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白花と黒華──あるいは聖者の再来(前半)




──『女三人依れば姦しい』って言葉が、この島国にはあるらしいわね。
……それなら、五人集まればどうなのかしら?しかも皆が皆を大好きで、
更に今日は何か、恋人同士には大切な日らしいの。どうしようかな──?



第一節:白花




──通電……システムをスタンバイから解除……徐々に、アタシの意識が
戻っていく。目を開ければ、そこはもう見慣れた白天井。時刻は朝六時。
強化プラスチックとフレームの躯も、気怠くはなくて……今日も快適ね。

「う、うぅん……よく寝たわ、って“神姫”には変な言い回しかしら?」
「そんな事無いですよ、おはようございますエルナちゃん……よっと!」
「あ、おはよアルマお姉ちゃん。そうなの?マイスターがよく言うけど」
「そうですよ~。神姫も休眠状態で、メモリのデータを整理するんです」
「ふぅん、頭がスッキリするのはそう言う事かしら……それ、大丈夫?」

テーブルを伝って、アタシ・エルナは程良く暖房の利いた部屋を歩くの。
マイスター・晶お姉ちゃんが作ってくれた“ネグリジェ”は、着やすくて
寝起きに室内を移動するには最適なのよね。で、歩いた先で発見したのは
人間規格のフライパンを、テコの原理で器用に振るうアルマお姉ちゃん。
中に入った目玉焼きの、美味しそうに油が跳ねる音……堪らなくなるわ。

「にしてもさ、それ重くないの?何だったら着替えてすぐに手伝うけど」
「平気ですよ。元々力仕事は得意ですし、今日は“これ”も有ります♪」
「ああ……確か“Rosa bianca”だったかしら?その新作ドレスってさ」
「ええ。今日から実働テストって事で、お手伝いの時に着てるんですよ」

元々このMMSショップ“ALChemist”に住む神姫達は、パワーローダーとか
そういう大掛かりな補助具が無くても、人間の仕事を多少はこなせるの。
でもアタシは、なかなか上手く行かなくて……勿論お姉ちゃん達も最初は
そうだったけど……見かねたマイスターが作ったのは、服型の補助機構。

「で、でさ……それってどう?着心地とか動き易さとか、快適かしら?」
「普段の服と殆ど代わらないですし、モーターにも楽々ですよ♪それっ」
「そっかぁ。アタシもそれ着れば、お手伝い出来るかしらね……あ!?」
「ふぇ?ああ、朝のお風呂ですね。もう暫くしたら出来ますから、ね?」
「う、うん。すぐ入ってくる!じゃ、また後でねアルマお姉ちゃんっ!」

更に武装化とかデザインの調整を色々施して、今度から売るらしいわよ。
その名前は“ローザ・ビアンカ”……白薔薇。確かに、可憐なドレスね。
でも、見とれてる場合じゃないわ。日課のボディウォッシュ……お風呂を
忘れちゃいけないのよ!磨き過ぎは傷付くから、シャワー程度だけどね?

「え~と、着替えは……ここね。よいしょ、っとと……あ、おはよっ!」
「エルナちゃん、おはようございますですの~♪朝のお風呂、ですの?」
「う、うんっ!ロッテお姉ちゃんは、店の……お金数えてるの、それ?」
「はいですの♪昨日はちょっと、バッテリーが心許なかったですの……」

集計機にお金をじゃらじゃらと投入しているのは、ロッテお姉ちゃんね。
一番長くマイスターと暮らしているだけあって、彼女は“ALChemist”の
業務にもとっても詳しいの。だから、たまにマイスターの仕事を肩代わり
したりなんかもしてる。何時かは、アタシもコレ位馴染んでみたいわね。

「電子マネーとか色々な手段があっても、これだけコインあるのね……」
「全て置換するには、まだまだ課題も多いですの。信頼性も高いですし」
「そうなんだ……って、それ所じゃないわ。お風呂!朝ご飯に遅れる!」
「あ、今は……ううん、なんでもないですの♪ごゆっくりですの~っ♪」

そしてアタシは戸棚や手すりの上を移動して、お風呂場へ近付いていく。
この家は、こうしてアタシ達“神姫”が通る為のラインが整備されてる。
目の前を横切るクララお姉ちゃんも、戸棚からフィルムを取り出して……
って、危ないじゃないッ!?……と思った時には、もう遅かったのよね。

「きゃあっ!?あ、あいたたた……だ、大丈夫?クララお姉ちゃん!?」
「痛……荷物はお互いに落ちてないみたいだし、大丈夫だよ。おはよう」
「お、おはよ。ごめんね……お風呂に急いで入らないとって、慌ててて」
「ボクは、塾の宿題を再チェックなんだよ。一応完璧な筈だけどね……」

立ち上がったのは、クララお姉ちゃん。訳有って躯が“弱い”彼女だけど
無事みたいね、よかったわ……で、この娘は特殊な装置を使って、人間の
姿を借りて社会に食い込んでる神姫。“一応塾”っていう勉強する所に、
足繁く通ってるらしいのよね。宿題も、そこから出されたのかしら……?
でも人間になる気分ってどうかしら?アタシはまだ体験したくないけど。

「……それで、エルナちゃんはこれからお風呂に入るのかな?“今”?」
「へ?う、うん。もうじき朝ご飯だから、急がなくちゃって……じゃ!」
「あ。まぁ、今日はアレだし楽しむといいって思うんだよ?ごゆっくり」

何か引っかかる物言いだけど、それどころじゃないわッ!このままじゃ、
朝ご飯に一人だけ遅れちゃう!寂しいから、それは嫌なのよね……やっと
脱衣所に辿り着いたアタシは、ネグリジェを脱いで畳んで……更に下着も
外して、綺麗に備え付けの籠へと押し込む。これは、マイスターが何度も
教え込んでくれた“躾”。乙女の品格、って奴らしいわ。さ、入るわよ!

「よいしょ、っと……あれ?湯気が、たって……る?……え、ええ!?」
「──きゃあああっ!?だ、誰ッ!!?って……何だ、エルナかッ!!」
「う、うんっアタシよ……まッ、マイスターが……もう入ってたのね?」
「有無、その……少し寝坊してな?だから、今入っていたのだが……な」

意気揚々と扉を開けたアタシの目に飛び込んできたのは、スベスベの脚と
なだらかで綺麗なボディの少女……そう、マイスターの晶お姉ちゃんッ!
躯中を泡立てて、彼女も自分を磨いてる最中だったのよ……その、情報で
頭がパンクしそうな……胸が痛い感覚に、囚われちゃうわね……あうぅ。

「む、むぅぅ……しかし、アルマが今頃朝食の支度をしているだろう?」
「うん。起きた時、丁度フライパンを振るってる所だったわ……まさか」
「そのまさかだ。お前を待たせていては、間に合わぬだろう?さぁ……」
「い、いいのね?じゃあ……お邪魔します~……んしょ、っとと……!」
「んっ……ああほれ、私の躯を踏み台にするとソープで滑るぞ?ほらっ」

でもアタシは、大好きになりたいと日々共にいるマイスターの“誘い”を
断り切れなかったわ。請われるままに、一緒のお風呂に入って……彼女の
細く白くて、お人形さんみたいにとっても綺麗な指で、洗ってもらうの。
でも触れられる度に、その……電磁パルスが、躯中を駆けめぐるのよ?!

「は、ぅぅ……んんっ、ふ……マイスター、そんな丹念にしなくてもっ」
「そ、そうはいかんぞ?今日は大事な時なのだし、何より乙女の嗜みだ」
「大事な時?ってえっと、今日は……2038年02月14日だけど、何なの?」
「ん……まぁ、昼にでもゆっくり発表しよう。今は、お風呂を堪能だっ」
「え、ええっ!?ひゃう、そこ……やぁ、自分でやれる……んんっ!?」
「……え、遠慮する事などないだろうッ!というか、私も恥ずかしいぞ」

……普段から、マイスターとは一緒にお風呂に入るのよ。五人一緒の時も
あれば、こうして……他の“姉”達と二人きりの時もあったわ。だけど、
あたしとマイスターの二人きりってのは、思えばこれが初めてなのよね。
そうしている間にも、アタシの情報処理は鈍って……頭が、霞んで……!

「だ、だって……何かおかしいのよ!センサーがないのに、信号が!?」
「……それは“心”の作用による物だと、ロッテ達は言っておったぞ?」
「ひぅ!や、やめてマイスター……何だかアタシ、切なくなっちゃう!」
「構わぬ。異常ではない……と、思う。そのまま、身を任せてくれ……」
「マイスター、マイスター……ぅ、ううんっ──!!?ふ、はぁ……っ」

そしてその時一緒になってた“姉”は、とっても嬉しそうにしていた……
その笑顔を思い浮かべて、最後にマイスターの恥ずかしそうに微笑む顔を
思い出したアタシの意識は、そこでコンマ三秒程途切れたの。理由……?
そんなの分からないし、追求しちゃいけない。理論抜きでそう思うのよ!
それに、マイスターに全身洗ってもらえて幸せなのよ?とっても……ね。

「しかしお前達は……風呂や肩もみでそういう声を出すのは、何故だ?」
「理屈なんかわかんないわよ。ジョイントとかも、異常はないのに……」
「まぁ、今までも異常はなかったからなぁ……ほれ、洗浄剤を流すぞ?」
「う、うん……目は閉じたわ、何時でも大丈夫よ?わぷ……っ……!!」
「よーし、後は私も流せば終わりだ……貴様、変な想像しておらぬな?」

マイスターが、変な方に声を掛けるけど……ま、それはどうでもいいわ。
泡を流してからマイスターの肩を押してあげて、アタシ達は仲良く外へと
出たのよ。そして、二人で躯の雫を拭き取り……服を着替える。品のいい
下着とブラウスに袖を通して、スカートを穿いて準備OK!さ、次は……
ええ、朝食ッ!マイスターと一緒に食事出来るのは、とても楽しいのよ?

「あ、二人とも戻ってきたんだよ……やっぱりエルナちゃんも、声を?」
「どああっ!?み、皆まで言うな!お前達と全く同じ反応だったぞ!?」
「そうですか……なんででしょうね?いかがわしい機能はないのに……」
「幸せなら関係ないですの!さ、折角の朝ご飯が冷めちゃいますの~♪」

出迎えてくれたのは、既に食べる準備を整えた三人の“お姉ちゃん”達。
そう、種族の枠を越えた幸せがアタシ達を包む。今はそれで良いのよ……
でもこの後、アタシの長い一日が始まるのよね。とても幸せな……ねっ?

「有無、ではアルマと日々の糧に感謝しつつ頂こうか……せーのっ!」
『いただきまーすっ!!!!!』

──────楽しい楽しい、ブレイクファースト……何気ない幸せね。



第二節:聖女




そんなこんなで朝食も終わって、マイスター達は店に立ったわ。アタシは
特にそういうお手伝い……してないのよ。まだ人が、ちょっと怖いしね。
だから戦闘訓練と、居住区画でのお手伝いがアタシの日課。でも今日は、
ちょっと勝手が違ったのよね。何故なら、一緒にやってる目の前の……。

「というわけでエルナちゃん、今日は早めに切り上げて外出の支度です」
「へ?どういう事アルマお姉ちゃん……?今日はお洗濯とかしないの?」
「ええ。午後は全部開けておいてくれ、ってマイスターのお願いですし」

アルマお姉ちゃんが、そう言って作業を半分以上後回しにしてるのよね。
理由を聞いても『お昼になれば、マイスターの口から♪』って言うだけ。
そう言えばマイスター自身“今日は大事な日”だって認めてたけど……。

「でもこれだと、十一時位には完璧に終わっちゃうわよ?いいの……?」
「勿論ですよ。その頃にはクララちゃんの勉強も終わりますから、ね♪」
「あ。これって、春の新作……だけじゃないわね。一杯のお洋服……!」

それを強調する様にお姉ちゃんが出してきたのは、幾つもの衣装。そう、
今日はアタシ自身の選択も加味して、着る服を選ぶつもりみたいなのよ。
そこまで気合い入れるって事は、やっぱり何か凄い祝日なのかしら……?

「あたしとクララちゃんで、エルナちゃんの衣装合わせとかしようかと」
「そ、そう?この中から自由に選んじゃって、いいの?何時もは、その」
「マイスターが選んでくれてますよね?でもこれからは、自身の感性も」
「そ、そっか……これも訓練の一環みたいな物ね?分かった、やるわよ」

にこにこと笑うアルマお姉ちゃんに根負けする形で、アタシは同意した。
それから頭の中は、どんな服が良いかなって……それだけで一杯。正直、
どんな類のお手伝いをしてたかは、あまり印象に残ってないのよね……。
でも時間だけは確実に過ぎて、約束通りの十一時。家事も丁度終了、ね。

「ふぅ……後は洗浄機とかに任せれば大丈夫です、というわけで……♪」
「エルナちゃんのファッションチェ~ック、と……行こうと思うんだよ」
「ふわっ!?お、脅かさないでよクララお姉ちゃんッ!後ろからッ!?」
「あ、もう始めちゃってますの~?わたしも混ぜてくださいですの、皆」
「大丈夫、まだですよロッテちゃん……ってお店はもういいんですか?」

肯くロッテと、いそいそ衣装ケースを開くクララ……二人のお姉ちゃん。
マイスターは店先で閉店準備をしているらしいわ。もう、お仕舞いなの?
そんな疑問を投げかける間もなく、アタシは自らを着せ替え人形と為す。

「え、えっと……こんな帽子とか、どうかしら?自信、ないけどさ……」
「それなら、このコートも肩に掛ける形が似合いそうなんだよ?ほらっ」
「わ、わ……本当、いいわね。あ、でも……内側はどうしようかしら?」
「ブラウスは此処に。後は上着……フリルを殺さない方が、いいですね」
「敢えて『人形らしい関節』を引き立ててみるのも、いい手ですの~♪」

そこで驚いたのは、お姉ちゃん達の感性。今アルマお姉ちゃんが着てる、
肘・膝とかの関節を完全に覆い隠す物もいいんだけど、一方でこの独特な
関節を『引き立て、わざと見せつける』方法で、雰囲気を調整する手段も
あるらしいの。それは、被造物としての様式美を出す……初めての経験。

「ほらほら、真っ赤になっちゃダメですよ?短いソックスにヒール、と」
「スカートも、パニエで膨らませつつ丈自体は短め……かな?ほら……」
「腕は肘手前ギリギリまでの手袋で、寒そうに見えない工夫もしますの」
「え、えとえと……で、ブラウスがこのフリル一杯のね……後、首は?」

夢みたいな体験よ。アタシは、昔は勿論だけど……“妹”となってからも
自分で服を選んでいくという事が、あまり無かったのよ。時期的に丁度、
マイスターが上から下まで揃えた物を作ってたから。でも、今日は違う。
お姉ちゃん達の意見を取り入れつつも、これは正真正銘アタシの服よッ!

「そうですね……コードタイが“Electro Lolita”の定番なんですけど」
「こういう短くて太いネクタイもいいですの~♪幾つか種類が……っと」
「これにするわ。銀十字の刺繍が、胸元に来る形なら……どうかしら?」
「完璧なんだよッ。後は幾つか装飾品を付けて……さっきの帽子と外套」
「あ、ありがと。マイスター、喜んでくれるかしら?アタシのセレクト」

アタシは、顔が熱く……むず痒くなる様な錯覚を覚えたわ。皆は、大きく
肯いて保証してくれたけどさ……紫水晶のピアスと水晶の腕輪を嵌めて、
いざ愛そうと日々頑張って接している、唯一の“人間”を待つと……ね?
こう……コアやCSCに流れるパルスの勢いが、速くなるのを感じるの。

「ふぅ、ロッテや。シャッターも下ろしたし、店はもう大丈夫……おっ」
「お、おかえりマイスター……その、主にアタシが選んだのよ。どう?」

そして彼女は……マイスター・晶お姉ちゃんは戻ってきたわ。アタシを、
髪の毛の先から爪先のパーツまで、細かく見据えるの。なんだか、全身が
むずむずして、これは……『恥ずかしい』わ。見られている、って意識が
強くなると、少し不安になったりするの。でも、マイスターの指は……!

「可愛いではないか。シックでありながら神姫の美しさが出ているぞ!」
「そ、そう?あの、アドバイスで……敢えて関節を覆わなかったのよ?」
「有無。敢えて魅せる事で、神姫独特の妖しげな可憐さを引き出す手か」

アタシを抱き上げて、服が乱れない程度に撫でてくれたわ。大丈夫だよ。
貴女は可愛らしいんだよ?……と、声にこそしないけどそういう想いが、
アタシには感じられたわ。こうしてお洒落に目覚めたのかしらね、皆も?

「さて。エルナへのアドバイスは見事だが、そろそろお前達も準備だぞ」
『はいっ!!!』
「え?じゅ、準備……あ、着替えるのね。そう言えば、今日は何なの?」
「有無……そろそろよかろう。今日は“バレンタインデー”と言う日だ」

漸く合点が行ったわ。でも、名称は聞いた事があるけどそれがどんな日で
何時なのかは……殆ど知らされてなかったから。勿論、意義も知らない。
けど、皆はとても楽しそうに準備を始めたの……いい日なのは、確かね。

「大切な人に贈り物をして、感謝と友愛を示す日ですの♪日本だと──」
「チョコレートを男性から女性に、という形が定番化してますけどね?」
「その由来からすれば、一応“チョコ”には囚われなくてもいいんだよ」
「有無、それに……そのな?実際……私の誕生日でもあるのだ、今日は」

そう言ってマイスターはアタシを伴って、自分自身も着替えを始めたわ。
生まれた日が嬉しい、という実感はまだアタシにはないけど……本当に、
“心”の底から嬉しそうなのが、傍目からでもよく分かる位の笑顔なの。

「エルナや。手持ち無沙汰なら、少々持っていてくれぬか?ほれ、頼む」
「う、うんっ。そう、今日は“大切な日”なのね……アタシ達姉妹には」
「そう言う事になるな……取りわけ今年は、皆に“愛情”を告げた年だ」

その呟きで、皆が黙ってしまう……というよりは、皆顔を紅くしてるの。
勿論アタシだって例外じゃない。あの夜の事は、今でも忘れていないわ。
“バレンタイン”という行事は、その想いを強化する意味合いがある……
よく知らないアタシでも、それだけは直感的に察する事ができたからね?

「ん……すまぬな、もう大丈夫。よし、私の準備は出来たが……どうだ」
「準備は整いましたの~!わ、マイスター……気合入っていますの~♪」
「そう言うロッテお姉ちゃんだって、白と水色のワンピースが綺麗だよ」
「クララちゃんも、普段より長考してましたよね。あたしも、ですけど」

そうしている内に、準備は整ったわ。白のドレスに黒のコートで、全体を
お姫様みたいに飾ったマイスターを初めとして、三人のお姉ちゃん達も、
髪色とモノトーンを絡めた、個性的なコーディネイトに仕上がったのよ。
アタシも白黒織り交ぜてるし……こう言うのはやっぱり素敵、よね……♪

「さて、では準備が出来た所で……街へ繰り出そうではないか。往くぞ」
『はいっ!!!!』

──────こうして、長い一日が始まるのね……楽しみだわ。







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