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紫風の尖姫──あるいは誇りと誓い(前半)




──“妹”になる事は出来たわ。でも、それで満足しちゃいけないのよ。
その名に恥じない生き方……大好きな人達に胸を張れる姿を、見せる事。
それが出来た時、アタシ達は嬉しいから。皆に、笑ってほしいから──。



第一節:挑戦




その日は、朝から晴れ渡っていた。今時珍しい都心での猛吹雪は終わり、
残雪がまだ道路の端々に残っていた……これは太陽が融かしてくれよう。
というわけで私・槇野晶と“四人の妹達”は、外出準備に追われていた。

「マイスター、エルナちゃんもお風呂から上がりましたの♪ほらほらっ」
「え、良いわよロッテお姉ちゃん。自分で拭け……ってちょっとぉ!?」
「そう言わないでください、今日はエルナちゃんの大切な日ですから!」
「有無、今日はエルナのセカンド昇進を賭けた大事な試合ではないかッ」
「……だから身嗜みも、ボクらの“妹”に相応しく可憐にキメるんだよ」

そう、行き先は神姫センターである……あの“悪夢”を越えて、真っ当な
“武装神姫”として歩み始めたエルナは、当初こそ慣れない戦場で連敗を
重ねたが……現在は破竹の勢いで、セカンド目前まで迫っていたのだな。
昇進可能なレベルに達した時の、エルナの言葉は今でも忘れていないぞ?

『アタシにも、矜持があるわ。お姉ちゃん達から受け継いだ“誇り”が』

“姉”達の戦う勇姿を見て、エルナもまた自分のスタンスを掴んだのだ。
それを一々語っていると、センターの開場に遅れてしまうので割愛するが
いやなかなか……不屈の精神を見せるエルナの言葉は、感動的だったぞ!

「……マイスター、マイスター?妙にニヤニヤしてどうしたのかな?」
「どわ゛ッ!?げふげふ……な、なんだクララ。脅かすんじゃないッ」
「あ、ひょっとしたらこれから戦うエルナちゃんの艶姿を描いて……」
「“魔剣”は無くても、エルナちゃんは頑張り屋さんですから~っ♪」
「な、何言ってるのよ!アルマお姉ちゃんとロッテお姉ちゃんッ!?」

……いかんな、ついつい“妄想”が。まぁ、それは兎も角だ。己の全てを
晒け出し合ってから、私達の“仲”はより一層親密となっている。今日は
それを見せる時ではないが、結束は強固だ。皆、それを実感しているッ!

「全く……じゃれ合うのもこの辺にせんとな。そろそろ出かけるぞ?」
『はいッ!!!!』

そんな暖かい想いを抱きつつも、私達は“春の新作”を纏って秋葉原へと
繰り出す。機材運搬用のカートは、30%増となって迫力が増していた。
……今日はエルナの試合だけだが、万一と言う事だって有り得るのでな?

「うぅむ、自転車を展開するのは……流石に危険だな。この積雪量では」
「アタシの分だけ持ってくればよかったのに……律儀よね、マイスター」
「それがマイスターの持ち味なんだよ。電動補助もあるし大丈夫だもん」
「でもマイスター、折角のドレスを汚さない様にお願いしますの~……」
「地面はドロドロですからね、転んだら……結構大変ですよね、これ?」
「分かっている。よ、とととっ……慎重に行けば、どうにかなるだろう」

私の両肩と両胸のポケットから、“妹”達が私を気遣ってくる。御陰で、
楽々……とはいかないが、どうにか神姫センターには無事に辿り着けた。
早速エルナの“昇進”を申し込むが……これもすんなりと行かない様で。

「あ、はい槇野晶さんの……エルナですね。対戦相手はあちらの方です」
「何?もう先客が居るのか。何やら、口論している様にも見えるが……」

受付担当が指し示した先で、何やら娘さんと神姫が騒がしく叫んでいた。
だが仲違いをしている、という程ではない……いや、これはむしろ……?

「だから、折角の試合なのにまた“アレ”をやるの?!いいじゃない!」
「折角の挑戦相手なんだから、良い物持ってるかもしれないじゃない!」
「……痴話喧嘩、ですの?仲が悪そうには、とても見えませんの~……」
『何ッ!?』
「わ!?な、何じゃなくって!その、貴女達がアタシの対戦相手よね?」

ロッテの突っ込みに、二人が振り返る。その剣幕に退いたのはエルナだ。
だが、程なく調子を取り戻し語りかけた。未だ人間不信の嫌いがある物の
私や“姉”が側にいる場合は、多少なりとも普通に会話が可能なのだな。

「対戦相手って……あ~!昇進申し込んでたけど、試合決まったのね!」
「こらアールヴ、申し込んだのはあたし・光でしょ!……槇野さんね?」
「有無……私達を知っているのか?如何にも、槇野晶とその“妹”達だ」

話を聞くに、マスターの向坂光(こうさか・ひかる)と神姫のアールヴは、
去年からずっと私を追っ掛けているらしい。主に服飾デザイナーとして、
昨春のイベントにも買い付けにやってきた客の一人らしいのだ……むぅ。

「光栄、晶さんの神姫と戦えるのね!……アールヴ、やっぱやめるわよ」
「何言ってるのよ!この人達なら、とっても良い物作ってくれる筈よッ」
「……えと?話が見えないですの。どういう事ですの、アールヴさん?」
「あ~、あのねロッテちゃん。あたし達は“賭け試合”をよくやるのよ」

そんな二人が再び喧嘩を始めそうになったので、ロッテが割って入った。
光とやらは、苦虫を噛み潰した様な表情で説明を始めた。一方アールヴは
喜色満面である。どうやら“賭け”とは、彼女主導のアイデアらしいな。

「でさ、この“昇進試合”でも賭けをしたいなって相談してたのよね!」
「相談と言うより、痴話喧嘩だよ……で“賭け”って、何をなのかな?」
「武器よ!倒した神姫が持ってるよさげな武器を、頂戴するってわけ!」
「……あたしは、それを元にこの娘を強化出来るからいいかなーってね」

だが、彼女はすっかり味を占めてしまい……マスターとしても“神姫”を
強化する“ヒント”を得る手段は重要な為、結局はノリノリらしいのだ。
言われてみれば、“フィオラ”の上に見慣れぬ装甲を纏ったアールヴは、
現存・販売されているどのタイプとも違う、独自の素体を使用している。
この向坂光とやら、顔に似合わず『出来る』マスターかもしれんな……。

「所謂“弁慶さん”なんですねぇ。で、エルナちゃんにも賭けを……?」
「そうよ!光憧れの“マイスター”から武器をもらえるなら、最高ッ!」
「いや、あのねアールヴ?憧れてるからこそ、ちょっとアレなのよ!?」
「何よぉ。銀と衣のアーティストだ、って何時も褒めてるじゃないッ!」

その彼女らが、私達に一目置いているのはよくわかった。だが、これでは
何時まで経っても協議が進まぬ。途方に暮れた所で口を開いたのは……。

「……いいわ、やってあげる。アタシは“魔剣”もないから丁度良いし」
「エルナ!?……お前、良いのか?この様な誘いに応じてしまっても?」
「構わないわ。ちょっと腹案があるし、ね……いいでしょ、マイスター」

エルナだった。彼女は悪戯っぽく、琥珀色の瞳をウインクさせ懇願する。
彼女自身がいいというのであれば、全く問題はない。エルナが言う通り、
“魔剣”の調達をしていない彼女には、替えの利かぬ装備もないが……。

「分かった、勝ってこいよ?丹誠込めた武装だ、盗られては困るからな」
「う、うん……だから、無事に守り通せたら……その、ね?えっと……」
「エルナちゃん。紅くなっちゃダメですの。それを言うのは勝った後♪」
「わ、分かってるわよっ!……というわけで、応じるわよアールヴさん」

だが、私がエルナのリクエストに応じ産み出した武装は、彼女が何よりも
大切にしている……それを危機に晒しても、伝えたい事があるのだろう。
その決意を感じ取ったのか、私達は徐々に真剣な眼差しとなっていった。

「OK!まず昇進試合自体は保留して、重量級ランクで戦いましょっ!」
「ふぅ……で、そこで勝った神姫が、昇進試合で先制攻撃を与えるのよ」
「その上で昇進試合に勝った方が、負けた方に要望を出すのッ!どう?」
「よっぽど重量級に自信があるのね?……分かった、初陣だけどやるわ」

そう。エルナは通常の、所謂“軽量級”を一日何度も戦って現在の地位に
至っていた。結果時間が足りず、重量級ランクは登録だけという有様だ。
それを知っているのかどうかは定かではないが、不利と言えば不利だな。
しかしすっかり“姉”達に感化されているエルナは、強気な姿勢のままに
重量級ランクのバトルを予約し、割り当てられたブースで準備を始めた。

「“ティアマル”の能力は、エルナ……お前次第だ。分かっているな?」
「ええ、お姉ちゃん達の“龍”にも引けを取らないじゃじゃ馬だものね」
「じゃじゃ馬と言えば……光さんとアールヴさんも結構アレなんだよ?」
「アレで息が合っている辺りは、似た者同士なのかもしれんな……有無」

──────だけど負けない。私達の想いを受け継いだ、この娘はね?



第二節:宝石




重量級のブースに光が灯り、手を振るエルナがゲートから下降していく。
私は、サイドボードにエルナ専用のボックスをセット……指示を出せる様
インカムを装着して、宴の開幕を見守る事とした。舞台は、古城の孤島。
建物内にこそ侵入出来ない物の、起伏に富んだ広大なフィールドである!

『エルナvsアールヴ、本日の重量級リーグ第1戦闘、開始します!』
『……エルナ、まずは有利な位置を取れ。得意技を見せてやるのだ!』
「ええ、分かってるわ。じゃあ、暫く通信封鎖するわね?」
『3……2……1……GO!!』

ヴァーチャルフィールドへの扉が開かれ、エルナが庭園へと駆け出した。
彼女から視線を移すと、港の方から駆け上がってくる黒い神姫が見える。
そう、アールヴだ!彼女は、黒く巨大な戦斧を抱え走り込んできたのだ。

「さぁーて!今日も一丁やらせてもらうわよ……って、あれ?」
『居ないわね?……って、危ないアールヴ!二時の尖塔よッ!!』
「へ?……きゃうっ!?」

だが、意気込んだ彼女を光の弾丸が強かに打ち付けた。高密度圧縮された
プラズマ弾だな。“ロキ”が私を撃った銃よりは弱い威力だが……しかし
有効射程と命中精度は、スナイパーライフルとして通用する性能である。
無論、撃ったのは……尖塔の頂上にて匍匐射撃の姿勢を取るエルナだッ!

「まずは命中、っと。でも、致命傷にはなってないわね……」
「こ、このぉっ!降りてきて正々堂々勝負しなさいよ!」
「愚直に突っ込むだけが、正々堂々じゃないわ。“シャノン”!」
『Roger(突貫します)』
「え?きゃん!?こ、今度はぷち……じゃない、“アルファル”!?」

己の得意分野を最大限発揮し、手を抜かぬ事。それこそが、礼儀なのだ。
それを証明するかの様にエルナが呼びだしたのは、彼女を護る“騎士”!
彼女……“シャノン”は、左膝に備わったアンカークローをアールヴへと
打ち込み、巻き上げの力を使って右膝を彼女の顔面へと叩き込んだのだ!

『うわ、あのシャイニングウィザード……晶さん仕込み?』
「マイスターだけじゃないわ。アタシも、教え込んだのよ……ふっ!」
『“W.I.N.G.S.”……Execution!』
「く、離れなさいよぉっ……このっ!!」
『Roger(時間は作れました)』

更に腕部に仕込んだナックルで殴りつけようとするが、これはアールヴの
斧により退けられた。全身の躯に羽を持つかの様な、鋭角的なフォルムの
“エルナ専用アルファル”シャノンは、塔から降りてきた主の元に侍る。
そのエルナは落下中に“レーラズ”等を纏い、完全武装姿となっていた。
“セイクレール”をも装着した、可憐な“紫の竜騎士”の姿となってな!
ただ、エルナのリクエストに応えてスカートの丈等全体を調整した服は、
何処と無く……こう、あれだ。給仕の装束に見えん事もなかったりする。

「こんのぉぉ……さっきあたしを撃った銃が、それね?!」
「そうよ。でもこれは、形態の一つ……たっぷり、見せてあげるわ」
「その前に叩き潰してあげるわよっ!出てきなさい、ドヴェルグッ!」
『ギャオオオンッ!!』

エルナが、スナイパーライフルを分解して腰に下げる。その態度が相手に
火を付けたのか、アールヴの重量級用モジュールが繁みから姿を見せた。
それは、奇遇にも“龍”だった……しかも、ラプトル風の騎乗対応型だ!

「うわ、ゴツいわね……それが、貴女の相棒?」
「そうよ。そしてこの“セブンスムーン”が……あたしの得物!」
「えっ!?お、斧が組み替えられて……ランスに!?これはっ……」
「“アルファル”が組み換え武装なのは知ってるわ!だからお互い様ッ」

相当ゴツイ騎乗槍を軽々と振り回しながら、彼女は龍へと飛び乗った。
龍の方も、パーツ構成を見る限りシングルタスクでは無さそうだ。仮に
単一形態型であったとしても重火器を装備したその勇姿は、重戦車とも
形容出来そうな迫力を持っていた……見かけ倒しでは、なさそうだな。

「さ、こっちの番ね……ハイヤァアアアアアッ!!!」
『む……いかん、避けろ!パワーがハンパではないぞ!』
「オッケー、マイスター!シャノン、“マタドール”よ!」
『Roger(タイミングに気を付けて下さい)』

龍が大地を蹴り、更にマシンガンやレーザーを打ち込みながら一気呵成に
突撃を仕掛けてきた。だが、シャノンは勿論の事……エルナさえも、服に
仕込んである従来同様のブースターを使い、巧みに懐へ潜り込んでいく。
そしてギリギリの所で跳んだエルナ・シャノンと、アールヴが交錯した!

「せーの……せぁっ!!」
『Roger(攻撃します)』
「銃が、剣に!?このッ、はぁああっ!!」

エルナの手には、先程の銃があった……否、バスタードソードに変形した
それは単なる銃ではない!彼女専用の複合武装なのだ。更に、シャノンの
両手には、腰から引き出した片刃式のマチェットが双振り握られている。
衝撃波を伴って突き進むアールヴに、彼女らは更なる攻撃を加えたのだ!

「うわ、っとと……痛、ちょっと無茶しちゃったかしら?」
『So bad(僅かに遅れました、損傷があります)』
「痛ぅ……よ、余裕見せてるじゃないの。あれだけの軽業見せといて!」

お互いが距離を取り、受けたダメージに顔を顰める。相打ちの様だった。
突進の勢いに呑み込まれたエルナは、腕に掠り傷を負っている。恐らくは
刃を剥き出しにしたランスが掠めたのだろうな。反面、アールヴの方には
装甲の傷が見られる程度。だがこの戦法こそ、エルナの“真価”である!

「そりゃそうよ。アタシの真価は“超高速戦闘術”なんだから……!」
「ちょ、ちょう……何それ?」
「今から見せてあげるわよ、シャノンッ!!」
『Roger(支援します)』
「う、うわっ!?」
『ギャオッ!?』

その一端を見せようと、エルナは駆け出していった。それを追う様にして
シャノンが、円盤……正確には五角形の“宝石”型へ変形し、飛翔する。
舞い上がった飛翔体は、機体から迫り出したレーザーマシンガンと拳銃で
“光の姫”と“闇の龍”を牽制した。その隙を、彼女は狙っていたのだ!

「ほら、何処見てるのよアールヴさんっ!!」
「うぅ……え?」
『バカ、上よアールヴッ!!』
「そらそらそらっ!!」
「きゃあああぁあっ!?」

駆け出していたエルナは、強く跳躍し……空中で反転したシャノンの背を
蹴って、アールヴの頭上を抑えていたのだ。そこから繰り出されるのは、
先程の剣……から更に変形した、二挺のライフルによるプラズマ弾攻撃。
マシンガンの様に浴びせられる“光”に、堪らずアールヴが暴れ出した!

「いい気になってるんじゃ、ないわよぉっ!!!」
「う、うわっ!?きゃううっ!?」
『エルナッ!!大丈夫か!?』
「う、受身は取れたわ……でも、今度は刃の鞭になってるわねアレ」
「まだまだ、行くわよッ!それそれぇっ!!」

襲いかかった“黒い蛇”はエルナを撃ち落とし、更に追撃する。そうだ、
アールヴの持つ突撃槍が、今度は長大な鞭に変化して襲いかかったのだ!
間違いない。相手も複合武装の使い手なのだ。となれば、手数が鍵だな。

「く……派手にやってくれるわね、あの娘!」
『エルナ、出し惜しみはせんでいい。全てを見せるつもりで挑め!』
「ん?……いいのね、全部出しちゃって?」
『嗚呼。上空に“ティアマル”を展開してある、合流しろ!』
「分かったわ!シャノン、アタシを空にッ!」
『Roger(乗って下さい)』
「逃げてないで戦いな……きゃうっ!?こ、今度は何!?」

私はそう直感し、エルナの重量級モジュール“ティアマル”を投下した。
晴れ渡った孤島の上空には、薄暗い“龍”の影が見える。エルナもそれを
発見し、すぐさま合流の為にシャノンを呼び戻した!彼女は咄嗟に反応、
今度は戦闘機の形態となり、レーザーでアールヴを威嚇しつつ突撃する!

「サンキュ、シャノン!そのまま、ティアマルの側までッ!!」
『Roger(加速します)』
「ま、待ちなさいよ!……ひゃっ!?な、何これ。鏡の……刃?!」
「ファントム・グレイヴ“鏡刃”。アタシの“簡易魔術”って所かしら」
「な、“魔術”ってどういう事よ?!その武器、一体なんなの!」

撃墜しようとするアールヴの気勢は、目の前に降ってきた三つの刃により
殺がれる事となる。投げつけたエルナの手には、先程の銃……に加えて、
銃のホルダーをも合体させ、更に変形させた……無骨な“杖”があった。
そしてエルナの背後に、白と紫に彩られたシルエットが見えてくる……!

「これは“影羽”フルネレス。魔剣の代わりに、産み出された武器ね」
「魔剣の……あ、あれって彼女のモジュール……!?」
『アールヴ、気を付けて!やっぱり向こうも“龍”よ!』
「そして、この娘が……“嵐皇龍”ティアマル!アタシの相棒ッ!」
『ケェェーン……ッ!!』

──────私が丹誠込めて作った娘達、頑張って……!



第三節:騎兵




戦闘機形態のシャノンとエルナが向かった上空には、歪な形の龍が居た。
全体的なフォルムは“ファフナー”に近いが、角は上下四本に増えており
首は蛇腹状の細い物となっている。更に、燕の様な形状の大きな翼を広げ
背びれ等も備えていたティアマルは、他の“龍”とは明らかに違う姿だ。

『パーツ構成は、所々槇野さんの既製品に似てるけど……まさか』
「そうよ光さん。この娘もシャノンも、フルネレスも余剰パーツ製!」

余った部品で作られた事実。それはエルナ達にとって、誇りですらある。
曰く『お姉ちゃん達の因子を受け継いだ形で、アタシも戦えるのね』と。
だが、ただ後を追うだけでは芸がない。無論、彼女なりの“魂”がある!

「だけど、得た力は正真正銘アタシの物……アタシの、誇り!」
『Roger(合体します)』
「ッ!?た、確かにそのアーマー姿は……今までと違うわね」
『ケェェーンッ!』

それを示す為か、エルナはシャノンを鎧として纏った。全体的に鋭角的な
フォルムであるシャノンは、同じく鋭角的なティアマルともデザイン的な
相性が非常によい。だが、決してそれは外見だけではない。左手に従来の
二枚分を接続した改良型の“ティンクルスター”を、右手に杖の様な形の
“ティンクルスター”を携えたエルナは、アールヴを挑発してみせるッ!

「さ、それ飛べるんでしょ?受けて立つわよ!」
「なら、行ってあげるわ!ドヴェルグッ!!」
『ギャオオオンッ!!』
「まずは、小手調べよッ!!」

その挑発にアールヴは乗り、騎乗していた龍をレシプロ機の姿に変える。
エルナと私の読み通り、龍の方も多段変形するタイプだったのだ。彼女は
迫り出したプロペラを勢いよく回転させ、ミサイルを連射しながら飛ぶ!

「う、うわわっ!?高機動型のマイクロミサイル……でも、遅いわッ!」
「そっちだって遅いわよっ!じゃあ、こっちはどうっ!!?」
「ッ!?マシンガンの方は本物ね、喰らってられないわ……!」
「ふふん、どうよっ!ほら、逃げなさいッ!」

エルナは右手の“槍”からプラズマのジャベリンを産み出し投擲するが、
アールヴも、レシプロ機とは思えぬ運動性で回避しつつ機銃を撃ち込む。
単なる機銃ではない、ヴァッフェバニータイプのミニガンに匹敵する力を
持つ弾丸に、エルナは堪らず背を向けて飛ぶ。一方のアールヴは強気だ!

「あははっ、ほら!ほらほら、撃ち落としちゃうわよッ!」
「へ?きゃぁっ!?か、鎌を投げつけてくるなんてどういう事!?」
『む、あの“セブンスムーン”とやら……動力機関を備えているぞ!』
「動力機関!?アレ自体が、意志を持った相棒って訳ね……!」
「そうよ、何ならもう一回投げてみせる!?っとと……」

先程まで鞭だった超巨大武器が、今度は推進器を備えた死神の鎌として、
超高速で飛翔するエルナを捉えようと飛びかかる。流石に掠めた程度で、
大事には至らなかったが……背後を取られたままでは、不利だと言えた。

『エルナ、龍である特性をうまく活かせッ!』
「りゅ、龍?……そうよね、あっちは今戦闘機。でも、アタシはッ!」
「わぁっ!?反転した……避け、ないとっ!?」
「竜騎士なのよ!ティアマル、“フォールダウン”!」
『ケェェェーンッ!!』
「間に合わ……ッ!きゃああああっ!!?」
「今度はアタシが追う番よ!サーベラス・ランシア“闇迅”……ゴー!」

だが、流石戦闘その物には慣れているエルナだ。私の短い指示で、咄嗟に
龍の体躯を反転させ、そのまま“竜の吐息”を撃ち出したのだ。エルナの
相棒・ティアマルが備えるのは、名前通りの“圧縮空気弾”。追ってきた
アールヴ達は、突然発生した暴風によって吹き飛ばされ、失速を始めた!
それを追い掛け、エルナは“三条の黒槍”を打ち込む。“簡易魔術”だ!

「ふぇ?き、きゃああああっ!?な、何よこの黒い槍ってッ!?」
『クララちゃんが使う様な重力弾ね。でも、どうやって使ってるの!?』
「アタシの“カン”自体は死んでないって事よ……限定的でもねっ」
『有り得ないわ、だって普通に使おうとすれば外部装置が……あ!?』
「そう言う事。装備とアタシ自身で分担すれば、不可能じゃないわッ!」

“決戦”の時にクララの技を見た彼女は、自前で“魔術”を使っている。
それは焼き切れた補助演算装置の支援による物であり、今のエルナ自身は
クララの様に単独で“魔術”を編纂出来ない……そう、“単独”ではな。
つまり誰かがコードを編纂して、外部装置に記録してやればいいのだッ!

「……クララお姉ちゃんが、アタシの為に仕立てた七つの“魔術”!」
『姿勢を立て直しなさい、アールヴ!次が来るわよ!』
「これが“姉妹の絆”の力よ!ファランクス・レイン“光陣”ッ!!」
「くっ……ひゃああっ!?こ、今度は雷の雨!?調子に乗るんじゃ……」
『む、いかんエルナ!“魔術”を中断して回避するんだ!』
「ないわよっ!借り物の力でっ!!」
「えっ!?きゃうっ!!」
『ケェンッ!?』

だが絡繰りがバレてしまった以上、彼方も黙って喰らう気はないらしい。
翼端でブースターの様にぶらさがっていたレーザーキャノン達が、一斉に
エルナ達を撃ったのだ。カウンターを喰らう格好となったティアマルは、
防御システムでダメージこそ大きく減殺しつつも、墜落を免れなかった。
それはアールヴ達も同様であり、龍の姿になって不時着する格好となる。
僅かな時間差で、エルナもどうにか龍の四肢で不時着に成功したが……。

「……借り物だなんて、言ってくれるわね。これはアタシの“力”よ」
「だってそうじゃない、貴女一人じゃ“魔術”は出来ないんでしょッ!」
「いいえ。倒した相手のノウハウを奪い取る貴女こそ、借り物なのよ」
「むううう~……言ってくれるじゃない。じゃあ、これはどうっ!」

雰囲気は剣呑な物となっていた……と言ってもエルナの目は至って冷静。
眼光に気付かぬアールヴは、ドヴェルグの頭部を、別の形に変形させた。
なんとそれは、巨大なレーザーキャノンのバレルだった。鞍から出した、
グリップらしき銃を接続させて、有り余るエネルギーを蓄積させていく!

「奇遇ね。こっちも、同じ機構を備えてるのよ……ティアマル!」
『ケェェェーンッ!!!』
「う、嘘!?頭と角が……ランチャーのバレルに!?」
「お互い様じゃない。さ、砲撃勝負と行きましょ?」

だが、本当に偶然なのだが……ティアマルも全く同じ機構を備えていた。
携行武装のレーザーランチャーを強化する、バレルの展開機構としてな。
ティアマル自身の追加装備故に、使うのはこれが初めてなのだ。嵐の龍は
己の四肢をしっかりと石畳に食い込ませ、エネルギーをチャージさせる!

「行くわよ……3!」
「……2」
『1、フォイエルッ!!』
「行っけぇ……!ダインスレフ・フルバーストッ!!」
「蹴散らしちゃいなさい、ノー・フューチャァァアッ!!」

そして、二つの閃光が放たれた。エルナは文字通りの紫電を纏い、対する
アールヴ達も光の粒を撒き散らしながら、極太のレーザーを撃つ!そう、
この筐体は、試験的に“オーロラ・エフェクト”が実装されているのだ!
エフェクトによる煌めきとレーザーの光が相俟って、孤島全てが光の中に
沈み込んでいく……二人の姿が見えてきたのは、数十秒も後の事だった。

『エルナ、エルナッ!ダメージは……まだ立てる量だ、大丈夫か!?』
「ううぅ……どう、にかね。この娘らも、まだまだ行けるわよ」
『ケェーン……ッ!』

鳥の様な鳴き声を挙げて、再び異形の龍が姿を見せる。全体的な駆動率は
問題ないが、ヴァーチャルフィールドに於けるダメージ量という意味では
エルナが若干不利な結果に終わった。このままでは、押し切られかねん。
だが、そんな彼女を力強く奮い立たせたのは……アールヴの一言だった。
彼女もまた圧力に押しやられ、庭園にあった柱に突っ込んでいたのだな。

「痛……決めたわ、勝ったらその娘をもらうわよ!」
「……さないわ」
「ん?何?」
「マイスターが産み出してくれた相棒は、渡さないって言ったのよ!」

──────紫電の様に激しく、でも紫水晶の様にクールに……だよ。







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