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紫風の尖姫──あるいは誇りと誓い(後半)




第三節:軍隊




エルナが吼えた。それは大切な物を喪う事の畏れ。『無くしたくない』。
それが彼女の、強烈な精神的支柱となっている。一見弱さにも見えるが、
裏返せばその心は、大切な“何か”を護り通したい強さにもなるのだッ!
そして“想い”が突き動かすままに、紫の姫君は龍に乗って駆け抜ける!

「はあああああぁぁっ!!」
「ふ、ふん!突撃戦なら、あたしの方が得意よ!せやあああっ!!」

だが、アールヴだって負けてはいない。今度は掌中の武器を巨大な剣へと
変形させて、エルナの“突撃”に応じて突き進む。それは、中世の騎士が
互いの誇りを賭けた試合と同様……だが、エルナには『ランスはない』。
その手には、フルネレス・バスタードソード形態と……そしてもう一つ、
“センチュリオン”と“ティンクルスター”の合体した光剣があるのみ!

『え?ちょ、ちょっと待ちなさいアールヴ!あっちの狙いは……』
「……なんてね♪遅いわよ、気付くのが!」
「へっ!?うわ、わぶっ!?」
「ティアマル、“ファランクス”よ!」
『ケェェェェーンッ!!!!』

光とやらはエルナの狙いに気付いた様だ。だが、少し遅かった。彼女は、
ティアマル諸共上空へと舞い上がり、そこで新たな“姿”を見せたのだ。
それは群体……否、“軍隊”としての、ティアマル第二の姿であるッ!!
勢い余ってつんのめったアールヴは、起きあがりその光景を睨んでいる。

「……え、え?何これ、龍は何処に往ったのよ?」
『クララちゃんの龍が、そう言えばユニット式だったけど……まさか!』
「そのまさかよ。“この娘ら”は、八体の小型攻撃端末でもあるの」
「そんな……八体のぷちマスィーンズに、分離した……!?」

地には、T-REX・ゴリラ・獅子。空には、エイ・蜂・燕・白鳥・海豚……
そして光の剣“フォトン・スティング”とフルネレスを携えた、エルナ!
従来の“ゴーレム・シルエット”では、彼女の機動力を生かし切れない。
そこで皆が知恵を出し作ったのが、この“ファランクス・シルエット”!

「戦は冷静沈着に、魂はハードに……それがアタシよ。さ、往くわよ!」
『ケェェェェーンッ!!!!!!!』
「う、ううっ!?」

『鳥の様な鳴き声』を挙げ、八相の獣が動き出す。蜂と海豚は、エルナの
アーマーやブースターとなって彼女の躯を護り、残りの六体が一気呵成に
アールヴ・ドヴェルグへと、群がったのだ。彼女は、必死に振り解くッ!

「こ、このっ!?離しなさいよ……ええいっ!!」
『ギャオオオオンッ!?ギャ、ギャオオオッ!!!』
『ケェェーンッ!!』
「きゃあっ!」

ゴリラの拳・獅子の爪がドヴェルグの装甲を削り取る。恐竜・燕・白鳥が
めいめいに繰り出すレーザーは、アールヴの視界を塞ぎ……そこへエイが
小型のミサイルを撃ち込んでいく。徐々に、格差は埋められつつあった。

「ほら、その娘らは本来の相手じゃ……ないわよッ!!」
「きゃうっ!?う、ぐぐ……!」

だがあくまでも、それらは牽制に過ぎない。本命は、背中のバインダーを
広げて滑空してきたエルナの刃である!逆手に構えられた双振りの剣は、
アールヴの装甲を十字に裂いた。これで、ダメージ量としても互角だな。

「調子に乗るなって、言ってるでしょぉぉっ!!」
『ケェンッ!?』
「……うわ、しぶといわね。っとと!?落ちつきなさいッ!」
「こんのぉぉおっ!!」
「きゃんっ!?」
『エルナッ!』

しかし、ここまで蓄積してきたデータは確かなのか、なかなかアールヴは
その勢いを落とさない。巨剣を縦横無尽に振り回し、一直線にエルナへと
駆け抜けてきたのだ!堪らずエルナは、海豚をブースターから衝撃砲へと
変形させて撃つが、剣で弾き返され……そのまま一撃を叩き込まれるッ!

「ううっ……今のはちょーっと、キツかったわね」
「こんなもんじゃ済まさないわ、その首叩き落としてやるんだからっ!」
「ぅ……!」
「せやああああっ!!」

蹲ったエルナを、アールヴは怒りの眼で見据えた。そのまま、首に向かい
巨大な刃を振り下ろす……だがしかし、その刃は致命傷とならなかった!
何故なら刃が突き刺さった所には、エルナの影すら無かったのだからな。

「ふぅッ……あ、あれ?消えた!?」
『十二時斜め上120sm!逃げられてるわよッ!?』
「遅いわよ……急所を狙うなら、もっと確実に殺らないと!」
「う、うそ!?速すぎる……!」
「ブースト・アップ!一気に突っ込む……わよっ!」
「そんな──────きゃうっ!?」

あっという間にその場を離れたエルナの躯には、変化が生じていた。背の
バインダーと両肩のシールドが展開、都合八枚の翼となって彼女を天高く
飛ばしていたのだ。電磁浮遊システムを強固に改良した、特殊な翼でな。
更に急旋回を掛けたエルナは、瞬きよりも速くアールヴに突っ込んだッ!
彼女の懐で、紫の姫はシャノンを巨大なレーザーブレードに変形させる!

「う、ううっ!……何をするのよ!?」
「これは、アルマお姉ちゃんの剣技と……クララお姉ちゃんの魔術!」
『鎧が、巨大なブレードに……!それに、反対側の光剣も大きくッ!?』
「そしてロッテお姉ちゃんの体術!神儀、双凰輪華閃!せあぁっ!」
「きゃ……きゃああああああっ!?」

魔術名“グランディア・セプテントリオ”。フルネレスのロッド形態と、
ティアマル付属のフォトン・スティングを合体させた魔術用ブースター、
“フルネレス・スティング”に唯一刻まれた“砲撃型魔術”だ。しかし、
エルナはこの魔術をアレンジし、巨大プラズマブレードに仕立てたのだ!
そうして産まれた二つの刃を両手に構え、彼女は回転鋸の様にアールヴを
幾度と無く切り裂いていく。無論、このままならエルナの勝利だが……。

「な、舐めないで……って言ってるでしょっ!!」
「きゃうんっ!?痛ぁ……あ、あれ?マイスター、あれってドリル!?」
『そう、みたいだな……あの斧は、本当に何でもありか?』
「貴女達がいうの、それ?!もう、堪忍出来ないわ!ドヴェルグッ!!」
『ギャオオオオンッ!!』

アールヴとて黙っては居ない。龍から吹き飛ばされた彼女は、握っていた
剣をドリルアームに変形させ、それを握り込んでエルナを殴り飛ばした!
幸い攻撃の際にも、海豚と蜂を追加装甲として纏っていた為にダメージは
少な目だが……いよいよアールヴは怒髪天を突く様な状態となっていた。

「見せてあげるわ、この重量級で培ったノウハウの集大成を……!」
『いかん、エルナ離れろ!相手の“龍”の、様子がおかしい!』
「こっちでも確認出来るわマイスター!多脚型のメカに、変形する!?」
「あはははっ……これがドヴェルグ・ドミネイター!殲滅形態よ!」
『ギャオオオオーンッ!!』

その怒りを体現するかの様にして、龍は歪な強化外骨格となっていった。
鎌の様な爪先を八脚持ち、その手にはエルナのそれをも上回る光の巨剣。
そんな異形の怪物が、腹にアールヴを呑み込んでいる。禍々しい姿だな。

「う、うわぁ……センス、良くないわね。アタシが言うのも何だけど」
「煩いッ!絶対貴女を潰して、良い武器もらうんだからッ!!せやっ!」
『ケェェェェーンッ!!!!』
「わわわわッ!?蹴りなんて器用ね……でもっ!とっとっと……!」

しかもその体躯に似合わず繊細な動きをこなす彼女は、片側の足……即ち
四本の大鎌で、エルナ達を薙ぎ払おうと地面を刮いでいく。ティアマルの
分身たる獣達は咄嗟に散開、エルナ自身は迫る巨大な足を階段の様にして
駆け上がり、腰から引き抜いたシャノン付属の拳銃でアールヴを撃った!

「ッ!……ふん!そんな玩具、こうなったあたしには利かないわよ!」
「む。半透明の防御アーマーが降りてるみたいね……うわっ!?」

しかし装甲は分厚く、全く通用しない。それ所か、光の剣で斬られそうに
なってしまう。エルナは咄嗟に、己を護っている鎧を水中対応型……即ち
“マーメイド・フィギュア”へと変形させて、古城の手前にある堀へと、
飛び込んでいった。しかしこれは、追い込まれた形と言えなくもないな。

「やっぱり貴女も泳げるのね、なら水ごと蒸発させてあげるわ!」
「……負けないわよ。アタシは決して諦めない!“誇り”に賭けてね!」

──────自分の全力を出して、勝ってみせるよ……!



第五節:巨神




堀に追い込まれたエルナは、“海豚”が変形した衝撃砲を散発的に撃つ。
しかし装甲の内側を揺らすその一撃とて、八脚の化け物を制止させるには
些か心許ないらしい。それどころか、益々アールヴは堀へと突き進むッ!

「どうせなら、煮魚にしてあげるわ!それっ!!」
『え、エルナ!……後、八秒程だ。それまで耐えろ!』
「わ、分かったわ!でもこれ、結構キツ……うわっ!?」
「ほらほらぁ、大人しく喰らった方が楽じゃないのッ!?」

そしてアールヴは、手にしている超巨大レーザーブレードを、なんと堀の
水へと突っ込んだのだ!どうやら己の大出力で強引に水を煮えたぎらせ、
ついでに掻き回す事でエルナを消耗させ、最終的には斬るつもりらしい。
だが、脱出しようとはしない。彼女は、敢えてこの窮地に留まっている!

「ほらほら、徐々に煮えてきたわよ!湯気が見える!あははっ!!」
『って……ちょっとアールヴ、やめなさい!五時の方角よ!!』
「──へ?」

“罠”に光が気付いたのは、十全な準備が整った後だった。先程散開した
ティアマルの分身達が、エルナの手元にある二匹を除いて一箇所に固まり
渦を描く様に旋回運動を始めていたのだ。それに気を取られた隙に……!

「あ、あれは……って、待ちなさいッ!!」
「待たないわ、気を抜いた貴女が悪いのよ……ティアマル、合体ッ!」
『ケェェェェーンッ!!!!』
「させないわよっ!!……って嘘、対ビームフィールド!?」

エルナは堀から飛び出し、その渦へと飛び込んだ!気付いたアールヴは、
剣からレーザーを撃ち出すが、出力全開の“ミラージュ”が光を弾いた。
オーロラ・エフェクトによる紫電の竜巻は、防御機構の有効範囲である。
彼女は分離状態で“合体”するのだ。実行中の防御にも気を遣わねばな?
実際、エルナは己を纏う龍の因子……それを制御する事に集中していた!

『ケェェェェーンッ!!!』
「フェイ、コネクターモードに変形……スワン・テイル、合体完了!」
「嘘みたい、合体ロボみたいに……獣達がユニット化していくわ」
『な、何見とれてるのよアールヴ!攻めなさいッ!!』

腰と足が出来て……すぐさま両腕と胴が形取られる。更に、エイは変形し
巨大な“天使の翼”となって背を形成する。同時に、エイの尾だった物が
ランチャー風のユニットと共に腰の両サイドへと収められ、最後に海豚が
バイザー付きヘルメットとなり、新たな紫の髪……放熱器と連結するッ!

「ティターン・シルエット……スタンド・アップッ!!」
「……う、わぁ……巨大な、天使……!?」
「天使じゃないわ、アタシは“戦乙女”ね。さ、往くわよッ!」
『アールヴッ!来るわ、気を付けて!!』
「ふぇ!?わ、分かってるわよッ!!」

あくまで鎧であるその大きさは、“姉”達の巨神形態とそうは代わらぬ。
従って、エルナの動作をほぼ確実にトレースする事が出来るのだ。そして
ティターン・シルエットの存在意義は“得意攻撃”を活かす事であるッ!

「まずは、ご挨拶……“バルムンク”、スナイパーモード……っと!」
「……え!?きゃんっ!!ち、近付いたと思ったらあんな遠くに……!」
『は、速い……!?また接近してくるわ、アールヴ!』
「次は、デュアルバレットモード!そらそらそらっ!!」
「う、うあああっ!?装甲が、劣化しちゃう!……このぉっ!!」

即ちそれは“超高速戦闘術”。“ロキ”の時代から常に培ってきた異様な
身体機能と、それに追い付く反射神経こそエルナ最大の“武器”なのだ。
ここに至るまで私が用意した全ての武装は、速さを活かす為にこそある!
それを最大限発揮するエルナには、アールヴの光剣もなかなか当たらぬ。

「そ、んな……速すぎる!あたしが、負ける!?」
『アールヴ、ぼっとしてないの!後ろッ!!』
「負けるから怖いんじゃない、怖がったら負けるのよ……せぁっ!」
「きゃああっ!う、ああああっ!?躯がッ……離してッ!!」

それ所か、完全に狼狽えてしまったアールヴのバックを取ったエルナは、
左腰から引き抜いたブレードで、八脚の怪物を強かに斬り付けた!完全に
勝敗は決した様な状態だが、それでもエルナは手を抜かない。蛇腹の様に
分割した剣で敵を絡め取った戦乙女は、そのまま獲物を空へ引き揚げる!

「レーヴァテイン、御苦労様っと。さあ、これが“冥土の土産”よ!」
「きゃああああああっ!?う、ぐぐ……ッ!?」
『アールヴ、起きなさい!アールヴ!狙い討ちされるわ!!』

そして、一気に地へと叩き付け……銃とブレードを両腰に仕舞い込んだ。
止めは“魔術”。巨神が持てる長さである“フルネレス・スティング”は
先程と同じ、巨大なプラズマブレード……いや、クレイモアを形成する!
彼女は出来た光の刃を、弓矢でも持つかの様に両手でそっと構えたのだ。

「……神儀、“七星龍の騎姫剣”グランディア・セプテントリオッ!!」
「え、ええっ!?きゃぁぁあああああああああああああああっ!!!」

そこからは、あっという間だった。光の刃から、鍔が分離して……巨大な
防御フィールドを形成する。ほぼ同時に、刃根本から莫大なエネルギーが
噴出されて、“閃光の弾丸”が超音速でドヴェルグを串刺しにしていく。
そう、弾道ミサイルでも撃つかの様に……エルナは剣を撃ち出したのだ!
防御フィールドは、反撃からではなく爆風からエルナ自身を護る為の物。
それはクララと共同で編纂した、エルナ最大最強の“砲撃魔術”である!

「う、ぐぁ……あああぁぁあああっ!!!?」
『ギャオオオオオオオオオオンッ!!!』
『ドヴェルグ!?アールヴッ!!?』
『ノックダウン!!勝者、エルナ!!』
「ふぅ……まずは、一勝。ここからが、本番ね」

突き刺さった光の刃は、怪物の体内……つまり、アールヴの眼前で激しく
弾けた。流石に威力で“姉”達に数段劣るエルナのそれは、怪物の体躯を
跡形もなく消し飛ばす……という訳には行かない。だが、全身の駆動系は
完璧に焼き切れ、二度と起きあがる事はなかった。重量級での、勝利だ!

「う、ぅ……約束ね、インターバルを取ったら、昇進試合の本番よ」
「ええ、勿論遠慮はしないわよ。たっぷり戦ってあげる」

そしてヴァーチャルフィールドは暗転し、エルナ達は筐体から出てきた。
彼女は私のチェックを受けた後、すぐさま簡易クレイドルへと横たわる。
戦いに一切の妥協をしない、この姿勢……ロッテの贈り物かもしれんな。

「ふぅ……実戦は初めての運用だったけど、どうだったかしら皆……?」
「見事だ。完全とは言えぬが、よくティアマルの特性を引き出している」
「アレでもまだ、用意してある機能としては見せてない分があるんだよ」
「そう言えばフォーメーションとか龍での格闘とか、出せなかったわね」

充電が開始され意識が霞むエルナは、気怠げに微笑んでみせる。予想より
更に激しい戦いだったのだろう。そのバッテリー残量は、些か心許ない。
だが、自分の全力を出しきったという達成感は……私達にも感じられた。

「いいじゃないですかエルナちゃん、使い切らずに戦えたって事でッ!」
「次が本番ですの♪たっぷり……そして確実にお灸を据えてくださいの」
「確実にね?分かったわ。充電が終わったら……確実に仕留めてみせる」

──────クールでも熱い魂は、まだ収まっていないよ……!



第六節:疾風




三十分後。アールヴとエルナは、ヴァーチャルフィールドの直中に居た。
“賭け試合”の提案により一時保留していた、軽量級ランクの昇進試合を
執り行う為に、改めて意識を没入させていたのだ。それは、エルナが敵の
アールヴに一撃を与えられる“ハンディキャップ・マッチ”でもあった。

「さぁ、あたしは逃げも隠れもしないわよ!出てきなさいッ!!」

アールヴの怒鳴り声が、白亜の宮殿に響く。戦いの舞台は、先程の孤島に
聳えていた古城である……全くの偶然だが、同一モチーフのフィールドが
戦いの場に選定されたのだ。しかし、エルナの姿は未だ見えない。焦れた
アールヴが、奥の玉座から降りてきた。その瞬間、冷厳な声が響く……!

「いいわよ……アタシはここに居るわ。“アクセプト”!!」
『Roger(ロック解除。“アクセプト・フィギュア”承認します)』
「え!?出てきたわね、って何……あの霧……蒸気?!」

宮殿の入口に、歪なシルエットが浮かび上がっていた。逆光と蒸気により
その姿は覆い隠されている。だが、今までに見せたエルナの姿ではない。
そう。“シャノン”が持つ最後の姿……“アクセプト・フィギュア”だ!
エルナの躯は、そのドレスによって“疾風の兎鬼”へと変じていたッ!!

「じゃ、約束の一撃よ……“ムラマサ・エクステンド”!!」
「──────え?」
『……アールヴ……?!』

アールヴが戦いている間に、エルナが動く。蒸気を吹き飛ばして駆けた、
一匹の兎は次の瞬間、兎の耳……に似せた可変式のセンサーを揺らして、
アールヴの背後で屈んでいたのだ。その手に握られているのは、柄に対し
刃が二倍の長さという『巨大な小太刀』。真っ直ぐな刃は、妖精姫の胸を
斜めに撃ち貫いていた。MMSの身体構造を知り尽くした、精緻な一撃だ!

『こ、れ……ジェネレータと、CSCが……貫かれて……?』
「貴女はナメ過ぎたのよ。神姫として“誇り”を賭けるべき戦いを!」
「あ、あぁ……こ、の!離しなさい……よっ!!」
「離してあげるわ、約束……だものっ!!」
「うわっ!?きゃあぁあっ!!」

何処までも冷たい言葉で、自分が大切にしてきた戦いへの想いを告げた。
それはエルナの“魂”に刻み込まれた、力を尊重する意志である。それを
軽視した彼女の行いに、お灸を据える。先程の会話は、そう言う意味だ!
契約通りの一撃を加えたエルナは小太刀の柄を更に伸長させ、直槍として
振り回し、アールヴを叩き飛ばした。ここで、エルナの姿が露わとなる!

「う、うううっ……あ、貴女……その姿……!?」
「“ブルーム・ギアー”ブリーシンガメン。至宝の装束よ」
『ぶ、ぶりー……?確か、もらう為に四人の小人と床を……』
「う゛ッ!煩いわね!?とにかく……これが、貴女を倒す力よッ!」
「た、倒されて……たまるもんですかッ!」

ボロボロの姿となったアールヴを前に、エルナは一切の躊躇を見せない。
アーマード・フィギュアよりも更に巨大なスカートを身につけ、上半身は
タキシードの様な胴体と大きく肘の突き出た腕部が特徴的なその勇姿は、
エルナの目を覆う様に展開したヘルメットと、そこから伸びるセンサーが
兎の様なシルエットを形取っていたのだ。それも童話に出る様な類のな。
これは“プルマージュ”のノウハウを用いた、エルナ専用の形態なのだ!

「くぅぅ……う、わあああっ!!この、このこのぉっ!!」
「ッ!あの斧、翼にもなるのね。しかも、拳銃を隠し持ってた……」
『おまけに帯電している、やれるか?エルナ……』
「“やれるか”じゃなくて、やるのよ……大丈夫、マイスター!」
『よし、ならば仕留めろ……彼女を休ませてやるのだ!』
「オッケー!……はぁっ!!」

巨大な斧を骨組みだけの翼に……先程の怪物形態でも纏っていた物に……
変形させたアールヴは、羽から何条もの雷を撃ち出しつつ銃撃してくる。
一見近付くのは、危険に見えた。だが、冷たい意志と熱い闘志を秘めた、
エルナは怯まない!地を蹴って、浮かんでいたアールヴに殴りかかった!

「“イーヴァルディ”、フルコンタクト!はぁぁああっ!!」
「きゃうっ!ぐ、くは……きゃっ!?ううあああっ!?」
『あ、アールヴッ!!?』

エルナの手甲“マビノギオン”は、格闘に特化したタイプとなっている。
更にその出力をシャノンにバイパスする事で、強力な体術を繰り出せる様
設計したのだ。今、エルナはその機能をフル活用して……アールヴの力を
徹底的に殺いでいく。そして……杖と化したフルネレスが、光を放った!

「“魔術”のコンボ、貴女に見せてあげるわ。まずはっ!!」
「ううっ……こ、氷の刃が砕けて……ひゃあぁぁあッ!?」
「ダイビング・ブレイド“凍煌の翼”……光の羽よ!“砕”ッ!!」
「きゃんっ!?つ、冷た……ううあああっ!?こ、今度は何よッ!?」
「次は、デトネイト・フォージ“灼珠の尾”!爆雷の鞭よ……それっ!」
「きゃあああああっ!?──────ぐっ……!?」
「締めはトルネイド・スパイク“嵐殲の角”。コンボ名は“龍妃襲”よ」
「う、ううっ……こんな、技の速度が速すぎる……わよ……ッ」

それは殆ど反撃の隙を与えない、圧倒的なコンボである。元々暗殺の類を
得意とするエルナに、無防備な初撃を赦した事自体が間違いとも言えた。
投げつけられた氷の鎌が爆ぜ光の羽となり、燃える水晶の鞭が絡みつき、
重力弾を埋め込まれた紫電の槍が迸り……その全てが、アールヴの装甲に
大きなクラックを入れる。そして、刃と化したフルネレスが鞘走ったッ!

「さ。これで、止めにするわ!……“神刀滅却”!はあぁぁっ!!」
「うあああぁぁっ!でも……逃がさない、わよっ!!」
「うぐッ!?く……このっ!」
『エルナ!?』
『アールヴ、アールヴッ!』

気合の一閃は、半壊状態の装甲をほぼ完全に裁断した。しかしアールヴは
隙を見逃さずに、エルナを強引に抱きしめる。更に、背部の翼から生じる
雷を、全てエルナに注ぎ込んでいく彼女……これは、相打ち狙いかッ!?

「ここは貴女の勝ちよ、エルナ!だけどね!勝っても、勝ち続けても!」
「く、ぅ……アールヴ!?」
「結局は何時か負ける!挫折で、膝を折る事になるのよ!エルナァッ!」
「……悪いわね、アールヴ。あたしはもう、そんなの経験してきたわ」

敗北への恐怖。それをエルナに叩き込もうとしたアールヴだが……それは
既にエルナが通過した道である。彼女は狼狽える事無く、シャノンを元の
アーマード・フィギュアに変形させた。そして、胸にある最後の武器……
インナーレーザーキャノンを解放したのだ!アールヴは、光に包まれる!

「きゃあああああっ!!」
「だから、手加減はしない。それが、アタシの誇り……そして礼節!」
「ぐぅ……きゃうんっ!!!?」

アールヴの拘束が緩んだ所で、エルナは腰から可変式レーザーキャノンを
取り出し……ライフル形態で、更なる零距離砲撃を敢行したのだ!彼女の
鋼の翼は、完全に砕け散った。紫の姫はそれでもなお、止めを望む……!

「う、あああっ!?覚えてなさい、次にまた絶望した時……」
「……絶望した時?……ふっ!」
「ぐ……こうなるのは、貴女なんだからぁああああぁぁっ!!!」
「ぐうううっ……大丈夫、よッ!!」

それは、戦う姫として最大限の慈悲だったろう。またもエルナは、腰から
何かを取り出した。今度は光の羽……圧縮プラズマ式の爆弾だった。無論
あの凶行で使った物より相当弱い、規約範囲に収まるレベルの威力だが、
アールヴが呈示した『絶望への恐怖』に対する解として、最適な武器だ!
エルナはその羽を、砕け散りゆく姫の胸元に突き刺して……爆破したッ!

「これが、改めて贈る“冥土の土産”よ──“砕”ッ!!」
「ぐぁ……きゃああああぁぁああああっ!!」
『む!?エルナ、エルナッ!!』
『アールヴッ!!』

プラズマの閃光と爆音が宮殿を包み、衝撃が窓硝子を砕く。粉塵が周囲を
満たし、一体どういう結果となったのかは……数値だけでは分からない。
やがて視界が晴れていくにつれ、見えてきたのは……アールヴを抱き抱え
崩れた宮殿を後にする、エルナの姿だった。そうだ……私達の勝利だッ!

「ねぇ……調子に、のってたのは……あたしなのかしら?」
「なぁに、気づけたなら大丈夫よ。アタシも……教えられた事だしね」
『ノックダウン!!勝者、エルナ!!』

ジャッジシステムが勝利の鐘を鳴らし、エルナ達は再び実空間へと戻る。
筐体から出てきたエルナを、私達は強く抱き寄せて精一杯労ってやった!

「エルナちゃん、お美事ですの♪これで、四人揃ってセカンドですの!」
「ひゃっ!?ろ、ロッテお姉ちゃん頬摺りなんかしないでよ!きゃっ!」
「お疲れ様なんだよ。最後はクールに決めてくれたもん、良い子良い子」
「本当良かった……凄く頑張りましたよ、エルナちゃんッ!ん~っ……」
「はは、じゃれ合いすぎるなよお前達……む。彼方さんが来たぞ、皆?」

私の言葉に、五人全員の視線が一点を向く。俯いておどおどしているのは
神姫のアールヴ。居心地が悪そうに顔を顰め頭を掻いているのは、光だ。

「じゃ、じゃ……あたしの武器、あげるわ。使うか分からないけど……」
「だってさ。槇野さんなら呑まない!って言っても聞かないの、この娘」
「そう言う事か……エルナ、お前の判断を尊重しよう。勝者、だからな」

皆が固唾を呑んで見守る中、エルナは私の手を伝いアールヴの元へ赴く。
何だか私と光が手を握り合っている様にも見えるが、気にしたら負けだ!
ともあれ、彼女の前に立った紫の姫は……優しく、妖精姫を抱き留めた。

「それは要らないわ。代わりに一つだけ約束してほしいのよ、貴女には」
「や、約束?何……?どんな事、すればいいのよ?……エルナ、さん?」
「“二度と、他の娘の武器を奪い取らない”。これが、アタシとの約束」
「え!?……わ、わかったわ。その、ごめんなさい……無体な振る舞い」
「いいのよ。大切な思い入れまで奪い取らせるのが、見てられないだけ」

エルナの優しい“契約”は、アールヴにも心境の変化をもたらした様だ。
ただ与えられるだけではなく、己も他の神姫に愛を与える。例え、他人が
怖い彼女であっても、それは可能な事なのだ。有無、これにて一件落着!

「流石。新入りの“妹”も人間……じゃない、神姫出来てるわ槇野さん」
「ははは。本人と、彼女を迎え入れた“姉”達の素質だろう……なぁ?」
「はいですの♪エルナちゃんは、わたし達から一杯学んでいますのッ!」
「服だけじゃなくて武装のアドバイスにも乗りますよ、契約の代わりに」
「安請け合いしちゃって、大丈夫なのかな?……大丈夫だよね、皆なら」
「さてと、じゃあマイスター……勝ったんだから、一杯抱きしめてッ!」
「おおっ!?わ、分かった!こらこら、はしゃぐんじゃない……全くッ」

──────“勇気”と“信念”は、皆の“心”の中に……ね。







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