよ。

「さて。それではこの店を選んだ理由に、登場して頂こうか。頼んだぞ」
「はい、今お持ちします……此方が当店自慢の、チョコケーキですよ~」
「あ、チョコ!?……マイスター、そう言う事だったんですね?もぅっ」
「ははは、そう言う事だアルマや。折角なので、これの美味しい所をな」
「バレンタインにチョコ……だけど、捻ってくるのは如何にもなんだよ」

眼前に出てきたのは、DVDドライブ位の大きさを見せつける、真っ黒な
チョコレートケーキ。上の方には“Happy birthday”という、白い文字。
そう。誕生日を祝うケーキをチョコレートで作ってもらう為に、わざわざ
こんな高いお店を、無理してチョイスしたのよ。ニクい演出じゃないの♪

「あ、でもこれ誕生日仕様になってますね……お店の人の配慮ですか?」
「なら折角ですし謳いますの~♪ハッピーバースデー、マイスターっ♪」
「♪ハッピーバースデーマイスター、ハッピーバースデー……ディア♪」
「♪晶……ハッピーバースデー、トゥユー♪……マイスターおめでとっ」
「おめでとうなんだよ。これはボクらからの誕生日プレゼント、だもん」

でも、所謂“伊達振り”ではお姉ちゃん達も負けてないわ。アタシ達が、
全員分のお小遣いとかコネとかを駆使して、“真心”と“感性”を込めて
こっそり用意しておいた、四つ葉のクローバーをあしらったストラップ。
四つ葉は、つまりアタシ達四姉妹の象徴……って訳。クララお姉ちゃんが
マイスターの電話機に、いそいそと付けてあげるのよ。良い光景、よね。

「くぅ……お前達、有り難う。本当に、一緒にいてくれて有り難うなっ」
「ふふっ。それはボクらも同じなんだよ……ねっ?アルマお姉ちゃん?」
「ええ。貴女と同じ道を歩いていけるんですから……ロッテちゃんもね」
「ん。わたし達こそ、側にいさせてくれて感謝ですの♪エルナちゃんっ」
「う、うん……これだけ長くいると、漸く信じられそうな気がするのよ」

時間はそれ程じゃなくても……濃密なやり取りは、アタシの心を開くには
十分な、掛け替えのない経験になりつつあったわ。それは、嘘偽りのない
アタシの“真心”。この人達と一緒にいたい、『大好きという気持ち』。

「……さて、昼はあんな物も見た訳だし。その、やってみるか?エルナ」
「え?!あ、あんな物って……ま、マイスター?ケーキを……んむ!?」

それを見透かしていたのか、頬を桜色に染めながらも……マイスターは、
ケーキを一口含んで……そのままアタシと……キスをする。アタシの耳を
小さな白い手で塞ぎながら、ゆっくりじっくり。チョコケーキを融かす、
それだけに集中するかの様に、互いの舌を……濃密に絡め合うのよ……。
口内でケーキが崩れて、魅惑的な“水音”が超AIの内を埋め尽くすの。

「……ん、んん……ぷぁ、ふぅ……ど、どうだ?物は試し、というがな」
「はぁ、あ……ん、やっぱりアタシにはヘビーね。おかしくなりそうよ」

マイスターの手が離れて、互いのチョコを舐め取ってからも……胸の中を
埋め尽くす、激しいノイズは消えないわ。この人と、永久に共にいたい。
実際は永遠なんか無いけど、だけど“大好き”って気持ちが消えないの。
それは、ビターな中にも微かに宿っていた……とても甘い、隠し味の様。

「う、うっわぁ……マイスターもエルナちゃんも、大胆ですの~……♪」
「こんなの見られたら、言い訳出来ないですね……でも、幸せそうです」
「大丈夫だよ、ここは個室だから……邪魔は入らない、と思うもん……」
「ふぅ……ん?く、クララ?何を──────むぐ、んんっ……!?!」

そしてアタシ達のそんなやり取りは、お姉ちゃん達に火を付けちゃった。
まずはクララお姉ちゃんが……そして、急かされたアルマお姉ちゃんが。
最後にビターなケーキの中でも甘めのクリームで、ロッテお姉ちゃん……
都合三人の連続した“ディープ”なキスを、マイスターは一人で受ける。
終わった時にはもう真っ赤っか。息も荒くなっていたわ……でも、綺麗。

「は、あ……はぁ……だめ、だ。私がおかしくなってしまう……はふぅ」
「あんなの見せつけちゃうからよ、マイスターの悪戯心がいけないのっ」
「そうですよね♪でも『スウィート・バレンタイン』にはなりましたし」
「ボクらは十分満足したんだよ……ううん、実はまだ少しあるけどね?」
「ええ。でもそれは、お家に帰ってからですの♪夜は長いですから……」

──────長い一日は、もうじき終わるけど……でも、終わらないわ。



第五節:楽園




夜もとっぷりと暮れて、街はすっかり恋人だらけ。そんな渋谷を抜け出し
アタシ達は電車で秋葉原へと帰ってきたわ。ここもそれなりに人が一杯。
でも、それには目もくれずに……真っ直ぐMMSショップ“ALChemist”へ。
今は兎に角、アタシ達五人の時間と空間が欲しかったのよ……何故かね?

「ただいま、ですの~♪……さ、まずはお風呂に入って着替えますのっ」
「有無。朝はシャワーだけだったからな。湯を張って、皆で入ろうか?」
「喜んでっ。それじゃあたしは、皆のパジャマとか用意してきますね!」
「ボクは、部屋の暖房を調整しておくんだよ。エルナちゃんはお風呂を」
「う、うん。分かったわ……先に、セットしておく。よっと……オンッ」

まずは、一日の穢れを洗い落とすお風呂。今日は、五人で仲良く入浴よ。
なんだかんだで、土埃とかチョコレートとかで少し汚れちゃったからね。
覗いたら斬ってやるわ!ってマイスター・晶お姉ちゃんなら言うかしら?

「ロッテお姉ちゃん、背中流してあげるわよ……んしょ、よいしょっと」
「ひゃうんっ♪じゃあ、わたしはクララちゃんの背中を流しますの~♪」
「ん、んんぅっ……!ボクはそれなら、アルマお姉ちゃんのを……っと」
「きゃぅぅっ!?え、ええと……あたしは、マイスターのツボ押しをッ」
「ぅ、ぐっ!……くうう、そこは弱いな……痛たたた、効きすぎだ!?」

お風呂で躯を磨いたら、暫くは躯を休める時間。寝るにはまだ早いから、
五人それぞれの好みで、アットランダムにBGMを流すの。一応今日は、
少し激しいのを控えめにして、落ちついたムーディーな曲を選んだのよ?

「ほぉう……次に流れてきたのは、クララのクラシックか……良い曲だ」
「楽器の音色ってのは、落ちつきますの……あ、マイスターお水ですの」
「これは、ピアノかしらね……青い空と草原が思い出されるわよ、これ」
「グリーン……なんとか、でしたっけ?曲名が、出てこないんです……」
「ボクも忘れちゃったけど……まぁ、問題ないと思うんだよ。今はね?」

照明類を薄暗い配置、というか間接照明オンリーにして……暫し雰囲気を
味わうのよ。皆が思い出すのは、マイスターと出会ってからこれまでの、
激動の一年。アタシも、殺戮兵器から神姫に生まれ変わるまでの、そして
神姫に生まれ変わってからの、充実した日々を思い出すの……有り難う、
アタシを産み出してくれた皆。アタシは今、とても幸せに過ごせてるわ。

「ふぁあ……うむ、そろそろ眠くなってきたな。寝るとしようか……?」
「あ、それでお願いがありますの……マイスター、今日だけは一緒に♪」
「何?一緒に寝る、というのか……クレイドルで無くて、バッテリーは」
「料理で補給出来た分がありますから、明日お昼寝すれば大丈夫ですよ」
「だから……今だけは、マイスターの胸の中で眠りたいんだよ。ボクら」
「うん。今日は離れたくない、眠りに落ちるまで……側にいたいの……」

暖かい想いが高ぶった所為か、誰とも無くマイスターに抱かれて寝る事を
望む。勿論アタシだって、大切な“心”を抱いて寝たいの。何故か今日は
そういう気分だから……『恥ずかしい』とか、そう言う事は無かったわ。

「……全く、仕方のない娘らだ。寝相は良いけど、気を付けるんだぞ?」
『はいっ……!!!!』

腕を広げたマイスターの胸に、アタシ達四人が滑り込む。そして抱かれた
ままに五人は、ベッドの中へと潜り込んだ。とても、暖かくて……とても
幸せな気分。まるで“楽園”にいるかの様な、至福の夜が悠久に過ぎる。
ううん。此処こそが、この人達の側こそが……アタシの“楽園”なのよ。
そしてそれは、他の四人にとっても同じ事。アタシ……神姫で良かった。

「こんな小さな躯だから、見えない物も見えて……大事な想いを抱ける」
「ん……?どうした、エルナ……“神姫”になれて、嬉しいのか……?」
「ええ。こうして神姫として、大切な人の側にいられるのが……とても」
「……わたしもですの。小さな躯で、大きな想いを手に出来ましたの♪」
「ボクも、なんだよ。大切な姉妹達を得る事が出来たのは、神姫だから」
「皆、大好きです……今日は、とても良い夢がみられそうですね。ふふ」
『──────おやすみなさい──────』

──────夢の果て、幸せに抱かれて……羽撃たき続けたいわね。



──その夜は“夢”を見たの。とても愛しい人の……でも、幻じゃない。
だって何時もこれからも、五人の姉妹は共にあるから。ここは……小さな
錬金術師達の集う、幸せの工房。次に産み出されるのは、何かしら──?







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